未開拓地区に存在する小高い連山の総称である。
古くから常世島に存在する連山であり、その名の由来はヤマトタケルが大和を偲んだ歌から来ている。
古代から祭祀の場であったらしく、祭祀の遺構が数多く見つかっている。
世界の変容後、一種の異界となったらしく、神話上の存在などが山の中に潜んでいるなどのうわさも存在する。
入山は自由であるが、整備されているわけではないので注意が必要である。
参加者(0):ROM(1)
Time:01:59:46 更新
ご案内:「青垣山 廃神社」から緋月さんが去りました。
ご案内:「青垣山 廃神社」から神樹椎苗さんが去りました。
■神樹椎苗 >
「――いい返事です」
それから、日が暮れるまで貴重な時間は瞬く間に過ぎて行っただろう。
後輩の生き生きとした姿に、先輩は楽しそうな笑みを浮かべながら応える。
戯れというには激しすぎる時間だったが、後輩の助けとなり糧となる、有意義な時間にはなっただろう。
二人が境内を去ると、一面に咲いていた花々は、その背中を見送るように花弁を散らして。
後に残るのは、荒れた境内の姿だけだった。
■緋月 >
「――――――。」
手を引かれ、ゆるりと着物の少女は立ち上がる。
そうして、続く「先輩」の言葉に二度、三度と目をしばたかせ。
「………得難い機会、ありがとうございます!」
一度。深々と一礼。
同時に、右の瞳も青白い炎を少しだけ上げ、まるで謝意を伝えるかのように軽く揺らめく。
「では、お言葉に甘えて……遠慮なく、行かせて頂きます――!」
呼吸を整えると共に、再び七色の光の蓮が鈴のような音と共に開花する。
そして…一刀、また一刀、更に一刀。
「縁」を斬る度に、掛かる時間は少しずつ、だが確実に短くなっていき――
次第に、「無窮」の斬月の力を借りる事も少なくなっていく。
それはつまり、「神」に等しいモノとの「縁」を斬る斬撃が、ひとつの「技」として形を得ていく事に他ならず。
「無窮」であるが故に形なき異能は、其処から「形ある技」さえも生み出す事が出来る。
最も、それはこんな常識外の環境だからこそ叶うものであるのだが。
「――――もう一太刀、お願いします!!」
そんな調子で、ひどく生き生きとした…縁を斬る度に一時花の少女が二人に増え、
斬られた方は塵となる光景を除けば、充実した稽古の時間は過ぎていく。
互いの気が済むまで刀を振るい終えれば、最後に少しだけ余計に買っておいた三色団子を
二人で軽く歓談しながら食べる事になるのだろうか――。
■神樹椎苗 >
「――『出来る』」
その言葉が聞けると、満足そうに笑って、手を引いた。
「ほんとに、いい瞳になりましたね、後輩。
ただ、今はその『出来る』という言葉で十分ですよ」
理屈として『可能』であるのなら、今はそれでよかった。
これは危急の問題ではないのだ。
後輩の剣士が、物理現象でなく、概念を斬る為のトレーニングが目的なのである。
「さて――それだけの気合があれば、まだまだやれますね?
今日の本題は、お前の技のトレーニングです。
あのクソ樹木との縁なら斬りたい放題ですよ」
くすくす笑い、背伸びをして後輩の頭を撫でる。
「疲れても癒してやりますし、何度でも練習できます。
――こんな機会、しぃ相手以外じゃ、滅多にであえねーですよ?」
そう言って、視線で『どうする?』と訊ねた。
■緋月 >
「ああ……。」
縁を切った方――片方の花の少女が塵になって消えていく様を、着物の少女は申し訳なさそうに眺める。
そうして、今度は。
「……神殺し、ですか。」
差し出された手を前に、へたり込みながらそう口にする。
少しの思考の後、着物の少女は改めて言葉を紡ぐ。
「――先程、縁を切った時。
「神」と云われる木から繋がる「縁」を相手にしたので、「神を斬る」技を練り込んで斬りに掛かりました。
縁を切る事に成功はしたので……恐らくですが、本体にも通ると思います。
斬った結果、神木が枯死するのか、それとも「神性」を奪われてただの木になるのか…そこまでは分かりません。」
誤魔化しなしに、そう告げる。
「縁」を斬る事は叶った。ならば――本体を「斬る」事も、不可能ではない筈だろう。
「……縁を遡るとなれば、また違った斬り方で臨まないといけません。
今使える技で……理屈としては、「出来る」と思います。」
そう答えながら、そっと差し出された手に己の手を重ねる。
「――今度は、本当に何が起こるか、分かりません。
それでも――「斬れ」と言うなら、」
ぐ、と、今一度、不屈の眼を見せる。
「椎苗さんの望みの通り。斬ってみせます。」
■神樹椎苗 >
「「あ~――いや、お前はわるくねーですから、気を落とさねーでいいです。
これはもう、しぃの予測が不足してましたね。
そりゃあ、バックアップがあれば、新しく作るでしょうね――はあ」」
二人の複製は、額を押さえて全く同じリアクションをする。
そう、椎苗は『複製』される事による、疑似的な不死性である。
大本である神木が残っていれば、理論上、無限に複製をつくる事が出来るのだ。
「「――で、この場合消えるのは。
不具合が起きた方、と相場は決まってますね」」
そして、縁を切った方の複製は、枯れるように塵に還ってしまう。
むぅ、と残った複製は、眉根を寄せるしかない。
「幸い、記憶の途切れもなければ、感じられる気配も感覚的なモノにも、不具合はありませんね。
――一応、確認ですが」
難しい顔をしたまま、へたり込んだ後輩に手を差し出した。
「お前の剣技で、『縁』を遡って『神』を斬る事は出来ますか?」
そんな、とんでもない無茶を言い出した。
要するに、どこにあるかもわからない『神木』を、『縁』を頼りに遠隔で斬れるか、と訊ねているのだ。
■緋月 >
「あ、はぁ…ありがとう、ございます――??」
途中から、何か声が奇妙だ。
「先輩」の声が両方から聞こえて来る、ような――――
「――――なぁっ!?」
思わず両方見て、そんな奇妙な悲鳴を上げてしまう。
ふたり。ふたりいる。何か分からないけど、双子みたいに、花の少女がふたり。
どういうことなの。確かに、「縁」は斬った筈――――??
(………あ。)
思い至ったのは、非常に単純な結論。
そう、「縁」を斬る事は出来た。確かに、「切り離す」事は出来たのだ。
だが、その「大元」――「供給源」である神木は、恐らく健在。
つまり、何らかの異常で、「縁が千切れた」事を認識したなら、神木は――その齟齬を解消にかかる筈。
つまり。
「……あぁぁぁぁぁ~~……ご、ごめんなさいぃ~!!」
そんな情けない声をあげて、着物の少女はへたり込んでしまう。
大元が健在で、端末との繋がりが切れたなら。
当然、「新しい端末」を創り出しにかかるだろう。
そこまで、全く頭が回り切っていなかった。
半べそになりながら、二人に増えた先輩に推測の説明と全力の謝罪を向ける事になるのだった。
■神樹椎苗 >
「なるほど――見事な剣技ですね。
およそ、完全な縁切りと言っていいでしょう」
後輩からの言葉を聞けば、ゆっくりと頷く。
椎苗に影響を与えず、神木との繋がりだけを斬って見せたのだ。
椎苗を認識できない、というのが何よりの証拠だろう。
『縁』という繋がりを復元する事すらさせない、見事な概念斬りだったと言っていいだろう。
「――とはいえ、アレの気配を感じねーわけじゃないですね。
繋がりが消えた、そんな感じはしますが」
実感はあるが、現実感がない、という所だろうか。
果たされてみれば、こんなにあっさりと出来てしまうのか、と不思議な気持ちにも成った。
――のも束の間だった。
「「さすがはしぃの後輩ですね――?」」
少女の挟んで左右から、まったく同じ音、呼吸、声で、同じ言葉が聞こえる。
そして、そこには寸分変わらない姿かたちをし、驚いたように目を見開いた、『神樹椎苗の複製』が二つ並んでいた。
■緋月 >
「――――――」
ホォォ、と、あの奇妙な呼吸音と共に残心を行い、無我の境地からゆっくりと引き戻る。
最初は景色が、続いて色が、ゆっくりと視界の中に戻って来る。
そして、その中に見える奇怪なもの――敢えて例えるなら、頭を失った蛇、だろうか。
(聊かひどい表現ではありますけど。)
と思った所で、花の少女からの問い掛けの声。
は、と気が付くと、一度少女を、今度はうねる「縁」を交互に確かめ――
《盟友よ、限界だ! 蓮華座を閉じろ! これ以上は鼻からの出血では済まぬぞ!》
(痛っ…ありがとうございます、朔!)
精神からの友の声、直後に頭痛を感じたと同時に、大急ぎで蓮華座を閉じる。
そこでまずは一息。そして改めて、花の少女へと向き直る。
「……敢えて、見たままを伝えます。
狙って斬った、あの大きく太い「縁」は、途切れて彷徨っている状態です。
ちょうど、その辺りを…うねるように。
何かを探しているけど、その「何か」を認識できないような様子です。」
そこ、と、先程までうねうねとのたくっていた「縁」が見えた所を指差す。
最も、今は不視を見える状態を解いたので見えないのだが。
■神樹椎苗 >
「――ふむ?」
信頼する後輩の振るった剣を受けてしばし。
椎苗は腕を組んで首を傾げた。
「奇妙な感覚ですね。
なにか、しぃの中で決定的な何かが失われたような、そんな気がしますが」
後輩の意気込みや集中、そこに込められたまさに無窮の技までは感じ取れず、それを勿体ないとだけ感じる、そんな事を考える余裕があった。
試しに、草花を操ってみれば、それまでと変わらず、椎苗に従って花弁を揺らす。
ならばと黄金の神器を見てみるが、黄金の杖は建材だ。
「ふーむ――どうなんですか?
しぃに繋がってた、あのクソ樹木との『縁』は切れましたか?」
椎苗の見た目には何一つ変化こそないものの。
少女の視る『縁』の形からは、太く伸びた『縁』だけが途切れて彷徨っているのが視界に映ったかもしれない。
まるで、それまで繋がっていたはずの物を探すように、けれど、まるでソレを認識できないかのように、巨大なツタがうねるように彷徨っていた。
■緋月 >
先程放った、鋭い一太刀とはまるで異なる、穏やかな一太刀。
総ての激情を置き去りにしたかのような一刀が――花の少女を取り巻く幾多の「縁」をすり抜けて、
ただ、花の少女へと繋がる大きな縁のみに向かい、振り下ろされる。
流れという繋がりを、神の力を、何より見えぬモノを、悉く断ち割る一太刀が。
激しくもない、速くも思えない程の穏やかさで以て――その縁のみを狙い、閃く――。
■緋月 >
「――無論。」
半端はやるな、という声には、ごく短い了承の声。
同時に、その頭で如何なる斬撃を放つべきか。それを友人の力も借り、高速で弾き出し始める。
(「縁」…とはいえ、新しい「椎苗さん」を創る以上、何かがあれを「経路」に流れていると考えるのが自然。
となると、「流斬」…流れ断ちの一撃は必須。)
《仮にも「神」という樹の力だ、「神威」も必要ではないか?》
(確かに。当然、常では見えぬモノを斬る以上は…「不視斬り」もなくてはいけませんね。)
《それでいて、狙った「縁」だけを斬るか。……やはり無理難題では?》
(無理だと決めれば、その時点で可能性は途絶えます。出来る事全てを絞り切ってからでも、遅くはないでしょう。)
《――となると、だ。》
(ええ……「あの」斬月を使わざるを得ないでしょう。)
《………覚悟は出来たか、盟友よ。》
(今更でしょう。――始めますよ。)
それを火蓋代わりに、再び響く奇妙な呼吸音。
当然、その後に続くは――開花する光の蓮。
『蓮華座開花……第一、第二、第三、第四、第五、第六…第七、開放!』
「試し斬り」の際には開かなかった、最後の蓮華座。
七色の光の蓮が開き、全身に活力を回す。
これを開くという事は、出し惜しみなど到底出来ないという最後の決意。
『――流れを断ち、』
《――神を斬り、》
『――見えずを斬る。』
常では斬れぬを斬る魔剣術。
されど、その技を三つも同時に重ね、更に狙った一つのみを斬るなど狂気の沙汰。
――なれども、
(斬れぬものに向かって刃を振るうからこそ、不可能を可能とせんと愚直に刀を振るうからこそ――)
(――歓喜せずにはいられない。)
その歓喜さえも――七つの蓮華座を開いた事による極限の集中の中に、解けて消え去っていく。
邪念も、歓喜も、罪悪感も、意地も――全てを呑み込む、深い集中。
あるいは、それは一種の悟りにも近いものか。
やがて、周囲の景色までも消え去っていき…ただ、暗い空間に残るのは、微笑みながら己に向き合う少女のみ。
否、その少女から伸びる――長く、太い『縁』。
それこそが、真に向き合う相手。
ゆらり、と、まるでせせらぎ響かす清流の如き穏やかさで刀を振り上げ――――
『――――斬月・無窮。』
■神樹椎苗 >
「いい返事です。
いつでも構いませんよ」
笑いながら、くるり、と翻って、スカートを摘まんで一礼。
これから、『神樹椎苗の願い』を叶えてくれるかもしれない相手への、敬意の表現だった。
「お前こそ、半端に躊躇したりするんじゃねーですよ」
そう言って、見た目相応に無邪気な笑みを向けた。
■緋月 >
「――――それこそ、まさか。」
大きく息を吐き出す音と共に、とん、と手にした刀を肩に担ぐような形で動かす。
揶揄うように笑う花の少女に向くは――獣じみた、獰猛な笑顔。
「「斬ります」。
私が身体に叩き込まれた…そして、この島にやって来てから身に着けた、そのありったけを使って。
「斬って」みせます、とも。」
挑発には、不敵な返答を。
無論、ただのフカシではない。
(――これで、もう後戻りや言い訳は出来ない。やりますよ、私…それと、朔!)
《全く、自分を追い込んで限界を超えようとする癖は改めた方が良いぞ。》
(いいじゃないですか、この位ハッタリ効かせて、自分から逃げ道を塞ぐ方が。)
《――我は知らんぞ。まあ良い、負担の分散を行う位の思考補助はやってみせてやろう…!》
内なる友に声をかければ、もう後戻りの道はない――否、先に進むという意志がより固まるだけ。
「――次は、あの大きな「縁」だけを狙って、斬りに行きます。
斬れた時、どんな感覚が襲って来るか分からないので、心の準備はしておいて下さい。」
呼吸を整え直しつつ、再び着物の少女は刀を構え直す。
その右目が、青白い炎をちらつかせながら緑を帯びた青色へと在り方を変える――。