設定自由部屋です。常世島内であるならご自由に設定を考えてロールして戴いてかまいません。
また、ここでは回想的なロールも可能です。ですので常世島の外でも構いません。しかし、あくまでメインは常世島の内部でお願いできればと思います。
その他常世島内の特殊な場所や、シチュエーションなどにご利用ください。
参加者(0):ROM(1)
Time:08:05:42 更新
ご案内:「伊都波家・道場前」から麝香 廬山さんが去りました。
ご案内:「伊都波家・道場前」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■伊都波 凛霞 >
「───」
咄嗟に手が出たのは、危機意識から。
だと言うのに……繰り出されたのは平手打ちのみ。
眼の前の監視対象が嘯く。
監視役を務める風紀委員として、生命の無事と厭わず無力化することが、必須とも言える状況で。
──違う。
彼は、この男は、自分を試したに過ぎない。
本当にやる気なんてなかったのだと。
……自分に言い聞かせることしか出来なかった。
「私、は……」
止める手段を持ちつつも、それを止められる行為を選択できなかった。
彼の命を奪ってまで止める選択肢なんて最初からなかったからだ。
半端者。
冷笑と共に言葉が降る。
悠薇が死ぬ。自分の判断ミスで。
それは…夏にもあったこと。
機界魔人を追い詰めながら、始末するでなく捕らえようとしたことで逃げしてしまい、
結果として、妹が危険な目にあった。
「──………」
その場に座り込む。
ぺたりと、地面の冷たさを感じながら。
愉しげに揶揄った名を告げられながら彼が去るのを、俯くままに聞くしか出来なかった。
───何も知らぬ子犬が寄り添う寒空の下、少女の胸中の迷いはより深く複雑なものとなってゆく───
■麝香 廬山 >
ぱぁん。乾いた音が、鳴り響いた。
確実に廬山の頬を引っ叩き、その首が僅かに曲がる。
叩かれた頬に右手を添えて、凛霞を見るのは……。
"失笑"。
「……殺しにいかないんだね。
凛霞ちゃん、キミは本当に優しいんだな。けど、"中途半端"だ。
……ビンタ程度で止まると本気で思ってるのかい?第一級監視対象【無間山脈】を?」
能力だけなら、それこそ此の島には危険視すべき人物は幾らでもいる。
その中で尚も監視が必要と判断され、その中での一級と来たら厳格な対処をすべきであった。
きっとその優しさが彼女の何よりの魅力なんだろう。同時に、
「───────"やっぱりキミは、向いてないよ"。半端者」
道具を扱うのは不得手であるという現実をありありと証明してみせた。
悪意の囁きが凛霞の耳元で木霊し、手に残った"暴力"の感触だけが温かい。
そんな彼女の肩に手をおいたのは、決して慰めなんかじゃない。
「今、伊都波 凛霞の"判断ミス"で伊都波 悠薇は死んだ。
それだけじゃない。きっと、道場内は皆、丸ごと死んだかもね?」
事実として、廬山は何もしなかった。
だが、もし行われていたとしたら……それは、何よりも彼女が知っているはずだ。
絶やされること無い冷笑のまま離れようとした時、バチィ!と制御装置から電流が走る。
「いったっ……!?まったく、どっちも行動が遅いな……。
ボクが教官だったら説教なんかじゃすまないな、コレは……」
痛みに顔を歪めるのも、つかの間。
すぐに笑みへと切り替わればゆっくりと踵を返す。
「さて、じゃあボクは御暇しようかな。
多分、帰ったら皆のお説教と折檻が待ってるだろうからね。
"またね"、妹殺しの灰被り姫♪ キミの成長を期待してるよ」
ゆるりと手を振り、去っていく。
その耳元にこびりついた悪意と、手に残った感触だけがずぅっと木霊し続けている。
胸中に渦巻く迷いこそ、まるで無限に続く山脈に迷い込んだ錯覚さえ感じさせるやもしれない。
残された"モップ"だけが、か細く鳴いて、凛霞を心配しているのだった。
■伊都波 凛霞 >
──彼の監視役が長く続かないのは事実として聞いている。
故に複数人で監視すべき…第一級の監視対象の中でも危険な存在として、凛霞は認知していた。
『更生』を謳う"監視対象"──けれど、更生できない…更生する気のない人間だっているだろう。
強力な異能を持ち、手駒として、戦力としての価値があるからという理由だけで、監視対象のままにしていて良いわけがない。
眼の前の人物…麝香廬山はそんな人物である可能性が高いと凛霞は思っていた。
信用が置けず、信頼に足りず───少女が最も嫌悪する"悪意"をチラつかせる男。
だから──そんな人間の口から最も大事な人の名前が出る…それだけで。
「っ…!!!」
悠薇ちゃんが死んだら─
その言葉を言い終わるよりも疾く、鋭い張り手が、廬山の頬を痛烈に引っ叩く。
ぱぁん。という乾いた大きな音が、早朝の空間へと響き渡っていた。
■麝香 廬山 >
一見すると青年の素顔は爽やかなものだった。
そこに邪悪さは一欠片もない。真っ直ぐと道場を見据える、強い光。
「……所で、ボクの監視役を増やすように申請するんだっけ?
いいけど、どうかなぁ。気づいたら辞めちゃう人も多いんだよね」
何故やめたのか、その詳細は敢えて語るまい。
但し、決して監視役が付いていないことはないだろう。
此の邪智奔放な男が野放しになっていないのは、
一応の監視体制がしっかりと生きていることの証でもあった。
視線を凛霞へと戻せば、クスリと笑みを浮かべた。
「風紀委員ってのは、基本的に手遅れから始まる。
事前予防も出来るけど、基本は起きた事件の原因を解決するのがお仕事だ」
「まぁ、"優秀"なキミに語るまでも無い事だね。所で凛霞ちゃん」
おどけたように、小首を傾げる。
首元に付いた制御装置を撫で、屈託のない笑顔。
「妹ちゃんはお家にいるんだね、その反応だと。
……あの辺かな?それともあっちかな?まぁ……どっちにしても……」
「射程圏内だ。監視役が動くよりも、ボクの異能のが"速い"」
確かに廬山の言葉は軽く、嘘も吐く。だが、決してハッタリは言わない。
"モップ"が怯えるように足元から離れる剣呑な空気の中、
でろりとした重苦しい空気が、その敵意を包みこんだ。
「ちょっと見てみたいな。
悠薇ちゃんが死んだら、どんな顔をするのか」
やるやらないかはさておき、事実廬山は出来てしまう。
その後のことなんか一切考えていない表情だ。
優秀な風紀委員ならわかるはずだ。今の犯罪者は、"やる"表情をしている。
究極の"たられば"。監視役としても、一人の風紀委員としても、試されている。
今此の場で、"どんな対処"が正解なのか、を。
まるでカウントダウンのように、ゆっくり、ゆっくりと右手が道場に向けられ─────。
■伊都波 凛霞 >
「……………」
態度を崩さないよう、懸命に。
あくまでも凛然と、直接の担当でなくとも、監視役と監視対象である。
揺らがず、揺るがず、毅然として接するべき──。
「…特別な事情もあるかもしれないですから。
ただの性善説で済むことのほうが、少ないことも知ってる。
──追影くんから話される…と思っているなら、貴方から聞く必要もなかった」
き、と見上げる。強い視線。
多少揺らいでもすぐに持ち直す。己の中の揺らぎを律する、強い心の持ち主だ。
その精神性は表情にも、佇まいにも現れる───強く、堅い人間の様。
──しかし堅い木ほど折れやすい。
眼の前の人物は、そんな人物がどうすれば崩れるのか──熟知していたに違いない。
「───!」
途端に少女の顔色が変わる。
信用していない人物の口からその名前が出る…その意味。
「……私の妹に手を出したら、許さないから」
発露されるのは、明確な敵意。
それは足元にじゃれついていた犬すらも、思わず離れてしまうくらいに露骨な──。
■麝香 廬山 >
事実廬山は、その環状を否定はしない。
伊都波凛霞を好ましいと思ったのも、嘘ではない。
悪性に位置する男では在るが、道理は心得ている。
「……真琴ちゃんはほぼ例外かな?
所で、ボク等の前任者がどうなったか、知ってる?
──────"処分"したのさ。現一級がね」
だからこそ、良き隣人の揺さぶり方も知っている。
信頼たり得ない言動だとしても、何一つ嘘はいっていないのだから。
事実これもまた、更生という名目から外れた"間引き"だった。
見上げる凛霞の不安げな表情を見て、柔く微笑んだ。
「ボクがわざわざバレる嘘を吐くと思うかい?
じゃあ、"本人"に聞いてみたら?多分、そのうち切ちゃんから打ち明けるんじゃない?」
「今の彼なら、ね……」
一抹の希望さえ許すはずもない。
他人が何れ語る真実だと言うことが、何よりの嘘では無いという証明。
胸中に凶兆が渦巻いているのは、目に見えて明らかだった。
自らの"監視役"を自問自答するなら、試してやろう。
「──────どう、悠薇ちゃんは今元気にしてる?」
大切な人の名を口にした。
その視線の先は、道場に向けられている。
■伊都波 凛霞 >
題目は、それに向かって進むべきもの。指針。
監視役として、それを支える立場である以上は整然とそれに習うのが正当だ。
色々な思惑がそこには介在すれど──。
「…現実に更生の道を進んでいる人もいる。
綺麗事でも、そういう結果にちゃんと繋がるならいいじゃないですか」
距離を詰められれば…少し、見上げる形になる。
動じる様子は見せずとも、ほんの少しだけ凛霞の表情は険しさを増すだろう。
「…貴方の監視役には以前も貴方のことを報告はしているけど、
貴方の監視がままならないのなら、監視役を増やすように申請しなきゃいけないですね」
足元にじゃれる子犬。
少しだけ、気にしつつも凛然とした態度で言葉を交わしていた───けれど。
「え…?」
その表情は、その一言で崩れた。
…その言葉が本当なら、また、自分を通さずに指令が下ったということ。
"監視役として不足している"と、自分が判断されているのではないか。
そう、胸中に渦巻いていた不安に、触れられる──。
「………貴方の言葉は、信用できないです」
そう、返答するのがやっとだ。
■麝香 廬山 >
寒風に揺れる一枚の紙切れ。
そのカサカサと揺れる虚しさたるや、
それは少女の、凛霞の抗議の虚しさを示すようだった。
「綺麗事でしょ?
それが自然じゃないことくらい、
キミだってわかってるはずじゃないか」
正しく理想と現実の乖離が起きている。
そして、それは現在進行系でもある。
クシャッ、その声の行き先を暗示するかのように握りつぶされる書類。
「"ちょっと拝借した"。
今頃監督不行き届きで、ボクの監視役は怒られてるんじゃないかな?」
カワイソー、と言う廬山の姿は完全に他人事だった。
尚もむせそうなほどの綺麗事。耳が詰まりそうだ。
「まぁでも、僕はキミのそういう所は嫌いじゃない。
好ましいとも言えるかな?うん、だってほらさ。
ボクの監視役は仕事はするけど、"接触"はしてこない」
「危険物だからね。
好き好んで爆薬に触ろうって人はいないさ。
だから、そんなキミに教えてあげようかな」
かつ、かつ、更に距離を詰めた。
"モップ"は凛霞のことを心配しているのか、足元にすり寄ってくる。
見た目通りの、モッフリ感。
「切ちゃんが、たった一人で大仕事を命じれられたことは知ってるかな?」
■伊都波 凛霞 >
『監視役に向いていない』
それは夏の終わりの出来事からずっと、少女が内に抱えていることの一つ。
監視役である自分を通さずに、監視対象である追影切人へと直接指令が下された。
それじゃ、監視役の意味がない。…少女にしては珍しく、抗議をさせてもらったくらいには怒っていた。
「建前じゃなくて理想です。
掲げたならそれに向けて歩むのが自然じゃないですか───」
そこまで言葉を続けて、彼の取り出した書類に、その大きい眼を丸くする。
「…なんでそれをキミが?
彼はもう"凶刃"じゃない。ちゃんと人間として扱われるべきなんだから。
………思っていようと思ってなかろうと、私は筋を通すだけです」
生活委員に連絡済み、だとわかればそれ以上を口にすることはない。
…動物に罪はない、といえども、このひとから目を離して子犬と戯れられるような精神性はさすがにしていなかった。
■麝香 廬山 >
「キミは相変わらず優しいね、
道具の監視役に向いてない位に」
僅かに赤みがかった両目を細めて、じ、と見やる。
「建前上はそうだね。別に形骸化した概念……とも、言わないよ。
どういうワケは、"あの一級"から教師に転向した前例もあるしね。
……ただ、キミだってわかってるんじゃない?"こんなもの"送る位なんだからね」
パチン、とわざとらしく指を鳴らす。
乾いた空気が弾けると、宛らマジックのようにの手に現れる書類。
見覚えがあるはず。いや、無いとは言わせない。
何故ならその見てくれは、凛霞自身が書いた嘆願書そのものなのだから。
「"凶刃"……いや、道具の扱いはイマイチみたいだね。
こんな紙キレ一枚でどうにか出来ると本気で思っているのかな?」
笑顔を絶やすこと無く、問い詰める。
原本ではない、コピーではあるが、
敢えてしわくちゃにすることにより、
どんな扱いを受けているかを錯覚させる目的がある。
そう、廬山の意地の悪さだ。
「……既に連絡はしたよ。僕も仕事"は"するからね?
多分ほどなくしたらくるんじゃない?生活委員会の人が」
"モップ"はばたばたと落ち葉と戯れている。
毛むくじゃらに落ち葉が付いて大変だ。
毛の隙間から覗くつぶらな瞳が、凛霞を見上げている。
「……構ってほしいってさ?」
動物の機敏がわかるらしい。
■伊都波 凛霞 >
「別に苦手なヒトだからって死んで欲しいとまでは思いませんけど」
残念、の内約を聞けば小さな溜息と共に眉根を顰める。
「…監視対象は更生を目的としたものなんだから。
本来欠けるようなことになることがおかしいんですけど」
戦力としての側面を見れば、危険な任務を強制されることこそあれど…。
当然監視役としてついている…凛霞のような立場の風紀委員とのやり取りもあって然りだ。
それも上役次第、という事案があったばかりでは、あったけれど。
「見えないですね。
だったら然るべき委員に連絡をするとかしないと…」
折角集めた落ち葉を散らかされても、それほどやな顔はしない。
動物のすることなら、仕方ないよね。
■麝香 廬山 >
相変わらずの塩対応。
それでも笑顔を絶やさことはなかった。
「そりゃ、苦手な人間が死んでなくて残念だったね?ってね
残念ながら、"今回は"監視対象欠ける事もなかったねぇ」
監視対象という名目上、構成を謳う反面使い潰される事も不思議ではない。
特に第一級、その中でも特に危険分子ともなれば、しょうがない。
後任がいるかは不明だが、今回は誰も、前任者のようにはならなかった。
「残念だけど、捨て犬だよ。
ペット用の配合種なんだけど、あっちの道路でついてきちゃった。
まさか、キミはボクが動物を飼うような優しい人間に見えるのかい?」
まさか、と肩を竦めた。
一方犬はそんな剣呑な空気をつゆ知らず、
相当わんぱくらしい。ばふーん!!と落ち葉へと突っ込んだ。なんてこった。
■伊都波 凛霞 >
背後から声がかかる。
聞き覚えのある声。
伊都波家は学生通りの一部に面しているため、そこで出会うのは別に不思議でも、何でもない。
ただその声の持ち主は、少女が苦手意識を持っている数少ない生徒の一人だった。
「…おはよう。あけましておめでとうございます。何が残念なのかは、わかんないですけど」
振り返り、ぺこりと小さく会釈を返すもそれはどことなくぎこちない。
「…わんちゃんの散歩なら、ちゃんと首輪とリードはつけたほうがいいですよ」
手は、竹箒につがえたまま。伏し目がちに黒い犬を見て…。