2024/06/23 のログ
■緋月 > 《■■よ、何故この業が禁じ手か、分かるか。》
宗主様の声が、脳裏に響く。
とおい時間に、聞いた言葉。
《思い描けぬ者には、使いこなせぬからだ。
明確に思い描けねば、今の己を強める事しか出来ぬ。
しかも、消耗が激しい。使い続ければ、死が近づく。》
《だが、もしも明確に「かくありたい」と願う己の姿を思い描けたならば。
「宿命」は、その高みへと、うぬを誘うだろう。忘れるな。》
今ならば、その言葉の意味が分かる。
これは言うなれば、「修練の末の可能性の先取り」。
――少し狡いが、これ位の命は賭けなくては、目の前の男に向き合うには割りが合わない。
《■■よ、太刀筋とは、即ち流れだ。
斬ろうとする、命を断とうとする、刃の流れ。
それを理解すれば、斬る事は決して難しくはない。》
別のときに聞いた声。
今なら理解できる。迫り来る4本の炎の剣は、己を屠らんとする、炎の「流れ」だ。
「――――流レヲ、断ツ。」
ほぼ同時に放たれたとしか思えぬ、4つの剣閃。
命を奪わんと振るわれる、炎の剣の「流れ」を断つ刃。
奇しくも、それは機界魔人を名乗る男が放つ四連撃に似る技。
気の柱が、ゆっくりと収束する。
その後に佇むのは、長く伸びたライトグレーのポニーテールが特徴的な、外套に書生服姿の人影。
背が伸び、齢を重ね、少女と呼ぶには成長した、一人の娘の姿。
■テンタクロウ(藤井輝) >
炎の刃が斬られた。
あり得ないことだ。
いや、あり得ないことなんてことはない。
あの少女……いや、今となってはあの女か!!
あの女ならやりかねないことだ!!
「ぐっ!!」
それだけでない、あの距離で振った剣が体の節々を斬っている。
痛み。血。ダスク、スレイ。
恐怖の記憶を振り切る。
いつまでも僕は逃げてはいないぞ。
そうだろう、光。
「ならば斬ってみろ!!」
改めて漆黒の触腕を生み出し、束ねて炎を噴出させる。
炎の柱が生み出される。
「ハァァ……斬れるものならなぁぁぁ!!」
主力戦車の均質圧延鋼装甲すら溶断するだけの熱量!!
上方から、振り下ろす!!
月を蹴散らすかのような、焔の光が夜を裂いた。
■緋月 > 「――――――。」
コォォォ、と、呼吸音が響く。
ゆらりと、手にした刀が持ち上がる。
取る構えは最も馴染んだ、八相の構え。
斬ってみろ、という叫びに、無言で答えるかのように。
ゆらり、とその刀身から光が立ち上る。
同時に、女の身体からも、湯気のように光が立ち上る。
光の正体は、剣気だ。
まるで、娘そのものが一振りの刃になったかと思わせるような、剣気。
「――――、」
何事かを、口にする。
同時に、手にした刀が放つ剣気が更に強まる。
まるで、光の刃のように。
上空から振り下ろされる炎の刃。直撃すれば、炭化は免れない、恐るべき熱量。
それに対し、構える娘は――
奇妙な、踏み込み。
穏やかな清流のようでありながら、暴風のそれよりも速い一歩。
その一歩で炎の刃を振り下ろす男に迫り、その正中線を真っ直ぐに捉える斬り上げを放つ。
炎の刃ごと、男を断つ――――否。
刃が通る感触はあっても、斬られ、傷を負う感触はないだろう。
《――藤井、殿。
これが、私があなたに「差し出す」、思い描く限りの、理想の刃――。》
それは、誰かを知る為に誰かを斬らずにはいられなかった娘が、それでも命を奪う事を良しとしなかった、
己の我儘を通す為の刃。
害ある物のみを断ち、命ある者には傷すら残さぬ――正真正銘の、今は名も無き、「魔剣」。
――もう、自分を赦しても良いでしょう。
憎悪と怨嗟は、己すら傷つける。今の貴殿の姿、そのままに。
貴殿は、もう充分苦しんだ。他者も己も傷つけるのは、もう、よいでしょう――
その一太刀は、ただ、手を差し伸べるが如くに。
■テンタクロウ(藤井輝) >
断ッ!!
炎の柱と、装備が斬れる。
これで最期か。
しかし痛みはなく。
僕はリフターを失って真っ逆さまに落ちていった。
地面に墜落し、呻いた。
「ふ、ふふ……僕を殺したか…」
誰も喋らない。
周りで見ていた風紀委員すらも。
静寂が訪れる。
「凶悪犯だ、後ろ手に手錠をかけるんだ」
そう周りに声をかけた。
その時、近づいてきた一人の風紀委員が。
寺崎弓人委員が僕に注射をした。
「何を……」
視野が蕩ける。加速が解除された……?
「脳神経加速剤の中和剤……か」
こんなもの、用意に一週間はかかるはず。
彼らは僕と戦い、僕と逮捕することの次に。
僕を救うことを考えていたらしい。
僕の正体を知るずっとずっと前から。
「完敗だよ、風紀委員。そして」
「緋月」
■緋月 > 「………悪因には、悪果在るべし。
私には、貴殿の憎悪と怨嗟を赦す事は出来ても、犯した罪までをなかった事にはできない。」
刀を下ろし、息を吐きながら、絞り出すようにそう声をかける。
これだけは、どうしようもない。
如何な理由があれ、犯した罪は償わなければならないのだ。
それは己の手の届く範囲を大きく超えている。
「月並みな言葉にしか、なりませんが。
世界はもう少し、優しい物だと信じてはいただけませんか。
何かを理解せずにはいられない、狂人であっても、
理解しようとしてくれた方が、おりましたから。」
懇願するように、男にそう声を掛ける。
静寂する風紀委員に目を向けると、深々と礼。
「――突然の闖入と、此処までの身勝手、申し訳ございませぬ。
風紀委員の皆様の面子を潰す形になる事は重々承知。
ですが、これは私の勝手で行った事です。
風紀委員会に所属し、私の身柄を預かる桜緋彩様は、一切関りの無き事。
処分がありましたら、この身一つで――。」
■テンタクロウ(藤井輝) >
「僕は君を殺そうとした」
「君は僕を許そうとした」
「既に勝負は決まっているんだよ……」
涙は流れなかった。
光を殺した時にもう全ての涙を流していたのかも知れない。
でも。
「すまなかった……」
その言葉を投げ渡すように口にした。
■寺崎 弓人 >
敬礼をして微笑んだ。
「犯人逮捕へのご協力、感謝します」
「いいんですよ……メンツよりも、大事なものがありますから」
■緋月 > 今や、ただ一人の男となった、かつての機界魔人の一言と、風紀委員の一人の言葉に、娘は静かに微笑みを浮かべる。
口を開き、謝礼を述べようとして、
「――――ご、ぼっ。」
その口から、大量の赤が漏れ落ちる。
赤い、赤い血。
あれ、どうして、こえじゃなくて、ちが。
――ああ、そうか。
急激に身体から力が抜けていく。
視界が赤く染まる。
立っていられない。
――これは、禁じ手と言われても、しかたがないなぁ……
膝を付き、アスファルトの地面に叩きつけられる間に、その背は縮み、姿も若返る。
髪の色も元の色へ戻っていく。
どしゃ、とうつ伏せに地面に倒れ伏した少女の手から、今まで共に戦ってくれた刀が転がり落ちる。
氣を感じる能力を持つ者か、それに等しい機具があれば、少女の身体に漲っていた氣が、
急速に衰え、萎んでいくのが分かるだろう。
■寺崎 弓人 >
俺たちを助けた少女は、血を吐いて倒れた。
「き、緊急搬送ー!!」
こうして戦いは終わりを告げる。
■テンタクロウ(藤井輝) >
凶悪犯、テンタクロウ逮捕のニュースは。
島中に速報として流れた。
そして────
ご案内:「The meaning of existence」からテンタクロウ(藤井輝)さんが去りました。
ご案内:「The meaning of existence」から緋月さんが去りました。
ご案内:「Free1」に桜 緋彩さんが現れました。
ご案内:「Free1」から桜 緋彩さんが去りました。
ご案内:「常世総合病院/ロビー」に桜 緋彩さんが現れました。
■桜 緋彩 >
今日は怪我の定期健診の日だった。
頭の包帯は取れたけれど、腕の火傷はまだまだ治っていないので、腕だけミイラのような状態。
ついでに同居人の様子を見に行こうとしたのだけれど、面会は出来なかった。
彼女と戦い世を騒がせていたテンタクロウも逮捕されて入院しているらしいけれど、今更会って語ることもないだろう。
鍛錬をしようにも、医者から運動は止められている(当然である)。
と言うわけで。
「――暇ですね」
やることが無いのである。
風紀委員本部に行けば何かしら仕事はあるだろうけれど、怪我人は休んでいてください、と先日追い返された。
今日の診察はもう終わっているけれど、どうせ帰っても何もやることがないので、こうしてロビーのソファーに座ってぼんやりとしている。
「運動はともかく、書類仕事ぐらいは出来るのですが」
やることが無いのである。
ご案内:「常世総合病院/ロビー」にポーラ・スーさんが現れました。
■ポーラ・スー >
「――もう、いいじゃない、同じ生活委員のよしみでしょう?
ただわたしは、ICUで寝てる子にお見舞いしてあげたいだけなのよ」
静かなロビーにて、よく響く鈴の音のような声。
総合病院の受付にて、和装の女が、事務の女性を困らせている様子がどこからでも見えるようで。
その装いもあり、ロビーで待つ人々の注目を集めていた。
「別にとって食べたりするわけじゃないものぉ。
それに危険な状態は越えたのでしょう?
顔を見に行くくらいいいじゃない、だめかしらぁ」
そんな事を言われても、と事務の女性は困った顔をしつつ、強引な女に負けじと『医師の判断がありますので』と姿勢を崩さない。
事務の彼女とこの女は顔見知りであり、時折お茶をする仲ではあるのだが、仕事は仕事である、と引かないのだ。
「――はあ、しかたないわねえ。
じゃあ、その担当医さんの許可、後でもらっておいて頂戴?
お見舞いに行ってよくなったら、連絡頂戴ね」
穏やかな事務の女性だが、仕事に関しては決して引かない。
和装の女は諦めて、とぼとぼとロビーを横切っていく。
「あら――」
そこで、あなたに気づいたように、視線を留めて声を漏らす。
「こんにちわ、たしか――桜緋彩ちゃん、よね?」
そう言いながら、あなたの方へと歩み寄っていくだろう。
偶然に出会えた事を喜ぶように、嬉しそうな笑顔を向けながら。
■桜 緋彩 >
ソファに腰かけてぼんやりとしていれば、何やら会話の声が聞こえてきた。
そちらに目を向けてみれば、目を引く和服の女性の姿。
「――はぁ、確かに私は桜緋彩ですが」
顔、と言うかこの格好に見覚えはない。
こんな派手な人は一度見たら忘れないと思うから、多分そうだとは思う。
なんと言うか雰囲気的には生徒ではなさそうだな、なんて思いながら、彼女の問いかけに頷いて。
■ポーラ・スー >
「ああ――ごめんなさいね、わたしが一方的に知ってるだけなの。
風紀委員で、とっても強い剣士さん。
ふふ、そうは見えないかもしれないけど、わたしも剣術が好きなの」
そう微笑んで言いながら、遠慮する事もなく、少女の隣に座ろうとするだろ。
「わたしは、初等教育を担当してる、ポーラ・スーよ。
あなたはもう初等教育が必要じゃないでしょうし、知らないのも無理ないわ」
そう言って並んで座ると、両手を合わせながら、気遣うような様子で少女の顔をのぞき込む。
「怪我をしたって聞いてるわ。
今日は検査だったのかしら?
それとも――お見舞い?」
そう、深い蒼色の瞳でじっと見上げる。
■桜 緋彩 >
「なるほど、やはり先生でありましたか。
改めて、風紀委員三年、桜緋彩と申します」
思った通りだった。
改めて姿勢を正して礼。
「定期健診、と言うか経過観察ですね。
特に問題は無いようですが、まだ剣は持てません。
お見舞いも出来ればと思ったのですが、生憎今生死の境をさまよっているようでして」
集中治療室にいる同居人。
もしかしたらもう持ち直しているかもしれないが、お見舞いできない事には変わりがない。