設定自由部屋です。常世島内であるならご自由に設定を考えてロールして戴いてかまいません。
また、ここでは回想的なロールも可能です。ですので常世島の外でも構いません。しかし、あくまでメインは常世島の内部でお願いできればと思います。
その他常世島内の特殊な場所や、シチュエーションなどにご利用ください。
参加者(0):ROM(1)
Time:01:44:13 更新
ご案内:「『灰の劇場』」からノーフェイスさんが去りました。
■ノーフェイス >
「………………」
汗にまみれ、肩を上下させながら。
振り絞り、満身創痍の肉体は、マイクスタンドにすがる有り様で。
ふりそそぐ歓喜と狂気に、顔を上げ――目を閉じて、しばし、浴びる。
あふれんばかりの快楽に、ただ浸る。
こうして歌うときにだけ、歌い抜いたときにだけ。
呼吸よりも、心拍よりもずっと確かに――生きていられた。
やがて、ずるりと手を引き剥がし、前に出た。
いつものように嗤うことも、MCを繰ることもなく。
粛然と――狂熱の闘技場を満たす聴衆に、血の色の髪を垂らして、深々、頭を下げる。
舞台上では言葉少なで、いつもこうして締めくくる。
尾を引く熱は、そのままに――――忘れられぬ夜を刻みつけながら。
照明が落ちる。闇と、静まりきらぬ高揚が逃げ場を求めたざわめきばかりが。
今宵の公演は、終わった。
差し出した招待状のゆくえを、まだ知らぬままに。
■ノーフェイス >
出来たてのとっておき、「The Edge」。
まだ音源化されていない完全新作に全霊を捧ぐ。
混沌にとじこめた――だれかを。
あるいは、それに共鳴したみずからが創り出した、歌を。
■ノーフェイス >
――スクリーミングとシャウトで棘々しく彩られるヴァース。
空白の息を挟んで、疾走感に満ちたメロディアスなコーラスへ。
B♭mを調として歌い上げられる、異なるふたつの曲を融合させたようなナンバーは。
狂気と理性、渇望と悲憤がひとつの楽曲のなかでせめぎ合っている。
ラストコーラスの前にだけ存在するブリッジがひときわ異彩を放つ特異構成。
遠く、遠く手を伸ばすような、切なるロングトーン。
高らかに――――静まっていく演奏とともに、落ちる照明とともに、闇に呑まれ――
そしてまた、溢れる光とともに奔り出す。
その詞に描かれる主役は、理想を追い、理想に追われるだれか。
燃え尽きんばかりの激しい哀切をかかえながら、
届くかもわからぬ見果てぬ夢を、狂おしいほどに求めて駆ける、ひとりの人間の物語だ。
■ >
奮い立たせるような、あるいは、叩き潰すような。
技を見せ付けるのではなく、示し、証すのだ。
完全解放されたみずからの性能を、すべて音楽へ傾ける天上の楽器。
示される輝きは熱く、そして残酷なほどに力強く。
切り裂くように甲高く、もがくように低く、蕩けるように甘く。
喜びも、怒りも、悲しみも、快楽も。
痛み、苦しみ、別れ、憎しみ、渇望、在ることそのもの。
みずからの混沌に刻み込まれたすべてを解き放ち、ふるわせる。
理性の奥底にある原初衝動へ訴えかける――そう定義された芸術を刻みつける。
音の波は、炎のように、刃か棘のように、暴力的に――
共鳴し、惹きつける。
死と隣合わせの、燃えさかる欲動。
芸術による教唆犯、あるいは煽動者。
■ >
無我、入神――
様々な言葉で言いあらわされる、人間の到達点……極限集中状態。
そうあることが自然であるかのようにそこへ突入し、
たっぷり2時間強――公演を通して入り続ける。
美貌、天稟、修練、感性――そして、飢餓を兼ね備えただけに飽き足らず。
神を降ろす生贄か、戦の呼び水たる託宣の巫女のような。
まなざしひとつで城を陥す美姫、そしてあるときはたったひとりの孤独な少年――
貌なき音楽家の、千の貌を表に現す能力が、
一切の容赦なく、発揮される。
■ >
鬼気迫る。
歌声も、立ち振舞いも。一挙手一投足に至るまで。
声を上げ、煽り、叫び、泣き―――
綿密に計算された照明配置、練り込まれた構成。
入念なリハーサルによって完成度を高め抜いた、選りすぐりの変人どもによる演奏。
財を投じ趣を凝らし、名高き箱に迫るほどの音響が揃ってなお、
埋もれるどころか、より磨かれたように輝きを増しながら、
命を燃やしてうたっていた。
音源の作り込みに病的なこだわりが伺えるうえで、
とにかくライヴがヤバいと伝聞が走り回るこの存在。
いまや、そのクオリティは初公演となるハロウィンの夜とは比にならない。
圧倒的な成長性でもって、公演ごとに化け続ける怪物が、吼える。
■ >
落第街を徘徊する、顔見知りの隣人。軽薄なるノーフェイス。
舞台に立つ存在は、いつしか住み着いた紅いまぼろしとは――別人だ。
■ >
混沌の坩堝
狂乱の宴
夜に吼えるもの
ご案内:「『灰の劇場』」にノーフェイスさんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」から藤白 真夜さんが去りました。
■藤白 真夜 >
「おおっと。忘れるとこだったー!
……えいっ」
立ち去るその間際。
手をふるう。びしゃり、と音が響く。
壁の花に、上塗りするかのように赤い液体をブチ撒けた。
美しい花の上に、線を引くかのように溢れた、血。
喧嘩を売ってる……そうも取れるかもしれない。
解けた、という意思表示……そうも取れるかもしれない。
「薔薇でしょ?
ほら、やっぱりさ、香りが無いとねぇ?」
そのまま、上機嫌に立ち去っていく。
それは、付け加えただけだった。
あれが模倣だというなら、足りないモノがある。
花の香りであり、欠かせない画材──血を。
女が立ち寄る場所には残る、においを。
■藤白 真夜 >
壁に、顔を近づけた。食い入るように、細部を見逃さぬよう。
にやりと笑みを浮かべる。
──やっぱり、何かがある。
異能や、魔術なんかじゃない。
誰にでも、理解るヤツだ。その気になれば、誰にでも。
騙し絵のようにして、なにか──そう、暗号が仕組まれている。
それを、具に見つけていけば──
「……A……、……S。
……H……?
…………──わかんな~い!」
──実際のところ。
こういう、頭を使うコトは不得手極まりない。そういうのは真夜の担当だ。わたしは、もっと単純に生きてるんだ。
……このあたりが、潮時かもしれない。
確かに、綺麗だった。確かに、驚かされた。
これ以上踏み込むなら、何かが要る。その、ライン。
……普段の己ならさっくりと諦めているだろう、そこで。
「……ちょっと、場所っぽいんだよね。
…………ふふん。いいよ。
わたしが調べればいいんでしょ?」
わたしは、そう考えもせず、落第街に居た。こっちのほうが楽そう。その程度の認識で。
だから、落第街のことを知ってはいる。だが、知ろうとはしていなかった。
だから、これが──こっちの藤白真夜の、はじめての、自発的な落第街への調査、学習になるのだから。
きっと、暗号は解けるだろう。……少し、手間取るかもしれなかったけれど。
──灰の劇場へ、繋がる資格と至る道は。
■藤白 真夜 >
「……じゃあなんなの~……?
『お前を見ているぞ』系の警告とか──」
別に、気分は悪くはない。
魅せつけられた感覚がある。何より、デキが良かった。
わたしのあの花は、何もわからないままねじこんだだけのモノ。
己の異能を、普段ふるわない形にして、残しただけの。芸術的なセンスやらは知ったこっちゃないけど、ただ本能と、己の裡に在る異能を形にしただけの。歪だが湧き上がり地に植わった薔薇だ。
だがこれは、違う。
考えて創られた絵だ。──芸術を識っているモノの描いた感覚が伝わった。
つまり──
勢いがあって、型に収まらず。
法を破る蛮勇と、しかし理性を持つ知性の輝きを。
そして、その理性を打ち破るだけの炎のような愛を。
「まー。そんなプロファイリングはどーでもいーんだけどね。
目立っちゃってたら、そういうこともあるのか、な──、……?」
──いや。
引っかかった。他ならぬ、自分自身の思考に。
──考えて創られた絵?
(……当たり前でしょ。絵は勢いだけじゃ描けない。あれは描けてるように見えてるだけ。
そこには、研鑽と、技術と、頭の中で思い浮かべた青写真が、……──)
──引っかかる。
思考に、ではなく。
目が。
──絵の中に、何かが、あった。
■藤白 真夜 >
地図に載らない街、落第街。その只中の、暗がり。
複雑に入り組んだ路地は、差し込む月の光すら疎く。
狙ってか狙わずか、直線の通路に届いた小さな月明かりが、その“壁”を照らしていた。
正確には──
「……へえ」
その壁に描かれた、花を。
赤黒い色、ただ一色で。
空に浮かぶ月。中天に届くほんの僅かに手前。その一時のみ、この路地裏に光が届く角度だった。
月明かりの中、浮き上がる……路地裏の薄汚れた壁。それを画布として描かれた、巨大な花。
その真正面に、女が一人。
この街では異常な、正常なだけの格好をした女が。
「なんだろ。
……“模倣”……じゃない。
そも、アレが真似るほどデキ良かったかというと──いや、それは受け取り手次第なのか」
心当たりがある。
……間違いない。これは、わたしが遺した花だ。
それをモデルにしたのか。それを真似たのか。……あるいは──
「いや、違う。模倣だっていうなら、決定的な要素が足りてない。でしょ?」
すん。
わざとらしく、鼻を鳴らした。そんなコト、しなくても当然わかってる。これは、ただのペンキだって。
臭いがしない。わたしの花に籠められたものが、足りてない。じゃあ、模倣には成り得ない。
だからこれは、どこかの誰かがわたしの花に感銘を受けて同じものを作り出した……なんて感動的(?)なモノじゃない、ってコト。