2015/06/13 のログ
蓋盛 椎月 > 「この世界治安の悪い場所はほんとに治安悪くてね……
 自分の身を守るためにはいろいろ創意工夫せにゃならんのよ。
 異能を使った犯罪者とか……珍しい話じゃないっしょ?
 ここでいうとこの公安やら風紀やらもいなかったしね。」
(顔を引きつらせた相手とは対照的に、どうってことない調子で言う。)

「うむ、善処せよ善処せよ。(鷹揚に頷く)
 こちとら“仕事をしないのが仕事”だからね。」

山吹 冠木 > 「……確かに、そういう話は少し聞いたことがありますね。
まだそういう目には遭ってませんけど、これからもそうとは言えませんし」
此処に来る前、ニュースや新聞、ネットで調べた内容を思い出す――
世界の混乱。異能を使った犯罪。様々な危険。

当然の様にそれを語る様子に、やはり外は広いのだと……
まだまだ、自分の知らないことは多いのだと思い返す。

「仕事がないのが一番、ですか」
その様子に、ふっと肩の力を抜いて腰を上げる。
「じゃあ、そろそろ仕事を終らせないといけませんね……
蓋盛先生、ありがとうございました」
一礼して、保健室を後にしようとするだろうか。

蓋盛 椎月 > 「遭ってないか。ならきっと幸せなんだろうさ。
 別に怪我や病気にならなくたって来たって構わんぜ。
 お茶と菓子だって余ってるんだからさ。お達者で。」

(軽く手を振って、去るのを見送る……)

山吹 冠木 > 「……ありがとうございます。
 その時は、俺も何か持ってきますね」
(治療された手を小さく振りながら、保健室を後にした)

ご案内:「保健室」から山吹 冠木さんが去りました。
蓋盛 椎月 > 「仕送りか……感心な子だな。
 あたしの住んでたとこって今どうなってんのかな……。
 確認する気まったく起きないけど。」

(手持ちぶたさに空になったカップを弄んで、ひとりごちる)

蓋盛 椎月 > (人類の行方……学園の将来など、
 自分にとってはどうでもいい。
 “保健室の先生ごっこ”をする上では関係のない話だから。
 けれど……彼のような無辜の人間を見ると、
 漠然と良い世の中になればいいな……とは思う。
 あくまでも漠然とだけれど。)

蓋盛 椎月 > (……事務仕事を適当に済ませ、
 日がとっぷりと暮れたあと、
 保健室をあとにする。)

ご案内:「保健室」から蓋盛 椎月さんが去りました。
ご案内:「教室」に折神 直さんが現れました。
折神 直 > 教室の前に、男が立っている。
顎を上げて中空を見ながら目を閉じ、何かを思索している。
それは長身も相まって一つの彫刻のようで、それを見る生徒たちに好奇の目を向けさせた。
そんな視線もどこ吹く風か、男は目を開き、教室の中を覗く。

「懐かしい、空気だ」
「とても、心地が良い」
「……学び舎は、そう……二年ぶり、といったところかな」

折神 直 > (もし、この扉を開いて、彼が居たら)
(僕は、自分を抑えられる自信が、少しだけ――ない)
(そうであって欲しいと願う心と、それだけは起こらないで欲しいと願う心で引き裂かれそうだよ)
(もし引き裂かれるとしたらそう……腰から下と、上、ということになるかもしれないね)

美麗な顔が微笑みの形に歪み、小さく肩を竦めさせた。
どの道、扉を開けねば始まらない。
そこに幸運があろうが、不運が待っていようが、賽を振らぬ者に駒を進める資格はない。
扉を丁寧な手つきで開くと、彼は微笑み、教室の中に声を掛けた。

「誰か、手の開いている……そして少しばかり暇潰しにと好奇心を寄せてくれる者はいるかな」
「……出来れば、この学園、校舎の中を案内してもらいたいのだけれど」

折神 直 > 「おっとすまない……自己紹介がまだ、だったね」
「ボクは折神 直。キミたちよりは多分、先輩に当たるのかな……?」
「二年ほど離れていたので、是非ともと思ったのだけれど……」
「照れ屋さんが多い、のかもしれないね」

臆面もなく、よく回る口の前に指を置き、言葉を付け加える。

「だれでも構わないよ、嘘を吐くのが苦手な先輩が」
「後輩と仲良くなりたいために、不器用に声を掛けに来た……」
「そう思ってもらって、何も問題がないと、ボクも思っている」

折神 直 > こちらを気にしている生徒は、確かにいる。
だが、この状況で名乗り出て注目を浴びることを是と思う生徒はいないのかもしれない。
本当に、照れ屋さんが多い学園だ……。

「つれないな……何も取って食うわけじゃない」
「安心して欲しい。ボクはキミたちと仲良くなりたい……ただ、それだけなんだよ」
「それでも、ダメかな……?」

出来るだけ一人の生徒に視線を集めないように大仰に注目を集めながら、
再度教室の中に居る者達に声をかけた。

折神 直 > 声は、掛からない。
誰もが遠巻きに自分を見てきている。
……それはそれで、実に堪らないじゃないか。
皆の視線が集まるのを感じながら欲望が鎌首をもたげるのを感じる。
いや、それはいけない、これは、仕舞っておかなければいけない欲だ。
今出してはならない、貯めておかなければならない、熱く濃い欲求だ。
丁寧に、丁寧にそれを押し隠し、静かに微笑だけを口元に載せる。

引き続き、長身の男は言葉を続けた。

折神 直 > 「そうだ……ボクは、猫が好きだ」
「愛くるしいあの姿を見ていると、抱き上げて頬を寄せたくなる」
「その小さい体にも、自身と同じ生命がこもっているのを感じて」
「胸が、熱くなる……子猫なら、尚更だ」
「……ボクには、そんな博愛の一面もある……」

人好きのする笑顔で告げて、両手を広げる。

「ボクに、そんな……可愛い猫の集る場所を教えてくれる優しい誰かは」
「ここには居ない、かな……?」
「出来ればボクは、ボクの良いと思う物を、ボクの好きになれそうな誰かと愛でたいと思っているよ」
「……どうかな?」

折神 直 > 「猫でも、そうか……ダメか」
「ボクは今、少しだけ寂しい。猫になりたいくらいだ……」
「そうすれば、愛くるしいその姿だけで、キミたちの興味を引けるのかもしれないと思うと」
「猫に生まれてくることが出来なかったことこそが、ボクの過ちかもしれないね……」

溜息は深く、そして憂鬱を帯びていた。
額を指で抑えて、憂いの表情で告げる。

「ああ、そうだね」
「もしかしたら、日が悪いのかもしれない」
「今日がボクにとっての『最悪の日』であるからこそ、優しい誰かに巡り会えなかったのかもしれない」
「だとしたら、ボクはそれを責めたりはしないよ」
「責められるべきは、ボクの方だ」
「……ありがとう、ボクはキミたちの無言に、優しさを感じたよ」
「そして、ボク自身への愛を、ね」

折神 直 > 「……ありがとう、ボクを愛してくれて」
「出来ればその愛を誰かに返したいところだったけれど、それは少しばかり贅沢という話だね」
「また、日を改めるよ」
「出来れば、今度はもう少し静かな場所で、二人きりで会おうじゃないか」
「照れ屋で、声を掛けれなかったキミを、ボクという先輩は、優しく受け止めることを約束するよ」

紳士的に微笑み、指先から愛を散らす。
微笑みは屈託なく、それを拾う者は残念ながら誰も居なかった。

「ではまた……次は是非、声を掛けてくれたまえ」
「ボクは、『キミ』を待っているからね」

静かに教室のドアへと歩いて行く。入ってきたときと同じように誰に恥じることなく。

折神 直 > 教室から出る直前。
本当に誰も声を掛けてこないのかを確認し。
それを確認してなお、何一つ恥じることなく十分に満足そうに微笑みだけを残して、片目を閉じ。

その男は教室を後にした。

ご案内:「教室」から折神 直さんが去りました。
ご案内:「教室」に崎守 鐡さんが現れました。
崎守 鐡 > 自己主張の激しすぎる要素を隠し通してたのかゆっっっっくりと机の下から顔を出す………


「……なんだったんだろうか、アレ。……根源的な恐怖…?」
よく分からないけど、さっきまで居たあの人を形容する単語をどうオブラートに包んでも未知との遭遇というか。
………本当になんだったんだろうか、あの人。

ご案内:「教室」に設楽 透さんが現れました。
設楽 透 > 【教室の隅にある掃除用具入れ】
【その扉が静かに開くと中に吸血鬼も斯くや、と言わんばかりに収まっていた金髪の男が顔を出した】

「いや、」
「居るんだねえ、ああいうの。未だに。」
「流石の僕もビビったよ。」

崎守 鐡 > 「……あれは、うん……あれを超えるインパクトを俺は知らないや」

自分の記憶を何遍ほじくり返しても、初見で
「あ、下手に関わっちゃいけない」と本能が反応してしまった人は居なかった。


「……未だ……に……?」
まだ、こちらの人間としては浅い方の彼はくるりと掃除入れの方を向く。
え、あんな人がまだ火薬庫かってばかりに居るの。

設楽 透 > 「昔はそれなりに、居たものだけど。」
「まあ今見た通り誰も彼も我が強くてね……」

「何より繁殖力が低くて絶滅が危惧されてるよ」

【朗らかな好々爺然とした笑みを浮かべて、】
【完全に人間扱いしてないような語りをロングコートの青年へとし始めた】

崎守 鐡 > 「繁殖力が低いっていうか、あれは、なんというか、……繁殖力を別方面に捧げてるんじゃ、ないですかね、アレ」

なんとなく、そう思った。
別にあの一人演劇部の人のことを知ってるわけじゃないけれど、
なんとなく、そう思った。

ああ、さっきの人よりこの人の方がよっぽど健全で気が楽だ。
「人間でもたまーに人間か疑わしい人もある意味ではいるから良いんじゃないです?
 ……流石に当人の前で言いたくはないですけどね」

設楽 透 > 「そうとも言うね。」
「繁殖する気無いんじゃないか、という説もある。」

【笑顔のまま肯いて、設楽は額の汗を拭った】
【人を食ったようなこの先輩にだって、怖いものは怖いのだ】

「まあ、多少脱線しても許容されるのがこの学園だから」
「また見かけたら恐れず近寄らずに遠くから一方的に仲良くしてるつもりで居れば良いんじゃないかな。」

【これが、設楽 透が、】
【今目の前の後輩に出来る最大で最高のアドバイスだった】

崎守 鐡 > 「い、一方的で………」
た、確かにそれが正解なのかもしれないが。
……外でこんな奇異な見た目をしてたせいで縮んでた精神にはハードルが若干高そうな気がする。

「……その様子だと、先輩……です、よね。……もう、慣れきってしまわれたんですか。」
この学園のぶっ飛んだ部分も、含めて。
……俺も時期にそうなってしまうんだろうか。

設楽 透 > 「ああ、大丈夫だよ」
「普通なら、ああなる前に、」
「慣れる前に卒業出来る筈さ」

「だから勉学にはしっかりと取り組む事さ。」

【まともなアドバイスも出来た】
【というか、無理やりまともな方向に乗せた】
【そうでもなければ、このいたいけ……な?後輩はショックを引き摺る事になるだろう】
【そう、思ったのだ】

崎守 鐡 > 「……はい、……あれは普通じゃない、です、よね。」


「………何の為に此処に来たのか忘れそうになりましたが、助かりました、有難うございます……」

真面目に実家に『もうやだおうちかえる』をやりかけそうになった。
いや、しねぇけど。それぐらいの衝撃はあった。
この人が居なかったら本当に、どうなってたんだ。俺。

設楽 透 > 「彼は彼の普通を信じる、」
「君は君の普通を信じる、」
「僕は僕の普通を信じる。」

「それでいいじゃないか、星の数ほど人はいるんだ」

「……他所の星から人が来ることだって、あるさ」

【おだやかに、祖父が孫へと言い聞かせるように告げ、】
【開いたままの掃除用具入れへと戻る】

「それじゃあ、また。」
「君が道を違わんことを。」

崎守 鐡 > 「他所の星、とは言い得て妙ですね……。でも此処がどういう場所か、を冷静に考えてみれば……
そういう他所の星からも、来るんですよね。……そこは諦めます。なりたくはないけれど。」

そして、設楽先輩が掃除用具入れに戻っていくのを見て

(あ、そこに戻るんだ)
とそんな顔をした。
まだマイルドな変人さんなのだろうか。…もしかしたらそういう能力とか遣ってるのかもしれないけど。

「あ、ありがとう、ございました……?」
おそらく掃除用具入れが再び閉まるまでそのまま見ているだろうか。

設楽 透 > 「開拓者精神というものはね、大事だよ」
「だから君はもっと誇っていい。」
「僕すら言葉を発する事を躊躇う状況で、」
「君はそれを成し遂げたんだ。」

「称賛に値するよ。」

【にっこりと、陽だまりの様な笑顔で告げ、】
【設楽は静かに掃除用具入れの扉を内側から閉ざした】

【当然の様に、後から開けても誰もいない事だろう】

ご案内:「教室」から設楽 透さんが去りました。
崎守 鐡 > 「………取り敢えず。あの掃除用具入れの先輩は良い人だったけど」





「あの一人演劇部の先輩には、もう一回は会いたくないなぁ、……お腹いっぱい過ぎる」
…戦場跡地にも彼に見えたこの場から、
所要を思い出した様に移動の準備を始めようと荷物をまとめ始めた。
……出来れば、あの人が戻ってくる前に。
……戻ってきても、困るけど。

ご案内:「教室」から崎守 鐡さんが去りました。
ご案内:「教室」に久喜棗さんが現れました。
久喜棗 > 久喜棗は珍しく本を広げながらウンウンと唸っていた
広げている本の中身は古今東西の封印術についてわかりやすく記述されたものである
だがそれらのわかりやすく翻訳された教書ですら、棗にとっては一行読むだけで頭が痛くなってくるような代物だった
棗がこの学園に生徒として来た理由はこの封印術を学ぶためであったが
その成績に関してはお世辞にも良い成績とはいえなかった

久喜棗 > 「ふぅー、やはりこの歳で新しいことを覚えるというのは堪えるわ」

そうひとりごとを呟きながら本を閉じる
横に積まれた課題の山は提出期限こそ迫っては居ないがろくに手が付けられていなかった
複合封印術の開発や高等封印式の学習、やらなければならないことはいくらでもある
腕を枕に机に突っ伏し、たわむれにパラパラと課題の束をめくってみる

久喜棗 > 棗が封印術を必要とするのは彼女自身の異能にあった
棗の血などの体液が交わった者には鬼の力が発現する
発現者は常識離れした力を持つようになるが、同時にそれは破滅ももたらす
鬼の力は使えば使うほど破壊の高揚感に駆られ理性がなくなっていく
そして徐々に肉体が異形化し殺戮の獣となるのだ
こうなったら最後殺して止めるより他に術がない
鬼の力を自在に使い異形化しないでいられるのは、現在のところ久喜棗本人だけである

久喜棗 > その力の発現を抑える封印術が棗の目的だった
去年一年を通じて行った蟲に対する実験はどれも失敗
手順が悪いのか、効力が薄いのか、選んだ術が合っていないのか
鬼の力はいとも簡単に暴走し蟲は巨大化、凶暴化した
現在確実に鬼の力を抑える方法は使わないことだけだ

久喜棗 > 机に伏しながら、夕日の当たる窓の外のグラウンドをぼーっと眺める
外には部活動中の生徒たちが青春に汗を流していた
棗は長く生きているが青春と呼べるような時代が無い
いや、ほんの少しの間はあったかもしれないが、今はもう上手く思い出せないほどに霞んでしまった
今はただその時が楽しかったというぼんやりとした記憶が残るだけだ
だからだろうか、外で汗を流す彼らが無性に羨ましく思えた

久喜棗 > ハァっとため息をつき頭を起こす
ここにいては身も入らなそうだ、そろそろ家へと帰るとしよう
本を片付け席を立つ
今日の夕飯は何にしようかなどと考えつつ異邦人街へと帰っていった

ご案内:「教室」から久喜棗さんが去りました。
ご案内:「屋上」に片翼・茜さんが現れました。
片翼・茜 > 屋上のベンチで、彼女にしては珍しく、ノースリーブに短パンという格好で片翼・茜はベンチに座っていた。
「カハァー……。」ジリジリと照りつける太陽を見つめ、ため息のように吐息を吐く。なぜこんなことをしているかというと、日光消毒である。
腐肉で構成される彼女の体はそれ自体が菌の繁殖に理想的な状態なのだ。
湿度の多い日が続くと、コーヒーや消臭剤でごまかせないぐらいの臭いになる時がある。それを生徒たちに我慢させるのは可哀想だ。
だからこの時期は定期的に日光消毒をする必要があるのだ。

片翼・茜 > 一度など、体にカビが生えたことがある。手まで生えてきてやっと気づいた。それ以来毎日服を脱いで鏡で全身をチェックするようにしている。
「死人が人の間で暮らすのは面倒の多いことだ……。」昔のように、人との関わりを断って暮らせば、こんなことをしなくてもいいのだが。
だが、そんな死んでも生きてもいない、なんの価値もない時間を無為に過ごすのはもう嫌だった。
「それに、ふふ……まるで生きた人間が肌を焼いているようだな」死んだ肌がメラニン色素を作ることはないのだが、それのまね事をしているようでどこかおかしかった。

片翼・茜 > このまま目を閉じて思索にふけりたいところだが、そうも行かない。
一度そうしていたら鳥に肉を食われて、鳥葬されかけたことがあった。油断できない。
手袋もしていないので、本やプリントに触ると組織液が出てきて汚れる。だからただひたすら空を眺めて時間を過ごすしかないのだ。正直、退屈である。
することといえば時折体を回転させてむらなく日光に当てることぐらいだ。
効率で言えば全裸が一番いいのだが、死人の体とはいえそこまで羞恥心をなくしてはいないし、もし目撃されたら気まずい。

ご案内:「屋上」に岡部 吹雪さんが現れました。
岡部 吹雪 > 「おっやあ、茜ちゃんどったの。こんなトコで。」
寝不足気味に萎んだ顔で、ホットドッグを片手に現れる。
焼いた肉の香りが、食べかけの断面からも芳醇に香っている。

「隣いい?」

片翼・茜 > 頭のなかで常世学園の校歌を無限リピートしていたが、声をかけられ意識を現実に戻す。
「ああ、岡部先生、こんにちは。日光消毒ですよ、この時期は湿気が多いですから。」

「ええ、どうぞ。人が来るとは思ってなかったので、油断した格好ですみません。」座る位置を少しずれて、相手のために場所を開ける。
「今日は休日ですが、こんな場所に何か御用でも?」

ご案内:「屋上」に岡部 吹雪さんが現れました。
岡部 吹雪 > 「いやいや。なんか悪いね、デリカシーなくって。」
そそくさと隣に位置を取る。

「色々と事後処理してたら徹夜になっちまってさあ。」
「結局家に帰れずで。とりあえずメシ買ってきたってワケ。」
手のひらでぐしぐしと目元を擦る。
授業をするだけが教師の仕事ではないのだ。

「茜ちゃんもうメシ済ませた? レタスサンドならあるけどどう?」
「……あ、飲み物買ってねえや。ハハハ!」
ビニール袋の中にはレタスサンドと、グミやらガムやらが点在している。

片翼・茜 > 「ああ、なるほど……大変ですね、お疲れ様です。」通りで眠そうなわけだ。自分に眠りが必要だった頃は遠い昔だが、確か結構辛かった記憶がある。

「昼食は特に、体を修復する必要がなかったのでとってないですね。」通常の意味での食事が不要な茜は、肉体の修復のために食事を摂る。何もなければ2,3日食べなくても平気なのだ。
「あー……」相当お疲れのようだ、普段からテンションは高い方だった記憶があるが、これはナチュラルハイだろう。ベンチの隣においてあるバッグから、水筒とポーチを取り出す。
「ホットコーヒーでよければ、ありますよ。ミルクと砂糖も」

岡部 吹雪 > 「あっマジ? やったぜ。」
岡部の注文は"両方"。砂糖濃い目というもので。
ぐらっぐらの脳味噌が、今まさに糖分に飢えているためである。

「しっかし気が利きますなー。良いお嫁さんになれるよ。」
「マジ。マジで。」

片翼・茜 > 水筒の蓋をカップにして注ぎ、砂糖とミルクを注文通り投入して、右手で手渡す。
「どうぞ。」笑顔で渡したいが、頬が動かないので、左手の人差し指と親指で頬を釣り上げて、なんとか笑う。

「私が嫁に?」頭をふる「こう見えても数百歳ですよ、女としては骨董品です。いや、もう死んでるから、骨董品以下かもしれません。」自嘲の色が声に混ざる。

岡部 吹雪 > 「アンティークで結構じゃない。そりゃあ味があるってことだぜ。」
「しかもまだ現役で動いてンなら、生きてるのと大差なんてねーさ。」
「ま、最初は驚かれるだろうがよ。……ああ、いや。最初だけってワケでもねーか。」
「兎に角、だ! 俺はいいんじゃねえの?って思うよ。そーゆーの。」

カップをいただき一息に飲み干す。
キャラメルを放り込んだような甘さが身体に嬉しい。
あ゛ーと唸り声をあげ、しばし目をぱしぱしと瞬かせた。
仰いだ天は雲が薄く、ゆらゆらと風に流れていく。
校舎特有の賑やかさは今は遠い。

片翼・茜 > 「ありがとうございます。まぁ、そうかもしれませんね。人の好みは幅がある。」あまりこの話は続けたくない、軽く流す。

自分もコーヒーを、ブラックのまま水筒から直接飲んだ。のどかな空気が流れる。
「少し聞いていいですか?」空を見つめたまま、問いかける。
「岡部先生はどうして教師になろうと思ったんです?ああ、いや、特に他意はありませんよ。ただ少し気になっただけです。」

岡部 吹雪 > 「どうして。ねえ……まあ、仕事だからかな。」
「なんせこんな世の中でしょ? まともな職にありつくだけでも難しーから。」
それは嘘ではない。混迷とした世界において、この島だけが異質なのだ。
文化水準も高く、多少の事件はあるものの秩序は依然と保たれている。
危険ではあるが、比較的に安全である。おかしな話ではあるが。

「まあでも楽しいよ。趣味が実益も兼ねてる。みたいな?」
「たまにガキ共とやるバカも、最高だよ。」
「頼まれたって辞めてやんねー。そんな感じ。」
「茜ちゃんはどうなの?」

片翼・茜 > 「なるほど、確かに外はまだ……荒れていますね。」不法入島者が後を絶たない理由でもある。
落第街やスラムでさえ、外の世界に比べれば安定しているのだ。

「私は、そうですね。何かを残したかったんですよ。子供はいないし、何か偉業を成し遂げるような力もない。私が持っているのは、知識と経験ぐらいだったので、それを誰かに伝えて残したい。そう思って、ここに来たんです。」
「驚いたのが、私ぐらい生きてる人間が他にもゴロゴロ居たってことですね。千年単位で生きてる人とか……。今は笑い話ですが、当時はいきなりアドバンテージ失って、悩みましたね。」

岡部 吹雪 > 「ハハ、そりゃ大変だ。」
「こう色んな人がいるとさ、オンリーワンってのはなかなかに難しいよな。」
「人格ってのがある以上、まったく同じってのはありえない話だけどさ。」
ごっそーさんとカップを返す。先程までとは比べて、幾らか顔色が改善されたよう。

「意外と俺らがああだこうだ考えていても、教えられる側はあんま気にしてねーのかもしれねえなあ。」
「だからどうだってワケじゃねえけどさ。」
「その辺だからこそ人間だなって感じあるよね。」
「わかるかなあ。わっかんねーかなあ……。」
難しげな顔をして頬を掻く。
うっすらと自己主張をはじめてヒゲが、ざりざりと指先に感触を与えた。

「んじゃそろそろ行くわ。」
「コーヒーサンキューね。今度何か奢るわ。へへ。」
ふらりと立ち上がって、校舎の中へと戻っていった。

ご案内:「屋上」から岡部 吹雪さんが去りました。
片翼・茜 > 「ええ、段々自分なりの特徴を出せるようになってきましたけど、自分が少し変わってるぐらいの存在になったのは戸惑いました。」でも今はそれが少し嬉しい。不死者特有の悩みを共有できる相手がいくらでもいるのだ。

「言いたいことは、なんとなくわかりますよ。生徒達は私達が考えている以上に、自立していたり、色々と考えていたりしますね。」カップを受け取り、もう一口ブラックコーヒーを流し込んでから蓋をはめる。


「コーヒーでよければ大体いつでも持ってますから、欲しければ言ってくださいね。それでは」指で頬を釣り上げて微笑み、手を振って見送った。

片翼・茜 > 「…………カハァー。」話し相手を失って、また退屈が襲ってきた。
顎をだらりと落とし、コーヒー臭い息を吐く。
そろそろ背中に日を当てよう、と逆を向いて背もたれに体を預ける。

片翼・茜 > 「…………あー……。」意識を手放し、思考を停止する。全身の筋肉が弛緩して顎がだらりと落ち、舌も垂れている。すごい顔だ。
片翼・茜 > いくらか時間が過ぎて「………んあ!?」思考を停止していたことに気づく、いかん、この状況で動かないでいると……恐る恐る振り返る。
「やはりか!私は餌じゃない!」今まさにカラスが背中を啄もうとしているところだった。腕を振って追い払う。

片翼・茜 > 「………。」さっき徹夜の辛さを思い出したせいか、ここ数日眠ってないのが嫌に疲れてきた気がする。
死人の体が疲れを感じることはないのだが、精神的な問題だ。
ベンチに不自然な姿勢で座っているのも、良くないのだと思う。
「もう誰も来ないだろ……。」ベンチから下りてコンクリートの地面に直接横になる。
「浮かれた姿だな、浜辺で焼いてるみたいだ……。」

片翼・茜 > 「嫁……嫁か……。」左手の薬指の根本をリング状になぞる。かつてそこには、あるべきものがあった。今はもう、ない。いつどこで、なぜ失くしたのかは忘れてしまった。
腐っていく脳は時折無秩序に記憶を奪っていく、忘れたことすら忘れてしまうのも、何度かあった。
「できれば忘れたくない……。でもいつか忘れてしまうのかな……。」
「忘れる前に、乗り越えられればいいのだけれど……。カハァー。」コーヒー臭い息を吐き出す。

片翼・茜 > コーヒーの香りは、あの人が好きだったものだ。長い髪も、黒いスーツも……。
「……カハァー。」今日はずいぶんおセンチだな、過去に浸るのは良くない、それがいくらでも浸れるほどある場合はよけいだ。
もう日光消毒はいいだろう。立ち上げると、バッグからいつもの服を取り出して着替え始める。

片翼・茜 > まず腐った肉に耐水性のある特別製の手袋をはめる。普通の素材だと腐汁や染み出してきた組織液にやられてしまう。
同じく特殊加工のシャツを着て、ズボンとジャケットに身を包む。
防臭効果のあるマフラーを口元を隠すように巻く。
これでいつもの私だ、過去に浸る時間はない、課題の採点や次回の授業の準備など、仕事はいくらでもある。

片翼・茜 > そしてバッグからウェットティッシュを取り出し、ベンチについた体液を拭って、ゴミ箱に捨てる。
出口へ向かい、一度だけ振り返って、屋上を後にした。

ご案内:「屋上」から片翼・茜さんが去りました。
ご案内:「屋上」に若鷺 智さんが現れました。
若鷺 智 > 人気のない屋上にて、青く淀んだ空間にうつ伏せで浮遊しながら街並みを見下ろす変な少女が一人。

「あー…たりィ。編入手続きとかは全部済んでたとはいえ、なァ」

その声色からして、機嫌はあまり良くなさそうだ。

若鷺 智 > 「家族どころか親戚ぐるみでアタシを島流しにしやがって。ざけンなっての」

眼下に広がる光景は、自然と人工物が程良く点在しており絶景と称せる場所だろうが…少女にそんなことは関係なさそうだ。
ただ不機嫌そうにブツブツと愚痴を零しながら、淀んだ空間内でゴロゴロしている。

ご案内:「屋上」にヘルベチカさんが現れました。
若鷺 智 > 「つーか…人のことこんな僻地に送っときながら仕送りもなしとかあり得なくね?
いっそ学費未納で退学処分にでもなってやろうかぁ…?ったく」

彼女の実家は決して貧乏ではないという事実。
それは自分の今までの生き様からして想像に容易い。
…考えれば考える程、ロクな思い出が蘇ってこないということに彼女が気付くまでそう時間は掛からなかった。

ヘルベチカ > (ビニール袋に入った購買のカツサンドは男子高校生の勇気の証。)
(パックのコーヒー牛乳も合わさって間食の王である。)
(これに風景が合わさればもう怖いものなんて何もないので、少年は屋上の扉を開けて。)
うわァァァァァァァなんかスライムみたいなんが女の子食ってるゥゥゥゥゥゥ!?
(若鷺の生み出した濁った空間が、怪しい塊に見えたようで。)
(頭の上のネコミミの毛を逆立ててドン引きしている。)

若鷺 智 > 「でもまぁ…何もしないわけにゃいかねーし。
こうしてるだけってのもつまんないしな。
金稼ぎにせよ、暇潰しにせよ…なんかやること…探すかねぇ」

ここに来てから何度寝返りを打っただろうか。
もはや周囲の風景も目に入らない状態で、今後のことを考える…はずだった、が。

「あァ?スライム…って…」

浮遊したまま、声のした方を見下ろす。
そこに滞在していた青年がどう見てもビビっているのが見て取れる。
なるほど、確かにこの青く淀んだ空間は…見慣れない者からすれば何かに浸食されているように見えるのだろう。

「別に何でもねーよ。いちいち騒ぐな」

ふと、その頭に猫耳があることに気付くが…然程興味がないのか、言及はしない。

ヘルベチカ > (公安にでも連絡すればいいのか、それとも立ち向かわねばならないのかと、視線が右往左往して。)
(消火器とか効くかな、と思ったところでかけられた声。)
(特に苦悶に歪んだりはしていない、普通の様子の少女の声色。)
いや、それでなんでもないって、えっ。何。プレイなの?あっ。
(何かに気づいたような表情)
ごめん…性癖は自由だよな…でも人目につかないところのほうが…それも趣味かな…
(二つの理由から、そっと少女から視線を逸らした。刺激が強すぎたからだ。)
(理由の一つは、少女の行為の中身を勘違いしたこと。)
(そしてもう一つ。私服がなければ制服姿の相手。)
(スカート姿でふわふわ浮いていれば、自然と見えるものもあった。)

若鷺 智 > 「お前……殴るぞ?」

青年に目線を向けながら、ハァ…と露骨に呆れたような溜息を吐いて空間内で立ち上がる。
やや上空から相手を見下ろす形となっているため、見えるものも見えてしまうかもしれないが…それを気にする素振りはない。
どうやら誤解されたことの方を怒っているようだ。

「……ッたく」

右手をクルリと半周させながら、拳を握り締める。
直後、青く淀んだ空間は完全に消失し…そのまま何事もなかったかのように地面へと着地した。
慣れているのだろう。その動作に淀みはなく、表情も平然としている。

「見せモンじゃねーっての」

ずい、と相手に顔を寄せて睨み付けながら言う。

ヘルベチカ > やめてください俺の性癖は基本的にはノーマルです。
(両掌を相手の方へ向けて、ノーの仕草。)
えっ何。立てるの!?実はスライム使いの異能とかで、むしろここで被害者を待ち構えてたの?
やめるんだそんな犠牲者が出そうなことは。今だと俺が第一候補だからやめよう。
(なお下着から逃げるため、ここまでの台詞全部、少年の脇に咲いてる百合に向けて話している。)
(百合からそれとなく「えっ 俺?」という感情が見える気もするが、そんな異能はない。)
(聞こえた着地音にそっと視線を少女の方へ戻して。)
(着地の勢いでまくれ上がったスカートに直面して固まった。)
(固まったまま、少女の方を見ていれば、どんどんとこちらへ近寄ってきて。)
いや、みせもんていうか、見たくて見てないんだけどごちそうさまでした。三千円でいい?
(少年はめっちゃ動揺している。)

若鷺 智 > 「…妄想癖でもあンのかよ?」

会話内容だけでなく、話している方向が方向だけに…そのような解釈となったのだろう。
若干いきり立っていたはずの語調や表情は…段々と哀れむようなそれへと変わってきた。

「見たくて見てない…?」

何のことやら、と自身の身体を見回し…意図を察したのか、顔が若干赤くなる。

「……ッ!バカヤロウ!!いちいち口に出して言うようなことじゃねーだろ!!」

今にも力強く殴ってきそうな程の剣幕だ。

ヘルベチカ > 妄想癖はありませんが大体の男子高校生はこんなかんじだと思います。
(全国の男子高校生に対する謝罪案件をぶちあげて。)
(思いやりの精神で目をそらしたりやら何やらしていたのに怒鳴られれば、一瞬黙ったものの。)
口に出して言わないでガン見してるほうがやばいと思って言ったのに!!!そっちこそ露出癖あるんじゃないのか!?
(自分は悪くない、と言わんばかりの悲鳴である。)
ていうかなんなのあれ!屋上に入ってきたら突然大惨事に直面したと思ったらそりゃ混乱もするわ!なんだあれ!

若鷺 智 > 「アタシの知ってる男子高校生は取り乱して植物に話し掛けたりしねェよ…」

言い返されると少し冷静になれたのか、後頭部を軽く掻きながら目線を斜め下方向へと外す。

「…いや、あのまま黙ってりゃ気付かなかったし。ガン見してたらホントに殴るけどな。
ああやって寝るのが趣味なんだよ。ほっとけ」

ふぅ、と軽く息を整えて青年の顔を見直し。

「さっきのはただ浮いてただけだっての。
ここって一応異能学園なんだろ?そんな珍しいモンでもねーと思ったんだがな…」

ヘルベチカ > えっマジで……普通は話しかけないの……?
(下着どうのこうのという言い争いよりもそちらにショックを受けたような表情で愕然とする少年。)
今回気づかせてあげたおかげで将来の貞操の危機を阻んだと思えば、むしろ感謝されてしかるべきであるが殴るのはやめてください死んでしまいます。
(強気と弱気がコロコロと入れ替わってある意味滑稽であった。)
(珍しいものではない、と言われれば、眉間に皺を寄せて。)
いや、そりゃ、空飛ぶやつも、海をゆく奴も、地面を割って現れる奴も、女子更衣室にワープして出るやつもいるけどさ。
なんか青いのなかった、青いの。

若鷺 智 > 「友達いねぇ奴が植物は友達って言い張ってるようなもんだろそれ」

愕然とした様子を尻目に、追い打ちのような一言を掛ける。
この少女の辞書に気遣いという言葉はないのだろうか。

「いや…見られたこと自体はこんなことしてりゃいくらでもあるさ。
ただ金の話に持ってくなって。なんか変な方向になるから」

自身に金の余裕がないことは伏せておく。
少女にとってはプライドの方が高くつくようだ。
再度軽めの一呼吸。もうすっかり落ち着いた様子で、異能の話へと耳を傾ける。

「なんだ、やっぱぶっ飛んだ奴色々といるんじゃん…。
アタシのあれはあえて色付けしてるだけだから。
でないとどこが効力場か分かんなくなるし」

若干難しそうな顔を浮かべたのは、相手に釣られたのかどうか。

ヘルベチカ > このウニクロ下着女子…いっちゃならんことをやすやすと言いやがって…それを言うたら戦争やろうが……
(追い打ちはおよそ後頭部へ鈍器を振り下ろすかの如くヒットした。)
(否定しうる要因が欠片も存在しなかったので、喉からおごごごご、という声が漏れるのみ。)
ごちそうさまでした、で終わらせていいものかどうか悩んだ末の対価の支払だったんだけど……
じゃあごちそうさまでした。
(少女を拝むかのように、両手を合わせて眼を閉じた。)
あんまりぶっ飛んだ奴はリミッターつけられるって話も有るみたいだけど。
とりあえず、ピンからキリまでこの島にはいるよ。……もしかして新人?
(この島に一年もいれば、大体わかってくるようなことを知らぬかのような、相手の台詞。疑問に思って問いかける。)
色付け。効力場。力場作る能力なのか。じゃあスライムじゃなくて、えーと、固定か重力操作ってとこか。

若鷺 智 > 「……」

拳を相手の顔面前にゆっくりと突き出す。
次言ったら今度こそ殴るぞ…という警告のつもりか。

実際問題、少女はお洒落下着はおろか…満足な私服の類すらこの島内に持ち込めていない。
必然的に身に着けるものは制服と色気の欠片もない真っ白な布地となる。
それ故、そこを突っ込まれると妙に侘しい気分になるのだった。

「…ここには来たばっか。殆ど放り込まれたようなもんだ。
ここなら似たような奴がいくらでもいるだろうからってな」

ぶしつけな言い草からは、その境遇と現状に満足していないことが窺えるだろう。
そして異能について言われれば小さく頷き。

「ま、そんなとこ。
高いとこから見る景色はなかなかいいモンさ」

ヘルベチカ > いえーい。
(拳と拳を合わせる。親指を立ててごきげんなポーズ。)
(なんかテンション上がったらしい。)
(少女の事情を聞けば、なんとなく下着事情もわかったのだろう。)
(下着事情ってなんかやだな、と思いながら少年は眉を寄せて。)
あぁ、そりゃ大変だったな。
(深い憐憫、というよりは、今朝小指をタンスの角にぶつけた、と聞かされた時程度の哀れみでそう言った。)
ま、確かにいくらでもいるよ。親に捨てられたやつ、殺されるのから逃げてきたやつ。
後は、別の世界からたった一人落とされた奴もいるし、好き好んで住んでる物好きな奴も居る。
(指折り数えながらそんなことを言って、少年はからりと笑って。)
ようこそ、常世学園へ。言われるのも嫌かもしれないけど、ここはお前を拒んだりはしないさ。
無理に引き込んだりも、しない、はず、だと、きっとそうじゃないかと、信じたい、信じよう。信じる。
(自信なさげにそう言って、少女の言葉に頷いた。)
あぁ、馬鹿と何とかは高いところが好き、とかよく言われるけど。
こういう所から見下ろしてると、スカッとするのはわかる。
(屋上から見える風景。少年もそれを見に来たのだ。)
(視線をスライドさせて眺めやった先は、人と自然が斑に入り混じった風景。)

若鷺 智 > フッ、と鼻で笑いながら拳を引き戻す。

「…詳しいんだな。それ、全部当事者から聞いたことなのか」

抑揚のない声色で問い掛けるも、それはすぐに苦笑へと変わり。

「…弱気だなァ、おい」

釣られるように風景へと目線を向ける。
先程は妙に狭い世界に見えたものだが…。
道行く人々、豊かな自然、見たこともない遺跡の数々。
今度は様々なものが目に飛び込んでくる。
不思議と、心も若干晴れやかになった気がした。

「…にしてもさ。お前、空気読めねぇ奴って言われたことないか?」

からかうように小さく笑う。

ヘルベチカ > 当事者から聞いた話もあるし、そういう地域だってある。
これから嫌でも知ると思うし、詳しくなるさ。
(ししし、と苦笑を浮かべた少年は、”そういう場所”があるであろう方へと、ちらりと視線を飛ばした。)
そりゃ弱気だよ。実は俺の知らない特殊能力を目当てに学園がお前……
えぇと、名前なんて言うんだ?俺は、猫乃神ヘルベチカ。
(今更になって、名前を知らないと不便なことに気づいた様子で。)
(遅れに遅れた自己紹介。)

(町並みの様子に視線を飛ばし、僅かな爽快感を味わっていたところで、再度の直球。)
(先程から硬い棒でばしん、ばしんと頭を殴られているような気分にもなるが。)
空気読めるんであれば、友達ちゃんと居るはずだと思わない?
(少年は先ほどのショックの表情とは違って、にっ、と笑って。)

若鷺 智 > 「アタシは別にそういうの興味ねーんだけどなァ」

目線を同じ方向へと向けてみるも、どこのことを指しているのかは分からないようで首を傾げる。
名を問われれば、青年の方へと向き直り…腰付近まで伸びた長い髪が微弱に揺れた。

「ねこのかみ…ヘルベチカ…。こう言うのもなんだけど、すっげー名前だな。
アタシは若鷺 智(わかさぎ とも)ってんだ。まぁ好きに呼べばいいさ」

自己紹介も終わり、一安心…かと思いきや、今度はカカカと露骨に笑いだす。

「うわ、友達いねーとか引くわ」

馬鹿にするというよりも、いじり倒すような笑みと声である。

ヘルベチカ > すっごい名前だろ。クソ長くて呼びづらくて覚えづらい。
猫やらチカちゃんやらヘルにゃんこやら、好きな様に呼んでいいよ。
わかさぎとも。(つい、と視線が右斜め上に飛ぶ。)
(漢字でどう書くのか、思案でもしているのだろう。)
(飛んでいった視線は、再び少女の顔へと戻ってきて。)
とりあえず若鷺でいいや。
(最終的にそこに落ち着いたようであった。)
(誂うような少女の笑い。声色に含まれる感情に、真剣に怒ることもなく。)
うっせ。お前なんて今この島に友達どころか知人の一人も居ないんだからな。
若鷺と俺、どっちが上でどっちが下って言ったら、一年長い俺のほうが下だわ。(正しい認識であった。)
お前も俺のようになる可能性は秘めてるんだからな…気をつけろよな…

若鷺 智 > 「もうさ、ヘルでいいだろ?長いし。なんか死神みてぇだけど」

悪びれる素振りすら見せずにひたすら笑う。
感情は結構表に出す方なのだろうか。
そして呼び名については、ただ小さく頷き。

「まぁ知人が誰もいねーってのもそれはそれでアリだけどな。
何したって怒られることねーし」

その面倒臭そうな言い草からは、過去に自分の周りがそういう人物だらけだったことが窺えるだろうか。

「考えようによっちゃ気楽だぜ?セ・ン・パ・イ」

慰めのつもりなのかは分からないが、ポンポンと数度彼の肩を叩く。

ヘルベチカ > いいよそれで。そのくらいの呼ばれ方なら許容範囲内。
どうせこの島、すっごい名前のやつ多いから、道端で呼ばれても恥ずかしくないしな……。
(笑う少女に肩をすくめて、こちらも苦く笑う。)
いやー。寂しいぞ?ここで知り合いがいないって。
外ならさ。大人もいたし、一人ってのもありだったけど。
ここ、大人もいるけど学生ばっかりだからさ。集まって動くやつ多いし。
(言葉の端からほろほろと零れ落ちる虚しさ。)
(怒られない代わりに、公安も頼りにならないこの島で守ってくれるのもいなくなる。その言葉は、口から漏れなかった。)
やっすい同情なんか不要だからな……考えようによっちゃ哀れだからな……
(がっくり、と首を垂らした。少女の叩いた肩に、力が入っていないのがわかる。)
(腕にぶら下げたままのビニール袋が、ぶらんぶらんと揺れた。)

若鷺 智 > 「確か全国各地どころか、異世界出身の連中とかもいるんだっけか?
まぁ誰であろうと適当に略して呼ぶなりするさ」

その笑顔は、それが自分の流儀だ…と暗に示している。

「周りが学生ばっかだから疎外感覚えるとか、そういうの?
んー…言われてみりゃそう…なのか?
そもそもアタシ、そういう人が集まるとこにあんま行ったことねーからなぁ。その辺よく分かんないんだよな」

再び難しい顔を浮かべて考えてみるも…。
どうしても先行き暗いイメージばかりが浮かんでしまうようで、首を大きく左右に振って思考を消し飛ばした。

「空気読む練習…は置いといて。友達ぐらいなら適当に誰かに話し掛けりゃできんじゃねーの?」

あっけらかんと言ってのける。
ヘルベチカにその行動力があるかどうかは問題視していないようだ。
そして智の目線は揺れたビニール袋へと移り…。

「…それさ、食べもんなら食べちまえば?」

ヘルベチカ > そうそう。噂では異世界で王様だったのとかいるらしい。
ま、こっちじゃ無礼討ちもクソもないだろうから、よっぽど変な呼び方しなきゃ大丈夫だろ。
(目前の少女であれば、どうせその辺りは気にしないのだろうと思えば、少年も忠告などは特にせず。)
疎外感というか、うん。人間は、大概が、何らかの縁を持って生きる。若ければ若いほどそうだ。
そしてここにいれば、親家族との縁なんてのはない。
であれば、自然と友達、恋人、そんなんと一緒にいることになる。
だからここだと、外に比べても尚、人と過ごす学生の姿ばっかり見かけるかもな。
気にするかどうかは、人それぞれだし。若鷺が人間嫌いなら、全然気にすること無いとは思うけど。
(来たばかりの相手を脅かす形になったことに気づいたのだろう。)
(少年は、少し大げさに笑って言った。)
置いておくの?そこ置いておくの?無理ってこと?早くない諦めるの。
お前適当に誰かに話しかける行為には俺の気力の82%くらい使うからな…気力切れるからな…
(どうやら少年は、猫の名に見合わず人見知りの気がある様子であった。)
(がっくしと再び肩を落としたところで、少女の視線を追う。)
………。あぁ、そうだ。俺これ食べに来たんだ。なんかバタバタして忘れてた。空腹感紛れたわ。
(袋に手を突っ込んで取り出したのは、パックされたカツサンドとコーヒー牛乳。)

若鷺 智 > 「王様ねぇ…。まぁ異世界で王様でも、ここじゃただの学生とかだろ?」

どうやら相手を敬う気など一切ないらしい…というよりも、単純に我が強いのかもしれない。
自らの長髪をサラリと梳かすように撫でる。

「……気に入るかどうかは、やってみなきゃ分かんねぇさ」

…自分にとっての『友人』とはどのような存在だっただろうか。
自分の力を敬い、手下のように付いてきた連中?
異能の扱いや日頃の振る舞いについて、説教臭い話を毎日のように聞かせてきた連中?
異能に関しては一切触れず、ただの女学生として接してきた連中?
……よく分からない。

他にも何か言おうとしたのか、若干口が動くも…押し黙ってそれ以上語ろうとはしなかった。
ヘルベチカの笑い顔も…今は乾いたものに見える。
これ以上悪態を吐く前に、再び風景へと目線を戻した。

「それ気にしてるなら直す努力しろよ…。
ここで大事なのはアタシがどうこう言う内容じゃなくて、自分の行動力だろ。
てか、ここに来た時アタシの異能で騒いでたじゃん。話す切っ掛けとかそんなのでよくね?」

結構適当な言い草だが、一応智なりに真剣に考えた上での発言だ。
…それがヘルベチカに通じたかどうかは定かではないが。

「なるほど」

ガサガサ音を聞けば、再びそちらへと目線を送り。取り出されたものを確認する。

「…こういうとこで食うメシはうまいだろうなぁ。
で、食うならアタシは帰るぜ?人がメシ食ってるとこボンヤリ見てることほど空しいこともねーし」

屋上の手すりを背にし、両手で柵を握り締める。

ヘルベチカ > こっちに来て即自分の王国再建した人間の話は知らないし、多分そのはず。
(噂話の一つであれば、少年もそこまで深く識っているわけでもなくて。)
(言葉もぼんやりとしたもので。)今更だけど、お前髪長いなぁ。(思考と口が直結した。)
そ。ま、新しい環境だし、寂しいと思った時に、授業で隣の奴にでも話しかけてみればいいんじゃない?
一年生なら、まだグループも固まってないだろうし。
結果として、友達ができればいいな。
(自分では出来なかったことだが、この少女なら容易にできるだろう。)
(友だちができるさ、とは言わないのは、少女の口を噤んだ理由を、なんとなく察したからなのだろうか。)
努力として接客のバイトを始めてみたが、仕事会話が上達するばかりであった。
普通に人と会話するきっかけを掴むのは、そんなに上手くなってない。だめ。(だめであった。)
んー。ま、なんだろ。友達になりたいから話しかける!ってのをやろうとすると、そうなるまでで全部終わっちゃうことは分かったから。
とりあえず、人になんでもいいから話しかけてみるってことだけは頑張ってみよう。
若鷺くんはいい子だねぇ……(実際は同い年であることなど知らず、しみじみとした様子で。)
(取り出したコーヒー牛乳は、先程よりは温まっているように思うが、まだひんやりした手触りで。)
なんや。お腹すいてんのか。半分喰うか?

若鷺 智 > 「ん…そうかァ?
まぁなんていうか…伸ばしてると落ち着く。鬱陶しいこともあるけど」

再度髪を…今度は先端まで梳くように伸ばしながら、自分自身よく分からないと思う感想を呟く。

「授業で声掛け…ねェ」

基本的にサボっているため、真面目に授業に出たためしがない。ということは黙っておく。

「気が向いたらな」

恐らく知る由もないだろうが、その言葉には『授業に参加することそのもの』も含まれている。

「善意だろうと悪意だろうと、下心って結構透けて見えるもんだしな。
ヘル自身分かってるみたいだけど、とりあえず話してみる…って形でいいだろ。
ってかオヤジ臭いこと言ってんなよ」

再度溜息。
それは呆れというより苦笑のニュアンスに近い。

「…まぁ腹減ってるけど。くれるんならもらおうかね。
……一応先に断っとくが、さっきの対価…とか言い出したら殴るからな」

体温で温まってきた柵を握り締めたまま、ジト目でヘルベチカを睨み付け。

ヘルベチカ > なんかめっちゃ手かかるんだろ、女子の長い髪って。
洗う時も乾かすときもめんどくさいって聞くけど。
(しげしげと、遠慮のない目線で少女の髪を眺める。)
(なんだか美術館で展示品を見る客のような目線である。)
あっ こいつ、そもそも授業出るつもり無いな。
(少女の態度から即判断して声を上げた。突然の鋭さ。)
お前ここ容易く留年するからな。もしさっさと出たいならちゃんと授業は出とけよな。
(どうやら似たような人間を、見たことがあったらしい。鋭さの原因はそれだったようだ。)
下心…その辺は多分俺達よりも女子のほうがわかるんだろな。
胸とか見てればバレるっていうし。まじこわい。今は見てないです。
うっせ。まだ17だよ。ていうかお前後輩ヅラしてるけど、何歳?
(なんとなく、若いようにも、大人びたようにも見えることが有る相手。)
(顔を観察するように、左右に体を動かして、少女を見て。)
あげるあげる。さっk さっき買ったばっかりだから新鮮だよ!
(新鮮なカツサンドであった。ビニール袋の中から取り出した使い捨ての手拭きを、若鷺に渡す。)
はい。柵持ってたら汚れてるだろ、手。

若鷺 智 > 「まぁ面倒だなァ。洗い終わった後手入れする場合は特に」

ヘルベチカの目線を気にする様子はない。
最低限の手入れは施しているのか、溶かしていた髪は滑らかに滑っていた。
ただ、流石に枝毛や癖毛の一本一本まではチェックしていないのだろう…所々跳ねている。

「うっわ、ウゼェ」

サボり常習犯であることを読み当てられたことが悔しかったのか、露骨に嫌そうな声を上げる。

「まるで自分が留年経験者みたいな言い草だな…ってそれはさておき。
確か部活とか学外活動でも単位取れるんだろ?
まぁ今のところあても何もねーけど」

これから探すつもりだ…とは言わないでおいた。
実際探す保障はない。所詮は気分次第だ。

「余計なとこ見ず余計なこたァ言わねぇこった。
ってか、普通女子に年齢訊くかぁ?17だよ17。
そもそもアタシより学園詳しい時点で年下だろうが先輩だろ。どーでもいいけど」

もはや突っ込む気力も失せたのか、ただ笑い声を上げるばかり。
普段はそれなりに澄ましているが、笑ったり怒ったりしている際には年相応には見えるかもしれない。
体格は…普通だ。多少開いている胸元も、胸があまり大きくないのか強調しすぎているという程でもない。

「おっ、サンキュー」

柵から手を離して手拭きを受け取り、両手を丹念に拭く。

ヘルベチカ > 手入れか。ドライヤー以上の手入れとか想像もできんわ……
(右手を上げて、自分の頭に触れる。髪をがしがしと梳いた。)
(猫耳が飛び出しているものの、それ以外は普通の男子同様、短く切られた髪。)
へへへ。ばれないと思ったんだろ。
(少女の悪態に、少年は少し得意気に笑う。)
ノー留年。今のところストレートで二年目です。
授業以外でもなにがしか当てがあるのならそれでも―――ないんかい。
まぁいつまでもモラトリアム、ってのもいいのかもしれないけど。
(ここまで話せば大分、相手の性格もつかめてきた。)
とりあえず、なんか気の向いたことあったら続けてみな。何もしないと腐っちゃうぜ。
(面倒くさがり屋であることと、その他にも。)
しかし余計なとこといってもだな、余計じゃないから見る。(熱い思いのこもった頷き。)
いや、二十代に見えたら聞かないようにするけどさ。
十代だろ。何?最近の女子の間では十代後半はもうおばちゃん扱いなの?
ほら17って同じじゃねえか。先輩って同い年に言われるとなんかからかわれてるみたいでやだ。
(あくまで気分的な問題であった。)
(相手の口から年齢を聞いて、それから再度しげしげと眺めれば、納得したように頷く。)
かつサンド、大体売り切れてるから買えるの珍しいんだよな。
もっと仕入れりゃいいのに。多分それでも売り切れる。
(不満気に呟いて包装を開ければ、2つ入りのかつサンドの内一つをとって。)
あいよ。(包みの袋に入ったままのカツサンドを一つ、差し出した。)

若鷺 智 > 「ただ、案外洗う時の方が重要なのかも…ってどうでもいいか。そんな話。
…そういやその猫耳って付け耳じゃないんだよな?名前からして猫っぽいそれだったし」

ヘルベチカの耳と顔とを交互に見る。

「仮に留年生だったら思いっきりいじってやったんだがなァ」

ニヤリと笑う。
頻度の高さからして、この手の笑いは智の性分なのだろう。

「そうするつもりさ。
ま、まず何から探すかーって段階なんだけど」

先程黙っていたはずのことを今度はあっさりと口にしてしまう。
ヘルベチカに上手いこと引き出された…といったところだろうか。
しかし、その後の言葉には『何言ってんだこいつ』と言わんばかりの白けた目線を向け。

「ホントに空気読めねー奴だな…ある意味才能すら感じる。
先輩呼ばわりは基本的にはしねーよ、基本的には」

ケラケラと笑う。
それはつまり『口にした時は貴方を馬鹿にしています』と白状しているようなものだ。

「あー、購買チェックはこの後しようと思ってたんだよ。
カツサンド、人気なのか…他にはどんなのが人気なのさ?」

興味深そうに問いながら、差し出されたカツサンドを受け取る。

「あんがと」

ヘルベチカ > いや。滅多に聞く機会無いし、聞いてて楽しいんだけど、話しても楽しくないんだろな、ってことはわかる。
ん。生で付いてるよ。(ぴくぴく、と震えるように動く茶虎の猫耳。)
ま、見た目が少し違うのも、ここには多いよ。
(角生えてるのとか、と左右の人差し指を、額にかざす。)
そういうひとをいじるのはやめてください死んでしまいます。
っていうかお前が留年したら爆笑してからちゃんとお通夜パーティー開いてやるからな。
ケーキに「入学おめでとう ともちゃん」って俺がチョコペンで手書きしてやるからな。
ちゃんとケーキの上に砂糖菓子でランドセル背負った女の子とか並べてやるからな。
(やたらと具体的なのは、既に想像図が頭の中に有るためだろう。)
金が無いならバイトするべきなんだろうし、楽しみたいなら部活、なんか動かしたいなら委員会なんじゃないか?
(人差し指、中指、薬指と一本ずつ立てて。)
(おおよそのここで選びうる選択肢。授業はもう除外である。)
空気よめない才能ってあれじゃない?それ才能っていうか呪いじゃない?
なんか悪いことしたかな…どれが悪かったのかな…
でも考えてみたら俺がお前のこと後輩って呼んだら、初めて聞いた人お前が留年したと思うんじゃない?
(ビッグアイディア!と言わんばかりに手を叩いた。)
他は、そだな。メロンパンは安定してうまい。
(自分の分のカツサンドをかじる。モグモグと咀嚼して。)
ん、く。どういたしまして。味わって食べ給え。
あとは、そだな。たまに並ぶチーズフランスパンは晩飯に買って帰って家で焼くと旨い。
店で買うよりちょっと安い。学校の中だから。

若鷺 智 > 「楽しくないっていうか、めんどくさい。
そもそも意識してやってること少ないからなー…思い出しながら口にするのが大変なんだよ」

それはそれで『楽しくない』の部類に入るのかもしれないが。

「ヘルもその連中も…異世界出身とか?
アタシの周りには外見レベルで異なる奴ァ多分いなかったしなー。
ま、広く知ってるわけじゃないけどさ」

留年攻めの様々な案を聞けば、アハハハと面白おかしそうに笑い出す。

「んなモンに動じねぇぞ?アタシは別に留年恥じてねぇし。
むしろ留年した方がここに長居できていいかもな、なんて」

足先でトントンと地面を鳴らす。

「ケーキとかもありがたく食わせてもらうさ。
ていうか、発想が小学生並だよな…いっそのこと、今から小学生の部からやり直しちまえば?
ここにあんのか知らないけど」

堪え切れない笑いを噛み殺しながら、カツサンドを一口齧る。

「ん、うまいな。
で…メロンパンにチーズフランスパンね。余裕あったら覚えとこ。
にしても…色々買うためにゃ、やっぱ金は欲しくなるな」

自身が金欠であることを仄めかす一言。
智はそれに気付いているのかいないのか。

「部活に委員会は…。
なんつーか、どんなもんがあるのか把握しないことには何とも、だな。
見れるなら見て回ってみたくはある」

口にした分を嚥下し終えると、再びもう一口。

ヘルベチカ > ずっとやってるとそうなるか……
まぁ、料理人がレシピ口で言えって言われてるようなもんだしな。悪い悪い。
(なんとなく、似たような感情を把握したのだろう。軽く頭を下げる。)
俺はこっち出身だよ。まぁ、異能も特に無いし、魔法が使えるわけでもないし、普通の人間です。
だから普通の人間らしく留年はせず、しっかりと学んでおります。ストレートです。
(うむうむ、と頷いて、非留年アピール。)
長居したいから、ってのならいいと思う。
何も目的なく立ち止まると、多分ここだと、また歩き出すの難しそうだし。
(学生の自主性が尊重されすぎてる、と呟いて、溜息を吐いた。)
(頭の上の猫耳が、ぺたん、と伏せる。)
お前俺がこのナリで小学生の部に混じっててみろ。
「異能で成長しちゃったんだろうな、カワイソウに」
って目で見られて逆にめっちゃ気を使われる未来見えるだろ…?
俺の心死ぬだろ…?やめよ…?
(なまじありうることだけに、容易に想像がついた。)
(不思議そうに見てくる小学生。)
(尋常じゃないくらい気を使ってくる先生。)
(窓の外で大爆笑する若鷺。)
(死ぬヘルベチカ。)
(完。 完じゃなかった。)
(死んだような目で、もぐもぐとカツサンドを食む。)
気に入ってもらえてよかったよ、カツサンド。
ま、幸いにも購買のもんは、大体何食べても普通の味はする。
金が無いと買えないのは、そりゃ、外と同じだ。
(少女よりも口が大きい分だけ、食べるのも早い。)
(最後の一切れを口に放り込んで飲み込めば、指についたソースを舐めて。)
見ても回るのもいいだろうし、縁があればでもいいだろうし。
まずバイトで金稼いで、そこで出来た縁で部活や委員会に入るのもいるし。

若鷺 智 > 「ま、そういうのは気が向いたらな」

特に気にしていないようで、穏やかな顔付きとなる。
気が向く時などあるのかは分からないが…。
今後意識すれば手順を口で説明するぐらいは出来るのかもしれない。

「へぇー…異能なしねぇ…」

珍しいものを見るかのように、ジロジロとヘルベチカの全身を眺め。

「あっ、実は空気読めないのが異能だったりしてな!!」

再びククッと喉を鳴らすように笑い出す。
「一応役立つ局面もあると思うぜ?」と弱めのフォローも入れてみるが、恐らく馬鹿にしているようにしか取れないだろう。

「…ま、その辺は実際見回ってから判断するさ。
ここの居心地がいいのか悪いのかすら、まだ分かんねーからな」

急に真面目な声色と顔付きになったかと思いきや…やはり長続きせず。

「いいんじゃん?猫耳小学生。
きっと可愛がられるって。需要あるって。
なんか耳が寝るのも可愛いし」

根拠のないゴリ押しであることは言うまでもない。
後を追うようにこちらも最後の一口を食べ切り、「ごちそうさま」と一言。

「バイトにしたってピンキリだろうからなァ…。
その辺のお勧めとかあるなら、一応聞いときたいとこだけど」

ヘルベチカ > なし無し。異能なし。異常な能力とかないです。
空気の読めない異能ってお前それ無能だろ。舐めてんのか。舐めるぞ。
(ギリギリと歯ぎしりしつつ、体を曲げて、少女を下からわざとらしく睨む。)
ま、来たばかりだろうし。しばらくは色々見てみなよ。
その内に、やりたいこと、やらなきゃいけないことが出てくる、と思うし。
(少年は笑いながらそんな台詞。)
(やっぱりこういうところ、自信なさげであった。)
ネコミミ小学生、って単語と実物に著しい乖離が存在しているのだが?
こんなにも言葉だけ聞いたらよいものだと思えるのに実物見たら死にたくなる存在なくない?
誰が見るだけで死にたくなる汚物だ見せるぞ。
耳は……まぁそりゃ寝るし起きるよ付いてるし。
(両の手で、頭の耳を覆うように手をかぶせて。)
(人間の耳も付いているので、聞こえなくなることはないようだった。)
おすすめ、っていわれてもなぁ。得意なことが有るなら活かせばいいだろうし。
後は、学生街に住みたいってんなら、住み込みのバイト探せばいい。俺もそれだしな。
ただ、うん、歓楽街の深くや落第街やらのバイトだけは、割が良くてもおすすめしない。あそこは危ない。

若鷺 智 > 「空気読めない異能なら洗脳とかされずに済むんじゃね?
ってかさりげにセクハラ発言すんな。殴ンぞ」

拳を握り、速度の全くないアッパーを振り出す動作だけを見せる。

「つまんなけりゃ帰るって選択肢はアタシにゃねーしなァ…。
ま、そのうちなんか見付かるって思っとくさ」

自信のなさが伝染ったのかは定かではない。
…が、その顔はどことなく満足そうではある。

「顔見せずに耳だけ出してりゃ価値あるって~、多分」

全くフォローになっていないどころか追い打ちの一言。
そのやる気のなさそうに間延びした言い草からして…恐らくわざとやっている。

「てか人耳も普通にあんのな。音とかどんな風に聞こえてんだ?大声出したら二倍うるさいとか?」

顔を少し寄せ、猫耳を覆う仕草を面白そうに眺め始める。

「一応寮住まいだからどうすっかなー…。
まぁ住み込みでも面白そうなのがあったらやってみるのもいいかも。
しっかし、歓楽街に落第街、ねぇ……。噂は聞いてるよ。
ちょっと軽く見るぐらいなら試してみたくはあるが。あんま深入りしたくはねーな」

これは冗談で言っていないのだろう。
その表情はいつの間にかすっかりと真顔になっている。

ヘルベチカ > 空気よめないのと洗脳されないの関係なくない?
洗脳されても空気読まずに洗脳効果迸るだけで悪化してない?
だめです。
(相手が上げた腕に己の腕をガシッとぶつけて、イエーイ、と両手の親指を立ててごきげんなポーズ。)
(なんかまたテンション上がったらしい。)
見つけなきゃ、って思っちゃうと、プレッシャーばっかりかかるだろうしな。
それくらいのほうがいいと思うよ、ほんと。
(うんうん、と尤もらしく頷いた。)
その紙袋かぶせれば安い風俗でもイケるって豪語するおっさんみたいな発言やめてくれない…?
俺の猫耳だけが価値みたいな言い方されると否定できなくて泣いちゃう…
(ぴぅっ、と強く風が吹いた。)
(少年の心に吹く隙間風のようで、なんだか余計に身に染みた。)
音?一応聞こえてるよ。二倍煩いのも確かにある。
(観察する少女の視線の先、手の間からこぼれる、フワフワとした茶虎の毛。)
女子が深入りしたら、まぁ、運が悪けりゃ生きて戻ってこれないと思うぞ。
軽くでも、その可能性はある。あのへん近づくときは、神様に祈るしか無いな。
だから、学生街あたりのバイトおすすめするよ。
ここにだってアパレルはあるし、飲食店だって多いし。
(危ないところには近づかない方がいい、と、少女より一年から長く経験した少年は、頷く。)

若鷺 智 > 「知らねーよ。嫌ならさっさと直す努力しとけっての」

バッサリと切り捨てる。
一方でヘルベチカの妙なテンションの高さには不思議そうな表情を浮かべ。

「……まさか、猫的な反応だったりしねェよな?」

本来なら猫じゃらしのようなブラブラしたものを揺さぶって試してみるところなのだが、生憎手持ちがない。
仕方がないので少し速めの速度でジャブを数度繰り出してみた。
変な動きをすればヘルベチカの身体にも当たるかもしれない。

「…なんでそんな例えになんだよ。
下手な奴にんな話持ち出したら拳叩き込まれるどころじゃ済まないんじゃねーの?」

大袈裟に肩を竦め、呆れ返っている意思を伝えようと。

「ふぅん……なるほど。無難なとこか」

獣特有の毛並を見つめながら、上の空のような返事を返す。
……もしかしたら、自分はある程度の刺激も求めているのかもしれない。
たとえ、それが命に係わるレベルのものであったとしても…。

ヘルベチカ > 何やってるの若鷺。ストレス溜まってんの。
(一向に猫的な反応ではなかったらしい。素だった。)
(完全に素で、突然のシャドーボクシングを始めた若鷺を眺めている。)
(コーヒー牛乳にストローを指すと、ちゅうちゅうと吸う。)
(なんだか疲れてるんだろなこの少女も、という優しさのこもった視線。)
マジで。これくらいでも拳叩き込まれるのか……世の中って結構なお上品っぷりなんだな……。
ていうかうちの店に来ては管巻いて帰るあのおっさんは、比較的ゲスかったのか……。
(実際に他人から聞いた喩え話をそのまま使用したようであった。)
(屋上からの景色を眺めて遠い目になる。)
無難なとこ無難なとこ。正直外の世界よりヤバイからさ。
さっきの俺の発言程度じゃどうしようもないくらい、ひどい目に会うかもしれない。
俺は止めたよ。(少年は真面目な顔で一度だけ、そう言った。)

若鷺 智 > 「……そうだなー。溜まってるかもなァ」

反応がなかったことが空しかったのか、せめて一発叩き込んでやろうと弱めの一撃を胸部目掛けて放ってみる。
しかしヘルベチカがコーヒー牛乳を飲んでいる現状では、その思いやりは逆効果かもしれない。

「いやゲスかどうかは知らねーけどよ。少なくとも女相手に気安く出していい話題じゃないっての。
空気読め…あ、無理か」

からかいはするも、その軽い態度はすぐに鳴りを潜めてしまう。
再び手すりへと近付き、遠くを見つめ。

「外よりヤバイ、か…どーだか。アタシの周りにも結構ヤバイ奴いたからな。
つってもまぁ…甘く見る気はねーさ。
広い世界にゃいくらでも化けモンがいるって相場が決まってんだ……」

緑色の瞳から、少しだけ光が消えた。

ヘルベチカ > (胸部に叩きこまれた弱い一撃。しかし、吸い込む動きを止め、押し返すには充分で。)
(少年の喉へと流れ込んでいた液体が、出口を求めて暴れ回る。)
(そのまま吐き出せば、若鷺の顔へと一直線に噴出されるだろう。)
(とっさに顔を背け、よそへ向かって吹き出した。)
(先ほど話しかけていた百合が、そこにはあった。)
(無残にも茶色く染まる百合。「また俺かぁー」という感情が聞こえた気がした。)
(そんな異能はない。)
っげほ、ごほ、ごほ。…………お前―!危うくお前の制服茶色にするところだったじゃねえか!!!
(あー、くそ、と呟きながら、口元を手の甲でぐしぐしと拭う。)
いや、店の先輩女子も、笑いながら「ぶっ殺すぞおっさん」って言ってたから、ギャグの範囲かと思って……。反省だわ。
一向に空気は読まないが済まなかった。
(ぺこり、と頭を下げて、起こせば、表情を変えた相手。)
なんだなんだ。死にそうな目にでもあってきたのか。
(少年は首を傾げて。)
ま、そだな。世の中広いし、見た目じゃわからないことも多い。
普通に喋ってる相手が突然殺しにかかることも有るかもしれんし、俺が突然めっちゃ空気読めるようになるかもしれん。
(冗談めかしていったのは、少女の様子を見た故か。)

若鷺 智 > 「空気読めねぇのが悪い。
まぁ確かに制服汚されたらヤバかったな!ハハッ」

言い掛かりもいいところなのに、何処か勝ち誇ったような言い草である。
ただ流石に悪いとは思ったのか、申し訳程度にヘルベチカの背を摩る。

「なんつーかな…話す練習するなら、まずは男と話してみた方がいいんじゃね?
ヘルの場合、多分女相手じゃハードル高いぞ。色々と」

問われても表情は変えない。
考えに夢中なのか、或いは読み取られたくないからそうしているのかは定かではない。

「……どーだかな。そんな気もするし、もっとぬるかった気もする。
まだ学園内ぐらいしか知らねぇからかもしんねーけど…どっちもあんま想像できない光景だなァ」

声色だけが僅かに弾む。

ヘルベチカ > 空気よめないと殴られるって何…DV家庭みたいなことになってる…
子供には手を出さないで…殴るなら私にしてよ…
(まだ喉に違和感があるようで。若鷺に背中を擦られつつ、ごほごほと咽ながら。)
(しばらく咳き込んでいたが、ん、と大きな咳払いをして、落ち着いて。)
えっ何?リハビリが必要なレベルなの、俺の会話。
マジで。なんかもうそこまでして気を使って会話しなくていいかなって気がしてきたわ……
(ここがコミュ障の一端である。だが、以前の彼と違う部分はあった。)
だからまぁあたって砕けることにするわ……きっと気にしない人も居るだろう……
(ダメな前向きである。)
ま、何にせよ気をつけてな。
話した相手が行方不明とか死ぬなんてのは、あんまり気分が良くないんだ。
(穏やかに笑って。この島への新入りへの言葉。)

若鷺 智 > 「そもそもそんなんじゃ家庭なんざ持てやしねぇから安心しな」

口から繰り出されるのは、相変わらず慰めにもなっていない追撃…もとい、口撃。

「女相手に無自覚のセクハラ発言ほど性質悪ィモンもなかなかねぇぞ?
ヘルの言い方を真似て言うなら……そうだな。
発言直後に股間蹴り上げられても文句言えねェレベル」

更に追撃。
智の性格や言動があまり女らしくない点は、彼にとっては救いなのだろうか?

「まぁ好きにしな。アタシも好きにするから。
…そこら辺は気ィ付けるさ」

ニカッと歯を見せながら笑い返す。

ヘルベチカ > ひどい……こんな夢だけ追っかけてるヒモを養っちゃいそうな女の子に結婚できないとか言われた……
(ショックであった。頭の耳がぺたんと寝る。)
セクハラ発言て。セクハラ発言て。
畜生男女平等とか言っておいて、都合のいい時だけ女面しやがる……
股間蹴り上げられる痛みも知らないからそんな非道なことができるんですよこの悪魔!!!
(きゅっと両手で足の間を抑えて内股になる少年。)
(男子にとってそこは聖域であった。)
ま、気をつけて、お好きにどうぞ。
それじゃ俺は食べたし飲んだし帰るわ。
(ビニール袋の中へとコーヒー牛乳のパックを放り込んで、口を結び、手近なゴミ箱へ投げる。)
(風にあおられることもなく、ゴミ箱へちょうど入った。)
(ぐっ、とガッツポーズして。)
そんじゃな。
(少年は屋上を後にした。)

ご案内:「屋上」からヘルベチカさんが去りました。
若鷺 智 > 「どんな評価だ。どんな」

寝た耳を見ながら笑い出す。
先程の深刻そうな雰囲気はどこへやら。
股間を押さえるヘルベチカの様子を見れば、更に調子付き。

「まぁ他の誰かと話すんなら意識しときな。
…いや、やっぱアタシと話す時も意識しろ。空気読めねぇ発言連発されると辛いし」

フォローしたかと思いきや、即座に殴り返す一言。まるで容赦がない。

「おう、そんじゃな」

軽く腕を上げて見送る。

「…さってと。随分と長居しちまったな。
他に見ておきたいトコもあるし…移動しますかね。
……ヴォイド」

手すりの先と手前に、青く淀んだ空間が複数現れた。
智はまるで階段を上るかの如く手すり手前の空間に足を踏み入れ、テンポ良く手すりを乗り越える。

「…案外、退屈しねぇ場所なのかもしれねーなァ」

そして小さく笑い、手すり先の空間に向けて飛び降りた。
無数の空間を作りながら、器用に空中を歩いたり飛び降りたりしていくその様は…さぞや奇妙な光景として映ることだろう。

ご案内:「屋上」から若鷺 智さんが去りました。