2024/07/02 のログ
ご案内:「スラム」に六道嵐さんが現れました。
■六道嵐 >
「おまちあれ」
ぺた、ぺた、ぺた。
うらぶれた街の成れ果ての路を素足がゆく。
硝子片、瓦礫、それらを踏もうと止まらない。
「わたしめの用」
きり、きり、きり。
硬く舗装されている路を削るは鋒。
矮躯と言って遜色ない身の丈に、似つかわしくない長尺が。
火花を立てて引きずられる。
「まだここに……」
哀訴……そんな切なげな声。
喉の渇いた高音は、隙間風のよう。
■六道嵐 >
それは追走の歩み。
矮躯の少女に背を向けたは此処に蔓延る無頼漢。
必死に駆けるやつんのめり、息切らして逃げの一手。
「去りがてに……」
ぴた。
金属の音が止む。
腕が持ち上がった。
「見せたあの業」
とん。
瓦礫散らすは、素足が跳ねる。
風に揺られた風船のように奇怪な軌道で舞う少女。
瞬く間に間合いを詰まる。
「いま一度……」
嗚呼然し、届かない。
少女の尺では、届かない。
ひゅ、と風を切った刃の鋒と男の背、悠に一尺は隙間があった。
■六道嵐 >
しかし。
男は倒れ込み、その服の背にじわりと広がる赤。
如何なる異能か鎌鼬か、ぶんと血を振る音は大仰。
「後生にて……」
それでもどうにか逃げんとする男に、月を背に立つ影ひとつ。
小さい諸手を柄に這わさば、くるりと刃は反転し。
大地を向く鋒ぴたりと、その傷の中心を指す。
「見せてくれねば……」
少女の表情は薄暗いまま。
しかしそこには見咎めの色。
どうしてどうしてと、男の無頼に振り回されたような。
男の恐懼の声が響く。お前はなんなのかと。
「……お命を」
■六道嵐 >
振り上げられる。
血の伝う刃が月光を吸った。
ぬるりと若鮎のごとく跳ねる残光が。
「………遅かった」
翳る――
慌ただしく、響く足音の群。
「多勢に無勢……」
これではよくはない。
見回りの類が増えている。
ぎゅっと悲しげに眉を寄せた。
「いざ、去らば……」
とん。
ひと跳ね、少女は消ゆる。
秩序預かりに、男は連れてゆかれるだろう。
こんな場所に来るのが悪い。
下手人は、そんな程度のもの。
今は未だ。
ご案内:「スラム」から六道嵐さんが去りました。