2025/01/16 のログ
エデン-H-プランク >  
 ――どろり、と、もう一つ人型が浮かぶ。

 新しく浮かび上がった少女の姿は、昏い瞳を『少女』へと向ける。

『そうやって、私の自由を奪うの――?
 辛いのも苦しいのも、私のものなのに』


 少女の姿がまた新しく浮かびあがる。
 その瞳は淀んで憎しみを向けるように『少女』を見る。

『私は愛玩動物じゃない――。
 私の未来を奪わないで』


 また新しく少女の姿が浮かび上がる。

『いつも私の物をうばってく――』

『守る、助ける、庇う、耳触りのいい言葉ばかり――』

『私の代わり――私の時間を奪う人――』

『私の権利を、自由を奪う人――』


 次々と浮かび上がる少女の姿。
 それはまるで無限に思えるほどの数。
 その全てが呪詛のような言葉を、『少女』へと投げかけ続ける。

『私はあなたの、なに――?』

『あなたは、私のなに――?』


 『少女』の頭を揺らす無限の大音響。
 それはまるで、『少女』こそが少女を戒める存在だと言うかのように責め立てていた。
 

メア > 「辛さや苦しみも私のもの、ねぇ…まぁあながち見当違いでもないね。
けどさ、それに耐えられずメアが壊れたらどうするわけ?」

こちらを見つめる何かを見つめる

「自己責任、成長の為なんてくそみたいな理由で見殺しにするのがそっちの正義なら相容れないね。
耳触りのいい言葉大いに結構、僕が出る事でメアが犠牲にする自由と時間で最大限メアの心と体が守られるならそこに僕は躊躇しない。

というかさぁ、そもそも僕が引っ張り出される原因になった外敵のお前がゴチャゴチャ呟いたって何も説得力無いんだよバーカ。」

だからこの会話だって極論で言えば無駄
恐らく現実で何か処置をしているエデンの助けを黙って待っていればいいのだから

けどムカつく相手にはきっちりやり返すのもグリムの信念である

「メアは僕にとって一番大切な存在さ、僕はメアにとって…過保護な兄弟?まぁそんな感じかな。
嫌味しか口にできない友達も居なさそうな奴にはちょっと眩しすぎるかな?

雑音しか出せないぶっ壊れたスピーカはとっとと僕達の役に立って成仏でもしてろよ。」

エデン-H-プランク >  
「――まあ、グリムったらお口が悪いわ」

 そんな、ふわりとした調子の声と共に、甘く温かな花の香りが漂う。

 ――それと同時に、周囲の黒い空間は霧散した。

 現れたのは、どこまでも続く、星の海。
 天体が渦巻き星の光が点から線へと変わり、昏い夜から明けるように、夜明けのような薄紫色の空が水平線の向こうまで続く。

 そう、水平線。
 足元の黒かった水は、いつの間にか空の星々を映し出すほどに美しく、清らかだった。

「グリムの言う事も最もだけど、守り過ぎちゃだめよ?
 女の子は、傷つきながら強くなるの。
 そしていつか、無疵(むか)の美しい花を咲かせるのよ」

 その、星海(せいかい)の中に現れたのは、背丈は160センチ半ばほど。
 手足が長くスタイルのよい、桃色の長い髪を靡かせた一人の女性。
 少し長い尖った耳の形と、髪型、そしてどこまでも朗らかな声が、あの『ピンクの妖精』と一致した。

「あ、初めまして、なんて言ったら泣いちゃうんだから。
 グリムとメアなら、私が誰か、もうわかるでしょう?」

 そう言って前かがみになって『少女』と視線の高さを合わせて、空色の瞳で笑いかけた。

「今、わたし(・・・)がメアに拮抗薬を飲ませたわ。
 もうすぐ、現実で目を覚ませるはずよ、安心して」

 そう言うと、空を見上げて、高く手を伸ばした。

「この空間、この場所は、ちょっとだけ特別で、不思議な場所。
 あなた達が星骸に触れた事で、少しだけ重なった、私の楽園――。
 よかったわ、あなた達が元気そうで」

 ふ、と安心したように柔らかな笑みを少女たちに向けた。
 

メア > 「はぁ?」

黒一色の視界が開ける
遥か遠くまで続く星の海の後継

以前一度体験したこの光景が見えるという事は…

「まだ戻れてない、か。
…僕としては傷つかなくても済む穏やかな成長を求めるよ。」

目の前の存在が誰なのか
ついさっきまで隣にいた見知った妖精、エデンから得た情報を纏めるにそういう事なのだろう

問題はなぜここでこうして自分と話をしているのかという所だけれども

「出口まで案内してくれるなら安心だよ。
にしても楽園ねぇ…おっかない門番が居る以外は快適そうだね?」

空を見れば無限の星
その光景はとても幻想的で絶景にも思える

エデン-H-プランク >  
「ふふっ、本当は星骸を通して接触できるのは稀なの。
 この楽園は、現実と幻想の境界にある場所。
 星骸に触れて自我を保てていたのと、私の意識が近くにあった事。
 ちょっとだけ特別な条件が揃ったから、あなた達を招待してあげられたのよ?」

 つまり、少女たちが星骸の幻影に呑み込まれていたら、この場所にはたどり着けなかったという事だった。
 桃色の少女――エデンは、黒い少女たちへと笑いかける。
 そして一歩ずつゆっくりと近づき、その頭へと手を伸ばした。

「ああ、やっとあなたに触れられるわ!
 ずぅーっとこうして、上げたかったのよ?
 ねえグリム、あなたとメアの事、ぎゅーって抱きしめてもいいかしら!」

 避けなければ、エデンの手は少女たちの髪を優しく撫でるだろう。
 そこには間違いなく実体として、エデンの姿があった。
 

メア > 「自我が保てないかもだったのあれ…」

かなりピンチだったらしい
確かにメアには効果てきめんだったことを考えれば心に少なくないダメージはあったはず

ゴチャゴチャ言われたがやっぱり自分が出て正解だったんじゃないかと黒い水に対して思ったり

「ちょ、なに……えぇ……まぁ良いよ。」

助けられた恩もある
後は、メアが安心する要素にもなるかと触られることを受け入れる

大人しく撫でられるし、少し抱きしめられるくらいは大人しくしている

エデン-H-プランク >  
「ええ、あの時点で自分が揺らいでしまうと、星骸に少しずつ汚染されてしまうわ。
 この点に関しては、グリムがいてくれてよかったわね」

 きっとあの優しい少女一人であったなら、どうなっていたかわからない。
 そして、ぎこちなくも許可を貰えたなら、エデンは嬉しそうに目を細めて、少女たちの髪を優しく撫で、その頬に優しく触れる。

「――二人とも、とても頑張ってきたのね。
 優しくて愛らしい子と、頑固で強い子。
 きっと、あなた達なら、未来にとても美しくて綺麗な花を咲かせられるわ」

 ふわりと、風が花を撫でるようにやわらかく。
 少女たちを、エデンは包み込むように抱きしめた。
 花のように甘く穏やかな香りに包まれると、どこか安らぐ様な心地を得られるかもしれない。
 

メア > 「揺らぐだけで、か…やっぱ触るのはまずいか。」

異能越しに触ってこうなったのだから直接なんて試す気もならない
やわらかい頬に触れられたまま彼女を見上げる

「……ん、ありがと……」

抱きしめられればそんな言葉を返す
落ち着いて、安心できる抱擁

さっきまでの不安や恐怖はもう消え去った

エデン-H-プランク >  
「うーん、どうかしら。
 一度乗り越えると、耐性も適性も変わってくるし、薬もあるから大きな問題は無いと思うわ。
 次はきっと、触れても気分が悪いくらいで収まるはずよ」

 少女たちを抱きしめて、優しく後ろ髪を撫でると、そっと体を離す。

「あなた達二人でしか咲かせられない花が、きっとあるはずよ。
 あなた達の、温かくて美しい、人間性の花――いつか咲くのを楽しみに見守っているわ――」

 エデンがそう言った時、楽園の光景が絵の具が水に溶けるように、ゆっくりと滲んでいく。
 そして、エデンの姿もまた星空に溶けるように消えて行き――

「――メア!
 大丈夫?
 私の声が聞こえる?」

 妖精(エデン)が繰り返し声を掛ける。
 少女の身体は、掃除機のアームに抱えられながら、防護服から頭部だけを出した状態で横たわっていた。
 星骸に対する薬は飲ませる事が出来た。

 けれど、それ以前に心が蝕まれていたら、少女にとても大きな傷を与えてしまっているかもしれない。
 少女を案じながら、妖精は少女が目覚めるまで、声を掛け続けるだろう。
 

メア > 「そう、なの……?」

抱きしめられて、少し体が離れる
またあれに触れるのは勇気がいるけれど一度試してみよう

「ん……頑張る…」

世界が歪み、滲んで変わる

慌てた様子で聞こえるのは同じだけど少し違う妖精の声
今度はきちんと現実に帰ってこれたらしい

「ん、おはよ……耐性、げっと……」

ぐっと親指を立ててサムズアップを見せる
少し怖い思いをしたけれど収穫はあった

平気な様子をアピールするためにも気持ち元気に返事をしてみたり

エデン-H-プランク >  
「メアぁ~!
 無事でよかったわ――っ!」

 少女の胸に飛び込んでいく妖精。
 もちろん、ただの立体映像なので、少女の身体を突き抜けて地面の中へと飛び込んでいった。
 掃除機は、そのアームをゆっくりと動かして少女を立たせる。
 やけに紳士的だった。

「ぷはっ――耐性、耐性?
 そっか、そうね、確かに心を蝕まれないで戻って来れたみたいだし、薬の効果もあるから。
 うーん、数秒くらいなら触れても、気分が悪いくらいで済むかしら?」

 妖精は地面の中から戻ってきて、少女の顔の前で少し首を傾げながら答える。
 確かに計算の上では、少女は星骸に対して多少の耐性を得たのは間違いないだろう。

「――あっ、そうだわ!
 メア、あなたが掘った所を見て?」

 そう妖精が指で示すと、掘り返された穴へと、滲むように黒い水が溜っていた。
 少女が掘った穴に、泥濘に溜っていた星骸が滲んで流れてきたようだ。

「あの穴を気を付けて掘り広げて、掃除機が入れるくらいの大きさにしたら、いっきにノルマ達成できるわ!
 でも、星骸の濃度も濃いから、さっきよりもずっと危険なの。
 ――メア、出来る?」

 先ほどと違い、こんどは少女に出来るかと訊ねた。
 少女の優しくて儚いけれど、そこに秘められた強さを知って、少女の判断に委ねる事を躊躇わなくなったのだ。
 

メア > 「ん、ばっちり…!」

何もかも順調というわけではなかったけれど結果は上々
アームにゆっくりと立たせてもらう

「うん、少しだけなら…大丈夫……」

そう言われた、とは今は言わないでおく
あそこで起きた事を説明するのは安全な場所からでも遅くはない

ふと視線を向ければ掘り返した場所には黒い水が溢れ、溜まっている
思わぬ形で黒い水を集めることには成功していた

「どろどろ、たくさん……
ん、今度は…だいじょぶ…!」

掃除機からスコップを受け取り、慎重に穴を広げ始める
できるだけ黒い水に接触しないようにしはするが…

「…ん、平気……」

少しはねた水に触れても知らない光景は広がらず少し気分が悪くなる位程度
油断はしないが過度に警戒もせず、てきぱきと穴を広げていく

エデン-H-プランク >  
「まぁ――!
 流石ねっ、逞しいわメア!」

 妖精は小さな手足を躍らせて、嬉しそうに声をあげる。
 少女にスコップを預け、ハラハラとして少女を見守る妖精だが。
 少女は、時々顔をしかめつつも、着実に穴を掘り広げてくれた。

「素晴らしいわ!
 お疲れ様、メア。
 後は私たちのお仕事ね!」

『オソウジマース!』

 なぜかやたらと気合が入っているような電子音声をあげながら、掃除機は穴の中へと飛び込んでいく。
 そして、ズゴゴゴゴ、と音を立てて星骸を回収し始めた。
 こうして少しずつ繰り返していけば、この泥濘地帯の星骸は全て回収できるだろう。

「ほんとに凄いわメア!
 少し休みながら繰り返せば、ノルマの量は直ぐに達成できちゃうわ。
 泥濘を綺麗にするなら――うん、ノルマの三倍くらいは回収できちゃうわね!」

 少女は無事で、回収も順調。
 そうなれば一安心である。
 一仕事終えた少女に、掃除機の頭部から水筒が出てくる。
 みょぃん、と伸びた掃除機のアームが、少女に水筒の中身――温かなコーンクリームスープを蓋に注いで渡す。

「ひとまず、そこの穴の回収が終わるまで、ゆっくり休憩しましょ。
 耐性が出来ても一時的なものだし、疲れちゃうでしょ?
 ゆっくり休みながら、陽が沈むまでにはお片付けして帰りましょうね」

 そう少女をねぎらいながら、妖精は近くにあった倒木を指さした。
 しばらく休み、また穴を掘って回収し。
 それをしばらく繰り返せば、ぬかるんで危険だったエリアも、染み出る星骸を回収しきれただろう。
 

メア > 「ん、パワーアップ…!」

黒い水に対してのある程度の耐性
これが得られただけでも危険を冒した甲斐は有った

今後必ず役に立つはずだから

「んー……」

掃除機がぐんぐん黒い水を吸い込む様子を眺める
触れただけであんな超常現象が起きる黒い水を回収できる掃除機

やはり一番恐れるべきなのはこっちじゃないのかな、と

「んっ、いただきます…!」

暖かいコーンクリームスープ、まだまだ寒いし疲労も有ったのでありがたい
倒木の上に腰かけ回収する様子をスープを味わいながらゆっくりと待つことにする

時間がかかれば回収作業も終わり、初めての回収作業は大成功で終わる筈

エデン-H-プランク >  
 ――こうして、初めての星骸回収作戦は、大成功するのだった。

 少女の一生懸命な献身は、無事に必要な量の星骸を回収し終えた。
 それはおよそ、目標量の三倍近く。
 少女が星骸の浸食に打ち勝った、それに対する報酬はそれだけの、大きな成果となったのだった。
 

ご案内:「Free3 未開拓地区:汚染区画/汚染物質回収作戦!」からメアさんが去りました。
ご案内:「Free3 未開拓地区:汚染区画/汚染物質回収作戦!」からエデン-H-プランクさんが去りました。