己が信ずる美の下に

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年齢29歳+α
種族人間/元獣人
立場教師
魔術中級程度の知識/無尽蔵の魔力
異能なし/元異能者
世界異世界

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プロフィール

美術教師。
人間の生み出す習俗と文化に魅せられ、美しいもの、美しいことを愛する。
常世島を、二元論的な善悪を超越したひとつの秩序と捉えており、人間または異邦人は元より、時として落第街や非合法組織をも庇護する。

自らの基準で美を見出だした事物については、清濁を問わず広く受け入れる。
しかしその美しさが失墜した、あるいは常世島の秩序を懐乱したと判断される場合には、一転して苛烈な非情さを見せる。

愛想に欠けた所作に反して、人付き合いを好む。
交流を尊び、未知の物事に対する好奇心が旺盛。流行にも敏感で、ほとんど不物好きの域に入る。

約十五年前、異界から常世島に辿り着いた異邦人。
「《門》を潜る前は犬だった」と称する。

美術について

学園では教師として金工の授業を受け持っているが、例年履修生はあまり多くない。
デッサンや絵画など、金工以外の実技を教えることもある。

その他、芸術学や美学といった座学を担当しており、古典美術から現代の大衆文化まで広く取り上げる。
美術の特別な知識や才がなくとも、着眼点がユニークであったり、〆切を守って真面目に制作を行う者にはきちんと評価を与える。

プライベートでも個人的に彫金を制作しており、好事家に作品が売れることがある。
美術雑誌に小さいながらも掲載されたことがある他、美術館にて個展を開催した経験を持つ。

所持品

拠点

職員室

室内の中ほどに、小奇麗に整理整頓された机がある。
備品のノートパソコン、伝言のメモや付箋、書類ファイル、参考用の書籍がいくつか。

ヨキの美術準備室

ヨキが雑務を行うための部屋。他の教室の半分ほどの広さの、奥行のある間取り。
左右の壁にずらりと棚が並んでおり、奥にヨキの事務机が置かれている。
棚には画材や工具などの備品や、図書館にも劣らず多彩な美術関係の書籍が保管されている。
各科目の履修生や美術部員たちが、溜まり場として使ったりしているかも知れない。
部屋の前の掲示板には、芸術系のイベントや公募、就職案内など、たくさんの広報物が貼り出されている。

アトリエ

研究区に借りている作業場。住宅用の作りではないが、自宅同然に暮らしている。
造形作家として住所を公開しているため、誰でも容易に訪問することが可能。
打ち放しコンクリートの二部屋。入ってすぐの一部屋が工房。奥が私室。
水洗トイレと申し訳程度に設えられた流し、IHヒーター。風呂はなく、近所の銭湯や職員寮の浴場を使っているようだ。

作業場

大きく頑丈な木製の机、床に確保された作業スペース。作りかけの大型作品。
工具、画材、最低限の金工設備。鉄、銅、錫、真鍮、さまざまな素材の椅子やランプやレリーフやアクセサリー。
無数のスケッチ。立て掛けられたキャンバス。こびり付いた粘土の跡。

私室

書き物机に私物のデスクトップパソコン。小ぢんまりとした冷蔵庫やテレビ。服や本が整然と詰まった大きな棚、丈夫な寝台。











常世の犬

山犬の調伏せらること

かつてカミと呼ばれた犬があった。

犬は山を治め、捧げられた娘を骨にして返し、地は潤い、里は富み、長く栄えた。
犬は人前に姿を顕さず、人は山へ立ち入ることなく、人と山との繋がりは畏れの上に保たれた。

時代が変わる。
里に住まう人間はいよいよ増え、世とともに移り変わる。
繰り返し産まれ育つ人々の中からは、畏れと呼ばれる心が失われて久しかった。

やがて空は青黒く冴え渡り、日は光を強め、大地は渇く。
男は痩せ、女は細り、子が絶えた。
かつてカミと呼ばれた犬は、いつしか邪霊と名が変わる。

そしてある日、旅の僧が里を訪れる。
僧は人々の声を聞き入れた。
山へ入り、人々と同じくして痩せた犬と相対した。
その姿は幽鬼に似て、まさに邪霊と呼ぶに相応しかった。

僧の振るった錫杖が、犬を打ち据える。犬は見る間に傷つき、弱った。
その牙が僧の腹を裂いたのは、自らの身を守るために過ぎなかった。
無数の火に照らされた山を降りると、そこには見も知らぬ人々の顔が並んでいた。
犬が人の言葉を解したならば、それらは鬼の一群であった。

鬼の振るった手斧が錆びながらにして閃いたのを、犬は覚えている……。

雷獣と呼ばれた犬

ヨキの原型は、とある異世界において信仰されていた名もなき神霊。
豊穣を司り、人々の信仰に応えて里に実りを与えていた。

人間から信仰の証として捧げられていたのは、年若い処女である。
雷獣は捧げられるたび恐れ戦く娘たちを丸呑みにしていたが、やがて大きな転機がやってくる。

ある年に捧げられた娘が雷獣を恐れず、道ならぬ契りを交わし合ってしまったのだ。
娘は犬と交わったために病に伏し、食われることなく痩せ細って死ぬ。

以来、人と通じた雷獣は徐々に神力を失ってゆく。
力を失ったからには里に恵みが齎されることもなくなり、神霊は邪霊と憎まれるようになっていった。

妙虔(みょうけん)という男

「ショウジャサマ」

雷獣が力を失って永い年月が過ぎ、里が枯れて久しい頃。
妙虔と名乗る旅の僧侶が、貧しいながらも手厚い持て成しを受けていた。
聞けば山には人里へ害を齎す邪霊があり、土地が瘦せ衰えたのもそのためなのだと言う。

人々の話を耳にした妙虔は、それだけで「邪霊」の正体を密やかに看破していた。

(きさまらが“邪霊”と呼ぶそのけだものが、かつては紛れもない神獣であったのだと、なぜ想像だに出来んのだ)

強大な魔力を産まれ持ったために「聖者」と持て囃される妙虔と、身も知らぬ旅の僧を「邪霊退治」に駆り出す人々と。
両者は決定的に心を違えたまま、山は「調伏の日」を迎える。

妙虔と雷獣

「皆様方、ご安心くださりませ。
 この妙虔、皆々様の憂いの源を確かに断ち切ってみせましょうぞ。

 わたしの調伏に手出しは無用。
 邪霊の領域へ人がみだりに立ち入ることは、里に惨禍を齎します」

朗々たる宣言と共に、独り山へ分け入ってゆく妙虔。
彼を出迎えた雷獣は妙虔の魔力を畏れ、たちどころに牙を剥く。

舞うようにひらりと身を躱す妙虔が、雷獣を翻弄する。

「急くな、けだもの。
 少しばかり、お前とわたしで知り合おうではないか――わたしの名は、妙虔」

果たして雷獣と妙虔がどれほど通じ合ったか、真実は長く忘れ去られていた。

数日ののち、痺れを切らした人々が妙虔の戒めを破って山へ入ったとき、
彼らの目に映ったのは傷付いた雷獣と妙虔の姿だった。

畜生に衆生済度を説く男、山犬に其の身を捧げたる事

妙虔の真意を汲み取ることの出来なかった雷獣。
戒めを破って山を侵した人々に失望した妙虔。
もはや打つ手なしと、妙虔を見限った里の人々。

擦れ違いが加速し、人々は山へ火を放つ。
雷獣の「調伏」が、あと一歩のところで叶うところであったとも知らずに。

燃え盛る炎の中、血塗れの妙虔が同じく傷付いた獣へ手を伸べる。

「あわれな獣」

「果てることも叶わぬおまえよ」
「ともに昏きに沈みゆく命ならば」
「いっそのこと――」

妙虔が笑う。「――共に、道を」。

「くれぐれも恨んでくれるなよ。
 わたしとお前の命とその器とが、諸共歪むことのないように……」

聖域を破られた「浄化」の儀式は、もはや叶うべくもない。
死を前にした妙虔と、傷付いたまま死を知らぬ雷獣と。
雷獣の力を前に圧し折られた錫杖を、妙虔が振り翳す――

生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く 死に死に死に死んで死の終りに冥し

回想


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