2024/09/15 のログ
紅き春雪の治癒姫 > 「!!」

「これ、は…!?」

何かが、飛び出して来た。
大きな、ツルギ…いや、もはやツルギなのか?あれは。

それが、
輝き、姿を現す。
大きなモノから曝け出されるは大太刀の直刀。

「あは。あのさ。」
「――雪、斬れないって言ってなかった?」

昔の話、思い出話を呟きながら、
紅色の雪を一閃にて祓われる。

…思考する。
あれを前に出来る事は、なんだろうか、と。
雪すらも裂く、巨大な太刀筋。

だが

……もしかして、今初めて、使ったかに見えた。
紅い雪は、それに照らされて消えた。

(考えてみるか―――)

試すように、紅い雪を注がせて再度光景を注視する。

今見えた情報を自身の能にて

―――咀嚼する
―――消化する
―――吸収する
―――同化する
―――混交する

(破邪。神聖の属性、今のは雪を病魔を邪悪と定義して退けた。……ってところかな?)
(そして、――あれを私が喰らうのは、恐らく拙い。)
(なら――)

「――"死"は……。」
「祝福だと、友だと言っていたね」

なら、これは通じるか。

「これだけは、これだけは―――」

「使いたくなかったんだけどな。」
「特に、貴女の前では。」

いつもの扇子をひょい、と取り出すと、それを投げ上げる。
自身も、それを追うように宙へ舞い上がった。

紅き春雪の治癒姫 >  
「――死のう?」

雪柄の扇子から仰いだ風から顕れるは、
黒き蝶の型をした―――999の"死"

> ふわりふわりと不規則に漂い、
追いすがってくるそれは、
善悪なく夢微睡へ落とすように、
触れたものを死へ誘う。

見るからに触れてはいけない――ように見えるだろうか。
或いは、"死"を友と定義する貴女には、そうではないかもしれない。

いずれにしても。
輝きの中で尚翳る蝶。

けれど本質的な狙いは貴女が"死蝶(ソレ)"に気を取られてしまうこと。


言うなれば――
狭い道を通る時に迫る、なんてことない障害物を避けようとして、
ドブにハマってしまうような。

そんな、何かを備えている事が、分かるだろう。

黒き大神の剣士 >  
「は、アァァァァ――――ッ……!」

大きく呼吸を整える。
経絡系を、思ったよりやられた。
蓮華座開花は――厳しいか。

だが――

(これは…確かに、限定的過ぎますが、縛りをかけなくては――強すぎる!)

手にした大太刀から、柄を伝って来るほどの、強烈な気。
確かに――普段は、ただの大剣とならなくてはいけない訳だ。
存在そのものが、強すぎる。

(反射的な一刀で、あの紅い雪を斬り祓ってしまうとは…!)

だが、お陰で余裕が出来た。
再び、力を込めて両脚で地面を踏みしめる。

そうして、飛び上がった紅い少女を目で追えば――放たれるのは――

(――死だ。)

死が、押し寄せて来る。
黒い蝶のような姿をした、死だ。
だが、これは……

「――解釈に、違いがありますね。」

そう、死とは祝福。
だがそれは――「生」という試練の果てにこそ、迎えてくれるもの。
最期の時に迎えに来てくれる、友。

「――祝福たる死(死を想う事)を知らぬあなたに――」

月白を鞘に収め、斬魔刀を両手で構える。
――精神が、昂る。

「……祝福たる「死」は、与えられない――――!」

双眸が、青白く燃え上がる。
精神が高揚する、高まる、激情が満ちる。

本来、黒き御神の使徒としてはあってはならないだろう精神状態。
だが、これは祝福たる死を与える為ではなく、理不尽たる死を滅する為の激情。

――――そして、それを可能にする技を、自分はひとつだけ、持っている。
紅い少女の知らない、斬滅の技を。

(――今なら、使う事が出来る。きっと――!)

確信めいた思いで、大太刀を一息に振り抜く!
 

黒き大神の剣士 >  

              『斬月・――――』

 

情景 >  
次の瞬間。

黒き剣士の視界の全て――否、この戦場全体を、「三日月」が埋め尽くす。
刹那の間に閃き、消える、三日月の「斬閃」

そう――今まで、「1度」しか使った事のない、「斬月」。
勿論、その存在を紅い少女が知る筈もなし。

その斬閃に触れれば、黒き死の蝶だけが次々と斬り裂かれていくだろう。
この部屋にある他の物はおろか、それを放つ紅き少女にさえ傷一つ付けぬ、超広範囲の斬撃の嵐。

蓮華座開花が覚束ない現状で、この状況を覆しうる、唯一にして最大の一手――!
 

紅き春雪の治癒姫 > 「――そっか。これも、斬られる、か。」
「あは、あの機界魔人は。」
「よくも――貴女を相手に2度も戦っていられたもんだね。」

純粋なる死蝶を、斬られる。
999の飛ぶ、生きた死を。
確実に殺せると思って放ったモノを。
いともたやすく、全てを引き裂かれる。

「そうだね。」
「私には、きっと」

「誰かを"呪う"死しか与えられないんだろうな。」

だから、斬られたんだろうか?
斬った本人にしか、知り得ないだろう。

「うん」

「―――多分、これが最後だよ。きっと。」
(何故なら、次が最後の手札だからで。)
(それを使えば、何もできなくなるから。)

にこやかに。
手を翳す。
紅い贋作記録が浮き上がり、その一つを取る。

「私の異名さ、覚えてるよね。」
「治癒姫、って。」

「どんなものでも、癒して、傷を無くすのが、私。」

「全部斬ってくれたから、これが出来る。」


「斬られたもの全てに、癒しを――。」

注ぐ豪雪。
治癒の雪。

貴女は、
終着点(ここ)に辿り着くまでに、
何を斬ってきたかな。

―――球を成す斬撃
―――殺戮の紅い雪
―――純粋な黒死蝶

それらが、全てが、蘇る。

まるで、斬られた事実を帳消しするように、
後から斬られた部分を繋いで、元の形に戻していく。

癒す
融ける
交わる

爆ぜるように戦場から広がり、
点を以って球と成す
存在するだけで邪気を振りまき、
辺りを満たすように注ぐ、
ふわりふわりと舞う、
生きたような羽のある何か。

さりとてそれも切られよう。

恐らくこれも覆されよう。



どうしてだろうか
今になって、少しだけ、……正気が戻って来た気がした。


戦況は、大きく押されている。
……ああ、それでいい、それでいいんだ。

紅き春雪の治癒姫 >  

私は


貴女に


斬られるんだ。


 

紅き春雪の治癒姫 > (さあ……!)

雪白を手に。

殺害欲を言い訳に。

最期にできる事はこれしかないと、

貴女の傍へ歩み寄ろう。


貴女を襲うは、2つ。

1つは、
全てを癒して蘇らせた、数多ある攻撃の成れの果て。
そしてもう1つは…。

紅き春雪の治癒姫 > 拙く、遅く、鈍く、軽い、

雪白による何らの特別なモノはない、ただの斬撃。
持てる全てを出し切った者の、ほんのわずかな最後の一撃は、
斬撃と呼べるものですら、ないかもしれない…。

黒き大神の剣士 >  
「ぬ、ぅ……!」

――少し、見通しが甘かった。
今まで斬ってきたモノ…球状の斬撃、命削る紅い雪、死呼ぶ黒い蝶。

そのすべてが「黄泉還る」。

まさか――「斬った異能」にまで、「治癒の力」が作用するとは、思わなかった。
斬ってきた総ての攻撃が、一斉に復活するという脅威…!

「これは――だめかも、知れないですね――――」

球体の斬撃に斬り抉られてしぬ。
紅い雪に埋もれ、命を奪い尽くされて死ぬ。
黒い蝶に触れられて、死ぬ。

――あるいは、この逃げ場のない状況で、紅い少女に斬られて、死ぬ。

あらゆる死の情景が、思い浮かぶ。
退ける術は、ない――――――





「………と、言えば、『紅き屍骸』のあなたは、満足だったでしょうか――?」
 

黒き大神の剣士 >  
刹那。

「『仮面』よ、その力を――私に!」

その声に答えるかのように、蒼い炎を双眸に燃やす狼の面が吼える。

瞬間――――


黒き剣士は、「黒き風」になる。

「縮地法」だけでは、この状況を打破出来ないだろう。
ならば、埋葬の仮面の更なる権能――「俊足の力」を上乗せするまで。

黒い風が、斬閃を纏いながら駆け抜ける。

球状の斬撃を抉り抜き、黒い死蝶を斬り飛ばし、紅き雪を無尽に斬り裂きながら――
黒い風は、野を駆ける狼の如く、戦場となった永遠の間を駆け抜け、黄泉還った攻撃達を、悉く蹂躙する。

速く、速く、速く、速く、疾く、疾く、疾く、疾く、疾く、疾く、疾く疾く疾く疾く疾く疾く疾く疾く疾く疾く疾く――!!

黒き風は、駆け抜ける。
総ての、理不尽なる死を食い破らんと、疾駆する。


そして最後に残った攻撃を――

紅い少女の放った拙い斬撃を、手にした刀を弾き飛ばして――終わらせんとする。
 

紅き春雪の治癒姫 > 「まさか。」

きっと諦めないだろう?
この状況だって打破するだろう?

そうやって私を、魅せてくれたんだから。


蘇った攻撃も、言い換えれば、一度は破られた攻撃だ。
故に。
戦場をかける黒き狼に、
その速度をもって、
斬られる。
風自体がそれを斬っているようだ。
…見える。
まるで本人が斬閃そのものになっている。
そんな風に見える。
想像を上回るような、あまりにも激しい黒き烈風。

だけれど、
貴女ならきっと、私の想像を上回ってくれるだろうなって、想っていたよ。

うん。

やっぱり。

「―――美しいな、貴女は。」


「ふふ、ここまでやられちゃあ、もう――何もできない」

その光景の中、ゆるりと傍へ寄り。
そして、最後の一撃は、
あまりにも容易く、弾き飛ばされた。

それは抵抗の意思を折られたように、
本来であれば頑強な素材を贋作して作った刀が、折れた。

「――ありがとう。」

「楽しかったよ。」

満足だよ。
どうしてだか、
これから斬られるって事にワクワクしている。
頭がおかしいって?


最初っから、そうだったじゃないか。


「貴女との蒼春も」
「最期の一瞬も」

「いやあ、永遠の間で、一瞬を過ごすってのも、皮肉なものだけど―――」

「さあ。」

紅き春雪の治癒姫 >  


        「私を()って。」
         その、全てを斬らんとする眼差しで―――。

 

黒き大神の剣士 >  
「――――。」

フゥー、と、総ての攻撃を捌き切った黒い剣士が、大きく息を吐く。
最後の攻撃だった、刀による攻撃は――思った以上に力が入り過ぎたのか、
仕掛けて来た刀を圧し折ってしまった。

「………ごめんなさい。」

折ってしまった刀に、それを創った彼女に、一言だけ、詫びる。
出来れば…最後までを一緒にいさせてやりたかった。
何より、己の愛刀の姉妹と言える一振りを折った事は、哀しい事だった。

「――――。」

蒼く燃える双眸が、紅い少女を捉える。
先程まで荒ぶっていた大神()の面影は既になく。
その双眸は、静かに、紅い少女を見据えている。


――かけまくも 畏き 黒き御神――
――畏み 畏みも 白す――

――諸々の 禍事・禍魂・禍人 有らんをば――
――祓え給へ 清め給へと 白す事を――

――聞こし食せと 畏み畏みも 白す――


――我 黒き御神の 使徒なれば――


その祝詞と共に、手にした大太刀がゆっくりと大上段に構えられる。
同時に、総ての激情が――怒りも、哀しみも、消えていく。

残ったのは、辿り着くべき(安らぎ)へ向かえなかった少女への慈悲の心。

そして、


「――おやすみなさい、"蒼雪さん"。」

 

黒き大神の剣士 >  

その一言と共に、慈悲と祝福を念じながら、刃が振り下ろされる。

斬魔刀の一太刀は、紅き少女の身体には傷一つも残さず、
その身に殺害欲を巡らせる呪いを断ち切り、

……蒼春 千癒姫の、正しき死に迎えなかった魂を、安らぎの地たる冥界へと、送り届けるだろう。
 

紅き春雪の治癒姫 > 「―――貴女に折られるなら、本望。」
「うん……おやすみ。」

きっと。
罰が当たったんだ。
貴女を欺いていた罰が、
他ならない貴女の手で。

「……でも、最期は貴女のお顔、一目見たかったなぁ―――」

刃が振り下ろされる時、
仮面に浮かぶ焔へ向かって、
未練がましい言葉を投げかけながら。

安らかに、
眠りへ落ちるように、

その体は、
紅き屍骸から、
たんなる屍骸へとなり果てた。

傷一つ、残さず。

綺麗なままに。

黒き大神の剣士 >  
……大太刀を振り下ろし、紅い少女が倒れ伏した直後。
まるでそれを見届けるかのように、光と共に、大太刀を囲むように多数の部品(パーツ)が現れる。
ガシャン、と重々しい音を立て、総ての部品が大太刀の刀身を覆い隠し――
斬魔刀は、再び、ただの武骨な大剣へとその姿を変じた。

「………。」

そして――黒い剣士は、倒れ伏す少女の亡骸を前に、がくり、と両膝を突く。
その手から、鈍い金属音を立てて、大剣が転がり落ちる。

――傷一つもなく、まるで眠ったような姿の、着物を着た少女の姿に、
思わず、その両手を伸ばす、

その顔は、安らかだろうか。
苦痛に歪んでは、いなかっただろうか。
何より――哀しそうではないだろうか。


このひと夏の、思い出がよみがえる。
まるで、ただの何処にでもいる女子のような日々。

その思い出に動かされてか――

黒い剣士は、「その力」を、起動させる。
 

黒き大神の剣士 >  

             「埋葬の仮面よ、我が意に従い――冥界を映し出せ。」

 

冥界観測の力 >  
それは、埋葬の仮面の権能の中でも特に強い力。

即ち、死したる者が向かう、安らぎの地を映し出す、冥界との一時的交流の能力。

その力で以て、送られた筈の少女の存在を探す――。
 

紅き春雪の治癒姫 > 屍骸としての体内にあった簡易のナノマシンすらも消えて、
人造人間から、ただの屍骸になり果てる。これによって、紅き屍骸として持っていた感染源も消え、
ただただそこに寝転がる骸となっている。

そこに

映し出されるのは

冥界

その剣にて送られた先の世界――
死後の世界

平和の野原なんて名で呼ばれているらしい安らぎの場所、
孤島に……ようやく終わったと安堵と満悦を以って、草原を背にし落ち着いている事だろう。

黒き大神の剣士 >  
ああ――。

「……いた…。」

藺草の香りが特徴的な、あの穏やかな野原。
其処に、あのひとがいる。
とても、安心して、安らかに、落ち着いた様子で。

「――――蒼雪、さん――。」

声を、かける。

その声に振り向けば、まるで薄らとした蒼い炎のように朧げな黒い剣士の、顔から胸近くまでが
浮かんでいるのが見えるだろうか。
その顔を隠す筈の仮面は透き通っていて、素顔が見えるようになっている。

紅き春雪の治癒姫 > 「ん?」
「んん??」
「んんん???」

一度見、
二度見、
三度見。

…さっき私は、確か、紅き屍骸として、敗れた筈…?

「んん?」

なんで、貴女がいる……?
なんかしかも、何か浮かんでる?

「んーーー」

「夢でも見てるのかな。」

黒き大神の剣士 >  
「……夢なんかじゃないですよ。」

そう声を掛ける。

「ちゃんと、そっちに送る事ができたのか…心配になってしまって。
ちょっとだけ、職権濫用です。
この仮面の力で、冥界(そちら)とちょっとだけ、繋がってるんです。」

少しだけ、苦笑。
ちょっとだけどころか、立派な継承者の力の濫用だ。
 

紅き春雪の治癒姫 > 「そ、そう…」
「ソレにそんな力もあるんだ。」

…なんていうか、凄いを超えてないか?
死者を観測できるって言ってたけど、
こっちに入ってまでそういう事が出来るのか。
ってことはこれはあ現…

「ああいやあその。ええっと」
「ご、ごめんね!」

「本性はこんなやつだからさ、あ、あははは」

戦ってるときは何も言われなかったけど。
正直、こう…きまずーい…。大分悪いことしちゃったなあ

黒き大神の剣士 >  
「――気にしてませんよ。
どんな本性でも、蒼雪さんは蒼雪さんですから。」

また、少しだけ小さく笑う。

「黒き御神…冥界の神の御神器の力ですから。
とはいえ、自分の理由でこんな使い方したら、流石に怒られそうですけど。」

きっと怒られる。
黒き御神は兎も角、同じく使徒である先輩はカンカンに怒りそうだ。
それでも――最後に、訊ねずにはいられなかったから。

「蒼雪さん、そっちの居心地はどうですか?
不自由だったり、困ったりしたことは、ありませんか?

それと、それと――――」

……ああ、駄目だ。
あまり長い時間はいけないのに、話したい事が沢山ある。

――せめて、これだけは訊かなくては。
 

黒き大神の剣士 >  

「………思い残した事とか、ありませんか?
もし、私が何とか出来る事なら、代わりにやって置きますから。」

 

紅き春雪の治癒姫 > 「え、ええーーー」
(私が気にするんだよ!なんでそんな冷静なの!)

その反応は意外だったらしい。
よっぽど気にしてキャラ作ってたんだけどな。
まあ……素でも嫌いじゃないんなら、良かった。

「黒き…御神。冥界の。ああ、だから、死に干渉したり、観測したり、出来るんだ。
それで、その世界観における死後の世界に送り届けてくれたってわけ?
この、……?なんだろう?平穏の野原?だったっけ。そこに。」

常世における生死の観念は色々だ。
きっとそこの黒き御神の説く死の観念で葬られたがゆえに、ここにいるんだろう。

「ええ、うーん、どだろう。」
「分からない、ってのが正直かな。」
「少なくとも、苦しくはないけれど。」

「そうだね―――」

「ありまくるよ?そりゃあ。」
「多分、今ここで全部は語り尽くせないくらいに」

思い残した事、そういいだすと。
あれもこれもとおもうばかり。けれど。

「でも。」

紅き春雪の治癒姫 >  


    「これ以上、望んだら―――永遠に終わらなくなっちゃうから。」


 

紅き春雪の治癒姫 >  
「何かしてくれるっていうなら」

「貴女が望んだように。」

「平穏に、生きて暮らして。」

 

黒き大神の剣士 >  
「――っ。」

平穏に、生きて暮らす。
それは――彼女がやりたくても、出来なかった事だ。
殺されて、まっとうに死者として冥界にも行けず、殺害欲を堪えながら、何とか生き続けて来た。

――えこひいき、と言われても、仕方がないのかも知れない。
だが、そのままお別れを言うには…一緒に過ごした時間が、長過ぎた。

「それは……蒼雪さんが、願っていた事、ではないですか。
平穏に、生きて暮らして、色んなことをして……。

私には…重すぎます…。
蒼雪さんの分まで背負って、生きるのは…。」

――もう、堪えようがなかった。
一筋、涙がこぼれてしまう。

「本当だったら、もう一度…今度は、ラーメンでも一緒に、食べに行きたかったです…!
これからだんだん涼しくなるし…きっと、二人で一緒に食べたら、おいしいって…!」

つい、未練を口にしてしまった。
直後に、しまった、という顔をして。

「す、すみません…私のわがままばっかりで…!」
 

紅き春雪の治癒姫 > 「あっはっは!」
「なんだろうね。」
「こういう時は一緒になって泣くべきなんだろうけど。」
「もう涙は枯れちゃったのかなぁ、おっかしいね」

泣いてしまうお姿を見て、元気よく笑う。
諦めでもあるけれど。

「そんな風に…貴女が思ってくれるだけで、嬉しいよ。」
「そんな我儘を抱いていてくれるってだけで。」

そう思うと

涙じゃなくって

笑みがこぼれてしまう

「死んだ人は生き返らないの」

「私はもう」

「紅き屍骸というおばけとして、生死の境に反して。」
「貴女と一緒に居られたから。」

「―――。」

「未練がないといえば噓になる。」

「秋も、冬も、春も、」
「四季くらいは、一緒に居られたら良かったね。」

そのうち

本当におばけになって出られたらいいね――。

黒き大神の剣士 >  
「………!」

未練がないと言えば、嘘になる。
四季くらいは、一緒に居たかった。
その言葉で、もうだめだった。

――例え本人が望んでいた結果でも、未練のある者を、冥界へと送ってしまった。
黒き御神の使徒として、これは――駄目な事ではないか。

『病人を葬る事は果たして、僕らの御神の教えと矛盾しないのだろうか?
病であるならば、それは、自然に朽ちるのを待つことこそ正しいのではないだろうか?』

司書の男に語られた言葉が、脳裏を過ぎる。
そう――紅き屍骸を生み出す感染は…言ってしまえば、病のようなもの。

何より――このまま、彼女を「諦め」させてはいけないと、心の底で、叫ぶ声がする。

――――嗚呼、黒き御神よ、申し訳ございません。
私は、あなた様の教えに背く真似を働いてしまうかも知れない…!


「…………蒼雪さん、」
 

黒き大神の剣士 >  
「いいならいいと、嫌なら嫌と、素直に答えて下さい。

そのまま、その楽園に、留まって居たいですか?」
 

紅き春雪の治癒姫 >  
「―――。」
 ―――黙する。


「……あの、さ。」

「……こんな形で…死にたいわけないじゃんね」

「ここに居たいっていうと思う…?」

「分かってて聞いてる…の?」

「貴女が逆ならどう答えるの」

「―――もう。」

溜息。


「そりゃあ…このまま居たいわけ、ないよ?」

でもそれを吐いたところで。
その居たくないけど、受け入れなければならない現実を直視するだけだろうから。

黙っていた。

黒き大神の剣士 >  
「……っっ!!」

きり、と歯を食いしばる音。
――覚悟は、出来た。如何なるお叱りも、神罰も…甘んじて受け入れよう。

「――埋葬の仮面よ、私の「ありったけ」を持っていって構わない!

もっと強く、冥界に及ぶ力を――!!」

伸ばす。伸ばす。己の手を、冥界へと。
 

黒き大神の剣士 >  
《継承者よ、馬鹿な真似はよせ!
既に死した者を引き戻すつもりか!》

「冥界を観測出来るあなたの力なら…干渉力を高めれば、魂を引っ張る位、出来るでしょう!」

《理論的には不可能ではない!
だが、黒き神が如何に判断するか…!
そもそも、理論的にであって、実現は無茶も程がある!
どれだけの「代償」を払う事になるかも分からんぞ!!》

「覚悟の上です!
未練を残してしまった…「友達」を、このまま取り残すよりは…
無茶でも、やらないよりずっといい!」

干渉力が強まった影響か、明確に仮面の意志とのやり取りが出来る。
――同時にそれは、どれだけの「代償」を払うか分からない状況。
だが、少女は躊躇わなかった。
 

黒き大神の剣士 >  


「蒼雪さん――あなたは、自分は誰にもなれなかった、
何者でもないなんて言ってたけど――――


そんなの、とんだ嘘っぱちじゃないですか!!

私の「友達」の蒼春 千癒姫は――あなた以外の、
他の何処にも、いやしない――!!」


 

紅き春雪の治癒姫 >  

     「なッ…!!!」
     「何やってんの?!緋月―――ッッッ!!!!!」

     「ばっか!そんなの!」

     「私は…私は…ッッ!!!」

 

紅き春雪の治癒姫 >  
それを持たない私から見ても、
今貴女がしようとしている
"それ"は
明らかに
"やってはいけない"行為だった。

「あーあ!もう!」

「ずーっと。蒼春(せいしゅん)の名を騙ってたんだけどなぁ」
「――本性がコレでも…それでも。」
「友達だと言ってくれるなら……」

偽る事しかできなくても、
騙る事しかできなくても、
贋る事しかできなくても、
それでも。
自分は自分だ。
それを理解してくれるのなら、
もう良いのかもしれないって思う反面。

そんな大切な友を。

このまま、
独りにしたくなくって。

「諦め、つかなく、なっちゃう……!」

手を伸ばす。

どうにか握って、

本来であれば有り得ない

許される事ではない。

「……斬って、とは言わない。今度こそ…救って…?」

生と死の境を跨ぐそれを、…彼女の代償を支払わねばならぬ行為を。
求めて、しまった―――。

黒き大神の剣士 >  
「そんなの――何でも、かんでも、当たり前、です……っ…!」

精神が、ぎしぎしと軋むような感覚。
心の中が滅茶苦茶にかき回されているような感覚。

それでも、必死で、必死で手を伸ばして――


その手が、届いた。

握る事が、出来た。
 

黒き大神の剣士 >  
「――ああぁぁぁっ!」

冥界から引っ張り出した彼女の魂(ともだち)を、大急ぎでその亡骸へと戻すように押し込む。
既に紅き屍骸でない、ただの遺体である体なら――問題はない筈。

「経絡系…持って、ください!」

最後に、再び心臓を動かす為――ダメージを受けた経絡系に無茶をさせて、
生命力を心臓に叩き込むように流す――!
 

紅き春雪の治癒姫 > 冥界から、顕界へ。
引っ張られて、
境目を跨ぐ。

屍骸となっていたはずの肉体は、
奇跡でも起きたかのように、動き出した。

「……ん……?」

「―――夢、だったの……?」

「いや。」

「夢じゃ、ないんだよね。」

「……ありがと。救ってくれて。」

「"おばけ"じゃなくなっちゃったなー…。」

随分と照れくさそうに、柔らかく笑って体を寄せた。
控えめに、だけど、確かにここにいることを伝えて―――

紅き春雪の治癒姫 >  

「――…これからは、生者の蒼雪として。よろしくね。」

死者観測の目に映るのは、確かに生きた証を持つ存在の、
これ以上ない笑みだったのだろう―――。

 

黒き大神の剣士 >  
「――――。」

黒い剣士は無言で、軽く仮面に手を当てる。
黒い服が、まるで流れて落ちるように黒が抜けて元に戻る。
黒い仮面も、蒼炎と共に消え去る。

その下から現れたのは、小さく微笑むような顔。

「――ええ、こちらこそ、よろしくです。」

そう、努めて平静に、挨拶を交わす。
そして、力の入らない蒼い少女を背負い、折れてしまった彼女の刀を
大事に拾い、共に永遠の間の出入り口へと足を向ける。

(――思ったよりも、つらい「代償」になりましたね。
蒼雪さんには、何とか隠し通さないと。)

――ひとつだけ。
己が支払った「代償」を隠したまま。
 

ご案内:「禁書図書館/永遠の間」から紅き春雪の治癒姫さんが去りました。
ご案内:「禁書図書館/永遠の間」から黒き大神の剣士さんが去りました。
ご案内:「スラム/指定の廃ビル」に海藤 宗次さんが現れました。
ご案内:「スラム/指定の廃ビル」にナナさんが現れました。
海藤 宗次 >  
指定地点の廃ビルの屋上。
それがここ。
別に屋内でもいいが…まあ秋の夕暮れを眺めながらというのも映えるという奴だろう。


「いやぁ~。今日も晴れてよかです。夕暮れを眺めながら…気温も丁度いいですし」

返答はない。
ナナから見ればこの場にいるのは宗次だけに見えるが貯水タンクの裏側に一人気配がある。
入り口には宗次

「あのー、マジでやるんでっか?お前死んだぞナナさんや。この先踏み込めばヤバいで?」

ナナを出迎える男はなぜか喪服。
この度はアンタが死ぬのでお悔やみ申し上げますという奴だろうか。舐めてる。
というのも今日はナナが死ぬ日だと宗次の中では決まってるらしくぶっちゃけ恰好だけで舐めてる

ナナ >  
「まじでやるに決まってんでしょ。
あんたの力不足頑張り不足でこうなったんだから、後で文句言わないでよね。
あとその服はなんかムカつく。」

はい邪魔邪魔と宗次をどかして屋上へ
夕焼けが少し眩しくて綺麗な景色

「さて、そこに居るのが幹部って奴?
クズ組織の幹部とやらの顔を見せてもらえるかしら?
私みたいに人に見せて恥ずかしくない顔ならだけど。」

初対面の相手にあり得ない言葉を投げかける
今日は最初からもうその気、喧嘩をしに来ているのだから気にする事も無い

木曽山 清華 >  
ナナが屋上へ出ればまず右手側に貯水タンクが見えるだろう。
その上から何かが降ってきた。人だ。

背丈は165㎝、アニメのTシャツとパーカー、ジーンズを着て耳にはなんか媚びたデザインの猫耳ヘッドフォン、ピンクに染めた髪はボブにして、とサブカル系が出てきた。
歳は宗次よりかなり上のはずだが10代ギリに見える若作り。

他にも色々と配信系アイテムを持ってたりするのだが目に付くのは右手で持つ槍だ。
かつん、と槍の柄を地に立てればナナを一瞥し一言

「アンタがウチのシマ荒らす命知らずぅ?…ふーん、そこそこ強そうじゃない。ま、簡単に死なれたら今から配信する処刑配信盛り上がんないからさ」

とか舐めた事を言いながらスマホを弄ってこれから殺します的なつぶやきをした。

「こほん…数字取れるだけの骨のあるやつだといいにゃーん」

声のトーンが2段階上がった。
媚声だ。
これはいつもの配信のトーンでそろそろ配信開始(戦闘開始)するらしい

海藤 宗次 >  
「はっはー!ナナ、お前死んだな!このお方はな~覇伝洲の幹部三番手の木曽山清華の姐さんだぁ!ささ、姐さんやっちゃってください。俺はここで配信動画撮ってるんで」

三下染みた紹介をする。
そんな感じで木曽山から端末を投げ渡されてはキャッチし、それを撮影する係に入る。
宗次は本当に介入するつもりはないようだ。
タイマン勝負だ。

ナナ >  
現れた人物に目を向けて…色々面白い恰好だなといった感想
宗次の所属する組織の幹部で強いとの事だがどう判断したものか

「処刑配信ねぇ…まぁ運が良かったら生かしといてあげるわ、おばさん。」

まぁ、恐らくは自分より年上だろうとそう答える

「にゃーんって、本物の猫見て勉強しなよ化け猫おばさん。」

首を回して、両腕両足には鱗が生え目玉は片方複眼に
幹部三番手と言うのがどれ程かは分からないので一応手加減はなし

槍という事もあるので、前に跳び間合いの内側へ入ろうと狙う

木曽山 清華 >  
「はにゃーん、こっわーい。この人、処刑される立場なのに殺す気だにゃん。セイカ、なーんも悪いことしてないのに…うーんこれは正当防衛で処刑ニャン」

槍に不利な内側の射程に入るのは正しい。
しかし徒手空拳のナナを見ればそんな狙いは熟練者たる木曽山は見抜く。

驚くことに木曽山も間合いを詰めるべく急速接近。
しかも間合いを詰めるスピードはネコ科動物のように音がなくしなやかで速い。
そうして槍の間合いを通り過ぎてナナの間合いに間もなく入る頃…急に消えた
いや、消えたのではない。あそこからさらに加速して消えたかのように見せただけ。

宗次もスピードは速い方だがこれは次元が違う。

「つーか…女の子に対して歳は禁句だよガキ。」

声がした。どこから後ろから。
ナナを姿が消える勢いですり抜けて後ろに回りそこから槍の一突き。
槍にはひねりを加えており傷口を抉るので被弾すれば思ったより面倒臭い

海藤 宗次 >  
「木曽山の姐さんは足捌きがえげつないねん!俺よりも上…いや、スピードなら組織1、2を争うで!これでナナの重い攻撃も扇風機になるで。風力発電所いって貢献すればええねん」

あと、外野がうるさい。
多分ナナもムカつくであろうが地味に木曽山の特性もバラしそうな自慢大会になっている。

そんな宗次は言いつけ通りに両者のバトルを撮影配信している。

ナナ >  
「きっつ…」

何と言うか、ある意味では配信者らしいのだろうが話し方が耳に障る
向こうもこちらに突っ込んでくるのは少し予想外
丁度殴りやすい位置に来たと思ったら視界から消える
ふざけた態度だが足捌きによるものだろう

後ろに回られる所まではそう見えていた

「失礼おばさん、あぁあと一個教えてあげるよ。」

背面からの一撃をそのまま受ける
肉は避けるだろうが骨を抜くのは難しい筈、このタイマンの為に固めた骨と繊維を抜けるような体勢の一撃ではない

槍と言うのは、深く刺さらない確信があれば並みの剣よりも怖くも無い

「そっちはショーとかのつもりだろうけど、こっちはきっちり潰しに来てるから。
化け物とやり合ってるって覚えときなよ。」

槍を掴む、宗次の言う通りこっちはパワーで押し潰すのが常
文字通りこのままパワーで勝負と槍ごと相手を振り回そうとする

木曽山 清華 >  
「およよ?これは予想外。けど、あんまり意味はないよ~。あ、これ配信映えしそうだからポーズ決めちゃおっと」

ヒットはしたが…硬い。肉を抉らせて投げに入ったか。
だが別に怖くはない。振り回されているだけならば槍を握っていれば振り落とされることはまずない。
それにスピードは速いが宗次よりもパワーがない。ここは強引に勝負に乗るよりもいなす。

そしてそんな余裕からか振り回された体制にも関わらずとんでもない姿勢制御能力でポールダンスのようなポーズをカメラ目線で送る。

「最近の化け物は喋るんだにぇ~。勉強になった、よっと!」

ポーズを決めながら、さりげなく地面の礫を蹴り上げる。
それは正確にナナの右目へと直撃する軌道だ。

「つーか、確かに火力足らねえな…刺青、解放するか…?」

海藤 宗次 >  
「姐さんナイスゥ、バトルでも魅せていく!うおおおお、スパチャ来るわあああ!姐さん、幹部で焼肉食えるだけスパチャ着てはります!」


そして動画を撮影しながら一人はしゃいでいる男。
なにやら投げ銭の金額がじゃぶじゃぶ出てるらしくその金額に興奮している様子。
あと、コメント欄みたりNGコメント削除とかして割と忙しい男。

ナナ >  
「へぇ、意外と体幹良いじゃんおばさん。」

ぶんぶんと振り回してみたが槍を離す様子は無い
ならば武器を取り上げるのはやめにしよう

速さは上々、パワーは並
問題はこの速さがどれ位の引き出しがあるのか
 
「ほっ、と…今時の化け物は良く喋るらしいよ。
少し前にも話したし、解放する前にどうにかしてみようか。」

的が小さいと少しのずれで外れるもの
首を動かし礫は目玉ではなく頬をかすめて赤い血が滲む
化け物と言えど、流れてる血は同じ

槍を地面に叩きつけ、それでも手を離さなければ飛んでいけと適当に遠くへ投げようとする
体幹だけではどうにもならないだろうが…果たしてどう出るか

木曽山 清華 >  
ここは廃ビルの屋上。
つまり力いっぱいぶん投げれば下手すれば落下するという事だ。
普通ならここで死ぬだろう。だが清華はそうはならない。生身でも落ちたくらいでは死にはしない。
そしてそもそも落ちて戻ってくるなんて真似は時間のロスだし、動画映えもしない。
故にこうするのだ。

「刺青能力解放…天使」

ばさ、とパーカーを脱ぐ。
脱げばノースリーブシャツなのだが肩部の後ろからは天使の羽の刺青が見える。
全容は背中に彫っているので見えないが天使で間違いない。

その刺青が白く輝き、武器の槍も純白の光の槍となるだろう。
そして背中からは文字通り天使のような純白の翼が生え、頭には天輪を。まさに天使といった姿になる。

翼が生えればその場で体勢を立て直し、縦に一回転し勢いを殺してホバリング飛行でその場にとどまりつつ

「お色気タイムでサービス、サービスゥ~」

脱いだパーカーを広げるように投げつける。
瞬間パーカーの後ろから羽の矢がナナの胴目掛けて射出される。ライフル並の威力だ。

海藤 宗次 >  
「出た~!姐さんの能力、天使!!いやーまさに聖歌チャンネルに相応しい出で立ち…やっぱ何歳になっても美人ですわ~」

本心はそんなこと思ってへんけどとりあえず視聴者を獲得したいからよいしょをしまくる。

「それに、あそこから瞬時の切り返しに反撃ぃ!こんな判断並じゃできまへんんで。まあ、これが年季の差、っちゅうもんやナナはん。亀の甲より年の功って奴やな」

カハハハーと笑って撮影する

海藤 宗次 > 余計な一言を言ったその瞬間、宗次の頭は音速で飛ぶ光の槍でぶっ飛んだ!
ナナ >  
「ふぅん、それがあんたの能力か。」

何かはしてくると思っていたが、まさか羽が生えるとは
天使と言っていたし天使らしい能力も使えるのだろう
ただ羽が生えただけ、と言うのは考え辛い

「きったない古着投げないでよねっ!」

腕を交差し膝をかがめる
竜鱗は多少傷をつけてもそう簡単に抜けはしない
傷を負う程度であれば回復が間に合う、後必要なのは…距離

「遠くでブンブン蜂みたいに飛んでないでどうにかしたらぁ?
あんたのそれ、電池切れで落ちるなんてつまらない幕切れ面白くないんじゃない?」

煽るのに加え、推論を立てる
宗次と同じ様な理屈の能力であればあの天使化は後付け
そうなれば当然ガス欠が来る筈

ナナ >  
と、攻撃が一度止まったと思ったら宗次がデュラハンに成っていた
翼以外にもやはり攻撃手段は有るらしい

(宗次…まぁよくやったよ。)

と改めて宗次の位置を確認した
貴重な情報をくれた宗次には欠片程の感謝を

木曽山 清華 >  
「その服1万したんだから弁償してね。あ、どうせ死ぬから弁償はかけてる保険から貰っていくね~」

宗次に投げた槍は念じれば戻ってくる。なんなら再度生成だって可能だ。それが天使化能力の一部でもある。
これだけでも脅威だが飛翔能力に加え、翼を武器にして飛ばす、光属性の魔法のような物、機動力の大幅向上…等厄介な要素は山盛りだ。
ハッキリ言って攻撃性能で見れば宗次を遥かに上回る。

それに加えて…

「アハ、受ける。ガス欠狙い?…宗次みたいな欠陥能力はこの清華ちゃんにはいりませ~ん。そもそも燃費悪いのって宗次だけだしぃ~清華ちゃんはリスナーの為ならオールでも戦えます」

宗次(不死鳥)の能力は唯一無二にして破格。だからガス欠しやすく使い勝手も悪い。
だが清華(天使)は?言ってしまえば単純な攻撃性能アップなので燃費も宗次に比べてはるかに良い。

言い終えた後、姿が消える。
ライフル弾みたいな威力の羽をまばらにばら撒いてナナの動きを制限しようとし、本命は清華本人が音速で光槍を突きつけて低空飛行で突っ込んでくる。
音速の突き刺しはもはや砲弾だ。スピード型でありながらありえない威力の攻撃だ。

海藤 宗次 >  
「うわあぁぁぁ!」

少しの間首がなくなって粉砕された箇所から赤い噴水がピューピューしてたものの背中の不死鳥の刺青が燃えるように輝いて、無い頭部が燃えて、形を成す。
遅れて宗次が死んだ時のショックで割とガチの絶叫。
なんだ、夢かと現実逃避し撮影を再開。


「おっと、ここで姐さんの天使モードからの攻撃!これは見えない!ははは、これが姐さんの真の実力、三番手はホンマ伊達ではないで~」

ナナ >  
「一万円投げ捨てるとかお金持ちだねぇ。」

羨ましくないけど、なんて
ガス欠は無い、か…嘘かもしれないが本当ならじり貧はこちら
だが動画映えでも狙っているのかこちらに突っ込んでくるのがかろうじて複眼で微かに分かる

「待ってたっての!宗次!」

こちらに向かうと言うのなら来ると良い
防御を解いて被弾覚悟で向かうのは…

ナナ >  
今まさに首が戻った宗次の元
そもそもここに居座ってるのだから使ったって問題は無いだろう
音速の世界では宗次に駆け寄る姿は逃げ出そうとしている様にも見えるだろう

そして宗次をしっかりと掴み…

「宗次バリア!」

音速でこちらへ突っ込む天使との間に肉壁として割り込ませる
先程の頭消失から関係なく突っ込んでくるだろうが…明確にクッションと邪魔にはなる筈

動きが鈍れば掴んででも抱き着いてでも、とにかく組み付こうとする

海藤 宗次 >  
「へ?ナナさん、何をしはるんです」

宗次は素っ頓狂な声を上げる。
まさか、自分は動画撮影係で掴まれるとは思ってなかったから対応が遅れた。

「あれ、ちょっと姐さん。俺盾にされてみたいです止まっ…」

宗次は意外と冷静…いや、平静さを装って攻撃をやめるように勧告する。
だが

木曽山 清華 >  
「働けばお金が沢山入るからにゃん。清華は働き者だからお金持ちだニャン。…それなのに仕事の邪魔をする、アンタが嫌い!!」

これはシノギを邪魔されたことに対する怒り。
その怒りは宗次を盾にされたくらいで止まるだろうか?いや、止まらない。
もともと清華は感情の生き物だからだ。

「宗次も邪魔!清華の邪魔する奴はみんな死んじゃえばいい!」

肉壁宗次は役割を果たしたのか一瞬だけ鬩ぎあってその後簡単に光の槍で爆散し、上半身と下半身が真っ二つ。でも撮影は続ける。
一瞬だけ遅れてその威力と突進力がナナにも襲い掛かる!

海藤 宗次 >  
「むお!流石にヤバイじゃないのナナはん?ゴホゴホ…」

上半身だけになった宗次がその無事な両腕を使って端末を持って撮影。
上半身がゴロっと転がっているので角度は悪いがそれでもカメラマン精神でどうにか上半身だけで転がって修正し、撮影し続ける。
まさに根性の撮影。
上半身だけの状態になっても生きてられるのは宗次元来の生命力の強さもある

ナナ >  
「子供を攫って売りさばくのが仕事ねぇ…!」

一周まわって笑いが漏れる
本気で言っているんだろう
だからこそ、やはりここまで来てこんな騒ぎになってよかったと確信する

一番のダメージは肉盾(宗次)が防いだ
それでも音速を超えた物理ダメージは消えたりはしない
腹部に風穴が開き槍は半ばまで貫通している

「舐めないでよね…おばさん
お前等みたいな人間のままで怪物みたいな奴はね…」

天使の方を掴む
爪を食いこませ肉を捥ぐことになっても離さない様に

ナナ >  
化け物()に食われて死ぬのがお似合いなのよ。」

ナナ >  
天使の首元に牙を突き立てる
このまま殺す、そう殺意を込めて

単純で粗野で暴力的な攻撃

木曽山 清華 >  
「ぐぅううう!」

捕まれたのは肩あたりか?
まあ、槍を突き出したのだからそのあたりだろう。
掴まれる力はまるで万力。一度捕まったら抜け出せない。
だが抜け出さなければ死ぬ。

清華という外道は生存本能が凄まじい。
咄嗟の判断で左の肩の肉を無理やり自分で引きちぎりながらどうにか噛みつきの即死を免れる。

瞬時に後ろへ飛翔。
一瞬にも満たない時間だというのに距離は50mも離す。

「どうして…こんな酷いことができるの?どうして私をお前のような悍ましい化け物と一緒にする?どうしてこんなに頑張ってるのに邪魔をする?ふざけるな!こんな理不尽認められるかぁ!」

瞬間飛翔した。

「もういい、動画映え関係なく確実にここで殺す!これ以上、私のような可哀そうな人間が出ないためにも!!」

羽の一つ一つが光を持つ。それはどうみても攻撃性を帯びてる。
清華はナナとナナのいるビルの屋上の上をぐるっと旋回しながら

「はあああああ!」

羽の一つ一つが爆発性を帯び、それが上空から絨毯爆撃のように面で攻撃する。
まるでクラスター爆撃だ。癇癪を起しもろとも破壊しようとするそれだ。

海藤 宗次 >  
「でたぁぁぁ!姐さん必殺技その1の光爆!ごおおおお!?」

その巻き添えを食らう。上半身だけの宗次。
巻き添え食らってなお、蘇生が働かないことからまだ生きているようだ。

「はっ…まて、よ…?光爆使ったちゅうことは…まさか光速槍でも使う気なんじゃあ…?」

どうもこの技はコンボになっているらしく上半身だけの宗次は口を開くだろう。
そして珍しく表情が曇り、口調も焦っていることから事態の深刻さを表す。

ナナ > 逃がした…!
だが軽くはないダメージにはなった

「んぐっ…子供を食い物にする怪物とお前を食べた私。似た様なもんでしょうが!」

何が可哀そうなのか言ってみろと言いたい所
余裕がなくなったのか攻撃性が遥かに上がった

追撃するなら今しかない!
宗次も何かおっかない事を言っている!

「宗次!もっかい手伝ええぇぇっ!」

再生前に手軽になった宗次を手に取る
この爆破、ビルが持たなくなるのもそう遠くはない
勿論助けたのではない、光速槍なんてとんでも攻撃される前に終わらせる

爆風の中肉盾と鱗でいなす
爆音が続く中、音に集中
光速槍なんて大層な名前の大技、それを構える瞬間を待ち…

「行ってこい!」

肉盾宗次改め人間弾丸宗次を投げつけ初動の邪魔をする

海藤 宗次 >  
「また、俺使われるんかぁぁぁい!」

ぶっちゃけナナに対していいようにこき使われてるのは動画撮影の為であって何も好きでこんなことしてるわけじゃない。
けど豪快にぶん投げられたのでぶん投げられて風切り音の中盛大に突っ込んだ。
あとしっかり避けられた。

そして避けられたので当然のように地上へ真っ逆さまに落ちる。
それでも落ちながら動画撮影している様は清華のパワハラの怖さからそうさせてる。

「ナナァ~先に天国逝って待っとるでぇ~~~」

落ちながら言った

木曽山 清華 >  
「お前と私は違う。…どうして化け物と人間を一緒にするのか」

宗次砲弾は横にローリングして躱す。
躱しながらさらに加速。
加速、加速、加速、加速。

あっという間にビルから遠ざかっていき、もはや海や隣の区まで行きかねないスピードと距離だ。
だがナナは分かるだろう。
これは逃亡じゃない。
必殺技の為の助走だと。

廃ビルに少しの間の静寂が訪れる。
この時期の夕暮れの風はやや冷たく戦闘で熱くなった体と頭を冷やしてくれるだろう。

来る
天使が
夕暮れを背にして
夕暮れの空の一部を白で塗りつぶしながら。

姿を現すのは一瞬。
清華が繰り出すのは助走(飛翔)をつけた槍による攻撃。
それはナナの本能で分かるだろう。
近接攻撃ならば反撃のチャンスはあるだろう。
だが一瞬。
一瞬だけだ。

木曽山 清華 > 飛来する。
木曽山 清華 >  
「化け物がぁ!死んで動画のスパチャ代になりなさいよぉ!」

数Kmの飛翔という名の助走をつけた後は光を纏って突進。
当然のように音速を超えている。
その光の槍先をナナの頭に寸分狂いなく、体ごと突進しよう。

これが清華の最強の技だ。
耐えられるか?

ナナ > 宗次は逝った、ビルの下に
それでも注意を引いてくれたのだから墓位は立ててやるかもしれない

離れていく天使、あの性格だ逃げは無い
となればまたあれが来る…肉盾無しで先程よりも強いとなれば分が悪い

「…やってやろうじゃない、丁度いい参考資料も有った事だし。」

最後まで役に立った宗次を頭の隅から追いやる
そして待ち構える
恐らく生きるか死ぬかだが…勝てない賭けはめったにしない

呼吸と体を整え、衝撃に備える

ナナ > 舞う鮮血とナナの体の構成パーツ
足と臓腑、そして骨
凄惨な光景の中…この破壊をもたらした天使の顔の目の前に

居た

「ぼぇっ…ハローおばさぁん…狙うなら頭だったわね…!」

真っ二つになった宗次を見て思いついた策
下半身を全て犠牲にして上半身だけ組み付く
重要な臓器を上に集め、最大限骨と肉で固める

普通なら策とも呼べない下策の奇策

「どうする?このまま、この距離で殺し合うか負けを認めるか…
お望みなら文字通り頭からマルカジリしてあげましょうか?」

木曽山 清華 >  
「んな!?正気?宗次みたいな真似…」

その上半身だけで食いつくという狂気じみた技は実は初見ではない。
初見ではないが一度見たからこそわかる。
こんなふざけた技は宗次以外真似できない、とだからナナがそれを使ったときは対応が遅れた
ヤバイ組み付かれた…

身体は既にボロボロだ。
あの音速超えの突進も反動ダメージがデカい。
全身の筋肉繊維がボロボロで臓器にも甚大な被害がある。

「上等…死ぬのは化け物だけだよ!」

だがここで負けを認めればどうなる?
シノギを失う、その失態を咎められ幹部のポストも失うかもしれない。
そして今動画を回してる視聴者、登録者数、再生数、スパチャ額…
失う、全てが。だから退くわけにはいかない。
まだ無事な方の腕で必死に背中の翼の羽を引き抜こうとする。
羽はナイフのようにして使うつもりのようだ。

清華は宗次ほど身体は丈夫ではない、だからかダメージの蓄積で初動が遅れた。

「っ…」

ナナ > 「あら、そうっ!!」

額に骨のコブを作り、思いきり頭を叩きつける
頭をマルカジリなんて言ったが選んだのはこんな手段
代わりに顔が軽く陥没する勢いの頭突きを叩き込む

痛みと衝撃での脳へのダメージ、意識は持っていけるだろう
墜落を始めれば天使改め清華を沸きに抱え、建物の壁に爪を突き立てて減速する

「どうしてくれんのよこれ…」

地上にまで降りたは良いものの、下半身の再生を始めるが服がない
とりあえず全体に猫の様な毛を生やして下半身はモフモフスタイル

覚えたての再生魔法も併せて一応体が元の形になれば清華にも応急処置
内臓と肩の傷の出血を止める程度
顔は…まぁ放っておいても金でいい治療士を見つけるだろう、命にかかわるわけでも無いし

「宗次~!早く来なさ~い!」

と、近くに落ちたであろう宗次を呼ぶ
天国で待っていると言っていたが、あの男が死ぬ未来が想像しづらくいくとしても地獄だと思っている

海藤 宗次 >  
「なんやぁ~終わっ…って姐さん!?」

ナナによる脳震盪攻撃で辛うじて清華は死なずに済み、気絶はしてるも生きている。
ぐったりとしている清華を脇に抱えたナナが降ってきたときは宗次は驚きの声を上げた。

瓦礫の中からのそっと出てきたのは五体満足の宗次。
能力で治療したか。

「姐さん…負けたんか…」

愕然とする。
当然だ。ハッキリ言って相性的にも悪くはなかったし実力も申し分なかった。
結果がこれ。
宗次はうなだれる。うなだれた先には動画配信してた端末が目に入る。

「あ、スパチャ額過去最高更新したわ。」

訂正そこまで落ち込んでなかった。

ナナ > 「ちゃんと生きてるわよ。
大体、殺してあんたの所と全面戦争する気なんて無いっての。
この人負けん気強すぎてこうするしかなかったわ。」

やっぱり来たかと一安心
万が一、この状況で宗次が死んでいれば事の説明をどうしようかと思っていた

と、宗次の言葉を聞いてそうか配信が有ったかなんて思い出す

「あ、あんたそのスパチャ後で私に全額寄越しなさい。出演料よ。
あと、ちゃんとこうして勝って生きて帰したんだからもう子供で人身売買しませんって書いてもらうわよ。」

ほら、と清華の服を掴んで差し出す
疲れたどころか割と本当に死にかけたが、本来の目的は達成した

「にしても、この人で三番手とかあんたの所の覇伝洲だっけ?どうなってんのよ。」

ただの半グレ組織と聞かされていたが、よく考えれば人身売買までするしこんな戦力を抱えてる辺り色々怪しくなってくる