2024/07/15 のログ
ご案内:「薄明りの数ある事務所」にエルピス・シズメさんが現れました。
エルピス・シズメ >  
 這う這うの体で事務所に戻る。
 外や日常では元気なテイで過ごしている。

 なので満身創痍の姿で居られるのは、ここだけだ。
 (きっついね……でもこの辺はやってかないと。)
 
 ひとまず給湯室回りに向かい冷蔵庫を非常用電源、もとい不法に流れている電気に通じさせる。
 
 弾痕などの被害も軽微と判断し、そのままにする。
 
(フルーツ付きのプリンを買ってきたし、入れておこう、)

 男子寮から帰った途中、商店街のケーキ屋さんで6個入りの『サクランボ生クリームプリン』なるものを買った。

 お土産にと思いつつ、"電気系統調整しなきゃ"と戻ってきた形だ。

エルピス・シズメ >  
 おぼつかない身体で1Fの整備と予備電力で賄う。
 前より使える量は減っているのか日常生活には問題ない。

(今日は、おかえりを言えなさそうだ。)

 感情魔力混合炉を託した。
 イーリスの中の殺害欲ごと、悪いものを引き受けた。

 『エルピス』のものでない異能を行使した。
 感情魔力混合炉を久しぶりに制御した。

 要は慣れないものをぶっつけ本番で使ったから──

「反動がいろいろある。
 『エルピス』が壊れないようにゆっくりする。」

「なんだかんだで、健康は大きなリソース。」

 エルピスの崩壊。それだけは避けねばならない。
 そんなことが万の一つにもないようにすると決めた。

 時々刺激や赤の線が身体に走る。
 残響か信号かは分からないが、慣れている。

エルピス・シズメ >  
「といってももう少し休めば直るし、日常ぐらいは十分。
 焦りも不安もなにもなし。」
 
 感情魔力混合炉を失っているが、義手義足が重いだけで問題がない。
 身体が思うようにいかないままならぬさはあるが、日常においては十分だ。

「……とりあえずゆっくり眠ろう。
 水、階段を……」
 
 冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、少し飲む。
 そうしてから階段を登っていたが──。

 ガタン!
 大きな音を立てて階段から滑り落ちた。
 階段が水びたしだ。

(大丈夫、打ったけど捻ってはない。)
(今でのちゃんと受け身は取れる。)

「たしかに、疲れてるとたまにやっちゃうけど……
 ……いいや、上り直して寝よう……」
 
 水びたしの1階と階段をそのまま上がり、私室に入って眠る。

ご案内:「薄明りの数ある事務所」からエルピス・シズメさんが去りました。
ご案内:「常世島スパ洞天《桃源リゾート》 プール」に宇賀野 実さんが現れました。
ご案内:「常世島スパ洞天《桃源リゾート》 プール」に東山 正治さんが現れました。
東山 正治 >  
桃源リゾート。学生起業プログラムによる造られた娯楽施設。
温泉エリアやプールエリアと言った季節感を問わずうってつけな施設だ。
桃源郷だのなんだの、洞窟をイメージした薄暗い作りは個人的に嫌いではない。
教師の立場としては、学生がこういった物を作り上げるのは喜ばしい事だ。
まぁ、それ自体は良い。人の誘いがなければ来ることはない。
要するに、誘われた。各種エリアに繋がっている中継地点。
そこの休憩ゾーンで先に着替えたので旧友を先に待っている所だ。
余り肌は露出したくないので、男性用のスイムウェアを着込んでたばこを咥えていた。

「…………。」

東山はこう見えて、人との繋がりは大切にする方だ。
それこそ、島外からの付き合いが相手とも成れば尚更だ。
では何故、揺蕩う紫煙を見上げる顔が何とも言えない顔をしているのか。
それはもう目を疑う光景があったとしか言いようがない

「男同士でプールかよ、とは思ったんだが……。」

いいや、何かの見間違いだ。そうに違いない。
必死に言い聞かせながら、"旧友"の着替えを待っていた。

宇賀野 実 > 「正治さん、おまたせでーす」
ゆるい調子で表れた姿の口調は旧友のままだった。

フリルのついた女児用ワンピースに、大きな浮き輪。
髪の毛はツインテールに結んだその姿は、紛れもなく女児であった。

「いや~、男子3日会わざれば刮目して見よっていう言葉もありますからね。
 最近暑いし、正治さん島にいるっていうから避暑でもするかーって思ったんですよ。」小走りで駆け寄ってくる姿は、相手の記憶の中にあった姿からはだいぶ小さい。
縮んだ…というか、姿が女児に近づいているのだ。

「前はおんなじぐらいあった気がするんだけどなー。」
相手を見上げながらため息まじりにつぶやく。
数年ぶりの再開は、あまりに劇的な変化から始まったのだった。

東山 正治 >  
名を呼ばれた。その喋り方は、記憶にある通りではある。
懐かしいと同時に、その余りにも乖離した声音に思わず振り向くのを躊躇った。
咥えたタバコを指で持ち、煙を吐き出してぎぎぎ…もう振り向くのが嫌ってのがわかるくらいゆっくり振り向いた。
なんということでしょう。そこには可愛らしいふわふわ女児がいるではありませんか。

「…………。」

へらっ。引きつった笑みを浮かべて、指の煙草が落ちそうになりました。

「3日会わざればっていうレベルじゃないのよコレ???
 ほんとに何があったの???実ちゃんさァ、え?偽物じゃないよな。本物だったわ。」

一緒に来る時に身分証明書とか色々確認したんだった。
あまりにも衝撃受けて色々確認したけど、それは自分の知る"宇賀野 実"で間違いはなかった。
こんな時代ではあるが、こんな時代を受け入れがたいと思う男だ。
もう余りの変貌っぷりにもう東山の頭もバグってる。
はぁ~~~と余りにもデカいため息が漏れた。
とりあえず火のついてるタバコは備え付けの灰皿に潰しておいた。

「そりゃそーだよ、実ちゃん縮んでるし前男だったじゃん。
 ……今も男だよな???実ちゃんちょっと大丈夫???記憶曖昧になってない???」

因みにオレは大丈夫じゃない。

宇賀野 実 > 「せーじさんも変わってないですねー。
 あっはい、本物です。 いやそれがですね、話せば長いことながら、
 聞けば短い経緯がありましてですね…。」
よよよと泣き真似をしながら答える。相手がタバコを落としそうになるのを
見たのはかなり珍しいので、ちょっと楽しげだった。

「そうなんですよ。縮んで…縮みましてね。 男です、男。
 確認します? あ、でもアレか、野郎同士ならまだしも、
 ちょっと見た目的に問題ですよね。」
自分の見た目は女児である。 その股間を確認するというのは、
ちょっと色んな意味で風体が良くなさすぎる。ぶるぶると頭を振ると、
豊かなツインテールが一緒に揺れた。

「立ち話もなんですからプール行きましょうよプール。
 それとも売店とかで飲みながら話します?」
どっちがいいですか?と相手を見上げながら問いかける。
昔と同じトーンの相手の調子がとっても嬉しかった。

東山 正治 >  
「記憶まで曖昧になってない?正治(さだはる)だよ、さーだーはーる。
 ……大体事情はなんとなくわかるよ。異能とか、或いは先祖返りとかそういうんだろ?」

或いは何かしらの(まじな)いか何かの反応。
今の時代にどういったものがあるか把握してるし、仕事上詳しくもなる。
しかし、一体何の因果かな。本当に、旧友にそういうのが出てくるとは思わないだろ。
世界の異物を拒絶する男は、これは痛烈な再開になった。
表情がひきつるのも致し方ない。

「なんか動作までちょっと女っぽいしな……。
 いーいー!一々めくって確認とかしねーから!!」

No、と片手を突き出ししっかり拒否。
しっかり女児の動作が板についている。
だが、その言動や雰囲気は昔の姿と(ダブ)る。
当然だ。目の前にいるのは、紛れもない宇賀野 実本人なのだから。

「あー……気まず。なんたってこんな……まぁいいや。
 せっかくの生徒が作った場所なんだ。なるべく楽しませてもらわねェとな……。」

「まぁ、プールでよくね?疲れたら売店でもいこうや。
 ……一応言っとくんだけど、迷子になったりしねェよな?」

だがセンチメンタルに浸るのはよそう。
彼は純粋な気持ちで遊びに誘ってくれたのだから、今は楽しむとしよう。
それこそ、その小さな体を揶揄すればへらっと昔と変わらない、嫌味な笑みで見下ろした。

宇賀野 実 > 「いやー、いつもの正治さんだなあ。 この切れ味。
 そうなんですよ、語れば長い話が一瞬で終わっちゃいましたけど…。
 それにしても、流石先生ですね。 一発で看破するとは」
相手の言葉にうむ、と元気よく頷いた。

「えっ、動作が? えっ、あっえっ…?
 いやまあ、正治さんがそこまで言うなら見せるのはやぶさかでもないんですけど、
 まあそれはそれとして…。」
動きについての指摘を受けると、目を丸くしてショックに震えた。
自分で思っている以上に、女神の血が強く顕れているのかもしれない。
地味にショックだった。

「あっ、それじゃあプールにしましょう!プール!
 …迷子にはならないと思いますけど、不安なら…いや…。」
手でもつなぐかと言おうとしてやめた。
この状態で相手と手を繋いで歩いたら、あまりにも子供と大人である。
周囲の人に姪っ子とおじさんみたいな状態だとん認識されてしまったら、
自分にも、相手にも精神的なダメージが入る。
とりあえずぺたぺたとちょっと早足で歩きながら、二人でプールのほうに向かうことにした。

東山 正治 >  
「知りたくて知ったわけじゃねーけどな。
 ……ハァ、なんつーか、調子狂うな。」

知らない女児の姿で、知っている男の言動が何度も(ダブ)る。
なんなんだこれは。一体自分は何と話してるんだ。
頭がおかしくなりそうだった。相変わらずこの世界は自分には優しくない。
何時にも増してその表情は嫌悪感の気難しさに歪んでいる。

「いらねぇっつってんだろ!!なんで乗り気なの???
 マジで、何が悲しくて友人のチンコみなきゃなんねーんだ……。」

なんで吝かじゃないんだ、断れよ。オレは嫌だよ。
思わず声を張り上げて諭すように言っておいた。

「はいはい、わかってるよ。……別にもう今更見てくれなんて気にしねーよ。」

どうせ隣同士で歩いてる時点でそう変わらない。
何より女児と大人の歩調なんて知れている。
ちょっと強引だが、彼の手を取り歩くことにした。
一応レジャー施設、見ての通り人通りも混雑しているので、迷子に成られたほうが余計に困る。
もう、ある意味悟りの境地である。

宇賀野 実 > 「まあまあ、中身はいつもの宇賀野ですよ。
 正治さんは想定外のことが発生すると結構ガタガタになりますもんね。」
相手の眉間にシワがよる様を見ながら事もなげに答える。
気のおけない友人だからこそ言える感じの言葉だった。

「ひっ…! いやあ、見た目だけは女子ですから…。
 ちょっと受けるかなって思ってー。」
唇を尖らせつつ、一緒に歩く。
大きくてごつごつした手が差し伸べられると、小さく柔らかい手が
それを握り返した。

「まあ、しかし人がいっぱいいますね。 真夏のビアホールだってこうはいかないですよ。
 あー、お酒飲みたいな。 こういう暑いときには生がいいなあ。そんでバーベキューして…。」
二人で歩くも、眼の前は人混みである。 手を握ってもらったのは正解だったのだろう。
かき分けるように進みながら、眩しさに顔をしかめてつぶやいた。

東山 正治 >  
「想定外にもレベルがあるだろ!誰が予測出来るんだよこんなの!?」

常に予想外や想定外の事なんて怒りうることは現役時代から知っている。
でも流石にこれはこう……なんだ。ちょっとあんまりすぎるぜ。

「オレに狙う受けじゃないだろソレ。
 まさか、他の連中に言ってたりしねェよな?そんな売女まがいな事。」

すっかりと手の感触も変わってしまった。
ごつごつとした中年男の自分と、柔く小さい女児の手。
余りにも思い出と乖離した感触だ。

「…………。」

だがこの脳天気な語りは何もかも昔の記憶と同じだ。
どうにも、世界の摩訶不思議というのは自分をよほど困らせたいらしい。
大変容を起こした連中がいたとして、それが目の前にいたら…。

間違いなく、正気ではいられない。

くっ、と喉から吹き出すように笑みが漏れた。苦い笑いだ。

「そうだなァ……からっからになった所に流し込む生が良い。
 肉は脂身の少ねェ、どーせなら肉よりも海鮮バーベキューもいいが……。」

なんて、おじん臭い事を適当に会話をしていたらついた。
流れが軽くあるような巨大プールにジェットスライダー。
子どもようのプールやら用途に合わせて様々なプールが点在していた。

「気合入って作ってんなァ……で、何処から行くよ?」

宇賀野 実 > 「いやあ想定できる人はいないと思いますよ…。」
ワハハと明るく笑いながら、相手の問いかけにニヤリと笑って見せた。
「やってませんよ。 だいたい、外見はこうでも中身はおじさんですからね。
 おじさんのもの見たいなんて人はおらんでしょう。」
手を握り、二人で歩きながら進む。
こうなる前は肩を並べて歩いていたものだが、これはこれでなかなかに良い。
姿が変わっても二人の友情がそこにはある…ような気持ちになった。

「生いいなあー。ジョッキもバキッと冷えてるやつでー、
 肉は赤みでー、ちょっとスパイスと塩気強いヤツでー。
 あっ海鮮!! それですよ正治さん!! 海鮮いいなあ~~」
頭の中が飲み会に占領されかけるも、眼前に広がるアトラクションの数々に、
おお、と感嘆の声を上げる。

「ははあ、こりゃあすごい…。 じゃあジェットスライダーいきましょう!
 ああいうのの作り具合でアトラクションのハードコア加減がわかるってもんです!」
あれ!と指さしたのは、ぐにゃぐにゃと曲がりくねったジェットスライダーだった。
先端からは水が滔々と流れ、時々人間がシュポーンと飛び出しては
下にあるプールに落っこちて水柱をあげている。

東山 正治 >  
「そりゃそうだろ…なんで得意気なんだよ…。」

なんかもう此処までノリノリなの半分受け入れてないかコイツ。
はぁ、と何度目かもわからないため息が漏れた。

「そういうのは自分の外見みてからいいなよ、中身なんかみてないっての。」

ていうかこの見た目でまだ一応チンコ付いてるらしい。
つまり女児って言うより男児。この見た目で?冗談だろ?
余計にどうなってるんだ人体。そろそろ笑顔になれるような事情が欲しいよ。

「……そういうのは話せるねェ。辛味が聞いてないとなァ。
 そこに海鮮のさっぱり具合が効くんだよ。ま、とりあえずひとしきり泳いだら飲むか。」

こういうのはなんだかんだ体に多少の疲れが必要だ。
東山の体は常に悲鳴を上げているようなものだが、彼は違うだろう。
子供の体力が如何ほどのものかはしらないが、今は何であれ全力で遊びを遂行する。

「センスまでちょっと年齢退行してね?まぁいいけどさ。」

確かに目玉といえば目玉なんだろう。
はいはい、と言いながら手を引いていくさまは完全に親子のそれ。
それこそ長い長い列と階段を登っていって順番待ち。
ものがものである以上、こういった安全は厳重に管理すべきだ。
職員生徒の誘導や監視。教師としての目線から見ても悪くはない。

「そう言えば、実ちゃんは駄菓子屋やってんだっけ。
 昔からの夢って奴?前はなんかもっと別のことしてた気はするんだけどさ。」

順番待ちの最中、何気なく話題を振ってみた。

宇賀野 実 > 「中身なんて見てないかあー。まあ、『女の子として扱えば女の子になる』って
 昔の漫画でも言ってましたからね。そういうもんなのかも。」
ため息を付く相手に答えるように、腕を組んで唸った。
そうして二人でうなりながら進みながら、合間合間にビアガーデンの話を挟む。
「そうですね、泳いだら飲む!!! あー…。もう口がビールの口だ…。」
冷たく、苦みがあって炭酸で…。考えるだけで喉がなる。
そんな感じでアトラクションを指差しながら進んだ。

「さっきから正治さん、なんか俺の外見以外に影響が出てるって言ってますけどお~…。
 ……出てます?」
恐る恐る確認。自分では必死におじさんのつもりなのだ。
仕草も、感性も女児に染まりつつあるのだろうか。不安げな顔だった。

「そうですよ、駄菓子屋おおげつをやってます。
 もともと一族が駄菓子や食べ物屋さんやらをやってるんですよ。
 そんで、俺は前は食品関連の仕事をやってたんですけど
 駄菓子屋を俺が継いだって感じです。」

東山 正治 >  
「あー……そうだな。『女の子として扱えば~』って言ってる辺りとかさ。
 今ビールの話以外もう完全にぷりっぷりっの女児だな。つーかビール飲んでいいの?その体。」

確かに中身はおっさんだがどちらかと言えばおっさんのふりした女児。
ぶっちゃけ思い出補正もなければ自分だってそう思う。
なんかもうぶりっぶりっの女子である。本当にチンコついてるのか???

「そっか。ま、今度暇がある時にまた邪魔するわ。
 公安のガキ共は頭使うからな、甘いモンも相当に好きだろうさ。」

差し入れにはちょうど良さそうだ。
そうこう言ってる内に自分たちの番だ。
洞穴をイメージしているが、かなり高い。
降りるまでには速さを考えても結構ありそうだ。
思うよりも早くはなさそうだし、これなら一人ずつでも……。

『あー、お父さん。お子さんちっちゃいから一緒に滑ってくださいねー』

と、係の生徒に言われてしまった。思わず肩を竦める東山。

「……だってよ、実ちゃん。しょうがねェから抱えてやるよ、いいな?」

宇賀野 実 > 「そんなにフレッシュな女児なんですか?
 ええ……ビールすごい自信無くなってきた…。
 飲んでいいんじゃないすか? だめかなあ…。」
図体の問題で許容量が減ってるとかならわかるけど、
未成年飲酒に該当するかはまた別の問題じゃなかろうか。
そう思うけれどきちんと跳ね除けられるほどの自信はなかった。
ちょっと不安げな表情でうつむく。 ビール…。

「ぜひぜひ。 駄菓子以外にも色々扱ってますから、
 なにか必要だったら用立てますよ!」
大口顧客の言葉にぱあっと表情が明るくなる。
今にも飛び跳ねそうなぐらいに喜びをほとばしらせたところで、
スタッフである生徒の言葉にぴたりと動きが止まった。

「えっ、あっ…おと…おじ……。」
おじさんなんですけど。 そう言いたげな顔で正治さんを見る。
「…うん…」
助け舟は来なかった。
やっぱり自分はもう女児なんだろうか。
男子としての部分は、ただの残滓なのだろうか。
それはそれとしてスライダー乗りたい。
なんともいえない表情で頷いた。

東山 正治 >  
「一回成人踏んでるからまぁ飲んでも問題はねーかな。
 若返りとか、色々あるからさ。けっこー曖昧なの、その辺。元から未成年はダメだけどね。」

先祖返り以前にそういった場合の問題もある。
結構デリケートかつ症状が人によって違うため、大体問題がなければ許されたりするものだ。
個人的には法律の観点からしても問題はない。
神性によるよる身体変化ならアルコールの影響も少ないはずだ。

とりあえず一に付くようにスライダーの前にかがみ、膝の上の女児を乗せる形だ。
両腕でしっかりと抱える姿はもう完全に親子である。係員の指示に従った結果なので他意は一切ない。

「……言いたいことはわかるけどしょーがねだろ、実ちゃん。
 そうでもいわねーとややこしいし、ちょっと我慢しな。」

言いたいことは理解する。とりあえず精神はまだおじさんでちょっと安心した。
そう考えるとこれ、中年男性二人が抱き合ってるのか。ちょっときついな。
けど、髪の毛から漂う妙に良い香りが鼻腔をくすぐるから余計に脳がバグる。
どういう顔したら良いんだよ、これ。思わず東山も真顔になった。

「とりあえず、行くぞ。ちゃんと掴まってなよ。」

合図とともにスライダーの上。ざっ、と流れる水の上で二人の体は急加速。
激しい音とともに、トンネル状の筒を一気に駆け巡っていく。
内部は思ったより明るく、此れを作った生徒たちの趣味なのだろう。
中華系の明かりのコントラスト、光を使ったアートがふんだんに使われていた。

「へぇ、凝ってんな。意外とスピードは緩やかだし…どーよ、実ちゃん。楽しんでる?」

体勢上耳元で囁く形になる。少しハスキーな中年ボイスが耳をくすぐるだろう。

宇賀野 実 > 「よかったあ。 これでノンアルコールとか言われたら泣いちゃうところだった。
 たぶん朝の女児アニメ見損ねた女児ぐらい泣くかも。」
やりとりをしながら、スタッフ生徒の言に二人で従う。
自分の気持をわかっているのだろう、相手の言葉にそっと頷いた。

「まあ、混乱されないようにしてるのは、そもそもこっちですしね。
 水着もそうだし、本能的にこういうのを選んじゃうのもそうだし…。」
女神の血が強くなっていくに従い、可愛らしい衣服を身につけることに
抵抗がなくなっていくどころか、むしろそういった衣服のほうが調子がよくなる有り様。
相手には伝えているわけではないが、なんともいえない状態だった。
お膝の上にちょこんと収まった状態で、大人しく抱っこしてもらう姿勢を取る。

「了解! ここで怪我なんかしたらそれこそ台無しですしね!」
相手の言葉に答えた途端、ぐいっと加速する感覚とともに滑り始める。

「うおお、おおおぉぉ!!」
背が縮んだからだろう。この姿になる前より何倍も迫力があった。
思わず叫ぶ。
「んっ、んん…ふ、ぁ…!」
スリルに一生懸命になっていて油断したその瞬間、
耳元をくすぐる相手の声色に、小さく声を上げる。
身体に纏う”いい匂い”が少しだけ強くなった。