2024/06/27 のログ
緋月 > 「――――。」

瞬間、耳元で囁かれたそれを、少女は思わず口を開けたまま聞いていた。
それが何を表すのか。
――少しの逡巡の後、むしゃりと口の中に入れて貰った桃を咀嚼し、ごくりと飲み込む。

「――覚えておきます。忘れはしません。」

言外に、他者に口外するつもりはないという響きを帯びた声。
少しおいてから、僅かに惚けるような口調で、

「私としては、先生とまた刃を向け合うのは勘弁願いたいです。
あの殺気を浴びるのは、中々厳しいものでして――。」

たはは、と苦笑。

そんなこんなで、看護師が面会時間制限を告げに来るまで、他愛もない事や学園都市の事についてを語りながら、
時間を過ごし続けるだろう――。

ポーラ・スー >  
「――ありがとう、愛しいわたしのお月様」

 嬉しそうに――そして少しだけはにかむように笑う。
 そこにはまるで、狂気など存在しないような、凪いだ時間。

「くすっ、あらあら、わたしは好きよ?
 だから時々、ちゃんと安全に、デートしましょ」

 そんな事を冗談のように言いながら、いつの間にかヒビ割れた聖域は消え去り。
 ただ、他愛のない、少女のこれからの学園生活や、女の教師生活の話で戯れ。

「――ああそうだ、あなたのお友達の『ひいちゃん』ね。
 自分で連絡が取れるようになったら、連絡してあげるのよ?
 待っていてくれる人が居るのは、素敵ね」

 そんなお節介を少しだけ焼きながら。
 そして時間が来れば静かにICUを後にするだろう。
 ただ、確かに深い愛情(狂気)の残滓を残して――
 

ご案内:「常世総合病院 個室型ICU」からポーラ・スーさんが去りました。
ご案内:「常世総合病院 個室型ICU」から緋月さんが去りました。