2024/06/05 のログ
ご案内:「青垣山」に風花 優希さんが現れました。
■風花 優希 >
ざくり、ざくり。山道を進む、何者かの土を踏みしめる足音。
仄暗い山の中に、軽装の男子制服を着た少年の姿が一つ。
山登りをするにはあまりにも軽装な、その年若い少年。
獣道を進む少年の手には、山登りには不要で在ろう、抱える程に大きな本が一冊。
「……ふぅ……流石にこの身体での山歩きは堪えるなぁ」
少年の姿は、そう呟きながらも着崩れ一つ起こさない。
一見すると小柄で細身なその容姿からは想像出来ない程に体力があるのか…
或いは、そも本質的には体力と言えるものへの概念がないのか。
どちらにせよ、彼は迷いなく獣道を進んでいく。
ざくざくと、土を踏み締めながら、ずんずんと奥へと。
明確な目的地がその先にあるかのように。
■風花 優希 >
「……あった、ここか」
少年が開けた場所まで辿り着くまでに、そう時間は掛からなかった。
周囲には相変わらず草木が生い茂っているが、その木々を切り開かれた小さな広場のような空間。
畳六畳程の広さの中心には、一つの実に古びた小さな祠が建っていた。
否、放置されていた…と言った方が正しいだろう。
祠は、その小扉や屋根が所々朽ちており、風雨に晒され続けた年月の長さを窺わせる。
少年はその祠の前まで歩み寄ると、手にしていた本を片手に持ちながら、その眼を細める。
「要は……幸いにも、まだ綻びてはいない、が……」
そうして祠をじっと見つめた後に呟けば、小さく少しだけ息を吐いて。
かつりかつりと、祠の周囲を二度、三度とゆっくりと歩く。
■風花 優希 >
やがて彼は立ち止まり、祠の裏にその手を伸ばし…薬指と中指を重ねて軽く触れる。
そっと…まるで、壊れ物でも触るかのように。
「……流石に年季が入ってるせいか、少し脆くなってるな。
念の為、重ね掛け…しておくかな。気休めだけど」
そう呟くと少年の指先に淡く青白い光が灯った。
その光は祠を包み込むように広がっていき……やがて、その光が消える。
少年はそれを確認すると小さく頷いて、本を片手に抱えたまま、また息を吐く。
その光景を、視るものが見ていればそれが何であるのかを理解しただろう。
封術に属するその”簡易的な魔術”で、彼は祠を…”何らか”を封じていた。
ご案内:「青垣山」にマトさんが現れました。
■マト >
"そこ"に向かおうと理由は恐らく大したものではないのだろう
転移荒野へと足を運ぶ最中に見かけた緑に生い茂る山々に気をひかれたか
或いはお弁当を貰う時に聞いた『山頂で食べるお弁当は美味しい』という話を思い出したか
「~~~ ♪」
ひょい、ひょいと木々の上をステップを踏むように跳んで移動していく
凸凹した道を歩くよりも、この方が効率的だと考えるのに時間はかからなかった
「山頂までは後どれ位……おや」
そのまま目指すかぎりに高い場所へと移動する途中に、ふと見かけたもの
開けた場所に佇む荒廃した小さな建物と、その前に佇む姿に興味が移るのは当然だったろうか
「こんにちは!」
先に進もうとしていた足を止めて建物と彼の前に降り立つと、屈託のない笑みを浮かべる
初対面の相手には挨拶をしよう、というくらいの常識は教わっていたらしい
■風花 優希 >
「……っ!? 誰だ…っ!」
掛けられた屈託のない底抜けな明るい声に咄嗟に振り向き、声を上げる。
視線の先、そこに居たのは己より半回りほど背の低い中性的な”誰か”の姿。
『人ではない』と、直感的に彼は感じた。
或いは仮にそうであっても、真っ当ではない存在だろうと、その表情を見て思う。
ざす…と、一歩、距離を取る足が土草を踏みしめる音。
向けるのは警戒の色…その笑みから真意を読み取れぬが故に、彼は”それ”を見定めるように目を細める。
或いはそれがただ何となく、この場に着た存在であったとしても…
彼がこの場に訪れて、たまたまこんな現場に居合わせるには、ここは人気がなさすぎる場所だった。
■マト >
意味も無く転移荒野に散歩に来て
何となくその途中で山の方に目が行き
偶々彼を見つけて興味を惹かれて近づいてくる
……本当に偶々な当たりある意味質が悪かった
「マトだよ?」
誰だ、というのをそのまま『名前を聞かれている』と判断したらしく名乗りを上げる
目の前の相手が明らかに警戒しているのを知ってか知らずか、そのまま一歩前に出つつ、横にある建物……祠に目を向けた
「それは何?もう使え無さそうに見えるけれど、直していたのかな」
「あぁ、僕にそう見えるだけで、君にとってはそうでない可能性もあるけれど」
其処まで言ってから、目の前の彼の警戒色に気づいたのか小首をかしげる
ほんの暫し、悩むように眉間にしわを寄せて見せると、周囲をきょろきょろと訝し気に見回した
「…… ねぇ、もしかして」
「今の"誰だ"というのは、僕に対して名を聞いたのではなく……」
「僕という存在そのものに対しての疑問から出た言葉なのかい?」
そして話題は一回転し、最初の発言の真意へと至ったのかそんな質問を投げ返してくるだろう
■風花 優希 >
さも当然のように、それは名前を名乗った。
祠に目を向け言葉を並べて、興味深げに此方を、辺りを見話していた。
……あまりにも無警戒だと、少年は思った。
「……マト……いや、そうではなくてだね……」
名前を聞こうとしたのではない。
そう返そうとした口は、続く言葉によって閉じられた。
ここに、明確な理由があって来たのではない…と、マトは口にした。
されどもどうにも、問いかけは信用しきるには怪しいモノ。
状況が状況故に、まだ、何とも言えぬ半々の判断をせざるを得なかった。
結局、「それは何?」という質問には答えずに、続く言葉に軽く眉を動かす。
今状況で、問うている事の本質は…確かにそれではあるだろうと。
「…………ああ、そうだね。
”こんな山奥でバッタリ人と会うなんて普通は無い”」
最も、彼が見極めようとしているのは…今目の前にいるマトが、害ある存在であるか否かであったが。
「だから、気になるのさ。
キミが何者で…何をしにここに来たのかがね」
密やかに”人かそれ以外かを区別する”簡易魔術を行使して、解析する。
微かな魔力波動をソナーのように周囲に伝播し、その反応を確かめる。
■マト >
「成程、僕に対する信用が足りないから君は名乗ってくれないんだね」
「そしてふむ、普通はそうなのか、なら次からは気を付けるようにするよ」
ひらひらとワンピースを軽く翻しながら目の前の彼の言葉を聞き、口元に指をあてる
そして、目の前の彼は自身を警戒している、という考えが確信に至ったのだろう
次からはもう少し警戒させないようになど考えているのだろうか、思案する様子を見せた
「でもどうしよう、ばったり人と会う、それこそ僕自身そうして見つけられたし、この場はそうして出来上がったというしかないんだけれど」
それは転移遺跡をさまよっていた所を保護された者としての視点かもしれない
「何者か、という問いには、正直余り満足に答えられそうにないんだ」
「生憎記憶が少なくてね、自分が人造生命体である事と、多少特殊な力があるくらいで……」
「此処に来た理由は簡単だよ、お弁当を食べる場所を探してたんだ」
そして彼の質問に答えながら魔術による解析を受け入れる
果たして、結果としては明らかに人間ではない、という事が分かるだろう
臓器は胃や心臓などの一部を除いてほぼ張りぼて、血管のようなものこそあれど、流れているのは恐らく血ではない
稼働している臓器も、人と同じ役割を果たしているのかは怪しいだろう
性別まで解析できるのならば、両性の特徴を持っている事も分かるだろうか
■風花 優希 >
マトの言葉を思考回路の…本の記憶頁に一時的なメモのように書き記す。
同時に簡易な探知魔術から、それが何者であるのかを識別する。
……その言葉と、解析結果を照らし合わせて矛盾はない。
殆ど張りぼてのようなその肉体に、人造生命体ゴーレムであるというその言葉。
確かにまず間違いなく人ではなく…そしてそれがゴーレムであるというのであれば納得のいく結果。
とはいえ、それで眼前に信用できるかと言えば、否ではある。
しかして、その節々から感じられる無垢さや無軽快さには、それで納得できるというのも、また事実。
故に、強硬手段は一旦取り下げ、対話を続ける。
「……偶然…ね、それにしてはあまりに、出来過ぎた偶然だけど……。
少なくともこんな薄暗い山の中は、食事をするのに向いた場所じゃあないけど…」
そして続く言葉に、また息を吐く。
ああなるほど、これは”本当”なのか或いは、あまりにお粗末な怪異の類のどちらかだと。
「まあ、それは一旦さておいて、だ…。
もしかしなくても、キミはアレかな? ”その姿になって日が浅い”だろう?」
■マト >
「元々はお隣の転移荒野の方で食べようと思ってたのさ」
「いい感じに突き出た柱があってね、その先で食べると風が気持ちよかったんだ」
「でも、山頂という所で食べるお弁当も美味しいらしい、だからこっちのほうに寄ってみたんだけど」
その途中で君を見つけた、と微笑みながらポシェットを軽く持ち上げる
其処から続く向いた場所ではない、という言葉には少し残念そうに唇を尖らせてみせて
「ええ、そうなんだ、それは残念だな……楽しみだったんだけれど」
「……この姿になって日が浅い、あー、んー」
言われて初めて少し唸りを上げるようにしてから、とんとん、と額を叩いている
どう答えるか迷っているようにも見えるだろうか
「多分?見つけられて、話をされて、テストをして、住む場所を貰って……」
「そう、今日で14日くらいだね、その前の姿は覚えてないけれど、僕が僕でなかった可能性は大いにある」
「出来れば返答は正確なものであるべきだと思うんだけれど、ごめんね」
それ以前の記憶はまともに持っていないから分からない、という事も素直に伝えるだろう
■風花 優希 >
マトの言葉に、呆れたような表情を彼は浮かべた。
ああ、これを素面で言ってるならよっぽどの天然か、単なる世間知らずのどちらかだ。
”敵意のある怪異の類”であるにしても、これでは逆に警戒される。
もう少し取り繕うのが普通だろうと、そう判断すれば僅かに警戒の色は引いて行く。
「登山のあとの山頂で食べるお弁当は、確かに美味だろうけどね…日頃からやるもんじゃないよ。
……少なくとも、こんな獣道を登って来るもんじゃないかな」
何となく、それが本当に本心から言っているのが理解できてきたのだ。
意思疎通が取れているあたり、知識はあるのだろうが…理解が及んでいないアンバランスさ。
それもまた、人為的に造られたゴーレムであるという言葉にも一致する。
造られた存在はその知識こそあれども、その意味合いを理解する経験が足りぬことが多いことを、少年は知っていた。
「……二週間か、その身体になってそういう感覚なら、たぶんそうなんだろうな。
分かった、ひとまずは信じよう……風花、風花 優希だ」
故に、警戒を完全に解きはしないが、向き直り少年は名前を名乗る。
■マト >
「確かに足元は悪かったね、途中から跳んでいなかったらサンダルがダメになってたかもしれない」
「日頃からやるものではない……それも参考にさせてもらうね」
彼の言葉に一々かみ砕いて飲みこむような反応を見せる
そういった動きも所謂『世間知らず』であることをうかがわせるかもしれない
「風花優希、よかった」
「警戒させてしまってごめん、信じてくれてうれしいよ」
自分が警戒された悲しさというよりも、警戒させてしまった申し訳なさを滲ませるような少しだけしょぼくれた顔をしてから
またにっこりと笑って、改めて向き直り
「それで―― もし警戒を解いてくれたのなら、僕も、風花優希に同じ質問をしてみてもいいかい?」
「此処で何をしていたんだろう、今の流れを考えるに、僕は何かの邪魔をしてしまったんだろうか」
もし離れたほうがいいなら直ぐにでも離れるけれど、と付け加えながら再度祠の方に目をやっている
■風花 優希 >
「……よりにもよってサンダルで来てたのかい?」
せめてスニーカーであって欲しかったと、思わずツッコミを入れそうになる。
いや、スニーカーであってもだいぶ山を舐めてはいるが…
よくよく考えれば、少年の軽装っぷりも相手のことを言えない故に、そこで言葉を止めた。
「あまりにもタイミングが良すぎたからね…こちらこそ、急に警戒して悪かった」
ともあれ、無用な警戒をした事には謝罪を返す。
相手からすれば少年のそれは、逆に困ったことではあっただろうから。
「……優希でいいよ。フルネームでずっと呼ばれるのはちとアレだし。
まあ、隠し立てすることでもないし、邪魔をされたわけでもない…もう殆どボクの用事はおわってたからね」
そして、マトの質問には言葉を誤魔化すようなこともなく、そのままに事実を返す。
ただし、明確に何をしていたかについては、まだ口を閉ざしたまま。
「質問を返すことになるけれど…まず…キミ、ここが何だかわかるかい?」
■マト >
「歩きやすいからね、だけどこういった場所だと逆効果だから、他の靴も今度手に入れないと」
素足にサンダルという恰好は確かに山を舐めている事この上ない
実際は途中から木々の上を飛び移ってきたため地面を踏む事自体そんなになかったりしたのだが
「いや、僕の方こそ……役に立つどころか邪魔をしたんじゃ、申し訳無いにも程がある」
「分かった、優希だね、それでこの場所か、山だね」
「それで、そっちが廃屋……」
其処まで言って一度言葉を止めて考え込み
そのまま少し祠の方に近づいて朽ちたその姿に少しだけ悲しそうな顔をのぞかせる
「改めてみると大分ぼろぼろだね……でも、之ならまだ直せそうだけれど」
「それに何だろう、転移荒野のほとんどの廃墟とは違うものを感じる気がする」
「うまく説明できないけれど……生きているって感じだ」
でもこんな状態で生きているのは、少し辛そうだね、と続けつつ
自分の感じた限りの認識を優希に伝えている
■風花 優希 >
「……運動靴を買うといい、いろんな場所を歩くならね」
サンダルを歩きやすい、というのもまた独特だなと密かに思う。
普通は足が痛むだろうにと考えて、マトが人ではないことを思い返して思考を伏せる。
とはいえ、形だけでも人ならば負担がかからぬ方がいい。
故に”人のフリをしている同類”として、そうとだけ言葉を送り、本題へと。
「うーん、60点…ってとこかな。
…ここは祠だよ、それこそ大昔の…もう管理してる人もいないような遺棄されたね」
言葉を紡ぎつつ、マトの言葉に目を細める。
なるほど、知りはしないが感覚機能は優れているらしい、と。
「神様を祀る建物なんだけど…その中でもここは荒魂…
つまりは人に害を及ぼす神様…や、そのように思われていたモノを奉り、封じていた社なんだよ。
キミが生きている…と、感じたのなら、たぶんそれだ」
少年は、ここが如何なる場所であるのかを、そう可能な限り端的にマトへと答えた。
■マト >
「運動靴だね、わかった、次はそれを買う事にするよ」
優希の提案に素直に頷いてポシェットからメモを取り出して走り書きをする
サンダルが歩きやすい理由の多くはマトの異様な体重の軽さから来ていたりする当たり、独特な事は確かだ
「……」
優希が全てを話しきるまで静かに話を聞きながら祠を眺めている
「つまり、今は見えないけれど此処には荒魂という人が住んでいるという事だね」
「それならなおさら、家がボロボロなのは少し可哀そうだな」
「人に害をなすのは止めてほしいけれど、之じゃあ僕より飛ばされやすそうだ」
自分の感じた感覚と説明をつなぎ合わせ、それなりの納得を得たのか大きく頷く
そしてそのまま、少し真剣な顔で優希へと目を向けて
「ねえ優希、君は多分この荒魂というものに対して用事があってきたのだと思うけれど……」
「この祠、直してもいいかい?まぁ応急処置みたいなものだけど」
「僕は荒魂というものに対して何も知らないから、君の許可を得たほうがいいと思ってね」
マトはまるで本当にそこに荒魂が住んでいると思っているかのように振舞いながら問いかける
■風花 優希 >
「……人じゃない、人智の及ばぬ超常の存在だよ。
こういう場所はね、下手に触れても対処に困るんだ、少し壊れるだけで祟られたりしてね」
今は、触れる程度ではそんなことは起こらない。
そうならないように、ここに荒魂は封じられているから。
だが…物理的に祠が壊されればまた別だ。
無理に建て替えようとしたり、直そうとするのも逆効果なのだと彼は語る。
「だから、魔術的に…あるいは呪術的に、法則や結界…信仰を用いて封じてるわけなんだけど…。
応急処置って、なにをするんだい?」
だが、あたかも直すことが出来るというその言葉に、先ずは問いを投げかける。
確かに今にも台風など来れば壊れて砕けそうな祠だ。
魔術的な守りはあれど、物理的にも損なわれないならそれが最上ではある。
その上で、その処置が荒魂を怒らせるものでなければよいのであるが…、確認は必要だと。
■マト >
「人智の及ばぬ存在?」
「不思議だね、及ばないけど封じる事は出来るんだ」
「あぁでも、触れるためには形がいるからね、人に害を成せるなら……」
害される事も出来るし、こうして封じられる事もできるのか、と頷いて
「僕はその魔術や呪術に対する記憶は無いけれど……」
「この祠は見た所木材や金属で出来ているんだろう?それなら其処は直せるかなって」
そういってポシェットからどろりとした液体が入ったペットボトルを取り出す
中に入っているのは泥、そう、ただの泥だ
「うん、大したことはできないけれど、少しだけ得意な事があってね」
マトがその泥の一部を手のひらに落すとそれはぱきぱきと乾いた音を立てて姿を固形へと変えていく
やがてそれは目の前の祠を構成しているものと同じ木材へと姿を変えるだろう
「こんな感じに液体を固体に変えられるんだ、だから祠の脆い所を濡らさせてもらえるなら、そのまま補修できると思う」
どうだろう?と優希に対して提案する、調べるのなら、変化した先の木材が特段変哲の無い木材であり
加えて言うなら変化前の泥も本当にただの泥であることが分かるだろう
■風花 優希 >
「形はあるとは限らないよ、特にこうして祀られている存在は…”ない”。
想念だけ、思念だけ、現象という形而上の存在であることもある」
首を振り、訂正する。
そうした存在であるからこそ、”こうして”封じられていると。
「祠っていうのはね、そういう存在を”祀る”ことで居場所を与え、形而下に置く。
人の及ぶ範囲に留まらせて、封じ込めるのさ」
そう返しつつ、マトの行う動作に視線を向ける。
真っすぐに、それが如何なるものかを見極めるように。
「……そういうわけだから、直せるものなら直した方がいいのはその通りなんだが…。
なるほどな、泥を操る……なるほど、ゴーレムだものな、不思議ではない、か」
そして、それを見た上で思案する。
如何なる原理でそれを成しているのかは、何となしに推理できる。
マトの語る言葉が真実であるという前提の上ではあるが…
神話でも散見される”泥から形作られる人型”のような存在であると仮定すれば、出来て当然の行いである筈だ。
「そうだね、キミが直に中に入ったりしないのなら…
外から埋めるだけならば、問題はない…かな」
■マト >
「形のないものを定義して、自分たちの手の届く形へと堕とす……か」
「うーん、少し難しいね、理解はできると思うけれど」
「僕が確かに、見えないのに此処に生と言えるものを感じているのは間違いない」
「そして之が人の努力の結晶の一つであることは十分よく分かるよ」
優希の説明を神妙な顔で聞きながら反芻するようにつぶやいて
「うん、実の所泥に限った訳じゃないけれど、之が一番手ごろにいろんなものに出来る液体かな」
「いいのかい?それじゃあ、遠慮なく」
優希の許可を得たマトは祠の外壁や扉の破損が激しい場所に泥をかけて手のひらで触れ始める
変化した泥と元の祠の構成物質が結合していき、新品のように変わっていくだろうか
新品同然なので破損や老朽化が少ない部分との色合いの差がきになるが、そればかりは仕方ないかもしれない
■風花 優希 >
「”捉えられない存在が最も恐ろしい”、対処のしようがないからね。
でも、それが形を成しているってことは、対処のしようがある…実際に可能かどうかはさておいてね」
それが人に可能かどうかはさておいて、干渉できる存在であればどうとでもなるのだと、そう語り。
「……祠を壊さない様にだけね?」
最後に念の為にそう釘を刺してから、許可を出す。
それはある意味で試す為に。
本当に何事もなくこれを修繕するのならば、信用にはおける存在と言えるだろうと。