2025/01/15 のログ
ご案内:「Free3 未開拓地区:汚染区画/汚染物質回収作戦!」にエデン-H-プランクさんが現れました。
ご案内:「Free3 未開拓地区:汚染区画/汚染物質回収作戦!」にメアさんが現れました。
エデン-H-プランク >  
 未開拓地区に建設された、大きな閉鎖壁。
 そのゲートや周辺設備は、にわかに慌ただしくなっていた。
 なんと、ついにこの汚染事故を広めている汚染源が見つかったのだ。
 今は各委員会が、この汚染源への対策、討伐などを激しく議論している頃合いだろう。

 ――そんな真面目なお話しとは然程関係なく、壁の中の荒野で。

「――ねーえー、愛しいメア?
 メアはオシャレに興味はない?
 メアって、地がとっても可愛いから、可愛い服も、ちょっとしたメイクも、とっても映えるわ!
 はぁ、私に実体があったらぜーったいに放っておかないのに」

 くるくると回る、三頭身の自称ピンクの妖精。
 なお、回る、は比喩などではなく、彼女が座っているキャタピラの付いた無駄に踏破性の高い、洗濯機の様な掃除機の胴体がなぜかゆっくりと回転しているためだ。
 なお、この回転機能には、実用性に全く影響を与える事がない、つまり無駄機能である。

 この日、黒い少女と一緒に、この無駄機能満載の掃除機&自称妖精(立体映像)は、汚染物質――星骸(せいがい)の回収にやってきているのだ。
 つい先日、汚染源が暴れたとかで、汚染された動植物も増えているそうだが。
 そんな事関係ないとばかりに、自称妖精は可愛らしいパートナー(防護服ばっちり)に、ゆるい話をし続けている。
 なお、オシャレの話の前には、好きな物は? や、恋人は? だのと女子会とばかりに質問していた。
 

メア > 「…興味、ない……黒いのが、落ち着く…」

お掃除ロボとともに荒野を歩く
お洒落、言われてみれば特に考えた事は無い

福はほとんど黒くてシンプルなもの、メイクも興味も知識もない

「よく分からない、から……」

学園での勉強にカリキュラム
特訓と言えば異能の使い方や戦い方ばかり
お洒落、少し勉強をした方が良いのかもしれないとは思いつつ目的の場所へ

「ん、そろそろ…準備……」

防護服姿で次の準備に取り掛かる
影の中から出てくるのは大型のハンマー
解体作業などでよく見るあれである

メア自身が振り回せる代物ではないが今回はこれの存在が重要になってくる

エデン-H-プランク >  
「もうっ、メアったら。
 恋愛にもオシャレにも興味がないなんてもったいないわ!
 今日のノルマが終わったら、しっかり教えてあげなくちゃ!」

 ぷんぷん、と擬音が頭の上に赤色で表示される。
 立体映像ならではの感情表現である。
 無論、自称妖精自身も、頬をぷくーっと膨らませているのだが。

「よくわからないなら、なおさらちゃーんと教えてあげるわ!
 ふふっ、この子に映像投影機能がよかったわ。
 ヴィヴィのサプライズに感謝ね!」

『オソウジシマス!』

 自称妖精が、にこにことキャタピラ付き洗濯機能搭載多機能掃除機――ええい面倒くさい。
 無駄機能満載掃除機を撫でると、掃除機は掃除機で嬉しそうにアームを万歳させて返事をする。
 感情回路付きのAIまで搭載されているらしい、本当に何でも詰め込まれた掃除機だった。

「あら、もう?
 はーい、いつでもいけるわ」

『オソウジシマス!』

 大きなハンマーを取り出した少女の隣で、妖精と掃除機は片手をあげて元気よく返事をした。
 危険地区とは思えない、なんとも緩い雰囲気が漂ってしまっていた。
 不憫である、黒い少女は真面目なのに。
 

メア > 「別に……」

いい、と言い切るのもどうかと思ったりもするけれどとりあえず濁しておく
漫画みたいな表現をしているエデンを見る
こんな風に感情豊かに振舞えば、何か変わったりもするのかな…と

「ん、サポート……分かりやすい…」

エデンがすぐそこに居る様で助かってはいる
分からない事も多いしその場その場での判断も頼りになる

頭の中では止まらないトークに辟易している彼も居たりするのだけれど

「異能で、触らないように……これで、叩く…」

陰から黒い手が伸びてハンマーを掴み、掲げる
棒切れでも振り回すように動くハンマーは質量と運動エネルギーの暴力を生み出してくれる筈

ハンマーなら多少雑に扱っても壊れないので今回はこの獲物を持ってきた

エデン-H-プランク >  
「あら、別にいいのに(・・・・)なんて思っちゃダメよ?
 女の子が可愛くなるのに理由なんて要らないもの!」

 小さな両手を合わせてにっこりと笑うエデン。
 その上には、『わくわく!』と擬音が飛び出していた。
 確かに、必要以上に感情表現豊かであるのは間違いないかもしれない。

「あら、ほんと?
 褒められちゃうと嬉しいわ!
 えーと――うん、ちょうどいい感じの反応があるわね。
 もう少し南に、大型犬くらいの何かがいるわ」

 褒められると仕事が捗るタイプらしい。
 妖精は目の前に青く光るパネルの映像を投影して、あれこれと操作している。
 なお、このやけに高性能な探知機能も、掃除機の搭載機能である。
 ――掃除機ってなんだろう。

「ふふっ、豪快な女の子も可愛いわね。
 それじゃあ、ちょっと向こうに行ってみましょう。
 そこの茂みを抜ければ、何か見えるはずよ」

 そう言って、少女を先導するように茂みの中にキュラキュラとキャタピラの音を鳴らして突撃していく。
 その向こうには、何かを貪っている大きな犬――身体の大部分を黒く変色させた狼が、捉えたのだろう獲物を一心不乱に食べていた。

「あら、なかなかやんちゃそうな子を見つけちゃった。
 メアちゃん構えて、こっちにおびき寄せるわねー」

 そんな軽い調子で、エデンは掃除機の無駄機能の一つを起動する。
 すると、掃除機から特殊な周波数の音がキィィィンと鳴る。
 いわゆる犬笛のようなものである。
 ――掃除機ってなんだろう。

 狭い範囲にだけなったその音に、大きな犬――恐らく狼の一種だろうソレは、少女と掃除機に頭を向けた。
 そして、唸り声を上げながら警戒の一つもなく突進してくる。
 身体能力の向上と無差別な狂乱、汚染された動物が見せる典型的な特徴だった。
 

メア > 「ん……」

先に言われてしまった
こうなると本格的にお洒落について考える必要があるのかもしれない

「大型犬……気を付ける…!」

今更掃除機が探知機能を持っていても気にしない
この掃除機は掃除機と名前がついた超機械なのだから

エデンの案内に従ってついていくと…かなり魔物みたいなオオカミが視界に入る
何かを貪る姿はどう見ても撫でたりできる様子もなく、あの日施設で見た被害者に近いものを感じる

「ん、わかった……」

音に引き寄せられたオオカミが急接近してくる
本能のままにまっすぐ、分かりやすい突撃

可哀そうだがもう自分にはどうにもできない
ハンマーを振り上げ、叩き落す形で胴体に一撃
勢いが止まれば頭もしっかりと叩いて潰す
死んだと思って油断ができる相手ではないのできちんと処理をしてから近づいて観察する

エデン-H-プランク >  
「さすがメアちゃん、とっても冷静ね。
 それに、優しい子」

 少女と一緒にハンマーに潰された狼に近づいて、様子を伺う。
 狼は、少女の慈悲深いトドメによって確実に命を落としていた。
 そして、その体は少しずつ溶けるように黒い水へと変わっていく。

「――この子はもう助けてあげられなかったわ。
 あなたがこの子を苦しみから解放してあげたのよ。
 だから、悲しまないでね」

 そう声を掛けながら、立体映像は防護服の上から少女を撫でるような仕草をする。
 もちろん、実体はないので触れ合う事は出来なかったが。

「あなたのその、可哀そう(・・・・)って思える気持ちはとっても大事よ。
 これからも、その優しい気持ちを大事にしてね」

 触れ合えずとも、撫でて、声を掛けて。
 少女がとても尊く美しい心を持っているのだと、そう伝えられるように。

『オソウジシマス!』

 その横で、掃除機は完全に溶けて星骸となった狼を吸い込んでいく。
 不幸中の幸い、この犠牲は無駄になる事はない。
 エデンは少女を褒めると、少女の隣に浮かんだまま、目を閉じて静かに両手を合わせた。
 

メア > 「ん…溶けちゃった……」

褒められたけれどまだ喜んでいられない
観察すれば仕留めた狼は黒い水に、こうなってはもう復活はない筈

仕留めた時の目安にしやすい

「ん、仕方ない…」

思う所は有るけれど仕方ないと割り切る
やらなければやられていたのだから
もうこれで苦しむことは無い、そういわれると気分も少しは楽になる

そして掃除機が奇麗に掃除をしてくれた

「どんどん、掃除する…」

流れは再確認できた
この調子で慎重に黒い水を回収していけば問題はない筈

「エデン…案内、おねがい…」

次の標的に向けてナビをお願いする
危険な相手と出会わないためにも自分で勝手に判断はしないでおきたい

エデン-H-プランク >  
「――ええ、どんどんお掃除しましょう!
 次はそうね、どこからがいいかしら。
 大きい反応がある所はなるべく避けて――」

 そう言いながら、エデンは小さな手で、とんとんとパネルを叩く。
 そのたびに、ぺちぺちという擬音が、賑やかに映像となって投影されている。

「あら?
 ねえねえ、メアちゃん、見て頂戴」

 そう言うと、エデンは防護服へとデータを送信して同期する。
 防護服の四角い視界の片隅に、円形のレーダーと、その中に表示される幾つもの大小様々な赤い点。
 そして、黄色い警戒色で表示される地形のいくつか。

「ここの黄色い所、地面の浅いところまで星骸が染み出してきてるみたい。
 ここを少し叩いたり、掘ったりしたら、星骸が沢山湧きだしてくるかもしれないわ!」

 そう、名案を思い付いたかのように言う。
 その提案の中に、少女にあまり殺生をさせたくない、そんな気持ちがあったかどうかは不確かだけれど。

 黄色い警戒色は、西に少し進んだ所に表示されている。
 また、小さな赤い反応はさらに南側で、いくつか点在しているのが分かる。
 さて、どちらへ向かうのが安全で、効率がよいのだろう?
 

メア > 「安全第一…」

黒い水の収集
安全を第一に考えないといけない作業なので危険な橋はわたりたくない

視界の端、防護服に映し出された場所を見れば危険な黄色が見える

「ん……星骸が沢山、危なくない……?」

星骸が沢山湧き出ると聞くとそんな場所は危険ではないのかと尋ねる
南に行けば今やったのと同じ作業を繰り返せば少量ずつでも確実に収穫ができる

効率か安全か、悩み所である

「…星骸、たくさん集まっても…無害……?」

西にある星骸の溜まり場、それを無視していても問題ないかが少し気になる

エデン-H-プランク >  
「うーん、危なくないかと言えば、ちょっとスリリングかもしれないわね。
 じわっと湧きだしてくれればいいけど、噴水みたいに噴き出しちゃったら、浴びちゃうかもしれないし」

 提案しておいて、と言った所だが。
 安全かで言うと、少々リスクがある。
 防護服だって完璧ではないし、少女の異能の影に星骸が触れれば危ないかもしれない。

「そうね、星骸自体はどれだけ沢山集まっても、それだけじゃなんともならないわ。
 ただ何も知らない人がこの近くを通ったり、戦闘になったりしたら、突然噴き出して危ないかもしれないわ。
 はあ、こんなに沢山、星骸が地下に沁み込んでるなんて思いもしなかったわ」

 どこか困ったようにエデンは言う。
 そう、汚染源の調査の際に判明した事だったが、このエリアの地下数メートルは、掘れば井戸が作れてしまうほど、星骸がしみ込んでいるのだった。
 今後の除染作業は、とても大掛かりな作業になってしまう事だろう。
 

メア > 「浴びちゃう……大変…」

黒い水に接触する危険は前回から嫌という程学んでいる
大量の黒い水がどんな影響を及ぼすのか…興味よりも恐怖が少し勝つ

「んん……分かった、西に行く…」

知らない誰かが通った時、と言われて考えた結果そちらに行く事にする
事前に知ることができた自分たちが安全に処理する方が良い筈と

頭の中では否の声が沢山聞こえるけれどこれも彼女の為、ここで作業をする人達の為の頑張りどころなのだ

「じゃぁ…行こっか……」

ハンマーを異能で持ったまま西へと向かう
目指すは星骸の溜まり場

エデン-H-プランク >  
「まあ――!」

 少女の判断に、妖精は両手を合わせて目をキラキラとさせる。

「もうっ、メアったら本当に可愛いわ!
 ああもう、なんで私ったら、メアを抱きしめてあげられないのかしら!」

 きゃあきゃあ、と、一人で楽しそうに嬉しそうにはしゃぐ妖精は、いつの間にか少女と掃除機に置いて行かれるのである。
 掃除機と距離が離れてしまうと、投影が不安定になってしまう。

「もう、メアってば照れ屋さんなんだから!
 まってまって、私が案内するわ!」

 そう言って投影が追いつくと、二人(と一台)で、西へと向かう。
 すると、黄色い警戒色のエリアに踏み込んで少しすれば、地面がぬかるんでいるのが分かった。
 うっかりすれば、ずるりと滑ってしまいそうなほどだ。
 そんなふうに土を濡らしているのが、雨水や何かではなく、染み出した星骸というのが恐ろしい。
 もしここで無防備に転んだりしてしまえば、全身星骸まみれになってしまうだろう。

「あらあら。
 こんなに酷い状態だなんて。
 大丈夫、メア?
 気分が悪かったりしない?」

 星骸が染み出して、黒く染まった泥は、異能や身体で直接触れずとも、嫌な感覚を伝えてくるだろう。
 土と混ざっている分、多少は濃度が低く影響力も弱いが、間違いなく星骸なのである。
 妖精も心配そうに少女の様子をうかがってしまう。
 

メア > 「可愛い……なんで…?」

いきなりそういわれると首傾げ
よく分からないので掃除機を引き連れて目的の場所へと向かう

道中は掃除機の索敵のおかげで安全に進めて快適

「む……ぬるぬる……」

雨上がりのぬかるんだ土の様な泥の様な
それにこの場所、居心地が悪いというか気分が悪くなってくる

恐らくは星骸の影響、やっぱり放置しなくて正解だったと自分を奮い立たせる

「まだ、大丈夫……エデン…ここ、掘ればいい…?」

効率的に吸い出す方法を尋ねる
長居しないためにも作業はてきぱきこなさないと

エデン-H-プランク >  
「はあ、よかった。
 メアが苦しくないかしらってドキドキしちゃったわ。
 ――ええと、ちょっと待ってね」

 妖精はまた青いパネルを取り出して、擬音を表示しながらあれこれと操作をする。
 すると、掃除機の腹部(?)からアンテナのようなものが出てきた。
 地下の様子を調べるための計測器だ。
 もはや、掃除機能と洗濯機能以外の機能の方が豊富な掃除機だった。

「うーん、ちょっと難しいけど、そうね。
 うっかり掘り過ぎると、噴き出してきちゃうかもしれないわ。
 どちらかと言えば、地面を叩いて、振動で染み出させる方が安全?
 ああでも、それじゃあ叩いた時に泥が跳ねてメアが危ないわね。
 困ったわ、どうしようかしら」

 少女のもつハンマー以外にも、大きなスコップはある。
 掃除機のアームが持ってきたスコップを誇らしげに掲げていた。
 しかし、どちらも安全とは言い切れず、妖精は珍しく悩んでいた。
 うーん、という擬音が、断続的に妖精の頭の上に投影されている。
 

メア > 「ん、まだ平気……」

長居したりもっと黒い水に触れるとどうなるかは分からない
今の所は平気なので急いで作業を終わらせなければ

ふと掃除機からアンテナが出てきた
もう何ができても不思議ではないし気にしないことにしている

「叩いて……」

叩いて染み出す、と言われれば今手元にあるハンマーだが…
異能が黒い水に触れるのは間違いない

そうなると…

「ちょっと、触ってみる……?」

先に黒い水に異能で触れて、どうなるか確かめてみるかと提案
想定より影響がなければ作業の自由度も広がるかもしれない

エデン-H-プランク >  
「えっ?
 まってまって、いきなりそれはよくないわ!
 急に耐久試験なんてして、本当に何かあったら危ないものっ」

 珍しく、少女の提案にエデンの方が動揺したようだった。
 確かに、実際に触れてみて影響の度合いを確かめれば、作業も堅実な段取りをつけられるだろう。
 しかし、運が悪ければ、それで少女が酷く苦しむ事になってしまう。

「――ううん、でも、確かにこの泥の危険度を確かめるのはいい方法ではあるのよね。
 少し待ってて、一番、星骸の濃度が薄い場所を見つけるわ。
 チャレンジするにしても、そこからにしましょう」

 そう言って、比較的、泥が乾いている場所を見つける。
 そこは、黒く土が染まっているものの、それまでのぬかるみ程、濡れてはいない。
 ここならかなり星骸の影響は少なく済む――はずである。

「ねえ、メア。
 本当にやるの?
 いいのよ、あなたはそんなに身体を張ってまで、このお仕事をしなくたって。
 お願いしておいてごめんなさい、こんなに危ない場所があるなんて思わなかったの」

 ちょっと、妖精が少女の前に出て、しょんぼりとした表情を見せる。
 もっと安全に、ゆるりと出来るお仕事――であるはずだったのだ。
 妖精の見通しが甘い、そう言われても仕方ない所だった。
 

メア > 「そっか……」

だめかぁ…と素直にあきらめる
自分より詳しいエデンが待ったをかけるのだからそれに従うのは当然の事

と、そんなことを思っていたら少しだけ試す許可が出た

「ん、大丈夫…それに、どこかでは必要……」

黒い土に黒い手が伸びる
どうせいつかはこの黒い水に対しても触れる機会は来る
それならば比較的安全な時に試しておいた方が良い

「大丈夫、私がやりたいから…やる…!」

そう、自分で決めて今ここにいるのだ
意を決して黒い手の指先が黒い土に突き刺された

エデン-H-プランク >  
「メア――」

 妖精が少女を見上げる目が、きらきらと光る。
 少女の優しくも強い意志に、胸がときめいてしまったようで。
 きゅん、という擬音が頭の上に大きく飛び出した。

「わかったわ、何かあったらすぐに治療してあげる。
 なにが起きても大丈夫なように、気をしっかり持つのよ!」

 そう、むん、という擬音を出しながら少女を見守る。
 そして、その異能の手が黒い土を掘り返すように刺さると――

 ――それは、酷く混沌とした光景だった。

 少女の視界に、これまでの記憶が、時間も場所もバラバラに、入り乱れて再生される。
 路地裏の少女、研究所の少女、学園の少女。
 そしてそれらが、どろどろと、真っ黒に溶けていく。

 溶けて溢れ出した記憶は、少女の足元まで広がり、少女を呑み込むようにその水かさを増していく。
 身体に貼り付くような粘りつく黒い水は、少女の膝までを沈めて、止まった。

 ――どぷり、と、少女の目の前で、黒い水が大きく盛り上がる。

 そしてそれは、大人の女性の姿を模る。
 どこか少女によく似たそれは、少女に貼り付く様な笑みを向けた。

 そして気が付けば。
 少女の周りには無数の、少女に似た女性が笑って立っている。
 それは少しずつ姿が違い、また、様子も違う。

 まるで、これから訪れる少女の未来を無限に予告して映し出したかのようだ。
 そして最後に少女の前に浮き上がって模られた姿は――一人の大人の女性。
 少女によく似た、けれど周囲の無数の未来図とは異なる、少女の――――――

 その女性は、少女が見た事もない程、穏やかに、そして優しく少女に微笑みかけていた。
 

メア > 「ん、頑張る……!」

黒い土に異能が触れる
世界が黒一色に染まり足元に広がった記憶…黒い水は決して気持ちのいいものではない

そして現れた人型…色と形が鮮明になればそれはとても見た事のある人物に代わる

「おかあさ……」

周りの自分に似た者達も気にならないほど目の前の存在から目を離せない
動機が早まり呼吸が細くなる

心臓を掴まれた様な感覚を感じる
胸を抑え、心を強く持とうと心掛け……

「やっほぉくそババア、前よりも小皺が目立ったぁ?」

唾を吐き捨て、嗤った

「ほんとたちが悪いよねこの水、どうせここで暴れたって現実だと洗濯機に八つ当たりみたいな事になるんだろうね。
ねぇどんな気持ち?子供相手なら簡単に崩せると思ったら一人芝居になってどんな気持ちぃ?」

さっさと消えろ雑魚、と中指を立てて嗤った

エデン-H-プランク >  
 ――中指を立てた『少女』が嗤えば。

 全ての人型が派手な水音を立てながら、形を失った。
 けれど、再び、人が身体を起こすように黒い水は一人の姿を模る。
 そうして模られたのは『少女』が何よりも守りたい少女の姿だった。

『――どうして』

 虚ろな瞳。
 虚ろな声。

『どうして』

 虚ろな少女は、『少女』へと問いかける。
 ただ、「どうして」と繰り返し。

『どうして――』

 ――私の代わりになろうとするの。

 『少女』の頭の中を揺らすように、強烈に少女の声が反響する。
 その問いかけは、何度も、何重にも響く。
 無限に連なるように反響し、『少女』の聴覚を埋め尽くそうとしていた。
 

メア > 「はっ、芸のない奴。」

目の前にはある意味では見慣れた姿
一番大切で何に変えても守るべき存在、メアの姿をした何か

「代わりになろうとする?違うなぁ。
僕はメアの代わりなんだよ。」

歯を見せ、笑みを浮かべる
何重にも響く『雑音』を気にする様子もなく

「メアはもう十分苦しんだ。
だからこれからメアが辛くなったり不快に感じることは全て僕が代わりに受けるんだ。

お前等みたいな他人の傷口撫でまわして喜ぶ救いようのない奴等には分かんないかな?分かんないだろうね。」

でも僕はそれで幸せなメアが見られれば満足なんだよ
そう言い切る

強すぎる信念は時に狂気と呼ばれるがグリムのそれもその一つなのかもしれない