設定自由部屋です。常世島内であるならご自由に設定を考えてロールして戴いてかまいません。
また、ここでは回想的なロールも可能です。ですので常世島の外でも構いません。しかし、あくまでメインは常世島の内部でお願いできればと思います。
その他常世島内の特殊な場所や、シチュエーションなどにご利用ください。
参加者(0):ROM(1)
Time:01:57:47 更新
ご案内:「Free5 セーフハウスにて」から焔城鳴火さんが去りました。
ご案内:「Free5 セーフハウスにて」から挟道 明臣さんが去りました。
■挟道 明臣 >
そよ風のような静けさで、されど嵐のような脅威を伴って。
女は、クラインは去っていく。
本当に荷物でも受け取りに来たかのような単調さで、鳴火を伴って。
そうして、数瞬の内にその一室は静けさと季節相応の温度を取り戻していた。
「こっわ……人を人とも思ってねぇ奴なんざ散々見て来たつもりでいたが……」
そんなイカれた奴が核相応の爆弾13個も抱えてるとなれば正気を疑う。
いや、正気などとうに失っているのだろうが。
息を吐いて、改めてセキュリティを確認するが、監視に付けられていた蛇とやらが後始末に来るといった気配もない。
完全に監視の目が解けるという訳でも無いのだろうが、鳴火のいない今となっては用済みなのだろう。
曰くつきのアパートだというのに、輪をかけての事故物件にしてしまったかも知れない点には申し訳なさが無いでもない。
「んで、だ。
無茶して助けに来るな、か」
無理な相談だ。
そもそもが助けてくれという先約がまだ片付いてもいないのだから。
クラインに鳴火が連れていかれる、そこまではある種想定通りの避け難い部分ではあった。
彼女に言わせれば与えられた自由時間が終わっただけ、とでも言うだろうか。
予定調和と言えば、それだけなのだ。
「しっかしまぁ」
部屋の温度は冷えていく。
急速に、そして確実に。
コンクリートの壁に反響した声が部屋の中で響いて━━
「……無力だな」
右の手のひらに残った火傷の後だけが、虚しさを紛らわせていた。
■焔城鳴火 >
「――ごめん、明臣」
鳴火は、すれ違いざまに、小さく謝って、俯いたまま歩いていく。
その様子は、処刑台に上るような有様だ。
「無茶して、助けに来たり、しないでよ」
そのまま、クラインの元へと。
俯いたままの鳴火の表情は、うかがい知ることは出来ないかも知れないが。
その声は、明らかに不安と恐怖に震えていた。
■クライン >
「よかった。
あまり、人を、傷つけ、たくはない、ので」
青年が降参を示すと、クラインはどうやら好意的に笑ったようだった。
しかし、それは表情筋が引きつったようなもので、悍ましくしか見えなかったが。
「迷惑、かけました。
ぼくは、実験体を、回収できれば、いいので。
あなたは、無関係、ですから。
ええ、その、星核は、余分、ですし、除去します」
そう言って、視線だけ鳴火へ向け、自らやってくるように促しているようだった。
しかし、クラインの言葉は、明らかに『焔城鳴火』を人間扱いしてはいない。
すでに、情が働く段階を越え、ただの計画に必要なパーツ――でしかなくなっているのだろう。
■挟道 明臣 >
「気を付けてっつっても━━」
職業柄と言うべきか、経験則というべきか。
打つ手がない事は、即座に理解できていた。
9mm弾が相手を傷つける事を叶える姿も、左腕での力押しが通じる姿も、
ビジョンとして全く思い浮かばない。
シンプルに、それに抗うに足る何かを持ち合わせていないのだ。
「無理と分かっている無茶は、流石にな」
無茶をしないというのは、基本的に無理な注文だとしても、
勝てる手のない勝負にチップを放り投げる程には愚かではない。
ポーカーだって、1ゲームで4度はベットできるのだから。
「降参だ、降参。ばかばかしい。
せっかくここまで保護してきたんだ。
丁重に扱ってついでにその狂った体温もどうにかしておいてやってくれ」
テーブルの上にセーフティをかけた拳銃を置いて諸手を挙げる。
抗った所でかすり傷一つ付けられるかすら怪しい。
組み立てるプランが全部土台から崩壊しているともなれば、全面降伏しておくに越したことは無い。
どちらかと言えば、身の安全がひとまずの物としてすら保障されていないのは己一人なのだから。
いざとなった時の離脱の為に思考のリソースは回しておくべきだろう。
■焔城鳴火 >
「クライン、姉さん」
頭を押さえながら、鳴火はゆっくり首を振る。
「――明臣、気を付けて。
姉さんは、星核を、十三個も移植してる」
明らかに異常な頭痛は、星核同士の共振が原因だった。
そして、共振すれば、この場に幾つの星核があるかもわかる。
それがどれだけ尋常でない事か、瞭然としていた。
「私が行けば、危険はないから。
直ぐに殺されるわけじゃないし、無茶は、しないで」
そう言いながら、自分を庇おうとしてくれている相棒の前へと出ようとする。
■クライン >
「中身――ああ、塵灰の星核、でした、っけ。
ぼくは、そっちには、あまり。
必要な、物は、あるので」
特徴的な、短く音を区切る喋り方。
クラインは、一言終えると、けほ、けほ、と乾いた咳をした。
「ぼくは――ああ、ぼくは、クライン、です。
必要なのは、素体、ですから。
傷つける、つもりは、ありません。
争うのも、非効率、ですから、渡して、ください」
その言い方は、かつての妹弟子への情など感じさせない様子で、抑揚のない、それこそ機械的な声音だった。
■焔城鳴火 >
「ちょっと、明臣――」
鳴火は、もはや不安を隠しきれない声で呟く。
それは自分の行き末よりも、青年へを案ずる故の声だ。
しかし、頭痛は先ほどよりも激しくなり、足元がふらつくようだった。
■挟道 明臣 >
人を見かけで判断するな、とは言うが第一印象は否が応でもついて来る。
扉の隙間から姿を見せた女に抱いた印象は、昔居合わせた現場の死霊術の類で垣間見た物と似ていた。
生きているという差異すら希薄に感じさせるほどの生命との隔たり。
人間らしさという物を削りに削った果てに残った人形に、執着という動力を与えられた存在。
ガラスをこすり合わせるような掠れた声。
暗い緑の視線に映った己は、どれほどの恐怖を滲ませていただろうか。
「預けていた物ってのはコイツの事か? それともその中身か?
ここでバラそうってんならお断りだぞ、安くねぇ金額払ってる念願のマイホームなんでね」
飲み込め。
生物的に不可避の恐怖も、悍ましさも。
そんなものは減らず口を叩いて、傍らの熱に焼べてしまえば良い。
■クライン >
――ノックの音が止まってからしばしの間を置いて。
扉は冗談のようにゆっくりと、隙間を開ける程度に開いた。
そこから現れたのは、まるで死人のような、幽鬼のように滑り込んでくる女。
緑色の髪は恐らく伸ばしてほったらかしなのだろう、膝当たりの高さまで、無造作に荒れて垂れている。
前髪だけはクリップで止めているが、その顔は土気色で、目の周りにはあまりにも濃い隈が出来ている。
しかし、その髪よりもずっと昏い緑色の瞳だけは、執念というべき熱量が燃えていた。
「扉、重いですね」
その声はハスキーな、掠れた音。
視線は、最初に探偵を見て、次にその後ろの実験体へと向く。
「はあ――預けていたモノを、引き取りにきました」
非常に気だるそうに、面倒くさそうと言ってもいい様子で、探偵を見ながら言う。
預けていたモノ、が鳴火である事は、明確と言えるだろう。
しかし、女――クラインは、袖と裾が余った白衣を着ているだけで、武器の様なものは持っている様子はなかった。
■焔城鳴火 >
「私ってそう――え、ま――」
待って、という前に相棒が声を上げる。
その行動に驚きながら、慌てて手を振り払って、相棒の後ろに下がる。
不器用にも守ろうとしてくれている――それが嬉しくないと言えばウソなのだ。
しかし。
「ちょっと、どうするつもりよ。
これまでに比べても、よほどマトモじゃない相手よ?」
そう小声が問いかける。
その間にも、緊張から背中に冷や汗がにじむのが分かった。
どれだけ平気そうなフリをしていても――今後の自分の運命を考えれば緊張と恐怖を覚えないはずがなかった。
■挟道 明臣 >
「っても本人が来るっつーのは想定外なんだが?」
監視に蛇が付いているのは前提として理解はしていた。
だからこそ後手に回らないようにする為に、移動を考慮していたところにコレだ。
が、早すぎる。
「開いてるぞ、入ってくんならお好きにどうぞ!」
ふらふらと歩きだす鳴火の手を引っ張り、
コートの内から護身用の拳銃を取り出しつつ、そう吼える。
鳴火に触れた箇所が悲鳴を上げるように、燃え上がるように痛んだが、
ドアの側に不用意に近寄られるよりはマシだった。
■焔城鳴火 >
「いーから、取っといて。
で、あの女――ポーラの教会運営が危うそうだったら雑にぶち込んでくれればいいから」
くっく、と笑う。
そんな話も束の間の休息。
悪い事を、と言う相棒には可笑しそうに。
「第一での出来事は終わった事――終わった事にしなくちゃいけない事だし。
気にする事じゃないわよ」
なんて肩を竦める余裕があったのが嘘のように。
部屋の中に一瞬おとずれる、異様な静寂。
鳴火の苦し気な深い呼吸音がするだけだ。
「――まいった、わね。
明臣、アンタがぶん殴りたいと思ってる、狂った女がいらっしゃったみたい」
そう言いながら、鳴火はふらつきながら椅子から立ち上がる。
そして、扉の方へと近づいていこうと歩き出した。
■挟道 明臣 >
「誰かに恩を売ってる感覚だけで飯食ってる気になれるからな
っつーかマジで送る阿呆がいるか。受け取れねぇっての」
冗談が通じないタイプの女だった。
表を生きてる人間が使ってる口座情報なんてもんを他人に委ねるな。
汚い金を洗う方法は知ってても綺麗な金の運用法は未履修なのだから。
「まぁ強いだけの奴ならごまんといるんだろうが、
期待せざるを得ないってのは一種の才能だろうさ」
眩しくて綺麗なんだよと、ぼやくように言う。
真っ直ぐに歩くのが苦手な人間からすれば、眩さに目を焼かれるほどに。
「そうか、そいつは悪い事を言ったか」
選択肢なんて物が存在するのは恵まれているのだと、昔誰かに言われた気がする。
その時は笑い話だった気がするが、今となってはそうではない。
一本道の流れの中で、外れようとすればその先に道など無いのだから。
「━━あ?」
急変。
今の今まで起きていた体温異常とは別の何かが起きた事と、その音が聞こえたのは殆ど同時だった。