レイヴン | 「何しろヨキは食べることが好きだが――それ以上に、この学園が好きだ」 / 20190203教室 |
獅南蒼二 | 「六月でよんじゅう……」 / 20190207魔術学部棟第三研究室 |
「お前の首が危うくなったら、そのときはヨキも呼んでくれ」 / 20190211職員室 | |
小鳥遊日和 | 「君が語らねば、後進も育たん」 / 20190221調理実習室 |
人見瞳 | 「ふふ、慣れてきた。もう何人増えても驚かんぞ」 / 20190205古書店街「瀛洲」 |
天導シオン | 「教師としては、無事に結果を出して進級してもらう方が安心出来るのだがな」 / 20190211浜辺 |
北条御影 | 「たとえ忘れてしまったとしても、今それを強く強く感じたことは、決して嘘ではない」 / 20190212ヨキの美術準備室 |
上総掠二 | 「残念ながら、“女心”などという判りやすい理屈は存在せんよ」 / 20190214ヨキの美術準備室 |
城之内ありす | 「……失敬。君が消えてしまうのではないかと思って、つい」 / 20200610ロビー |
赤坂薫子 | 「この男は手が付けられぬ、と思ったら、すぐにブロックでも通報でもするがいいさ」 / 20200612風紀委員会本庁 |
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美術教師。
人間の生み出す習俗と文化に魅せられ、美しいもの、美しいことを愛する。
常世島を、二元論的な善悪を超越したひとつの秩序と捉えており、人間または異邦人は元より、時として落第街や非合法組織をも庇護する。
自らの基準で美を見出だした事物については、清濁を問わず広く受け入れる。
しかしその美しさが失墜した、あるいは常世島の秩序を懐乱したと判断される場合には、一転して苛烈な非情さを見せる。
愛想に欠けた所作に反して、人付き合いを好む。
交流を尊び、未知の物事に対する好奇心が旺盛。流行にも敏感で、ほとんど不物好きの域に入る。
約十五年前、異界から常世島に辿り着いた異邦人。
「《門》を潜る前は犬だった」と称する。
学園では教師として金工の授業を受け持っているが、例年履修生はあまり多くない。
デッサンや絵画など、金工以外の実技を教えることもある。
その他、芸術学や美学といった座学を担当しており、古典美術から現代の大衆文化まで広く取り上げる。
美術の特別な知識や才がなくとも、着眼点がユニークであったり、〆切を守って真面目に制作を行う者にはきちんと評価を与える。
プライベートでも個人的に彫金を制作しており、好事家に作品が売れることがある。
美術雑誌に小さいながらも掲載されたことがある他、美術館にて個展を開催した経験を持つ。
室内の中ほどに、小奇麗に整理整頓された机がある。
備品のノートパソコン、伝言のメモや付箋、書類ファイル、参考用の書籍がいくつか。
ヨキが雑務を行うための部屋。他の教室の半分ほどの広さの、奥行のある間取り。
左右の壁にずらりと棚が並んでおり、奥にヨキの事務机が置かれている。
棚には画材や工具などの備品や、図書館にも劣らず多彩な美術関係の書籍が保管されている。
各科目の履修生や美術部員たちが、溜まり場として使ったりしているかも知れない。
部屋の前の掲示板には、芸術系のイベントや公募、就職案内など、たくさんの広報物が貼り出されている。
研究区に借りている作業場。住宅用の作りではないが、自宅同然に暮らしている。
造形作家として住所を公開しているため、誰でも容易に訪問することが可能。
打ち放しコンクリートの二部屋。入ってすぐの一部屋が工房。奥が私室。
水洗トイレと申し訳程度に設えられた流し、IHヒーター。風呂はなく、近所の銭湯や職員寮の浴場を使っているようだ。
大きく頑丈な木製の机、床に確保された作業スペース。作りかけの大型作品。
工具、画材、最低限の金工設備。鉄、銅、錫、真鍮、さまざまな素材の椅子やランプやレリーフやアクセサリー。
無数のスケッチ。立て掛けられたキャンバス。こびり付いた粘土の跡。
書き物机に私物のデスクトップパソコン。小ぢんまりとした冷蔵庫やテレビ。服や本が整然と詰まった大きな棚、丈夫な寝台。
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かつてカミと呼ばれた犬があった。
犬は山を治め、捧げられた娘を骨にして返し、地は潤い、里は富み、長く栄えた。
犬は人前に姿を顕さず、人は山へ立ち入ることなく、人と山との繋がりは畏れの上に保たれた。
時代が変わる。
里に住まう人間はいよいよ増え、世とともに移り変わる。
繰り返し産まれ育つ人々の中からは、畏れと呼ばれる心が失われて久しかった。
やがて空は青黒く冴え渡り、日は光を強め、大地は渇く。
男は痩せ、女は細り、子が絶えた。
かつてカミと呼ばれた犬は、いつしか邪霊と名が変わる。
そしてある日、旅の僧が里を訪れる。
僧は人々の声を聞き入れた。
山へ入り、人々と同じくして痩せた犬と相対した。
その姿は幽鬼に似て、まさに邪霊と呼ぶに相応しかった。
僧の振るった錫杖が、犬を打ち据える。犬は見る間に傷つき、弱った。
その牙が僧の腹を裂いたのは、自らの身を守るために過ぎなかった。
無数の火に照らされた山を降りると、そこには見も知らぬ人々の顔が並んでいた。
犬が人の言葉を解したならば、それらは鬼の一群であった。
鬼の振るった手斧が錆びながらにして閃いたのを、犬は覚えている……。
ヨキの原型は、とある異世界において信仰されていた名もなき神霊。
豊穣を司り、人々の信仰に応えて里に実りを与えていた。
人間から信仰の証として捧げられていたのは、年若い処女である。
雷獣は捧げられるたび恐れ戦く娘たちを丸呑みにしていたが、やがて大きな転機がやってくる。
ある年に捧げられた娘が雷獣を恐れず、道ならぬ契りを交わし合ってしまったのだ。
娘は犬と交わったために病に伏し、食われることなく痩せ細って死ぬ。
以来、人と通じた雷獣は徐々に神力を失ってゆく。
力を失ったからには里に恵みが齎されることもなくなり、神霊は邪霊と憎まれるようになっていった。