2015/08/14 のログ
■蓋盛 椎月 > 「…………。」
相槌を打つこともせず、黙したまま耳を傾ける。
朽木の言葉が終わって、少しして、口を開く。
「――つまりそれは、
あたしの信じる《均衡》に委ねるってことでいいのかい」
開き切らない蓋盛の瞳が、朽木を見据える。
「――構わないよ。それもあたしの務めだ。
だが…………」
表情を動かさず、ふう、と息を吐く。
「必ずそうできる、とは約束できない。
きみの望む逸脱が――あたしにとって、魅力的に映ってしまったなら、その時は」
目を伏せる。
「……あり得ない仮定だけどね」
■朽木 次善 > 「ええ。
ただ半分は『そう』で、きっと半分は『逆』なんだと思います。
俺は……もう知ってしまいましたから。
自分がただの弱者で、蹲っていていい人間じゃない、って」
確かめるように、胸を手で探る。
そこには今も鼓動があり、そして『脚本家』を初めて目の当たりにしたあの日から。
最後の瞬間、突風に煽られて消えてしまったと思っていた炎が。その熱が。
今も、僅かな火種として残っていることを、感じる。
ここまで疲弊して。
失敗をした後でも、自分は、自分の胸の中の熱が感じられることを。
少しだけ、申し訳ないが、嬉しく思ってしまう。
「俺も、<<均衡>>に正されたいとそう思っているわけじゃなく、
ただ、きっと、もう立ち止まれない気がするので。
出来れば、本当に逸脱したときに、後ろからその『引き金』を引く人は。
自分の信頼出来る人であって欲しいと、そう思うんです。
もし、魅力的に……正しいと思って貰ったら、それは、
それで、俺としては凄く嬉しいし、頼もしいと思うんですけどね。
ありえない、仮定、ですけど。
すいません。
変なことを頼んでしまって。
でも、どうか、お願いします。
――俺には。
自分で、自分の眉間を撃ちぬく勇気だけは、ないみたいですから」
困ったように。
僅かな寂寥に、胸を締め付けられながら。
恩師に、そう告げた。
■蓋盛 椎月 > 「きみは強くなったな」
見据えることをやめて、体ごと視線を背ける。首を天井に向けた。
「きみの戦いは悲劇的な結末を迎えた。
――けれど受け取れたものもあった。
それは大事にするがいいよ。
生者は死者を糧にしてでも傲慢に生き延びるしかないんだから。
それがこの世に産まれてから抱く罪の形なんだ」
朽木の言葉に、痛がるように顔をしかめた。
それは彼の角度からは見えない。
「信頼してくれて、ありがとう。
きみのような一生懸命なやつに信じてもらえるから――
あたしは教師でいられるんだ」
穏やかな声色でそう言って、背を向けたまま席を立つ。
「じゃあ、またね。息災で」
一度振り向いて微笑み、保健室を去る。
ご案内:「保健室」から蓋盛 椎月さんが去りました。
■朽木 次善 > 「ええ、また……。
ありがとうございました……」
蓋盛教諭を見送り、深呼吸をした。
そして、そのまま後ろに倒れる。
他人顔のベッドが、雑な自分の身体を優しく受け止める。
こうやって。
きっと、自分はまだ、他人に迷惑をかけながらでなければ。
前に進む事はできない。
でも。
自分はこうやってでも、進んでいかなくてはいけない。
でなければ――それこそ、死んでいった者達が、納得しない。
顔を腕で覆い。
そして、最後に見た『脚本家』の顔を思い出す。
その表情がまだ胸の中に傷跡として焼き付いている間は。
――自分は、一歩ずつでも前に進めるような気がした。
ご案内:「保健室」から朽木 次善さんが去りました。
ご案内:「屋上」に四十万 静歌さんが現れました。
■四十万 静歌 > ――終わったなぁ。
空を見上げながら、
ぼんやりと昨日までの事を考える。
なんていうか、
夏休みが飛んだし、
いつもの黒マントはとりにいくけど、
多分暫くは帰ってこないだろうし。
色々あるけれど――
「――うん、おわった。かな。」
――ひとまずの結末は迎えたのだ。
達成感に満ちてこう、感傷に浸りたくなっても仕方ないと思う
■四十万 静歌 > そっと、傷があった右肩にふれる。
治して貰ったお陰で、
多少の違和感はあるものの、
痛みはないし、
違和感そのものも時間が解決してくれるだろう。
「――」
だが――
触れると思うのだ。
本当に、私は臆病で浅ましい。
と。
少し自嘲めいた笑みを浮かべる。
■四十万 静歌 > 「……」
全ては終わったことだ、と首をふって、
ゆっくりとベンチに座って、
うとうとし始めるだろう。
■四十万 静歌 > この後は特に予定も無く、
疲れが一気に吹き出た、
後はゆっくりと眠りに……
「落ちてどうするんですか……!」
ぱちんと頬を叩いて覚醒する。
いや、こんな炎天下で寝たら、
陽気にあてられて死にかねない。
■四十万 静歌 > 「涼みに行くとしましょう」
とふらついた足取りでさっていくのである
ご案内:「屋上」から四十万 静歌さんが去りました。