2025/10/05 のログ
ご案内:「宵の口」に出雲寺 洟弦さんが現れました。
ご案内:「宵の口」に伊都波 凛霞さんが現れました。
出雲寺 洟弦 > ――――今日一日、あるイベントで埋め尽くしたスケジュールを建てて、
それが全て滞りなく進んで、例えばそれが、夏から秋へかける涼風の中。
自分にとって、ガールフレンドである、彼女との時間であったとするなら。
今まさに、その余韻がどれだけの至福であるか。

……一日通しのデートが終わり、その帰り道の駅のホームで、
傍らの少女の――スマートフォンのカメラロールを埋める写真の数々、
そのほぼ全部が二人でとか、彼女だけとかのものを。

「……」

本人の真横で、なんだかぽーっと赤いような、余韻ずぶずぶの、
腑抜けた顔で眺めてたら、隣の子はなんていうんだろうか。

…………いやもう、感無量という他なくって。
出雲寺 洟弦。青春の絶頂を経て軽い多幸オーバードーズ。
そのオーラは満腹であった。

……列車が来るので黄色い線の後ろだけど、
風でも吹いたら吹っ飛びそうなくらい。

伊都波 凛霞 >  
「普段こっちってあんまり来ないから、ちょっと疲れたね」

隣の彼へとそう語りかける。
まだ少しだけ暑い最中、それなりに薄着の少女。

端末に視線を落とす彼は妙に見入っているようにうも見えて、
そっと隣に近寄って──それを覗くのは少し悪い気がしたから、顔の穂を覗き仰ぐ。

「ずっと何見てるの?」

くすり、小さな笑みを唇に浮かべて。

出雲寺 洟弦 > 指で  すっ すっ すっ  ……全部彼女の姿が含まれる写真ばっか。

流れていくカメラロールの写真の、彼女と一緒に映り、
変わっていく空模様や風景は、少なくともかなり小刻みに、
まぁまぁな頻度で撮ってるのがまたなんとも――――

「ぅあ」

気が付けば間近に、まさにその彼女の顔。
ぼんやりしてた顔がやっと幾らか取り戻る。

「あー、ええと、その」

サイドスイッチを押して画面を消灯する。
黒くなった画面は夕焼けの灯りで鏡面になり、
自分と、覗き込む凛霞の顔が写り込む。
照れ隠し、何に見惚れてたか、なんてまぁそりゃ。

「今日一日……ずっと、凛霞の写真ばっか、撮ってたな、って……」

本当にあちこち行ったんだけど、風景だって良い所も沢山あったのに。
夏の余韻・思い残し一切合切消化しようという意気込みが、
気が付けば彼女のことをひたっすら見続けるだけの時間に。

……周囲、自分たち以外にも普通に人がいる中で、
これだけ距離が近い状態で話す男女なら、そういう風にみられるのも。

前に比べたら慣れてきて。
頬を指でかきながら、顔は見る。瞳を見つめれる。

「……今日だけで何枚凛霞の写真撮ったんだろ、
これからもずっと見るのに、浮かれちゃってたんだ」

なんていって、肩を竦めた苦笑だ。

伊都波 凛霞 >  
「そ、そんなに撮ってた…?」

いくらかは二人でも撮ったし、撮られてるのも知ってたけど。
多分、意識外のところも撮られてた…っていうこと。

「…変な映り方してるのとかなかった?」

ちょっと心配。
撮られる時は一応、ちゃんと、顔は作る。当然の女の子の嗜みとして。

何枚撮ったんだろ、なんて言い始める彼。
これからもいっぱい見れる。それはそう。
でも写真っていうのは、思い出の切り取り。
その時間にはもう戻れないものだ。

「いいんじゃない? 今日の私は今日で見納めだし」

にこりと微笑む。
人間である以上は成長して、年老いていくのみ。
毎日少しずつ変化があるものだし、その行為を別段変なこととは思わなかった。

「それじゃ私も洟弦の写真もっと撮れば良かったなー…」

自分のオモイカネを手に取り出して、そんなことを宣ったりなんかもしつつ。

出雲寺 洟弦 > 「いや、大丈夫。全部とも凛霞の顔がすげぇ可愛……」

しれっと口から滑り出そうになった極めてナチュラルな……。

「ん"ッッん……、……」
……頬が夕焼け以外で赤く見えた。
――オモイカネ(スマートフォン)の画面をそのタイミングで点ける。

「……綺麗に映ってた」

彼女とのやりとりのSMSで送ったのは、
『可愛かった』という一言と、たぶん一番自信作らしい、
後ろから撮った、振り返りの笑顔が眩しい凛霞の写真。
画角とか、その時吹いた風で舞い上がる髪がとか、
陽射しの差し方とか、まぁまぁ奇蹟の瞬間のようなもの。

――それが最高、という訳じゃなく。彼にとっちゃ、
凛霞の写真はぜーんぶ宝物なんだけど。

「……そう、かぁ。今日の凛霞は、今日だけだもんな。
……じゃ、今日の終わりまでしっかり見てないと……、……」

――――数秒前の赤面再来。おかしい。
文章にして十数行もない間に二回も照れてこの男子。
こッッ、とオモイカネの硬い角で自分の額を叩く。
おっもしれぇ男だ気に入ったとばかり、びゅぅ、と風が吹いた。
……自分の写真くらい、頼まれれば帰ったらいくらでも撮ってくれていいんだけど。
――いや待てどんな写真?人に撮られるのってそういやあんまり慣れてないような――

『――間もなく、■番ホーム、列車が参ります……』

「……と」

そのやりとりの間を裂いてアナウンスが聴こえる。
列車の灯火が彼方に見える。開くホームドアに備えて、
しれりと凛霞の手を握って。

「……電車の中、混んでないといいんだけどなぁ……」

少なくとも周囲は満員になるかと言われればそうではなく、
まぁ居ないとも言えない程度の人。
乗り込むタイミング次第では座れないかも。

伊都波 凛霞 >  
「可愛いでも綺麗でも、嬉しいけど」

そんな彼に苦笑。
そして彼から送られてくるSMS、添付された写真。

「(うわ…こんな一瞬切り取れるんだ…)」

ちょっと、自分で見ても芸術点高めの写真が送られてきてびっくりする。
そんな一瞬を納めてるくらいたくさん撮ってたのか、それともたまたまだったのか。

「洟弦ってたまに詩人みたいなこと言うよね…」

少しだけ照れくさい。
昔っからこんなだったかな?
こんなだったかもしれない

そんなやりとりをしているとホームに列車が到着する。
ラッシュの時間じゃないから普通に座れたらラッキーかな?

「(そういえばあんまりこの駅って利用したことなかったなあ)」

出雲寺 洟弦 > 「……ぁ、お、ぅ、ん」
へんなこえ。
……列車が来て、ホームドアが開くまでのちょっとした時間。
写真を自分でももっかい見直してみると、改めて良い写真である。

自分でも凄い写真撮れたと思ったけど、
よくよく考えるとずっとこんなの撮れるまで、
後ろから凛霞のこと撮ってたんだよな、俺。
それって実は結構なことしてるんじゃあ……。

……なんて考えててもあれなんだけど。

「詩人ってこんな事いうかなぁ……、……」

――――ホームドアが開けば、そのまま、
数歩で電車の中に乗り込む。

幸い、入ってすぐではあんまり人がいる様子もない。
扉から少し離れた座席に、二人で並んで座ることもできる。

腰を下ろし、まずはほっと息をつけるはず。
……列車内はエアコンも効いているし、自然とリラックスしてきて、
けれど同時に――今日は、本当に結構歩き回ったもので。

「……凛霞、今日、その、実は結構……疲れたりした……?」

少なくとも、イヅル自身は割と今、余韻の醒めていく頃に、
ずっしりときたらしい。苦笑した横顔が伺う。

伊都波 凛霞 >  
「うーん?詩的というかなんというか…。
 友達の男の子達はあんまりそういうこと言わないかなって」

それが悪い、なんていうわけでもないけど。
ちょっとたまにくすぐったかったりしちゃうくらい。

二人並んで電車の椅子にかける。
こうして並ぶと肩の厚さとか、案外座高も違ったりでちょっと新鮮。

「ん? そうだね、あんまり慣れないところだったから。はしゃいじゃったかも」

疲れはしたけど、楽しかったからだよ、と。
苦笑する彼には柔和な笑みで言葉を返す。

「洟弦こそ疲れてない?
 起こしてあげるから寝ちゃってもいいよ」

降りる駅まではいくらか時間もあるだろうし。