2025/10/06 のログ
出雲寺 洟弦 > 「え、そうなのか……割と俺の周りの友達なんか結構もっと色々変な言い回しを知ってたりとか……いや、でも俺も色々言うほう、か」

なんでだろうなぁ……。
でも、それってつまり、自分なりに凛霞への気持ちを表現できてるってことだよな。
……ありがとう、実家の親戚のやたら語彙力のある人たち。
多分俺自身学ぶつもりはなかったけど、独身に嘆く大人たちの話って勉強になるんだな。

「……ああ~……」

肩はむしろ貸す側なんだけどなぁ、と思いながら、
首を緩く振って――ちょっと悩んで、そっちの肩を、
反対側からほんっとうにちょびっとだけ引くように、してみる。
寄りかかってくれたらいいんだけどくらい、そのくらいのつもりで。

「そっか……でも、それやるの、今日は俺に譲ってほしいな」

だって、今日のプランニング――

「……前日に道のり考えてる時から、
まぁまぁ疲れちゃいそうな予感はしてたんだ。
……でも疲れた時でも、凛霞より先に休むつもりはなくって、
こういう風に肩貸す側で一日頑張るぞー、とか、思ってたから」

へんなところ、格好つけたがり。
到着駅まで、自分が凛霞のことを支えて護るんだ、くらいの奴。
――いや、でももしかしたら子供っぽいんだろうけど。

横顔は優しく、眉を八の字に、そうさせてくれないかなぁ、って、
頼むくらいの声のトーン。

伊都波 凛霞 >  
肩を引き寄せられて、少しだけ驚いたような表情…。
互いの肩が触れる。結構な距離感。密着…とまではいかないけれど。
……少し、どきどきする。顔にでてると、まずいかな?電車の中、だし。

そんな彼が語るプランニング。
自分のために色々考えてくれてたんだろうことが伝わって、嬉しい気持ちになる。

「…じゃあ、お言葉に甘えちゃおうっかなあ~♪」

ちょっとだけ露骨な、甘えた声。
逞しい厚さを感じる肩へ、トン、と。
軽く頭を預けてみる。
ふわっと香るのは柔らかいシャンプーの香り。

出雲寺 洟弦 > 「……っ」

あの日の後から、もしかしたらちょっと大胆――な、部分も出るようになったのかもしれない、けれど。
――くらっとさせられる、そんな甘えた声は、自分には刺激が強い。
でも、そういう姿、声が聴けるのは――自分だけなんだろう。

……甘えてもいいって、思っていられるように。
ぐっと踏みとどまった心の踵。

「……うん、そうしろそうしろ。
着いたら優しく起こすから……」

――――心臓が火山の鳴動のよう。
けど顔には出さない、声には出さない、どっきどきでやっばい。
シャンプーの、女の子の、凛霞の匂いの間近は健全な男子には――!!



「(いいや、いいやッッ!!漢見せろ、
恰好つけて見せろ俺ッ!!出雲寺 洟弦ッッッ――!!)」

……彼の肩は大きくてどっしり。けれど、優しく支える腕の御蔭か、
彼がすこーし意識して力を抜いてるおかげか。
……少しずつリラックスから、疲れから、
ちょっと舟を漕ぐくらいは――してしまってもおかしくないような。



出雲寺 洟弦 > ………………夢でも見たかもしれない。

ほんの些細な夢だとか、そんなところだ。

どんな夢か、それとも現を抜いた風景か。

……少なくとも、出雲寺 洟弦は、伊都波凛霞の傍に居る
それが現実でも、夢でも。


――――――声が、聴こえてくる。



『     か   』


『   凛     ……い』


『   凛霞    』





「……凛霞!」

伊都波 凛霞 >  
「───、…ん」

ふわふわとした心地。
電車に揺れが心地よかったこととか、彼の肩の安心感だとか。
自分で思ってたよりも、疲れてたのかなとか。
きっと色々が、色々で。

「あ…寝ちゃって、た…?」

夢見心地に聞こえたのは彼の声───。

預けていた頭を戻して、隣の彼へと視線を向ける。
……何か、なんか、変な感じがするけれど……何だろう?

出雲寺 洟弦 > ――起こす前に見せていた、優しくて気張った声より、
……ずっと、焦りを含むような声だったかもしれない。

「――凛霞っ……ああ、とりあえず、大丈夫そうか……」

…………違和感。

――洟弦と乗った列車の揺れは、気が付けば収まってる。

――扉が開いている。駅に着いた?

――否、否。それよりもっと、何かおかしい。


……洟弦と凛霞以外の乗客が一人も居ない
彼が焦りを感じながらも、凛霞の肩をゆすり、
けれど護るようにもして周りを睨むのには、十分過ぎる状況だ。

「……身体に違和感とかないか、変な感じはない?大丈夫か?」

――起きた時点で既にこの状況であったと見える。
警戒をしながらも凛霞の様子を見る顔は張りつめた様子だ。

張りつめるにも十分だ。此処は、幾らかこの常世島の中にあって、
触れ合う機会がある人にはなじんだ空気が、鼻をくすぐるのだから。

伊都波 凛霞 >  
「大丈夫…だけど」

異変にはすぐに気づく。
それなりに乗っていた乗客が誰もいない。
終点まで寝過ごした?そんなわけもないし、それならアナウンスだってある筈。

「か、身体は全然平気だけど…どうしたの?なんで誰も……」

凛霞自身にそういったものを察知する力はない、けれど。
彼が自分を護るかのように、そして違和や異変を問いかける様子は、平常ではないと感じられる。

「…もしかして──噂の、裏常世渋谷にでも迷い込んじゃった…?」

迷い込むにも、色々な条件があるらしい、けれど──まさか当事者になることになるなんて。
怪異や怪奇といった類の話とも連なる、一種の都市伝説として学園では話される。
目の前の彼は自分以上にその専門に近い──だからこその気の張り詰め方なんだろう。

出雲寺 洟弦 > 「――――――」

静かすぎる列車の中、開きっぱなしの扉。
無機質な電灯に照らされた、乗り込んだ時と何も変わらない車内の光景と、
これまた開いた扉の先の、冷たい白い電灯が照らす駅のホーム。
地下鉄かどこかの降車口にも見える。
空気は乾いていて、どうにも、喉が張り付くような感覚。

「裏常世、渋谷……嗚呼くそ、なら、俺のせいだ
……こうなる前の記憶が途切れてる。
たぶん……俺も寝た、かもしれない」

要するにその瞬間が『節』だったのだろう、か。
……後悔の色が滲んでる。

――自分自身の着ている服の上着、その懐に手が入る。
何かを探るように暫く触り、何か掴んだのか、それをするりと、
凛霞の見える位置へ。

「……何が起こるか分からないから、これは凛霞が持っててくれないか」

――小さな、木彫りの笛。
本当に簡素な、コルク栓に孔と切り目でも入ったような物。
退魔に関連する道具なのは、彼が持っててくれと頼むのからして想像がつく。
差し出す彼の手から追いかけて顔が伺える――切り替わった眼と、
……切り替えれない、『責任』の色だ。

「吹けば、簡易だけど"追い払う"音が鳴る。
弱いのなら、一回か数回吹けば嫌がって逃げる……強いのは、ちょっとムリかもしんないけど」

立ち上がろうとする。恐らく降りていこうというのだろう。

「……こういう場所に誘い込むようなのだと……何かしら、出るのに、
条件を踏んでかないといけないタイプだ」

伊都波 凛霞 >  
「誘い込まれたってこと?」

そんなこともあるんだ、と。
聞いたことは…あったかもしれない、でも。
それこそ都市伝説の類。噂の領域を出ないもの。
怪異、怪奇。そんなものが現実に発生しているのだから、そういった常識もあるつもりではいたけれど。

「でも、そういうことならなんとか出なきゃ…。
 ぜんぜん洟弦のせいじゃないでしょ。誘い込まれたのなら、それのせい」

そこだけはきっぱりと、強い言葉で否定する。
昔から彼はこういうところがある。どうしてこうも背負い込みたがるのか。

「多少なり祓いの心得はあるけど、強いのに通じるかはわからないなあ……。うん、受け取っとく…」

木彫りの笛。彼の手作りだろうか──それを受け取って。

「条件……そういうので愉しんでるタイプのやつなんだ」

はぁ、と嘆息する。
人間にも、そうでないものにもそういった輩はいて、それは凛霞の苦手とするタイプ。
まるで相手をおもちゃか何かだと思っているのだから。


出雲寺 洟弦 > 声の代わりに、強張った顔が頷きで返事をした。

しかし、彼が対峙し続けていた者に連なるとするなら、
これだけ近代的な空間に馴染むことのできるものは……。

「……ッ……そ、れは、ああ、うん、いや、そうか」

思考の渦を大きく撓ませる頃、強い言葉が、
自分の思考を幾らかクリアにする。
笛を渡して空いた手は、自然とそのまま、あの駅のホームのときのよう、
凛霞の手を握ろうとする。

……手を繋ごうとする事、少し増えたように感じる。
洟弦自身からは、付き合い始めてから――だいぶ。
色んな意味のある行動なんだろうけど、今は、
『護る』とかより、『離れない』ための、という意図を感じる。

「……槍があれば、多少強引な手も取れたかもしれないんだけど。
……ほかにあるとしたら、手書きで即席の簡素な巫術札を作るくらいか……いや、書く道具も持ってないや……」

席から立ち上がり、まずは列車から降りていくようだ。



がらんとした、誰もいない地下鉄のホーム……という空間が、
実は結構薄気味悪いものだと気づかされる。

「……なぁ、凛霞……その、裏常世渋谷、ってさ。
所謂、俺の実家の仕事とかで退治するような妖だとか、
悪霊だとか……そういうの以外にも、居たりするのか?」

――彼は此処に来て決して長いわけじゃない。
勝手は解るタイプだが、ここ独自の異空間である『裏常世渋谷』は、
殆ど未知の場所だ。

「……一応、物理的な攻撃にある程度"乗せる"ことは出来るけど、
通用しなかったら……」

伊都波 凛霞 >  
「待って、まだ敵意があるなにかのせいって決まったわけでもないから…」

手にふれる、彼の手、逆にきゅ、と握り返して。

「まずは、降りて…少し歩いてみよう? 強引な手はきっとそれからでも遅くないから」

そう言葉を返して、緊張の解けない彼と共に、列車を降りる──。
変哲のないように見える駅のホーム。…だけど、確かに何かが異質で。

彼の問いかけには、少しだけ押し黙る。
そして彼の横顔を見上げると、口を開く。

「そのための風紀委員の常世渋谷分署がある、くらいには…。
 過去には色々、事件もあったよ。人がいなくなったまま、戻らなかったことも」

そう言って、一歩前へと進む。
そして振り返れって、笑う。

「大丈夫。洟弦と一緒なんだし、何も怖くないよ」

彼が写真に納めた笑顔と変わらぬ、満面の笑顔。そこには不安も緊張も残っていない。
──しかしその先がまだ二人の知らない領域であることに変わりはない。それでも踏み出せるのは、二人でいるから。

「行こう。洟弦」

手を強く握ったまま──見知らぬ地下鉄の駅へと踏み込んだ。

ご案内:「宵の口」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「宵の口」から出雲寺 洟弦さんが去りました。