2024/07/02 のログ
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ご案内:「スラム」に六道嵐さんが現れました。
六道嵐 >  
「おまちあれ」

 ぺた、ぺた、ぺた。
 うらぶれた街の成れ果ての路を素足がゆく。
 硝子片、瓦礫、それらを踏もうと止まらない。

「わたしめの用」

 きり、きり、きり。
 硬く舗装されている路を削るは(きっさき)
 矮躯と言って遜色ない身の丈に、似つかわしくない長尺が。
 火花を立てて引きずられる。

「まだここに……」

 哀訴……そんな切なげな声。
 喉の渇いた高音は、隙間風のよう。

六道嵐 >  
 それは追走の歩み。
 矮躯の少女に背を向けたは此処に蔓延る無頼漢(あうとろう)
 必死に駆けるやつんのめり、息切らして逃げの一手。

「去りがてに……」

 ぴた。
 金属の音が止む。
 腕が持ち上がった。

「見せたあの業」

 とん。
 瓦礫散らすは、素足が跳ねる。
 風に揺られた風船のように奇怪な軌道で舞う少女。
 瞬く間に間合いを詰まる。

「いま一度……」

 嗚呼然し、届かない。
 少女の尺では、届かない。
 ひゅ、と風を切った刃の鋒と男の背、悠に一尺は隙間があった。

六道嵐 >  
 しかし。
 男は倒れ込み、その服の背にじわりと広がる赤。
 如何なる異能か鎌鼬か、ぶんと血を振る音は大仰。

「後生にて……」

 それでもどうにか逃げんとする男に、月を背に立つ影ひとつ。
 小さい諸手を柄に這わさば、くるりと刃は反転し。
 大地を向く鋒ぴたりと、その傷の中心を指す。

「見せてくれねば……」

 少女の表情は薄暗いまま。
 しかしそこには見咎めの色。
 どうしてどうしてと、男の無頼に振り回されたような。
 男の恐懼の声が響く。お前はなんなのかと。

「……お命を」

六道嵐 >  
 振り上げられる。
 血の伝う刃が月光を吸った。
 ぬるりと若鮎のごとく跳ねる残光が。

「………遅かった」

 翳る――
 慌ただしく、響く足音の群。

「多勢に無勢……」

 これではよくはない。
 見回りの類が増えている。
 ぎゅっと悲しげに眉を寄せた。

「いざ、去らば……」

 とん。
 ひと跳ね、少女は消ゆる。
 秩序預かりに、男は連れてゆかれるだろう。
 こんな場所に来るのが悪い。
 下手人は、そんな程度のもの。
 今は未だ。

ご案内:「スラム」から六道嵐さんが去りました。
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