2024/11/17 のログ
ご案内:「転移荒野」にセロさんが現れました。
セロ >  
気がついたら荒野だった。
どこまでも広がる砂塵の地。
翼を広げて飛ぶには問題なさそうだけれど。

佳き時代(ベル・エポック)とは違う世界に来たようで。

当て所なく荒野を歩く。
どこからどこまでが世界なのか。
どこまで言ったら果てに着くのか。

何から心配すればいいのだろう。
何も思い出せない。

セロ >  
ここはどこだろう。
わからないことをわからないままでいてもいい世界ならいいのだけれど。

何かを知るということは独善的で、凶暴なのだから。

砂塵が舞う。
生き物のいた痕跡はあるけれど。
まだ生き物には遭遇していない。

セロ >  
帰れるのかな。
帰れたら何を言おう。

ニュープロヴィデンスのみんなにジョークでも言おうか。
元の世界に帰って最初に反逆と光の信教に遭ったら大変だけれど。

そうそう悪いことばかりは続かないはずだ。

セロ >  
ふと、眼の前に何かが見えた。
緑色だ。
私は緑が好きだ。

歩いていくと、荒野に泉があった。
周りに植物が繁茂している。
赤い実や青い果実もある。

どうやらなにもない荒野にずっといることだけは避けられたようで。
“カムヨーベイツに鹿一匹”とはこのことを言うのだろう。

セロ >  
「池だ……それに清潔かも」

独り言を口にした時に私は異変に気付いた。
共通交易語じゃない。
私が喋っているのはなんの言語なんだ?

喉を手で押さえる。
どうやらこの世界に言語を最適化されたようだ。
これじゃまるで翻訳された動物じゃないか。

強烈な違和感。
でも、この世界で一人だけ共通交易語を喋っているのもヘンなのか?

セロ >  
喉を細い指で押さえたまま、鎌を握って池に近づく。
すると、池の傍で眠っているなにかの生き物を見つけた。

全身を覆う楯鱗。
ドラゴンのようにも見えるが、原始的なフォルム。
喉の辺りに少し汚れた毛が生えている。

「……恐竜…」

キョウリュウ?
それがこの生き物の名前なのか?
自分が知らない言語で、知らない生物の名前を呼んだことに眉根を顰めた。

そして眼の前の生き物は首をもたげて私を見た。
縦に割れた獰猛な眼差し。

セロ >  
「待ってください、私は敵じゃないです」
「私はセロ、“モルテ”のメンバーです」

「落ち着いてください恐竜、私は水を使いたいだけなんです」

言葉を尽くした。
私が使っている言葉がこの世界の言語ならば、この世界の生物に通用するだろう。

すると目の前の恐竜は体を起こして咆哮を上げた。
耳を劈くその叫びは、私が今使っている言語じゃなかった。


鎌を抱えると背中を向けて再び荒野に走り出す。

ご案内:「転移荒野」に霞流 周さんが現れました。
セロ >  
しなやかで大きな足音と共に後ろから恐竜が追ってくる。
きっとアレは私を食べるつもりなのだろう。
面倒なことになってしまった。

この世界に“恐竜”しかいなかったら。
私は帰るまでずっと食べられる側として追われることだろう。

荒野と恐竜の世界。
ゾッとしない話だ。

必死に走りながら翼を広げる。
あの生き物が空を飛べないことを祈るしかない。

霞流 周 > 転移荒野――不定期に『門』が出現し、人やモノ、それ以外も様々なものがランダムに流れ着くこの一帯。
時間や空間が捩じれている時もあると聞いた事があるような気がするが、正直そこはよく分からない。

さて、少女は何時もの服装に…今回は場所が場所なので、携帯保存食と水筒などが入った小型のリュックを背負っている。
右手には相変わらず、鞘に納めた刀をそのまま手に提げて持ち歩く何時ものスタイル。

「……ん…。」

ふと、前方に土煙のようなものが見えた。何かが走っている?…光の無い銀の双眸を凝らす。
…いや、誰かが…追われている?見た事の無い独特の装束を着込んだ人物と、その後ろを追ってくる――

「…ドラゴン……じゃぁ…ない……あれは…恐竜…かな…?」

流石にドラゴンでも恐竜でも実物を見るのは初めてだけれど。
どうしたものか…と、思っている間に、お互いもう視認できる距離になっていたかもしれない。

セロ >  
走っている向こう側。眼の前にヒトがいる。
良かった、この世界にも私に似たシルエットの存在がいる。

今はそれどころじゃないのが残念だ。

「逃げてください、あれは恐竜です!!」

と叫んで彼女の隣を駆け抜けていく。
翼が上手く開かない。
魔素が薄いのか?

この世界で飛ぶには、十分な練習が必要になるかも知れない。

「逃げて!!」

叫びながら。走りながら。
後ろから迫りくる脅威への危険を知らせた。

霞流 周 > 「…そうしたいのは…山々なんですが…。」

恐竜の速度の方が速い。逃げ切るのは少しばかり厳しい…では、どうするか。
迷わず一歩、二歩と緩やかな…まるで散歩にでも出向くような歩調で”前進”する。

擦れ違った小柄な…だけど、黒い翼と緋色の輪っかと…まるで死神みたいな大鎌を携えた少女を一瞥して。

「…私が…相手をしますので…貴女こそ…安全な場所まで…逃げて下さい…。」

途切れ途切れの、覇気も活気も無い淡々とした声色。それでも、ギリギリ彼女には届くだろうか?
恐竜はこちらに標的を切り替えたのか、咆哮をあげながら巨巨大な顎を開いて襲い掛かってくる。

「―――。」

切り替えは淀みなく、瞬時に、そして迷いなく。
少女の左手がゆっくりと、右手に提げた刀の柄に添えられて…目に映らぬ速度で斬閃が迸る。それも複数。

『――!!!!!!!!』

次の瞬間、悲鳴にも似た咆哮を挙げて、今まさに獲物に喰らい付かんとしていた恐竜の体が後ろに仰け反った
まるで、何かに弾かれたみたいに――…だが。

「……思った以上に……硬い…ですね…。」

少女は、既に鞘に刀を収めている。柄に左手は添えたまま小さく呟く。あの人が逃げ切るまでの時間稼ぎくらいは出来るか?

セロ >  
どうしよう。
銀瞳の女性はアレと戦うつもりのようだ。
私を逃がすためだったら大問題だ。

「ちょっ……」

ちょっと。
それがこの世界の言語での待って、に繋がる言葉。

混乱した頭でそれを理解した時。
恐竜の頭部が弾かれるように後方に流れた。

恐竜はグルル、と唸り声を上げて私と銀瞳の女性を交互に見た。
そして背を向けると泉があったほうへと踵を返していく。

リスクとリターンを熟考したのだろう。
賢い竜だ。


どうやら助かったらしい。
それにしても眼の前の女性に失礼のない言葉遣いを考えねば。

「ありがとうございます、強いんですね」
「まるで“黄金イノシシの一匹山道”でした」

強い、という意味の定型句を口にして彼女に近づく。

「この世界に迷い込んでしまったのですが、他にゲートはありますか?」

大鎌を下ろして帰りたいことを告げる。

霞流 周 > 「……さて…どうしましょうか…ね…。」

左手は刀の柄に添えたまま、それでも自然体の所作で恐竜の出方を伺う。
一頻り、威嚇と憤怒が入り混じった唸りと視線で自分と…おそらく後方、離れた所に居るであろうあの人を見ている。
…標的を切り替えるつもりならば、悪いがそうはいかない。次は完全に断ち切る。

…つもりだったが、どうやら不利と悟ったのか恐竜はそのまま背を向けて走り去っていく。
暫し、その後姿をじっと見つめてから…ややあって、小さく息を吐いてから刀の柄から左手を離した。

「……強いかどうかは兎も角…あの…”黄金イノシシの一匹山道”とは…何の例えなんでしょうか…?」

自分が知らない何処かの国か地方の例え話、みたいなものだろうか?
首を緩く傾げながらも、この人が無事だったので目的は一先ず達成はした。

「…ゲート…あぁ…【門】の事ですか?…それが…この荒野は…不定期に…【門】が…出ては消えるので…。」

それに、例え【門】が出現してもその先が自分の世界に繋がっているとは限らない。
その事を、明らかに別の世界から来訪した…否、迷い込んだと思しき少女に説明をしてみる。

「…なので…貴女が…今すぐに…ご自身の居た世界に…帰還するのは…難しいと…思います…。」

セロ >  
「ええと……遍く山野の王のことはご存知でしょうか…」
「黄金イノシシのグレフォーブのことで…」
「彼が山を往くのに誰も邪魔をしない、ということから転じて」

「単独で強いことを意味する言葉なのですが」

どうやら通用しないようで。
反逆と光の信教や大闇鴉がいないのは良いことだけれど。

私や“モルテ”を知っている人も誰もいないということだ。

「そうですか……」

消え入るような語勢と共に鎌を担ぎ直して。

「お礼をしたいところですが、私はどうやら得物以外何も持っていないようです」
「私はセロ、ここは貴女の名前を聞いても失礼に当たらない世界でしょうか」

霞流 周 > 「…すいません…全く…分からないです…。」

流石の少女も、ほんの少しだが申し訳なさそうに正直に答えた。
おそらく、この人が居た世界の言葉なのだろうが…勿論、こっちの世界で生まれ育った少女にはさっぱりで。
だが、彼女が意味を補足してくれたので誉め言葉なのは理解した。

「…災難…と、いうべき…なんでしょうか…。貴女以外にも…別の…色々な世界から…人や…物が…流れ着いてきたり…するので…。」

流れ着くモノに統一性は無いし、唯一の共通点は【門】を通じてこちらに来ることだけ。
この人が口にしたゲート…つまり【門】が何時、どの程度の時間開いていたのか分からないけれど…。

「…いえ…お礼は別に大丈夫です…そちらが無事で何より…です…。
…あぁ…私は…霞流…周といいます。…アマネで…構いません…。」

おそらく、こちらの名前は彼女の世界基準で見たら風変わりな名前かもしれない。
苗字の「カスバタ」は言い難そうなので、名前の「アマネ」の方で呼んで貰えるように配慮しつつ。

「…けれど…そうなると…当面の…衣食住の…確保が…必要に…なりそうですね…。」

自分が手助け出来る事は殆ど無いが、何かあるだろうかと考えながら。

セロ >  
「そうですか……」

視線を下げた。
喋れる人がいるのは僥倖だった。
ただ、それだけ。

それだけだ。

「ありがとうございます、アマネさん」
「ドミニアのイナトゥンが……じゃなくて」

慎重に言葉を選んで。

「大変助かりました、貴女は命の恩人です」

どうやらこの世界では“門”に入らないと異世界には行けないようで。
そして入ったとしても佳き時代(ベル・エポック)とは限らないか。

「衣食住は……追々なんとかします」
「恐竜を避ければこの世界も案外住みやすいかも」

はは……と力なく笑って見せる。

霞流 周 > 「…いえ…私が手助け出来るのは…このくらいでしょうから…。」

彼女を元の世界に帰還させてあげたりだとか、そういう肝心な所は何一つ力になれない。
ただの小娘一人、出来る事はとてつもなく少なくて限られている。
命の恩人、という言葉に首をゆっくりと横に振り。

「…私に出来る事をしただけ…ですので…。あと…。」

ここは恐竜以外の怪物や厄介な物も普通に出てきますよ…と、嬉しくない補足をしておく。
そもそも、かなり特異な荒野なので何が起きても不思議ではない…所はある。
その片鱗は、何となくこの人…セロさんも薄々感じ取ってはいるかもしれないが。

「…あと…常世島…えぇと…この荒野を含めたこの島の名前なんですが…今のままだと…。
多分…貴女は【不法入島者】…という感じに…なると…思います…。」

異邦人なのは間違いなさそうなので、学生街に案内して生活委員に紹介した方がいいだろうか?
生活委員に頼んで、例えば異邦人街とかに仮の住居などを確保できれば…と、考えるも。

(…セロさんの…事情が…分からないし…あまり勝手な事は…言えないかな…。)

そもそも、自分も二級学生という微妙な立場だ。正規学生と違って肩身も狭い。

「…セロさんは…暫く…この荒野に…居続けるつもりなんですか…?」

一つ、確認というか彼女の今の行動指針を尋ねてみる。
とはいっても、いきなりこの世界に来て右も左も分からない状態ではあるだろうけど…。

セロ >  
「アマネさんはできることをしてくれています」
「それで…恐竜以外にもいるんですか……」

はー、と溜息を吐いて屈み込む。
大鎌(エグゼクター)も本調子でない時に。

「常世島?」
「不法入島者……ひょっとしてここは荒野だけの世界ではない…?」

しばらく沈思黙考した。
ここで門が開くのを待っていてもいつか脅威に食われるのがオチかも知れない。

「ヒトのコミュニティがあるなら、行ってみたいです」
「私は……不法なる者かも知れませんが」

好きで旅人になったわけではないけれど。
それはこの世界の住民には関係のないことだ。

今の私はクレタ・カントゥスの道化というわけだ。

「実は……私は荒野に適性があるわけではないのです」

霞流 周 > 「…セロさんの世界に…居るかは分かりませんが…いわゆる…魔獣や…以前、ドラゴンが…出現したという…話も…聞いた事が…あります…。」

そもそも、異世界から色々な人や物がランダムに流れ着くのだ…つまり、異世界の怪物なども流れ着いたりする。
先ほどの恐竜も、現代では生きてはいない筈なので別の世界から来訪したか、こちらで交配した末の子孫なのかもしれない。

「…えぇ…むしろ…この荒野は…かなり広くはありますが…ずっと…こんな景色が…続いてる訳ではない…です…。」

島で言うと、【北側】におそらくなりますね…と、常世島の地図を思い浮かべて。一部曖昧だけれど。

「…じゃあ…私が…ご案内…しましょうか?…一応…【生活委員会】という…こちらの世界に…迷い込んだ人達の…対応をする…組織…というか…部署?があるので…。」

自分が手助けできるのは、彼女を街まで案内してから生活委員会に事情を話すまでだ。
その後の身の振り方や、今後どうするかはセロさん次第となってしまう。

「…適性?…それは…例えば…魔術とか…種族的な…問題でしょうか…?」

セロさんを改めて見つめる。矢張り目立つのは黒い翼、緋色の輪っか…そして大鎌の3つだ。
服装や、何故か素足なのも勿論気にはなるのだけど…。

セロ >  
「………………はい」

このままここにいたら死ぬということがわかった。
恐らくあの恐竜は脅威の一部でしかないのだろう。

「そうなんですか……」
「重ね重ねありがとうございます、角があっても妖精、ですね」

優しい人を表現する言葉を口にして。

「では生活委員会という組織に面通しを願います」
「私達死神も長い時間の中で人のコミュニティに適応してきたので」
「結局大事なのは屋根と壁と風防ですね」

そんなことを話しながら荒野を離れていく。

歩いているうちに、建造物やフェンス、ビル群が見えてきた。
ええ。どういう。ええ。

想像以上に発達した文明に適応できるかは、これから次第だ。

霞流 周 > 「…角…?…妖精…?」

さっきの”例え話”と同じく彼女の世界の言葉なのだろうが、解説して貰わないと意味が分からないので不思議そうに。

「…分かりました…とはいえ…距離があるので…一先ず…お水とか…飲んでおいた方がいいかも…しれません…。」

背負っていたリュックから水筒を取り出せば、中身の水…そう水である。それをセロさんに渡したりしつつ。

「…雨風を…凌げるだけで…大分マシに…なりますからね…。」

実体験でもあるのか、ほんの少しだけしみじみとそう同意するようにセロさんの言葉に首肯して。
ともあれ、先導する形で学生区へとセロさんを案内する少女であった。

…思わぬアクシデントと出会いがあったが、これはこれで面白かったし…良い出会いだったと思う。

街に辿り着けば、生活委員会の庁舎まで彼女を連れて行き、向こうに事情を簡潔に話してセロさんの事を頼んだだろう。

その後は、彼女に簡潔に別れを告げて会釈をしてから、一人ゆらりとした足取りで立ち去るのだ。

ご案内:「転移荒野」から霞流 周さんが去りました。
ご案内:「転移荒野」からセロさんが去りました。