2026/02/18 のログ
■カタストロア >
腕の一本でも味わって帰ろうと思っていたが。
女は目を細めて問う。
カタストロアという存在が何故、目立つところで暴れているのかを。
「さっき言ったことに通じるが」
「オレは随分と長いこと卵の中にいてね」
「外の音を聞きながら思っていたんだ」
「早く殻を破って、何もかも滅茶苦茶にしてみたい…と」
随分と苦しそうだ。
衝撃で肺に空気が入っていかないと浅い呼吸になり、それがさらに苦痛を招く。
「ダディの名前は常世神」
「犬っころでもないのに随分と長く“待て”をされたもんだ…クク」
舌なめずりをしてマズルから垂れる唾液を舐め取る。
「ところで、右利きか? 左利きか?」
「オレも鬼じゃない……」
「よく使う方は食べ残しておいてやる」
■牛丸 瑞璃 >
「常世神……なるほどね……。
生まれる前からって言葉にも、納得がいった……なぁ……。
キミ、ずっと卵の中で眠ってたんだ、ねぇ……?」
その噂は聞いたことがあった。
願いを叶える代わりに、大きな代償を伴う。そんな、常世神の噂。
つまり、この埒外の力は、常世神に与えられた後天的なものなのだろう。
本来存在する筈の、彼の中にあったものが表に出たのか。
あるいは、歪められたのか。
それは、定かではない。
もう少し話ができればとも思うが――無論、そんな状況はない。
だが。
話の最中、呼吸を整える時間はあった。
「ん~……左利き、かな?
だから食べるなら、右腕を食べてほしいな……ど~ぞ。
……痛くは、しないでね――」
そうして、獣にとっての獲物は体を横を見せるように、体を転がした。
段ボールの山の中で、彼女の右半身が見える。
煤けた制服は、ところどころ破けていた。
「――なんて」
全てはこの為に。
少女は決して、無意味に吹き飛ばされた訳ではない。
少女は決して、ただ消極的に、段ボールを緩衝に使う為だけに、計算をしたのではない。
■牛丸 瑞璃 >
「あたしが言うと思うかな、カタストロア……!」
ライムグリーンの血。爬虫類の如き鱗。トカゲの尻尾の如き再生能力。
全ての計算は、この有力な仮説の証明のために。
段ボールの山から出した彼女の左腕には、消化器が抱えられていた。
躊躇いなく、噴射する。
ただの消化器ではない。CO2消化器だ。
中身は、高圧で圧縮、液化された二酸化炭素。
液化している二酸化炭素を放出することで二酸化炭素が気化し、潜熱による冷却作用が生じる。
本来ならば、電気設備に置かれていることの多いこの消化器。
何の因果か、いつも通る商店街で常々見かけていたことは僥倖だった。
「力勝負じゃ完全にあたしの負けだけど……。
でも、こういう戦い方はあたしの土俵だからね……」
――このロジックの導く解決法。分は悪くない筈だ。
相手が、爬虫類由来の力を持つならば。
■カタストロア >
「さて、どうだったかな?」
「皿の前の料理を前にあれこれ話をする気になれない」
表情を歪めるように凶悪に破顔して。
「右腕だな、わかったとも」
そのまま口を開けて“食事”を行う。
瞬間。
消火器から液化二酸化炭素を噴霧される。
「が、あぁ!?」
苦し紛れに何を。
しかし、何かがおかしい。
動かない。体が、生命活動が鈍る!!
何をしやがった。
その声も出ない。
そうか、液化二酸化炭素。
受ければマイナス78度の世界へご招待。
知らなかったぜ……オレは寒がりだったんだなァ…!!
凍りつく右腕を振り上げ、トドメを刺そうとした瞬間。
駆けつけた風紀委員の放った銃弾が右腕を砕き折った。
「な……!?」
戦車砲にも耐えるオレの楯鱗を一発の豆鉄砲で!!
いや、低温脆性か……!?
一部の大型爬虫類の牙が金属でコーティングされているように!
オレの鱗の靭性も体心立方構造金属に担保されてたってわけか!!
「ぐ、うう…!!」
喋ることすら覚束ない。
再生能力が上手く働かない!!
今は逃げ出すしかなかった。
道路を走って通れそうなマンホールへ急ぐ。
このオレが…カタストロアがこんな弱点を持っていたのか……!?
■牛丸 瑞璃 > 立ち込める二酸化炭素。突入してきた風紀委員達によってその白煙が晴れれば、
そこに現れる瑞璃の姿。
「……Q.E.D.ってとこかな」
人差し指を立てて、風紀委員達を前にそんなことを言ってみる少女であった。
無論、直後に横腹を押さえて呻く羽目になるのであるが。
「……さておいて……保健委員、牛丸 瑞璃からキミ達に報告。
カタストロアの……弱点は見ての通り、低温による生命活動の妨害だったよ。
凍結弾とかあれば……今後配備しといてほしいなって。
それから、常世神が関与してることを口にしてたから……
そこのところも洗っておいてほしいか、な……い、ててて……ごめん、限界……」
そこまで口にすると、力なく倒れ込む瑞璃。
「あ~あ……もうちょっと、ファイナル・ガール気分に……浸ってたいけど……なぁ……」
超速計算を重ねた脳疲労に、全身打撲。体は限界を迎えていた。
風紀委員の波の間に見える友人、瑠夏の泣きそうな顔を見て、
笑顔のウィンクだけ返すと――瑞璃は、そのまま意識を手放した。
ご案内:「接触-商店街にて-」からカタストロアさんが去りました。
ご案内:「接触-商店街にて-」から牛丸 瑞璃さんが去りました。