2024/10/16 のログ
ご案内:「列車内」に雨宮 雫さんが現れました。
雨宮 雫 > ガタンガタン、ガタンガタン。
規則正しい音と揺れ。

いつでも正確に運行される電車の音は乗客を安心させる。
島をぐるりと囲む環状線は特に、この時間でも動いてるのがありがたい。

こうして1人、いや、離れた場所にもう1人乗ってる生徒がいるが……
学生居住区を抜け異邦人街、歓楽区方面に乗ってるあたり、きっと遊び目的なんだろう。

こっちの少年なんかは、スマホを両手で持って、忙しなく指を動かしては何かを動かしてるし。

「反応ぉっそぉ……買い替えよーかな、やっぱり」

雨宮 雫 > 区画から区画への移動はなんだかんだで、結構、長い。

途中の駅に全部止まる路線なら尚更だ。
だからこーしてスマホに熱中しているようでも、目的地を通過しちゃうなんてのは中々起こらない……し、あんまりね。

遅い時間のせいか停車駅で誰も乗ってこない、どっちも下りないのが続く車両は異邦人街の真ん中を抜けて、歓楽街の方へ近づいていく。

そこでスマホでやってたゲームの区切りがついたのか、画面から顔を上げた少年がふと周りを見回して……

もう1人の乗客を見た。

雨宮 雫 >
「…………んー?」

もう1人の乗客は座席の端っこに座って、手すりというか支えに身を凭れさせていて。

顔は足元を見るように俯いていて。

とても、今夜は歓楽街に遊びにいくぜーって雰囲気ではない。
明るいテンションとは逆ベクトルの、暗い暗い空気を纏っている。
 
 
 

雨宮 雫 >  
少し、もう1人の乗客の女生徒を見ていたがわけだが。

そういえばきっちり着た制服も余り、深夜の歓楽街向けとは言い難い。
見方を変えれば、ぐったりしているようにも見えるし。

少年がスマホをポケットに突っ込むと、ぐるりと回りを見る。
自分と、もう1人以外は誰も居ない。

うん、誰も居ない。


するりと立ち上がって、女生徒の方へスタスタと近づいていく。

近づいて行っても、ほぼ目の前まで行っても、何の反応も見せない女生徒を少し眺めて。

「もしもーし……?」

 

雨宮 雫 >
声には反応するのか、ゆっくりと顔を上げた女生徒に、にこやかな表情を浮かべて更に話しかける。

「いきなりごめんねえ。
なんか、元気無さそうに見えたからぁ……

ぁ、ボクは生活委員会のねぇ、保健課だから。
具合悪いのかなーって声掛けたの。」

ほらって言いながら、生徒手帳の携帯端末を出し、画面を見せる。
確かに、所属に 生活委員会 保健課 と書いてある。
 
「だからぁ、具合悪いのなら次の駅で下りて休めるように駅員さんに相談するけどー……?」
 
 

雨宮 雫 >
携帯端末を見た女子生徒は、少しして少年の方に視線を戻して……首を横に振った。

そうではない、そうではない、と。

「そう?

何かそれにしては、雰囲気が外の景色より真っ暗だよ。
どこが目当ての駅か知らないけど、電車下りてちょっと歩いたらぶっ倒れちゃいそうな空気してるし……

ほんと、だいじょーぶ?」

女生徒は頷く……ではなく、俯いた。
 
 

雨宮 雫 > 「―――」
「―――――」

少年が更に気遣うような言葉を投げる。
女生徒は俯いたまま、首を横に、横に動かす。

俯いたままの女生徒は、顔を上げなかったから。
優しい声を投げかける少年の表情を見ることはなかったようだ。

段々と投げかけられる言葉は、体調を気遣うものから、何処まで行くのかとか、そういう話になっていったが……

話してる間にも電車は進み。
何個か駅を通過して、気づけば歓楽区へと入っていた。

2つ目の駅がもうすぐだとアナウンスが流れ―――
 

雨宮 雫 >
「そっか、じゃあ一緒の駅だねー。

……何かの縁だし?そのまま駅出てホントにぶっ倒れられても困っちゃうというか……」

のろのろと立ち上がった女生徒を気遣いながら、ドアまで一緒に。

ホームに入った電車がプシューと音を立てて止まり、開いたドアから一緒に降りる。

「    まぁ、途中まで一緒にいこーよ。
大丈夫だよ、ボクはこの辺にも詳しいんだー……歓楽区はほら、怪我人も出るから、ね。」

ゆっくりと足を動かす女生徒の横を歩き。


2人は改札を出て、駅を出ていく。
歓楽区はこの時間でも、この時間だからこそ、人も多く灯りも多い。

すぐに紛れて分からなくなることだろう。
 
 

ご案内:「列車内」から雨宮 雫さんが去りました。