2025/02/07 のログ
ご案内:「駄菓子屋『おおげつ』」に宇賀野 実さんが現れました。
ご案内:「駄菓子屋『おおげつ』」に東山 正治さんが現れました。
東山 正治 >  
駄菓子屋『おおげつ』
別に東山は駄菓子が好きという事はない。
甘いものも人並み程度。此処に来る理由は基本は一つだ。
今や数少ない旧友の"容態"を見に来る程度だ。
表には出さないが、やっている感覚としては"お見舞い"に近かった。

「──────……ん」

しかし、東山は教師の中でも委員会と二足草鞋を履く多忙人間。
決して蓄積された疲労を表に出すことはなかったのだが、
或いはそれは女神の悪戯か。それとも旧友と過ごす時間に油断があったのか。
何にせよ、途中で寝落ちてしまったらしい。寝ぼけていても頭は冷静だった。
手元にある開けっ放しの安い缶ビール。酒盛りの最中に寝てしまったようだ。
我ながらなんと不用心な、苦い笑みを浮かべたが、それは別の意味に変わった。

「……あー、途中で寝ちゃったオレが悪いんだけどさ。
 膝の上に乗っていいとまでは言ってないんだけどねぇ、実ちゃん」

まだ少しぼんやりする視界の中、膝の上を独占する白いちびっこに苦言を呈した。

宇賀野 実 > 「えっ?」
あぐらをかいたせーじさんのお膝の上で、焼き鳥を頬張りながら上を見やる。
見上げるように振り向いたまま片手に持ったビールを一口、そして逆の手にある焼き鳥を一口。
手についたタレも小さな舌でぺろりと舐め取ってから、ご満悦の表情を浮かべた。
「だって、せーじさんが寝ちゃってて、なんかちょうどいい隙間があるなーって…。
 それともアレです?姪っ子をお膝の上に乗せてくれないんですか?」

駄菓子屋『おおげつ』の座敷…二人の飲み会で使う場所である。
遊びに来てくれたせーじさんにおおはしゃぎして一緒にお酒を飲んで数刻…。
あぐらをかいたせーじさんにじゃれつきたくなるのはいつものことであった。
しっかりとした成人男性の姿だった時もじゃれついてはいたが、
今の体になってからはじゃれつき方をちょっと変えていたのである。

えいやと相手のお腹に背中を預ける。固くたくましい男の人の背中だ。
性別的には自分も男性ではあるのだが。
「せーじさん、最近遊びに来てくれなかったしー。こうやってじゃれつくぐらい許してくださいよ^。
 ほら、遊んでくれなかったツケってことでひとつ。」
お膝の上から動くつもりはないとばかりに、ぐりぐりと体を擦り寄せる。
どこか甘く幼い…成人男性でも、そも人でもあまり持たない香りが微かに舞った。

東山 正治 >  
ふぅ、と一息を吐いて手元の缶ビールを飲み下す。
炭酸の抜けた味気ない液体がぼんやりとした思考を洗い流す。
相変わらずマイペースな感じは昔から変わらない。
ただ、その見た目が変わり果てている。お陰で意味合いも大分変わる。

「え?じゃないけど。小動物か何かかよ……後姪っ子じゃないでしょ。
 なんでしれっと姪っ子狙ってるの???もしかしてそういう趣味???」

勘弁してくれよ、といいながら無理に退かそうとはしない。
どうせ二人きり何だし、何より東山はなんだかんだいいながら気を許していた。
旧友だから、というのもある。丁度いい膝置きみたいに、腕を頭に乗せてやった。嫌がらせだ。

「まったく、何時からそんな冗談言うようになったのやら……。
 仕方ないでしょうよ、オレだって忙しいんだし。……にしても……」

鼻腔を擽る甘い匂い。
忌まわしい香りだが、二度目の失態はない。
何とも言えない表情で見下ろす姿は、相変わらず幼く白い。
此処で出会った時と変わらない、幼いままの先祖返りの姿。

「……戻る気配はない所か、前よりロリっぽくなった……???」

じぃ、懐疑的視線。

宇賀野 実 > 「小動物いいじゃないですか。ニャンちゃんとワンちゃんどっちが好きですか?
 今度着ますよ! えっ、だってせーじさんが最初に姪っ子っていったのに!!
 なんで俺のせいになるんですかー!」
ぺちぺちと小さな手で太ももを叩く。抗議のつもりである。
プールに一緒にいった時のことを持ち出して自分をすごい正当化しようとした。
足をブラブラさせながらまたビールを一口。にがいけど飲める。オトナだし。

ふふん、とドヤ顔をしていたら頭の上に腕を乗せられた。
人間腕置きの完成である。腕を振り払ったり嫌がったりすることなく、
相手の言葉に唇を尖らせた。
「忙しいのはわかりますけどお~。 やっぱり寂しいじゃないですか…。」
ただのお客さんではなく、大事な大事な友人なのだ。
自分の中では彼はとっても大事にすべき相手なのである。

「戻る気配はー、うーん…。そうですね。医者に見てもらってますけど小康状態で…。
 えっ、前よりロリっぽくなってます?どの辺が?どのへんがですか~?
 ねえねえせーじさぁーん♡ 誰がメスガキっぽくなってるっていうんですあ~?」
小さな体を押し付けながら楽しげにきゃあきゃあと声を上げる。
じゃれ方から見て、少なくても人格的に侵食はないということがわかるだろう。たぶん。

東山 正治 >  
「あんな言葉の綾何時まで引きずってんだよ……。
 大体なぁ、ちょっと考えて皆よ。オレと実ちゃんがさ、プールだぜ?
 一つでも方便用意しとかないとそりゃオタク……マズいでしょ、色々」

中年男性と見た目ロリっ子。
此処に何かしらの関係性がなければ何を疑われても不思議じゃない。
ただの方便をまさか此方も此処まで引きずられるとは思わないだろう、普通。
やれやれ、と呆れた表情のまま抗議の代わりに頭を撫でておいた。姪っ子をあやすおじさんだコレ。

「後、オレはどっちかと言えば犬かなぁ……」

そこは律儀に答えるらしい。
続く言葉にはくっ、と喉元から漏れる引きつった笑み。

「何時かいなくなる相手の事思ってもしょうがないぜ?」

忙殺か、或いは仕事の中で殉死するか。
何れにせよ、"現世に未練はない"東山には滑稽な話だった。
それこそおじさんのつもりはないが、何時かきちんと戻るか、手のかからないようにはなって欲しいものだ。
そんな事を平然と言うのは、一重に突き放そうとする意思もある。

耳鼻科一回行っとくか???
 メスガキっぽいなんて言ってねーっつの。
 ていうか、どっから覚えてきたんだそういうの……」

膝の上できゃあきゃあ騒ぐロリっ子(♂)。
げんなりとした表情のまま缶ビールを飲み干し、食いかけのもんじゃを軽く齧る。
この何とも言えない味が妙に酒が進んだりするのだ。
しれっと新しい缶を取り出す辺り、まだまだ飲みたりなかったりもする。

「……本当に戻る気あんの実ちゃん?
 まぁ、戻らないなら戻らねぇで仕方ないのもあるけどな……」

どうしようもない理不尽、不条理はよく知っている。
東山としては嫌気も差すが、それで関係が変わるはずがない。
……まぁ、多分、メイビー。軽く実のほっぺを引っ張ってみた。

宇賀野 実 > 「引きずってません~。気に入ったから使ってるだけですう~~~~。」
屁理屈女児降臨だった。
「まあ、たしかにそうですよね。でも使い勝手がいいんですよ、実際。
 まだ何も知らない人とかが『一人でだがしやさんしてるの~?えらいね~~(裏声)』とかやるんで、
 『おじさんがいるんです!!!』っていって防御に。
 この体はこの体で困ることもあるんですよねえー。」
ウム―、とため息を一つつく。 いつでも楽しげにしているけれど、
だからといっていつも楽しい暮らしをしているわけでもないのだった。
そんなふうにしていると、大きな手が優しく頭を撫でてくれる。心地よさに唸った。
「ぬあー。」
負けないようにまたビールを流し込み、焼き鳥をかじる。
焼き鳥はなく成ったので串を机の端っこに置いた。

「犬、オッケー! めっちゃかわいいワンちゃん衣装用意しときますよ、へへへ…。
 せーじさんが井伏鱒二みたいなこというー。ペシミズムですよペシミズム!
 眼の前にせーじさんはいて、せーじさんのお膝の上に俺は実存してるんですよー?
 ねえねえー。 あれですか?ビール足りてないとかですか?」
お膝の上できゃあきゃあ騒ぐ様子は、まさしく親戚に甘える女児だった。
ビールをぐっと流し込む。空になったので机に置いて、また机から新しい缶を取った。

「そりゃ覚えてますよ! クラスメイトとお話してるといろんなことを覚えますよ。
 この年になっても勉強だなっていうか~、賢くなれたっていうかー。」
えいえい。小さいコテでもんじゃの隅っこ…カリカリになっているところをついばむ。
素敵な香ばしさと潮っ気がうまい。ビールが進む。

「戻る気ありますよ! ただ継続的に調査が必要なんで、なかなか反転攻勢に出られないんですよね。
 ホイ!でなんとかなるんなら楽なんだけどなー。 あー。このままじゃ超可愛い姪っ子として
 せーじさんにいっぱい甘え倒すことになりひゃいほっへひっぱらひゃいでえ」
ドヤドヤ顔で語っていたところにほっぺをひっぱられる。柔らかいほっぺたがもっちり伸びて、
情けない声を上げた。

東山 正治 >  
「……、……え、オレそんな風に使われてたの???
 お前なぁ、オレは別に保護者でもなんでも……まぁいいけど」

知られざる衝撃の事実。
いや、確かにそうした方が楽かもしれないけれども、
まさかそこまで便利に使われているとは思わなかった。
嘘から出たなんとかって奴だろうか。え、本当に姪っ子???

「…………」

「(ヤベェ、一瞬本気で考えちまった)」

彼(彼女)が姪っ子であるという思い込み。
危ない危ない、空気に呑まれたらシャレにならないぞ。
ため息混じりに首を振れば、カシュッと缶ビールを開けて思考ごと飲み干した。

「え、そういう話だったのコレ???
 いや、まぁ、嫌いじゃないけれどもそうじゃなくない???」

犬の衣装の話しして用意されるって宣言されることある???
酒に酔わない方の人間ではあるが、これには思わず真顔。マジかよ。

「……そりゃ、今はな。存在しなきゃ、会いにこねぇよ。
 今や幽霊が盆以外にも出歩くような世界だけど、オレは死んだら現世(ココ)に来る気はないからな」

今や非常識が常識みたいな世界だ。
この世界を認知しても許容することは決して無い男だ。
死んだらもうあの世でゆっくり暮らすことは決めている。
尤も、自分の行き先は地獄だと決まってはいるのだ。
くつくつと喉を鳴らして笑いつつ、膝下ではしゃぐ女児に頬を軽く撫でておく。

「交友関係にあーだこーだ言う気はねーが……何ていうんだ。
 もしかしてだけど、そういうヘンなのとか女子力ってそこで磨いてんの?もしかして」

おじさん、ちょっと心配になっちゃった。
もんじゃを同じように摘み、一気にビールで流し込み。
この塩っけとビールの苦みがいい相乗効果なんだ。

「そりゃあ別にいいんだけど、甘える必要はないだろ……必要は……。
 それとも、何?そうやって甘え倒して本当に姪っ子にでもなるつもりなのかい?実ちゃん」

勘弁してくれよ、とげんなり顔で肩を落とした。

宇賀野 実 > 「えっ、うん。 ほら、やっぱりちょっとオラついてるっていうとアレだけど、
 わりかし攻め攻めな人っているじゃないですか。そういうときにせーじさんの名前出すと、
 みんな子犬みたいに大人しくなるんですよ。 助かってます!ほら、これ奢り奢り!」
渋々な感じの納得をごまかすように、テーブルにある袋を開けてミックスナッツをお皿に出した。
高級な商品(駄菓子屋基準)を奢る…つらいけど嫌な気持ちになられたらそっちのほうが悲しい。


「えっ?そういう話だったと思うんですけど…。いやほら、ここで選択肢があるんですよ。
 犬の着ぐるみみたいなやつで出てきて『そっちかよ!!』ってなるパターンと、
 犬耳と首輪と尻尾で『そういうんじゃないじゃん…オチっていうか…』ってなるパターンと。
 どっちにしてもせーじさんの反応が見てみたいなーって思って!」
困惑も含めて、じゃれつくのが楽しいと言わんばかりの態度だった。
甘え9割メスガキ1割といったところである。

「えー、せーじさん死ぬとかー…縁起でもないですよ!
 死ぬのやだ!!! 俺はせーじさんにもっと遊んでもらうんだー!」
えい、とビール缶をテーブルに置く。膝の上でくるりと反転して、正対する形。
そのままえいやー!と全力(女児レベル)で抱きついた。
ほっぺたも撫でてもらってるし、アルコールも回って心地よいし、満足げに表情を緩めた。

「磨いてますよ。 店にちっちゃい子も来るんで、あんまり不精してられんのです。
 『みーちゃん、このまえわたしが教えたリボンの結び方してないー!』みたいな話が広まると、
 その…お客さんの信用が…へへへ…本当によくなくて…。」
若干表情が曇った。 別に女児になりたいとかではないのだが、
この見た目と客層上、そういった事に触れずにいることはできないのである。

「甘える必要はないっていいますけどおー。姪っ子じゃなくてもいいんですけどおー。
 一緒に飲んでくれたっていいじゃないですかー。 治療がうまくいかなくて、
 お店開くたびにちょっとづつ女児に慣らされていくのだって辛いんですよー!」
わあわあ!と必死に自分の苦境を訴える。 ひとしきり訴えたあと、後ろ手にテーブルを弄り、
飲みかけのビールの缶を引っ掴んで自分の口に運んだ。

東山 正治 >  
「……ああ、まぁ、ね。別にいいんだよね、使う分には。
 ヘンな噂とか尾ヒレ付けなきゃなんでもね。それで怯む程度なら、幾らでもどーぞ。
 別にオレはその程度で困ることも嫌がることもないしね。程々にな?」

自分で言うのも何だがこの"悪名"は知る人ぞ知っている。
嫌味で、人外嫌いの嫌な教師。その上公僕と来たものだ。
それで旧友が守れると言うならそれでもいい、嫌なはずはない。
指先でくるりとナッツを受け取れば器用に袋を開けて口にいれる。
この駄菓子のくせに妙に塩気を含んでいるのは、よくツマミとして合っている。

「……、……要はオレと遊びたいだけね。
 そういう所は変わってねーなァ……、……まぁいいけど」

だからこそ、余計に心が軋む。
女児みたいな、本当に子どもみたいなイタズラ発言。
何時もしてやったりとじゃれついてきた旧友。
それが望みもせず姿形が変わっていくのが、
思い出(ケシキ)と乖離が激しくなるのが心の嫌悪感を掻きむしる。
淀んだ表情のまま小さな体を受け止めた。鍛えてある大人の体。
固く、そしてメンソール系の煙草の匂いは、あの頃と変わっていない。

「わ、わかった。わかったって。言っといて何だけどさ。
 特に"まだ"死ぬ予定はねーよ。職務を投げ出すような事はしないって」

こう見えて本当に多忙なだけ。
あらゆる職務にがんじがらめにされているだけだ。
吹き出すような苦笑を浮かべて、どうどう、と白い髪を撫でてあやしている。
つまりそれは、職務から解放された時は──────……。

「……ああ、うん。まぁ、何。世辞辛い客商売事情ね……」

所謂アイドルの売り方が過激になって引っ込みつかなくなる奴だ。
ガチ恋営業は程々に。女児営業はこの通りだ。
駄菓子という関係上、やはり子供相手にするとなると、同情もしたくなる。
大きな中年男性の手が、苦情を訴える女児の口元を軽くなぞる。

「わかった、わかったよ。時間がある時はちゃんと愚痴も聞くし飲むからさ。
 そう腐らないでよ。ね?……つか、実ちゃんなんだかんだ言いつつひっつきたいだけなんじゃあ……?」