2024/07/25 のログ
ご案内:「Free4 宗教施設群『破壊神の社』」に焔誼迦具楽さんが現れました。
ご案内:「Free4 宗教施設群『破壊神の社』」に蒼い影さんが現れました。
■焔誼迦具楽 >
常世島の夏は、暑い。
近年では最高気温が四十度近くなる事も珍しくなくなっていた。
まだ7月だから良いものの、今年も大変暑くなるだろう予感があった。
そんな常世島の中で、宗教施設群の一角には真夏でも秋口のように涼しく過ごせる場所があると噂になっていた。
ここ数年、人々の口に上るようになった噂である。
なお、その噂は真実であり、近隣住民にとっては夏の風物詩として定着しつつあった。
「ふう、こんなところかな」
庭先の菜園で腰を上げ、手入れした野菜たちを見下ろし満足そうにする少女。
白地に大きく『国士無双』と書かれたTシャツを着ている少女は、軍手を外して汗を拭った。
この少女こそ、数年前からこの場所に住み着き、宗教施設群にて局所的に人気を集める人物、『迦具楽』である。
熱や暑さには滅法強く、むしろそれらがエネルギー源でもある迦具楽だったが、纏わりつく湿気はいかんともし難い。
今年の湿度は、なかなかに鬱陶しいものだった。
「まだ気温がそうでもないのは、幸いというか、残念というか」
空を見上げれば、晴天とは言い難い曇り空だ。
湿度ばかり高くて、気温はいまいち上がらない。
体感温度ばかり上がっても、熱を食す迦具楽としては有り難みはないのだった。
■蒼い影 > ……変わらないね。
って。
そう言おうと思ってたんだけど。
―――。
な、な、な、なんだこれーっ
めちゃくちゃデカい菜園あるじゃん。
家めっちゃでかくなってるじゃん。
住人増えてるじゃん。
しかも、凄い一生懸命作業してるじゃん。
なんだろう、な。
変わるもんだね、ほんと。
そっと、黒い石の日陰から、こっそりと…猛暑日の作業をしている少女を見つめる、蒼い影。
そのまなざしは…酷く懐かしく。
酷く愛おしそうに、
けれど、酷く申し訳なさそうでもあり。
こそこそと、いつ、出ていけばいいかわからずに、
まるで恋しい人に話すか、話すまいかと乙女のようにもじもじする素振りは…
(あー、おっかしいなあ。笑われちゃうんじゃない、こんなの。)
自分でも、滑稽だ。
■焔誼迦具楽 >
そう、最初は雑草だらけで荒れ放題の荒れ地だったはずの土地。
そこに住もうと言い出した頃は、祭壇とこじんまりとした小さな家だったはず、だが。
「――ん~、いまいち育ちが悪いなぁ。
日差しはともかく、雨量かなぁ」
なんて呟きながら、空を見上げる。
やけに蒼く、澄んだ空だった。
こんな空を見ると、いつも思い出す。
「――で。
そこの不審者、いつまでこそこそしてるつもり?」
立ち上がった迦具楽は、ビシっと。
祭壇の陰に隠れている誰かに向けて、人差し指を突き付けるのだった。
■蒼い影 > 「あは…バレた?」
「だよね。」
「多分、もう私よりこのあたりの光景、見慣れてるだろうから。」
そっと、陰から姿を現すのは。
飄々とした笑いを浮かべながら、
何とも、何とも言えない様子で貴女を見つめる蒼髪ロングの少女。
丁度、澄み渡る空の色合いと同じ髪色。
「やほ。……久しぶり。」
緩やかに、手をあげて。
ゆっくりと、歩む。
「カグラ」
前へ。一歩。
「ああええっと―――上手い事言葉が出てこないや。」
「その」
もじもじした様子のまま。
言いよどむ。
「……ごめんね、」
「それと……」
「ありがと」
「キミのお陰で、……残ってたんだ、私」
一番投げつけたい言葉、吐き出した。
■焔誼迦具楽 >
陰から現れた姿に、迦具楽は目を丸くして、ぽかん、とくちを開けていた。
「あ――」
震える手がゆっくりと降ろされ、感極まったように、迦具楽の脚は駆けだした。
「蒼穹――ッ!」
懐かしい名前を呼んで、嬉しそうに――右手を握りしめて振りかぶり。
「――どこほっつき歩いとったんじゃワレェェッッ!」
熱量十分、真夏のバフ付き、フルパワーの右ストレートが一切の手加減なく、『親友』の顔面目掛けて振りぬかれた――
■蒼い影 > 「カグラ~~~!!!」
駆けよる。
嬉しそうに―――
「ああああああーーーーーーーーーーーっっっ!!!」
駆け寄った蒼色は、
彼女の凄まじい力量のストレートを喰らって吹っ飛んだ。
…うん、そうだよね。
その一撃は…身を差し出して受けるべきだ。
思い切りぶん殴られて然るべきだ。
全く……全くいう通りだ。
ただでさえ圧倒的な腕力を持つのに、熱によってパワーアップした拳は、
蒼色をピンポン玉みたいに豪快にかっ飛ばした。
「……き、効いたよ、カグラ。」
「あっはは……」
(ぶん殴られてなんだけどさ)
(どうも―――)
(キミには、もう勝てなさそうだ)
(ああ、強いとか弱いとかそういうんじゃなくて……)
(なーんか、ね。)
頬を抑えて転がりながら、満足そうに仰向けに倒れた。
■焔誼迦具楽 >
「――まったく!
いつものようにふらっといなくなったと思ったら、何年も音信不通で!」
蒼色を容赦なくぶっ飛ばした迦具楽は、ぷんすか、と擬音が付きそうな様子で転がった『親友』に近寄っていく。
「私がどれだけ心配したと思ってんの、バカッ、アホッ、おたんこなす!
連絡くらいよこしなさいよ、このすっとこどっこい!」
そんな風に、数年分溜まりに溜まった文句が、一つや二つでなく出てくるもので。
それでも、迦具楽はなぜか嬉しそうな親友に、右手を差し伸べた。
「――おかえり、蒼穹」
■蒼い影 > 「あう。返す言葉もございません。反省しております…」
何年ぶりだかわからないくらいだ。
そりゃあもう、怒られるだろう。
ところで冗談みたいに吹っ飛んだけど、
あれ人間だったら骨逝ってるじゃあ済まないのではないだろうか。
(どうしよう。)
(滅茶苦茶言われてるけど)
(生意気で元気いいところはそのままで、嬉しいな。)
(やっぱり、そういうところは)
(変わらないな。)
「あはは…ただいま。カグラ。」
そっと、その手を掴んで、握って。
ゆっくりと体を起こして、
―――大切な親友へ。
悪戯っぽくも、嬉しそうに笑った。
■焔誼迦具楽 >
自分でぶっ飛ばした親友を助け起こすと、迦具楽も悪友にするように笑い。
全力で殴った右手で、今度は軽く、その胸を叩いた。
「ふふっ、あんまり変わってないじゃん。
色んな人から忘れられて、ちんちくりんにでもなってるかと思った」
そう笑いながら、自分の腰辺りの高さを水平に示しつつ。
「それで、放浪癖のおたんちんは、どーんな心境で今になって帰って来たのかなー?」
んんー? と、目を細めて意地悪そうに見上げる。
「ここはもう、とーっくに、私と私の家族の家になってるんだけどなーぁ?」
なんて、どこか楽しそうに言いながら。
■蒼い影 > 「……痛いところ突いてくるねキミ。」
そういや昔カグラの事、小さいなとか笑ったっけ?
数年越しの意趣返しか?
こんにゃろーっ!!
……ふふ、変わんないね、やっぱ。
そう思うと笑うばかりだ。
「そうだよ、色んな人から忘れられて、死にかけてた」
「キミがいなけりゃ死んでたんだよ、私」
「キミがね」
「ここにいて」
「いろんなところで私の事を思い浮かべて」
「時にその名を呼んでくれていたから」
「生きて戻ってこれたんだ」
「だから、そうだね…。」
蒼い目を伏せ
「―――バカでアホでおたんこなすで、おたんちんな破壊神が恥ずかしながら、
謝っておきたくて。お礼言っておきたくって。」
「それと。」
「家族、か。そっかぁ……ふふっ、カグラが、家族を持つくらい成長してるとは思わなかった。」
「そう。」
「キミと―――キミの家族に…元気でやれよって、祝福を、ね。あはは、似合わないね。」
「笑ってくれていいよ」
祝福とか、やったことないんだけどね。
特別。
■焔誼迦具楽 >
「――はぁ~」
呆れたようなため息。
あの傍若無人を絵に描いたような理不尽さはどこへやら、だ。
「感謝するなら、この街をぐるっと挨拶回りでもしてくるべきね。
毎朝、お散歩の時に手を合わせてくれるおばあちゃん、花壇の花が満開だからって飾りに来てくれるお姉さん。
夕方になって駆けまわってる子供たちも、気まぐれに手を合わせていくし、奥のプールを使う人達も、常連さんなんか来るたびにお参りしてくれる」
それは別に迦具楽から頼んだ事でも何でもない。
ただ、この街に馴染んだ迦具楽が大事にしているならと、多くの人達がこの小さな祭壇を見守ってくれていたのだ。
「そ、れ、に――ッ!」
今度は、左手での全身の捻りとバネを使ったボディブロー。
人間だったら複数の内臓破裂で即死しそうな一撃を、今度は少しばかり加減して、親友を家の前まで吹っ飛ばした。
「――私、ここから、あんたの名前を外した事。
いーっかいも、無いんだけど?
元気でやれ、なんてどういうつもりよ」
いつの間にか大きく増築された家。
その中でも、一番古く見える門柱、その一番上には、一番綺麗に磨かれている名前が色あせず残っていた。
■蒼い影 > 「え、あ、うん。そう―――ええ……?!」
なんだ。
忘れられたんだと思ったら……
そりゃあ、びっくり。
「そんなに…顔出してくれる人がいるなんて、思わなかったよ、私。
道理で、死にかけっつっても妙に余裕がある気が…
全く、キミにはかなわな―――ごふーーー…っ!!?」
しみじみして、喜んでいるスキもない。
代わりにその暴力……喜んで甘受しよう。
再びピンポン玉のようにその体はカグラが狙った方向へ吹っ飛んだ。
……随分、大きな家になったものだ。
「……な、殴らなくてもいいんじゃないかなーーー……いや。
あの。そのパワーどれくらいか分かってる?私じゃないと2回は死んでるぞ~?」
頬と腹を抑えながら飄々として笑っている。
「そっか。やっぱり……私を、私として承認してくれてたんだ。…家族として?なんてね。」
輝かしいその名の刻まれた柱。
こんなに、年数がたったって…忘れられちゃいないんだなって。
「ええっとさ。」
「ああいや、その……」
「私さ…消えちゃうのかなって思ってたから」
「言葉は残しておいた方が、良い、じゃん……?」
……こっちは、あんま笑えないか、冗談じゃないんだけど。
「かっこいい事言ってやろって思ってたんだけど―――消えるに消えれなくなったなぁ、こりゃ。」
■焔誼迦具楽 >
「いいじゃない、蒼穹なら死なないでしょ。
へなちょこな事言ってるから、軟弱になってるかと思ったけど、案外丈夫でよかったよかった」
むしろ、右はともかく、半端に加減した左手の方は殴った手が痛いくらいだった。
そして、弱気な言葉は、べ、と舌を出して鼻で笑い飛ばした。
「消えるわけないでしょ。
というか、消えるならとっくの昔に消えてたんじゃないの?
それに、あんたがカッコいい事なんて、似合わないって」
なんて二人で見る門柱には、一番上に輝く蒼。
その下に三人分の名前が並んで、一番下には、五人目の名前が嵌るようになっていた。
「あんたがいてくれたから、ここが私の家になって。
あんたを待ってたから、私たちの家になったの。
だからここは――」
迦具楽の声は、無邪気で明るい声で遮られた。
『ままーっ!』
小さな麦わら帽子を転げ落としながら、駆け寄ってくる小さな姿。
黒く艶やかな髪と、ルビーのようにキラキラと輝く瞳。
「――おわっ、おかえり、輝夜」
そんな小さな少女は、迦具楽にとびかかるように抱き着く。
それをしっかり受け止めながら、迦具楽は笑っていた。
『んぅ~、まま、このおねえちゃん、だぁれー?』
少女の瞳は、名前の通り眩しいほど輝く好奇心で、『蒼いお姉ちゃん』を見つめていた。
「そうだねえ、輝夜ははじめましてだもんね。
このおねえちゃんはね、ママの初めての家族なんだよ」
『おおー』
そう言われると、少女はますます、瞳を輝かせて『お姉ちゃん』を見つめる。