2015/07/29 のログ
ご案内:「教室」に惨月白露さんが現れました。
惨月白露 > 頬づえをついて、ぼんやりと空を眺める。
青い空を、白い雲が流れている。
夏季の自主参加の特別講習の授業中。

ノートを広げ、一応シャーペンを持ってはいるものの、
完全に上の空、といった印象を与えるだろう。

『寝不足なせいか、眠いな。』

その瞳は、閉じたり開いたりをゆっくり繰り返している。

ご案内:「教室」に神宮司ちはやさんが現れました。
神宮司ちはや > チャイムとともに別の教室で行われていた講習が終わる。
ぞろぞろと出て行く生徒たちとともに流れに乗るようにちはやも荷物をまとめ教室を出てゆく。

とった講習は後期で受けようと思っている看護系のものだ。
始めるなら早い段階がいいだろうと思って参加していたがなるほど、これなら自分でも理解できそうだと思いながら廊下を歩く。

ふと別の教室の前を通り過ぎると、この間見た犬耳の女生徒が机に向かってうつらうつらしている。
授業はこちらも終わったようだ。教師も人も出て行く様子に彼女だけ取り残されているような気がして
そっとそばに寄ると、肩を軽く叩いてみる。

「あの……授業終わりましたよ?」

惨月白露 > 肩を叩かれると、耳と尻尾がびくんと震える。

「―――んあっ!!」

完全に寝ていたのか、肩を叩かれれば変な声を上げる。
まだ少し寝ぼけた目を擦りながら、自分の肩を叩いた正体を見る。

「あ゛ぁ……?」

ぼーっとしたまま、不機嫌そうな声を出して、不機嫌そうな目をそちらに向ける。
ぼんやりとした視界に見覚えのある顔を捕えると、はっとしたように、ぶんぶんと頭を振った。

「……おはようございます、ちはやさん。」

神宮司ちはや > 女の子にしてはやや低い寝起きの声が出るとびっくりして目を丸くする。
が、しっかりと挨拶をされれば苦笑して

「はい、おはようございます。シロちゃんさん。
 お疲れだったみたいですね……大丈夫ですか?身体とか、具合は悪く無いですか?」

一応気遣うようにそう声をかける。

「シロちゃんさんも講習受けていらっしゃったんですね。
 暑い中授業を自主的に受けにくる人ってあまり見かけないからちょっとびっくりしました。」

惨月白露 > 「あはは、寝起きはちょっと機嫌悪くて。びっくりさせちゃったかな?」

彼の反応見ると、苦笑いして頬を掻く。

授業を一切聞いていなかったのか、
真っ白なままのノートを鞄に仕舞い、筆箱にシャーペンを戻す。

「ちょっと色々あってね、昨日の夜寝れなかったから寝不足で。
 体は大丈夫、具合も悪くないよ。むしろ、授業丸丸寝ちゃったから体調いいくらい。」

んーと伸びをする、まずは上半身を逸らして伸ばしてから、
次に足をうーんと伸ばす。「はぁ」と息をつくと、立ち上がった。

「学生の本分は勉強だしね。
 別料金があるわけでもないし、折角だから受けておこうかなって。
 暑い中とはいっても、扇風機しかないうちよりは冷房効いてるし、ここ。」

そういって苦笑いを浮かべると、机の上に浅く座り直した。

「………ってことは、ちはやさんも講習?同じ教室には見かけなかったし、
 今日ある他の講習だと看護系とかかな。
 そういう系の仕事目指してるの?お似合いじゃん。」

神宮司ちはや > 「あ、ええとすごい目つきでしたけど大丈夫です。」

寝起きで機嫌の悪い人を見たことはあまりないけれど、
そういうものと言われてしまえば納得する。
自分も近くの椅子に浅く腰掛けると、白露に身体を向けて話す。

「そうでしたか……。何か、悩みとか夢見が悪い、とかじゃなければいいんですけど。

 うん、そうですね。ちゃんと学校へ行けるのなら勉強しない手はないですし、
 寮とか部屋の電気も節約できますし特別授業も悪いことばかりじゃないですね。」

うんうんと頷いて自分の受けた講義に話が及べばテキストを見せて示す。
 救急手当てや医療系のテキストだ。

「はい、ちょっといろいろ考えたんですけど
 折角だから手当が出来る方法をもっとよく知りたかったんです。
 ぼく、攻撃の魔術とかの成績はあんまり良くなくて、友達はそういうのとても上手いんですけど
 だから自分で役に立てるならこういうことかなって考えて。」

似合ってますか?と照れくさそうに首を傾げる。
自分では似合う似合わない以前にそれ以外があまり出来ないから選んだのだけれど。

少しだけ口を閉じると視線を床に向ける。
何か切り出すのが難しそうにもごもごと口を動かすが思い切って言葉にしてみた。

「あの、この間はごめんなさい。あの時のぼく、あなたに対してすごく態度が悪かったと思うんです……。
 そのせいで、怒ってたり気にされていたら申し訳ないなって……それで謝りたかったんですけど、勇気がなくて。

 あの時はごめんなさい」

そうして小さく頭を下げる。

惨月白露 > 「きっといい看護師になれるよ、ちはやさん丁寧で優しいし、
 ナース服とかなんとなく似合いそうだしね。」

そう冗談っぽく笑いつつ、テキストを視線で追いかける。

「ってことは、今度の選択制の魔術講義も回復魔術のほうを取るのかな?
 ……私は攻撃のほうだから別れちゃうね、残念だな。」

そういって、笑っていたが、
頭を下げられればぶんぶんと手を振る

「あ、いや、そんな丁寧に謝られると困るよ。
 あの時は私も悪かったし、
 大事な人とのこと、バカにされたら怒るのは当然だと思うからさ。」

『こっちこそごめん』と頬を掻く。
が、すぐに冗談っぽく笑いながら彼をつつく。

「―――でもさぁ、そんなつもりは無くても、
 あの後はやっぱりちょっとくらい仲とか進んだんじゃないの?
 ほら、彼と家まで一緒に帰ったんでしょ?」
 
「……どこまで行ったの?手は繋いでたけど、キスくらいはした?」

神宮司ちはや > 「えっいえ、ナース服って女の人が着るものでしょう?
 ぼくじゃ全然着れませんよ……!それとも最近は男の人でもナース服着たりするんですか?」

慌てて両手をぱたぱたと振って、けれどいい看護師になれると太鼓判を押されると嬉しそうに照れて笑う。

「はい、白魔術とか治癒術とか……気功?とかもあるみたいですね。
 シロちゃんさんは他にも何か授業とられていたりはしますか?」

折角だから、何か同じ講義が一つでもあればもう少し仲良くなれるかなと、思いつつそう尋ねてみる。
自分が謝ったことに慌てて許してくれる相手にほっと顔をゆるめて

「いえ、良かったです。ちゃんと謝れてスッキリしたし
 シロちゃんさんが本当はとてもいい人だって今お話してわかりましたから。」

安堵したようににっこりと笑顔を向ける。
その後のことを聞かれると、困ったように口元に手を当て、
うーんと複雑そうに視線を宙へむける。

「トリクシーくんとは元々仲良かったですけど……そういうつもりじゃなくてうーん
 あ、でももっと仲良くはなれたと思います。たぶん……。」

詳しい内容は話すには恥ずかしいのでぼかしつつ、
『キス』という単語が出ると真っ赤になって首をぶんぶんと横に振った。

「き、キスなんてそんな……!あの時はそんなんじゃなかったししてませんっ!
 第一、トリクシーくんとは一番仲がいい友達だし……っ」

『あの時は』していない。それ以外では一度だけ自分からビアトリクスの頬へしたけれど。
さっとあの時の事が思い出されて尚更顔が熱くなる。俯いて黙りこくった。

惨月白露 > 「選択制じゃない授業は大体全部取ってるよ、
 座学だと語学、異世界史、新地理あたりかな。
 実習系だとさっきも言った通り攻撃魔法と、あと薬草学、剣術実習、対魔演習……。」

そう言いながら指を折っていくが、
ちはやの『女の人が着るものでしょう』という言葉に大げさに首を傾げる。

「……ん?
 あ、ちはやさん、男の人だったの!?
 ビー君の思い人みたいだから、てっきり女の子なのかと思ってた。」

『ごめんなさい』と小さく一礼して。

「ちはやさん、なんとなく中性的な印象だから、男装とかなのかなって。」

そんな事を言いながら頬を掻いてから、
聞いた内容に瞳を悪戯っぽく細める。

「へー、一応仲良くはなったんだ。へー。
 一応、男の子同士なのに、ねぇ、へー。……ふーん。」

にやにやと笑みを浮かべながら、
その戸惑う様子を舐めるように眺める。

「―――で、あの時は、ね。
 何?これからするの?それとも、前にしたの?
 その様子を見ると、する事自体は満更でもなさそうだけど。」

ぴょんと机から飛び降りると、
冗談っぽく笑いながらうつむくちはやの顔を覗き込む。

「それじゃ、私と予行演習でもする?
 それとも、やっぱりビー君相手じゃないと嫌なのかな?」

神宮司ちはや > 「あ、語学と異世界史と新地理はぼくもとってます。
 あと実習の薬草学も……。お薬とか作れたらいいかなって思って。
 一緒に授業受けられたりしたらいいですね。もし見かけたら声をかけて下さい」

一緒に受けられそうな授業がわかって嬉しそうに笑う。
今のことをしっかりと覚えてから白露の言葉にややショックを受け、すねたように頬をふくらませた。

「お、想い人っていうか友達です……!
 それにぼくはよく間違われるけど男ですっ!見た目にそう見えませんけど……見えませんけど!
 それに見た目だけならよっぽどトリクシーくんのほうがずっと可愛い女の子ですよ」

むくれても対して迫力がない。
頬にひまわりの種をつっこんだハムスターがぷりぷりしているようなものだ。
男の子同士、という言葉にちょっと焦りと疑問を感じつつも

「……お、男の子同士だって友達なら仲良くなるでしょう?
 普通に、遊んだりとかお話したりとか……しないんですか?」

いまいち自分たちのつきあいかたに自信がないのか相手の反応を気にするように聞いてしまう。

「し、してないし別に満更でもないとかそういうことじゃなくて
 えっとそういう変なことはしなかったし、トリクシーくんがしてくれたから……

 あっ!!!」

慌てて自分の口を手で塞ぐ。なんでもないというふうに首をブンブン振って発言を取り消したそうにする。
もう何も言わないぞ、という頑なな意思でずっと手で口元を隠していたが白露の顔が近づくとぎくりと身をひきつらせた。

「よ、こうえんしゅ……って……

 そ、そういう大事なこと、は、好きな人とだけするものでしょう……?
 シロちゃんさんは……好きじゃない人ともしたいとおもうんですか……?」

恐恐と、何か知らない相手を見るような視線で見つめる。

惨月白露 > 「そっか、確か薬草学はグループワークだから、
 グループ組んでくれると嬉しいな、私、いつも一人なんだ。」

『一匹狼』って言うしねと照れるように頬を掻いて、
携帯を取り出すとちはやの参加する授業をメモする。

「ビー君は『友達』とは思ってないように見えたけど?」

そう言ってくすくすと笑う。
ハムスターのような頬を、えい、とつついた。

「うんうん、仲良くはなるよ、なるけど、
 多分こう、仲良く手を繋いで一緒に帰ったりはしないんじゃないかなぁ……。
 二人なら絵になるからいいと思うけど、さ。」

口を押えるちはやの顔を覗き込みながら、
『やっぱりね』と悪戯っぽく笑う。

「うーん、ちはやさんみたいな可愛い子とはしたいし、
 ―――私は好きじゃない相手ともするよ、羊の皮を被った狼だからね。私は。」

どこか寂しそうに呟くと、
その細めた蒼灰色の瞳で、ちはやを覗き込む。

神宮司ちはや > グループを組むことに異はない。大きく頷いてこちらこそ、と言うと意外そうに相手を見た。

「シロちゃんさん、たくさん友達いらっしゃるように見えるのに……。
 じゃあもし良かったら、ぼくとお友達になって下さい。
 ぼくもトリクシーくんとは友達いない同士から仲良くなってそれからいろいろ知り合う人が増えましたから」

友達が増えるのはいいことだ。いない同士なら同じ孤独もわかるから、気を遣わなくていいしきっと楽しく過ごせるだろう。
そう思って、どうかなと言う風に笑ってみせる。

つつかれた頬を慌てて押さえる。
相手の言葉にそうかなぁといまだ納得しきれていない様子で

「ぼくは……正直『好き』っていう気持ちまだよくわからないんです。
 トリクシーくんのこと、大切な人だとは思っているし、一番の友達だから
 きっとトリクシーくんにとってもそうかなって思っていますけど……。

 大切な人は他にもたくさんいて、どれが一番とか決めるのはなんだか申し訳なくって、
 みんな大切にしたいし……だから、その気持を表したら
 手をつないだりするのは、ぼくらの中では『普通』かなって………思ってたんですけど」

まだ口を手で塞いだまま、警戒を解かぬ様子で白露の蒼灰色の目をじっと見つめる。
目が離せないように……。

ただその寂しげな言い方と、『羊の皮を被った狼』と言う言葉に同じように寂しい気持ちになって

「…………
 シロちゃんさんは、もっと……自分を大事にするべきです。

 好きじゃない相手とはそういうこと、したくないなら、したら駄目だと思います……。
 べ、別にシロちゃんさんが嫌いというわけじゃなくって……
 そんなに寂しいことを言っちゃうのはやっぱり心の何処かで違うっておもっているからじゃないかなって……

 好きじゃない相手とそういうことを、しちゃうよりかは
 大事な、大切な人と、大切なときにただ一回だけするほうが、きっとそれは大事なことになると思うんです……」

自分でも何を言っているのかわからない様子で、もごもごと口を覆ったままそう話しかける。
ただ、逃げることはしない。じっと白露を同じように見つめ返し、自分の気持を伝えようとする。

惨月白露 > 「仲良くしてる人は結構いるんだけどね、
 お友達って、あんまり出来た事ないんだ。
 友達が沢山居たら、特別講習なんて受けにこないで遊びに行くでしょ。
 学生の本分は勉強、なんて、酸っぱいブドウだよ。」

『ちはやさんと一緒だよ』と笑うと、
友達になりましょうという言葉に吹き出す。

「友達って、そうやってなろうって言ってなるものじゃなくない?
 ちはやさん、やっぱりちょっと変な子だよね。」

『ま、よろしくね。』と笑う。

「一番の友達だから、相手も一番の友達って思ってくれてる、か。
 ……ちはやさん、案外強気なんだね。

 それなら、『普通』なんじゃないかな。
 そういう気持ちが行動に現れるのは、良い事だと思う。
 それはきっと、ビー君にも伝わってるよ。」

ちはやの言葉に、そっと瞳を伏せる。
『やっぱり、こいつらと俺は生きている世界が違うな。』

―――そう、感じながら。

「そっか、ちはやさんはいい人だね。本当に、心の底から。」

ゆっくりと離れると、再び机に寄りかかるように座った。

「ちはやさんはさ、大事にしなよ、大切な時に、大切な人と、一回だけ出来るのは、
 本当に幸せな事だと思うし、ちはやさんのソレは、
 練習も本番も、全部全部、ビー君にとっておいてあげなよ。
 ……私には、そんな大切なモノは、確かにもったいない。
 
 今までの話を聞くに、ちはやさんにとってその大切な相手って、ビー君なんでしょ?」

神宮司ちはや > 「そ、そうかな……変ですか?
 えへへ、よく言われます……、はい改めてよろしくお願いいします。シロちゃんさん。
 ぼく、神宮司ちはやです。一年の式典委員会所属です。」

そう言えばちゃんと名乗っていなかったことを思い出して、
自己紹介しておく。
相手のフルネームも聞いていなくて、シロちゃんさんとしか言ってなかったし、なんだか失礼だったかなと頭を掻いて。

「こういうの、強気っていうんでしょうか……?
 わかんないですけど、……うん。トリクシーくんにも伝わってるといいなって、いつも思ってます。」

わかってもらえたことが嬉しそうではにかんで笑う。
相手の身が自分から離れると、そっと両手を下ろした。
ただ未だに白露から感じる寂しさを拭えず、じっと心配そうに相手を見る。

「……シロちゃん、さん……。」

うまく言えない様子で、言葉を選ぶようにゆっくりと口に出す。

「あの、ぼく幸せなことに大切な人、いっぱいいるんです。
 もちろん、トリクシーくんもその中の一人。
 あ、でもキスをしたいとかそういうんじゃなくて、大切なことを大切なときに一緒に分かち合いたい人が
 たくさん、たくさんいるっていうか……ええっと、うーんと……

 ……シロちゃんさん……もったいなくないです!
 全然、もったいなくなんかないんです!
 こんなぼくでもたくさんここでそんな大切な人達に出会えたから!
 全然もったいなくないです!ぼくのほうがもったいないんです!

 だから、そんな悲しいこと、いっちゃ駄目です……」

それから今度は自分から白露に近づくとやや強引に相手の手を両手で取り

「き、キスはできないけど握手とか、手をつなぐとかそういうのなら出来ます……」

そうして大切なモノを包むように自分の細く白い手指で相手の手を握った。

惨月白露 > 「白露小百合、シロちゃんって呼んでくれればいいよ。
 ……あと、『さん』はいらないからね。なんならシロだけでもいいし。」

『ずっと思ってたけどさ』と頬を掻き。

「大切な人は沢山いる、か。
 はは、それ、ビー君聞いたら昨日みたく怒るんじゃない?
 ……もしかしたら、そんな所が好きなのかもしれないけどさ。

 本当、羨ましいな、大切な人が沢山居て、
 それで、大切な人から愛されてる。羨ましいよ。」

そう言って、自嘲するような笑みを零す。
手を握られれば、一瞬戸惑うような表情を見せ、
やがて、それを振り払った。

「―――触るなッ!!!」

一瞬大声を上げ、やがて、
『あ、ごめん……。』と小さく声を漏らす。

「―――触ると、ちはやさんまで汚れるよ。
 こんな手、ちはやさんは握るべきじゃない。
 その手は、大切な人の手を握って、
 これからは命を助けるのにも使う、大事な手なんでしょ。」

神宮司ちはや > 「ううーんでも年上だし……えっとじゃあシロさん、で」

やや不慣れなようにそう呼んでみる。
大切な人がたくさんいることは、一応ビアトリクスへも話しているけれど確かに何故か不機嫌になりそうな気はする。
けれどきっと彼も好きになれる人達ばかりだから、出来れば仲良くして欲しいと思うのが本音だ。

「うーん、言われてみればそうかもですね。
 でも……トリクシーくん、気難しいけれど優しいし本当は多くから愛される人だから、
 ぼくのことのように、みんなのことも大切にしてほしいと、ぼくは思っています。」

とった手を振り払われる。
一瞬何が起こったのかわからない表情で呆けるも
慌てて手を引っ込めて頭を下げた。

「ご、ごめんなさい!急に手なんかとっちゃったらびっくりしますよね!
 本当に、ごめんなさい……」

残念そうな、それよりも相手を不用意に触ったことで傷つけてしまったことをひどく悔やむ表情。
俯いてじっと後ろ手に手を隠す。
白露の言葉に、だが最後まで首を振って反論する。

「シロさんは汚くなんかないです。
 それにぼくたち友達になりました、今からシロさんもぼくの大切な人達の一人です……。
 だから、ぼくが握るべき相手の手だし、助けるべき友達です。

 ……違うでしょうか……?

 嫌だって言われたらショックだけど、ぼくの手はぼくのために、大切な人達を助けるために使います……。」

惨月白露 > 必死に謝るちはやに、罪悪感に彩られた表情を向ける。

「いや、いいよ、悪いのはこっちだから。
 ちはやさんに手を握って貰えたら、きっと、皆嬉しいと思う。
 私も……シロも嬉しかったから、だからさ、そんな顔しないでよ。」

そう口ではいいつつも、
身体はじりじりと後ろに下がり、
窓際の壁に、寄りかかり、俯く。

「大切な人って言ってくれたのも、
 手を握ってくれたのも嬉しいよ。

 ―――でも、ごめん。
 この手を握ってもらうわけにはいかない。
 起こしてくれてありがとう、今日はもう遅いからさ、帰りなよ。
 
 ………私はまだ少し、用事があるから。」

ぎりっと、手を握りしめる。
その手を再びちはやに握られないように。

神宮司ちはや > 白露の表情に自分が本当に相手を傷つけてしまったことを悟る。
そのままどんな言葉を紡いでも今は相手に伝わることがないと思うと、青白い顔のまま俯いて。

そっと荷物を持つと、椅子から立ち上がった。
深々と頭を下げ、できるだけ相手から自分の表情を見られないような角度で身体を出入口に向ける。

「シロさん、本当にごめんなさい。
 ……ぼく、友達なのに傷つけちゃいました。

 もう少し、よく考えてから言葉にしてみます。
 また、シロさんと仲良くお話出来たら、嬉しいです。」

そう言うと涙のにじむ目元を気取られないうちにさっと小走りで教室を出て行った。
また、話せる機会なんて気まずくてないかもしれないけど
できたらまた会いたい。そう思いながら。廊下をパタパタと駆け去っていった。

ご案内:「教室」から神宮司ちはやさんが去りました。
惨月白露 >  
ちはやが走り去ると、ギリッと歯を噛む。

「クソッ―――!!」

『ガン―――ッ!!!』と机を蹴ると、鞄を乱暴に掴み、教室を出て行った。

ご案内:「教室」から惨月白露さんが去りました。
ご案内:「屋上」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
谷蜂 檻葉 > 強く大地を照らす太陽 ―――それが地平線の近くまで降りてきて、風から熱が抜けてきた頃合いに。

「暑い……」

なら何故来たのだろうか。
そう疑問に思われるようなことを呟きながら少女が姿を現した。


何も持たずに、手ぶらで。
授業終わりだからということでもなく、ただ彼女は屋上から町並みを見下ろすためだけに来ていた。

谷蜂 檻葉 > 強いて、彼女の思いを挙げるのだとすれば。


(……なんだろうなぁ……)


ずっと、モヤモヤと燻る言葉にならない様なストレスと向き合うために一人で居たかった。
というぐらいだろうか。

ちょっとした憩いの場として設計された屋上も、
放課後というのにも遅い時間ではその目的を果たせる程度には人気がなかった。



「はぁー……」


ため息をつきながら、ベンチに腰を下ろして遠くを見つめる。

谷蜂 檻葉 > 未だ生ぬるい風と消えない太陽光の中で、だらしなく伸びるようにしてぐるぐると考えを巡らせる。

自分は何をしたいのか。
自分は何をしたかったのか。

この島に来て2年。ただ目前のことをやるだけの期間が終わったからこその思いだった。

先を見つめて、過去の自分を捨て去るべきなのか。
過去を精算して、未来の自分を支えるべきなのか。

どちらも行うべきで、どちらも実行する勇気が沸かなかった。


「誰かに相談、とか?」


呟きながら自分で内心却下する。
そんな個人的な相談をするような相手も、いないのだから。

谷蜂 檻葉 > (お友達を作りましょう。)

「……ふふっ」


自分に必要なことが、あまりにも稚拙な言葉で出てきて笑ってしまう。
自分を縛る鎖を断ち切るにせよ、すり抜けるにせよ。 今の自分では多分無理なんだろう。

無理なんだからしょうがないだろう。

うん、いっそそう割り切ってしまえばいい。

それで、無理じゃなくなった時は――――

谷蜂 檻葉 > 「その時は、その時ね」

少しだけ晴れやかな表情を見せて、また吹き付けてきたぬるい風に風をしかめた後。
屋上を去っていった。

ご案内:「屋上」から谷蜂 檻葉さんが去りました。