2024/12/27 のログ
■水仙倫太郎 >
「そ、そうか?俺、そんなにかな……」
ただ自堕落にはならないようにしているだけなのに、
そう言われると妙な気分だ。自分自身にそんな自覚は微塵もない。
いや、だが、今はそれ以上に衝撃的な発言だった。
「い、いや、ヘンな事じゃない。
全然、そう、お、俺もそう思う、し……」
只々遠慮していたのは自分の方だという事実。
それ以上に、自分の想像を遥かに超えるほどの思い。
無論、相思相愛の自覚はある。それが想像以上だったという話。
気恥ずかしさに片手で顔を覆い、横目でちらりと相手を見やる。
「襲は全然その、普通に魅力的だしな……。
可愛いし、男を立てる器量はあるし、それ以上俺は全部好きだけど……」
「い、いや、驚いたっつーかあんまり面と言われて言われることねーし……」
破壊力が凄いぞ。顔もすっかり熱い。
なんだ、暖房は付いてはいるけど、それ以上に熱い。
「(いきなりぶっこむのは反則だぜ……!)」
■竜胆 襲 >
「私の知らないところで、結構モテてるんでしょう?
背も高いし、顔立ちもよくて、優しくて頼りがいがあって。
女の子がほうっておくわけ、ありませんから」
くす、くす。
自覚のない様子に笑みが溢れる。
モテていないとしたら、きっと鈍感なだけだ。
「それは…その。
学校や部室や、お外なんかだと、誰かに聞かれたら恥ずかしい、ですし…」
此処は二人だけの空間。
故にそんなことも口にすることが出来る。
彼しか、聞いている人がいないのだから。
「倫太郎くんはいっぱい好きって言ってくれますけど。
私だって倫太郎くんがいなかったら───」
きっともう、今頃は死んでいますから。
重い現実は口にしない。
「なんて、重い女はイヤじゃないですか?
…なので、こういう時だけに留めます。
そのほうが、威力も高いみたいですし」
顔を赤くしてしまった彼へと送る笑み。
背景にある暗さは、全て彼が照らしてくれている。
ぱっと見れば一方的に入れ込んでいるように見える反面、
この竜胆襲という少女が彼に依存している部分は余りにも大きくて、深かった。
「また来年も、一緒にクリスマスを過ごしましょう。
今日は本当に楽しかったです。…まだ、終わってはいませんけど」
■水仙倫太郎 >
「何処で勉強してきたんだよソレ……」
御覧の通り破壊力は抜群だった。
自分の知らない内に彼女は女としても磨きをかけている。
昔は結構引っ込み思案だった気もするけどな。効いたぜ……。
足元に転がった唾を拾い上げ、懐にしまい込んだ。
そして、有無を言わさず彼女の肩に手を回す。
より一層互いの身体が密着する状態となった。
「襲」
名を呼んだ。何時もと変わらない声音。
鍛え上げた硬い指先が、軽く彼女の髪を掻き上げる。
「俺はいいよ。
俺は襲の全部受け止める気でいるんだ。
どんだけ重くても、全部受け止めてやる。
襲が間違った方向にはいかせねーし、襲も俺のことを見て欲しいって思ってる」
「……じゃなきゃ結婚まで、考えないぜ」
そのためにずっと隣にいる。
あの日、彼女と一緒にいると決めたその日から、
どんな彼女であっても、ありのままに受け止める。
口に出さずとも、それを察していたからこそ口にした。
彼女を繋ぎ止めるなら、どれだけ依存されても問題ない。
「当たり前だろ?クリスマスも正月も、夏だって一緒だぜ」
■竜胆 襲 >
「それはひみつです」
わかっているはずだ。
こんな入れ知恵をするような人間は一人しかいない。
どう考えてもしそうなのが部員に一名いる。
視線が交差する。
彼との距離が近い。
肩に手が回されれば、それは余計に。
冬の装いはそれなりに厚着で、それでも触れれば少女の華奢さが手に伝わる。
強い力で抱きしめれば折れてしまいそうな、危うさすら。
「倫太郎くんはいつもそう言ってくれますので、私もつい全てを預けていまいそうになります」
「私が不安に思うことも、きっと全部まとめて、力強く支えてくれるのだと」
交差する視線は、確かにお互いを見ている。
「…後から、やっぱり早まった……なんて言うのはナシですからね?」
今後の全てを決めるには、きっとまだ若くて、早い。
それでも覚悟を口にするのは…揺るぎない、揺らがないという意思の現れ。
…男が決めたと口にした時には、口を挟まないこと。それが良い女、というものらしい。
これも、受け売りだけど。
「……倫太郎」
名前を口にして、自分から身を預ける。
近い距離感、互いの呼吸や高鳴る心音まで届く距離──。
薄く細まった金眼の中心に、僅か紅が灯る。
■水仙倫太郎 >
なんとなくだけど脳裏によぎってきた顔がある。
喧嘩仲の部員。大事な女友達の一人。彼女の友達。
ある意味ではいい影響になっているとは思う。決して悪いことではないだろう。
「…………っ」
腕の中にある彼女の身体は、か弱さを感じる。
それこそ抱きしめてしまえば、折れてしまいそうなほどに、
全力を出してしまえば好き勝手出来てしまいそうな気もする。
余りにも"邪"な感情が心をよぎった。飲み込む生唾の音がやたら大きい。
「……お、俺はさ。襲と一緒にいたいって、
襲に惚れ込んだその時からずっと、覚悟は決めてる、つもりだから……」
「どんだけ仄暗さに身を燃やしても、俺が絶対に繋ぎ止める」
復讐の鬼のままにはさせない。
その感情がどれだけ闇に沈んでも、引っ張り出す。
若さゆえの直情さ、未熟さはあると思う。
けどソレが決して、間違いとは思っていないから。
交差する視線、高鳴る鼓動が、より早くなってくる。
「俺が今更早まるとか、言うわけねーしな。……な、何だ?」
■竜胆 襲 >
「………」
何だ、と問われれば…僅かに口を噤む。
言いにくいこと。
それをすぐに察させてしまうように。
「倫太郎が私にそこまでしてくれる、のは……」
好き、だとか。
放っておけない、とか。
きっといろいろな理由の複合だ。
それは、理解してる。
けれど。
少女、竜胆襲は──人一倍に、自己肯定感が欠如している人間だった。
どうして、と問えば。
好きだから、と返ってくるだろう。
だから───。
「り、りんたろーはわたしのどこがすき?」
ひょっとしたら、呆気にとられてしまうかもしれない質問。
心臓が高鳴るのは、きっと緊張も含めてだ。
全部、はナシですよと、期待の籠もった瞳が言っている。
■水仙倫太郎 >
妙な沈黙が互いの間を通り過ぎる。
相変わらず美人な顔つきをしてるな、襲は。
こんなにガタいに自身があるのにドキマギしてるのが丸わかりだ。
ちょっとかっこ悪いかな、と思っていてもしょうがない。
好きな相手が、こんなにも近いのだから。
「えっ、お、おう……んー、と……」
さてどうしようと思った矢先、思いも寄らない問いかけだった。
何処が好き、か。思えば結構ありきたりな質問だが、
流石に全部はダメらしい。釘を差されてしまった。
「まず、外見がいいことだろ?髪も綺麗だし、目も可愛い。
顔立ちも整ってるし、オシャレで、清楚で、後胸もデカいし、
ハッキリ言って男がいたら全員が全員見た目は好きになると思う。俺も好き」
顎に指を添えながらつらつらと言葉が出てくる。
言えって言われたなら仕方ない。自分なりに思うことだ。
倫太郎は嘘がつけないので、それこそ馬鹿正直だ。
「けど、別に見た目だけって訳じゃねぇよ。
人一倍真面目なところは好感持てるし、可愛げもある。
努力家なとこもあるし、守ってあげたくなる感じはぐっとくるしな」
主観ではある。けど、それなりに傍にいた。
自分なりに彼女のことは見ているつもりだ。
「……けど、まぁ、結局全部ひっくるめて好きになっちまったんだ。
たまーにちょっとおとぼけな所もあるし、俺は普通に生きて欲しいって思う。
俺達の活動を部活動に提案したのだって、学生らしいことをしてほしかったからな」
そっと彼女の頬を撫でた。
ニカ、と微笑む倫太郎の笑顔こそ、明るく彼女を照らしている。
「だから、悪い。全部好きってなっちまうな」
■竜胆 襲 >
子供の頃からお互いを知っていて、
気がつけば惹かれあっていて、
思えばはっきり聞いたことってなかったな、という。
せっかくだから…なんて思っての問いかけだったのだけど。
「わ、私。結構ずぼらだし…気も利かないところもあったりする、から…。
あの、あんまり…こう…ハードルが高い…です……」
逆に恥ずかしくなって、目線を逸してしまった。
言及されて意識してしまったのか、自身の胸を抱えるような姿勢で。
…余計強調されている気がするけど、無意識。
「……そんなに好かれているのは嬉しい、し…倫太郎は嘘はつかないです、けど…。
だからこそ、少し、心配です…私のために無茶や無理をしそうで…」
嬉しさ九割、心配一割。
手放しで彼に身を預けていいのかわからない原因はそこだ。
「これからの話をまでしたんですから、
私を庇って大怪我とかなんかは絶対ダメですからね…?」
ちらり、と視線を戻しながら。
……好かれすぎている、という自覚ついでに湧いてくるのは、そういう心配。
■水仙倫太郎 >
「知ってるよ。意外と服脱ぎっぱにするよな~。
だから、そういうのも含めて好きだって。
第一、完璧な人はいねぇからよ」
「そういうのは、支え合いだろ?」
まだまだ若年の人ではあるが、
倫太郎の他人に対する価値観は達観の域だった。
だからこそ、別け隔てなく優しく出来るのかもしれない。
そう、それは同時に……。
「ま、まぁ、なんだ。死ぬ気はないしな?
なるべくならそうしないって、ホントだって」
自らのことを省みないということ。
自らに無頓着に近い、行動指針は常に誰かのため。
そのためなら、無茶もする。倫太郎という男は、そう。
心中を求められれば、応じてしまうような底抜けのお人好しだった。
「……と、所で、結構いい時間、だな……な、なぁ……」
ぎゅ、と彼女を抱きしめる腕の力が強くなる。
それこそ、"逃がすまいと言わんばかりに"。
「今日、と、泊まっても……いいんだぜ?」
僅かに上ずった声音だ。緊張は当然してる。
自分の部屋に連れ込んだ以上、何をするかなんて、決めている。
恐らく、それは彼女も……。
■竜胆 襲 >
「私を庇って死んだりしたら殺します」
じとり。
嘘はつかない彼だから、精一杯そう言ったのだろうことが理解る。
自分も彼も、変えられないところがある。
結局似た者同士、だからこそ子供の頃から一緒に過ごして心地よかったのかもしれない。
同時に、それを失う不安は───。
「……あ」
ぎゅっと抱き締められる。
強い、力。
子供の頃に手を繋いだ時よりもずっと。
「───そうですね。そろそろ帰らないと」
「…なんて、冗談です」
そっと、彼の唇へ自分の唇を寄せた。
触れたか触れなかったか、そんな程度の接触があって──。
男が覚悟を決めた時には、口を挟まないのがいい女。
「………もう、子供同士じゃないですし」
そう言う少女は頬を赤らめ、俯いた視線に紅い光を灯す。
聖なる夜。特別な日。
改めての気持ちだけじゃなくて、今のお互いの距離や、色々なことが確認できた。
当然、その気持ち応えるべく。
少女とて、部屋に誘われた時から……。
■水仙倫太郎 >
「そ、そうはなりたくねぇから善処は、する……」
この目、本気だ。
やると決めたらやる"スゴみ"がある。
それこそ今回は笑って誤魔化したが、気をつけないと。
「……それも、アイツから教えてもらっ……、……!?」
冗談にしては、と思った矢先に唇を掠めた。
掠めたような気がするくらい、近い距離。
もうお互い、その気になってしまっているのがわかる。
紅の光を、じ、と見つめ返す黒の双眸。
生唾を飲み込み、息を整えて今度は自分から……。
「そう、だ、な。……襲……」
名を、呼んだ。
部屋の電気が消え、暗闇には二人きり。
長いはまだ、始まったばかり。
大切な人と、それはそれは長い夜を過ごすことになるのだろう…。
ご案内:「聖夜の一幕」から竜胆 襲さんが去りました。
ご案内:「聖夜の一幕」から水仙倫太郎さんが去りました。