2016/05/05 のログ
ご案内:「ロビー」にルギウスさんが現れました。
■伊都波 凛霞 > 「まったく、今日は講義はそこそこで色々考えなきゃなのにぃ」
心配されるのは嬉しい
友人たちとの会話も大事
でも今日は、やりたいことがあった
バッグからぱさっと取り出したのは受講申請の用紙
選択で何の講義とるか決まらず悩んでいたのが、
先日のそれで決まったのだ
「(あの場で、私は何にもできなかった。
成績優秀だって、神童とか言われたって全然無力。人間ひとり助けられなかった)」
あの場で、謎の仮面の人物と風紀委員達が現れなければ…きっと今頃のんびり学校にいなかった
それだけで済めばきっと良いほう、最悪は、多分───
「…うん、よしっ」
開いたパンフレットは、魔術専攻をまとめたもの
今まで足を踏み入れていない学問の領域
あの場で仮面の人がやろうとしていたのは、魔術的な治療方法
咄嗟の場で医療器具なく、そういった異能を有していない場合、
応用的・緊急的にできることがあるとすれば、それは魔術だという結論だった
■ルギウス > 音も無くスーッと歩いてくる司祭服の男性。
学生服じゃないので生徒とは見間違えられる事はないだろうが。
ふと視線を向ければパンフレットを見る生徒の姿が見えた。
「何が良しなのでしょう?」
ついつい、声をかけてしまった。
まぁこれも暇つぶしにはなるだろう。余興として会話を楽しむとしよう。
■伊都波 凛霞 > 「え? あっ」
集中してて近くに寄られるまで気づかなかった
顔を上げれば…はて、どこかで見たようなと思考を巡らせる
「えーと、確か。先生、なんとか先生!」
確か新任の先生の中にいた気がする、と頭のなかで一致したらしく、ぽんと手を打つ
■ルギウス > 「ええ、名前については接点がなければそんなものでしょう。
それで何がよしなのです?
これから初級魔術でも習いにいくのですか?」
まぁ、パンフレット見れば一目瞭然であるし。
この生徒からは、魔術に関する気配がしない。
隠しているのであれば、それはそれで不自然な対応にもならないだろう。
■伊都波 凛霞 > 「いやーごめんなさい。
講義を受けた先生の名前はちゃんと覚えてるんですけどぉ」
罰が悪そうに頬をぽりぽり
「そんなところです。
去年は異能の開発コースを受けていたので縁がなかったんですけど、
今学期から魔術学のほうにも少し足を伸ばしてみようかなーって…」
まずは基礎魔術理論、そこから派生する学問が色々とある
「ただまぁ基礎は当然として、応用の講義はどれを受けようかなー…って、
たくさんありすぎて悩むんですよね、講義日程も重ならないの考えないとですし!」
うーんむずかしい!と腕を組む
■ルギウス > 「安心してください。教師側も受け持った生徒以外の顔と名前が一致する事の方が少ないものです」
ははは と笑う。
「好奇心旺盛なのは良いことですねぇ。
今から魔術を志すという事は、何らかの動機があるのでしょう。
その動機をどのように満たすのかを優先した方がモチベーションは維持できるでしょうねぇ。
……ただし」
言葉を区切る。
「早急に技術だけが欲しい場合は、いくらでも抜け道はあるものですが」
■伊都波 凛霞 > 「というわけで是非お名前をお教えて願えないでしょーか、なんとかせんせい。
私は伊都波 凛霞(いとわ りんか)、二年生です」
にっこりと笑って自己紹介
相談?にのってもらった先生の名前を知らないのも失礼だ
「動機はもちろんありますよー?
まぁそれはそれとして実は勉強も嫌いではないので、
モチベーションに関しては大丈夫きっと多分めいびー?そんな感じですね!」
あははとこちらも笑いを返して
続く言葉には うん? と首を傾げる
「抜け道?そんなのあるんですかぁ?」
■ルギウス > 「本名はやたらと長ったらしいのでルギウスで結構ですよ。
先生という敬称もなんならいりません」
こちらは最初からずーっと笑顔である。
ちらとも表情は変わらない。
「魔術とは体系化された技術です。
技術であるなら、理屈を理解せずとも使用できるものもある……という事ですよ。
炊飯器の理屈は知らなくてもご飯を炊けるでしょう?」
■伊都波 凛霞 > 「そうなんですか?
でもそう言われるとどれだけ長い名前か気になんですけどっ」
とりあえずルギウス先生ルギウス先生、と復唱し、よし覚えた、とまた笑顔
いろんな笑顔を見せる少女だという印象を与えるかもしれない
「ははーなるほど…」
そういえば路地裏に現れた彼も何か札のような道具を使っていたっけ…と思い出す
「なるほどなー、でも炊飯器って結構お高いし、
いざサバイバル!みたいなことになったらやっぱり飯盒炊きを覚えておくとカッコイイですよねー。
何より理屈は知っておいても損はなさそうです。うん」
どのみち選択で受ける講義をどれにしようか悩んでいたところですしねーふふふ、とみたび笑うのだった
■ルギウス > ふむ と 呟いてから懐中時計を取り出した。
「時間はまだあるようですねぇ。
さて、ここで問題が出るわけですが……魔術の基礎講座、アレは本当に退屈なものでしてね。
しかも、魔術は系統により同一効果を別プロセスで行うわけですが……。
ここで適正を間違えると、非常に遠回りする破目に陥ります」
■伊都波 凛霞 > 「あのぉー」
受講申請用紙から視線を戻して、じーっと先生を見上げる
「つまり、何が言いたいんです?ルギウス先生」
そう言って再び首をかしげる
魔術を行使するのにもっと効率の良い方法がある、というのはわかる
しかし学問として魔術を習熟する以上基礎は当然学ぶべきものでもあるのだ
「まるで私が魔術を学ぶ上で失敗する可能性を出して、何かに誘導してるように聞こえちゃってるんですけど!
……深読みしすぎ?かな?あはは」
■ルギウス > 「曲がりなりにも魔術を扱える先達としての忠告ですよ」
少なくとも、表向きは。
「やりたい事があり、その努力を為すのはよろしいのですがね。
魔術で出来ることは大抵は科学でも同じ事ができます。
加えて言いますと、個人でできる範疇でしたら失敗した時のリスクは現状では魔術の方が大きい可能性がある。
なにぶん、以前にそういう方を何人も見てきたのでねぇ。
お節介というやつです」
なるほど、神童といわれるだけの子だ と内心で考える。
これ以上の誘導は勘繰られる可能性が高い。
心配して信用を得る事にシフトする。
■伊都波 凛霞 > 「いやーーーもーーー冗談に決まってるじゃないですかー真面目なんだからー先生ー!」
ぺちぺちと自分のふとももを叩いて笑いつつ
「先生の言うことはよくわかるんですよ。
でも科学や道具って、その時手にしてなかったら使えないんですよね。
日常生活の中で、それこそ異能の力みたいに…身につけて、自然に使えるような。
私が習得したいのはそんな魔術なんです。だから、基礎からみっちりやらないと!」
ぐっと胸の前で握りこぶしをつくる
向かう姿勢は真っ当、才気を感じさせながら努力を惜しむことなくできる人間
周囲からの評価が総じて高いのはおそらくそういうところが起因しているのだろう
「にしても先生は魔術方面の講師だったんですね?
はー、なるほどーーーー、いや確かに言われてみればそうとしか見えない感じ……」
■ルギウス > 「いいえ、担当している講義は 宗教学 ですよ。
まぁ広く浅く宗教についてを学ぶ講義です。
魔術を扱うのは趣味が高じた部分が大きいですかねえ」
言いながら、指先に光を灯してそれをふわふわゆらゆらと飛ばしてみせる。
当然のように無詠唱。
「魔術は技術でもありますが、素養もかなり幅を利かせる分野でもあります。
基礎理論ももちろんですが自己にあった分野を探すのが最初でしょう。
結果として、それが貴女の望む道と違える事もありますが……まぁ、それは今から言っても詮無き事でしょう。
場合によっては、神に力を借りる事も視野に入れることをお勧めしますよ」
■伊都波 凛霞 > 「あ、そうなんですか?なんだ…」
でも言われてみれば司祭のような服を着ているし、納得である
ただ全体的に見ていかにも怪しい…という言葉はちゃんと飲み込んで、
指先から飛ぶ光を見ると、おぉーっと感嘆の声をあげる
「素養、素養かー。向き不向きがはっきりしてるって感じのやつですよねー。
そういえば入学した時に適正試験を受けたような…結果どうだったっけ…。
家帰ったら探さなきゃ」
どこにしまったっけなー母様捨ててないといいけど、思いつつ…
「ふふ、色々なご指導ありがとうございます。良い先生ですね、ルギウス先生!」
ちなみに入学時に受けた魔術の素養テストでは、全てにおいて最高の結果を残していた
ただ魔術以外、他の項目も全てが最高だったのでとくに印象に残っていない、という状態だったである
■ルギウス > 「さて、どうでしょうかね……。
今日はたまたま、そういう星回りだったのでしょう」
張り付いたような変わらない笑顔のままで返事を返す。
「今後も簡単な相談でよろしければ承りますよ。
講義がないときは、学生街でカウンセラーの真似事もやらさせていただいてますのでお気軽に」
生憎と名刺もチラシもありませんが、と付け加え。
「では、私はこれで。
申し訳ありませんが、そろそろ次の講義がありましてね」
舞台上の役者のような大仰な一礼をしてから、背を向けて歩き出す。
ご案内:「ロビー」からルギウスさんが去りました。
■伊都波 凛霞 > 「はーい、お疲れ様です、先生!」
びしっ!と敬礼の真似事みたいなことをして見送る凛霞
「……いやー、変な先生だったねー。いい先生だけど変だったねー…」
なんだろう
向けられた言葉は全部理に適っていたのに
どこか鵜呑みにしてはいけないような
「んんん…」
ぺちぺちっと自分の両頬を貼る
「ダメダメ。
人を見かけで判断しちゃいけないのよ、私!!」
■伊都波 凛霞 > 「……ん、でも方向性は決まったかな」
忠告はちゃんと胸に刻んでおこう
そう決めて、取り出したパンフレットや書類を仕舞ってゆく
「っん~~~~~~~!」
大きく背伸び、ちらりと時計を見れば、講義が始まっている時間だ
自分はこの時間に受講している講義がないのでちょっとの空きがある
「お散歩でもしてこよっかなぁ」
家に帰って、魔術素養の結果とにらめっこして、
今日も色々やることがあるなぁ、と
充実した面持ちでロビーを後にするのであった
ご案内:「ロビー」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「教室」に士尺 流雲齋さんが現れました。
■士尺 流雲齋 > 爽やかな空。柔らかな日差し。
あけ放たれた窓から、カーテンを揺らして五月の風が入り込む。
教室には十数名の生徒。めいめいがペンを動かす。
「おうおう、後ろのお主。眠たそうじゃのう。
顔洗って来てみるかの。待っとるから、行ってきてもいいんじゃよ」
顔を赤くして席を立ち、謝りながら廊下へ出ていく生徒。
ニコニコと笑いながら教壇に立つのは、がっしりとした樫の杖に寄り掛かった小柄な老人である。
地味な色の和服を纏い、痩せた手に教本を支える。
「……で、まあ。
今回は魔法剣について、ざっくばらんと説明するんじゃよ。
色々解釈もあろうが、一つの説として聞いておくれ」
顔拭きもそこそこに、ぱたぱたと駆け戻ってきた生徒が席についたのを見計らって、老人は話を戻した。
ご案内:「教室」に陽実 凛さんが現れました。
■陽実 凛 > 廊下を歩いていると、授業中の教室から出て行った生徒とすれ違う。
「うん?出入り自由な教室です?」
授業を選択していない編入生としては、そう言う教室はありがたーいものなので、開いた扉からひょっこり顔を覗かせ、教壇の先生らしき人をじっと見ます。
そして鞄ごそごそと探って一枚のカンペの様な物を取り出し
『編入生です、授業選択の為見学できる授業を探しています』
と書かれたそれを頭の上に高く掲げて示しました。
■士尺 流雲齋 > 教本をめくり、『概要』のページを開くよう指示する。
「“魔法剣”
一言でいうならば、剣術と魔法の融合、という感じかの。
とはいえ、世の中には槍を使ったり、棍を使ったり、盾を使ったり。はたまた人形。楽器、なんて変わり種もあるそうじゃ。
そうなると、……武芸全般と魔法の融合、と訂正したほうがいいと儂ゃ思うんじゃが……ぬ」
杖を教卓の脇に立てかけ、身振り手振りで様々な武器のかたちをつくってみせる。
と、教室の小窓に人影を発見する。
この時期ならば、お試し授業というか、飛び入り可能な教室も少なくない。小窓は、授業風景がよく見えるよう、配置されているのだ。
老人が見ていると、その見慣れぬ生徒は、鞄からボードのようなものを取り出し、掲げている。
「ふうむ……おう、編入生、見学希望とな。
よいよい、席は空いとるんじゃ、好きなように座るがよい。」
人が増えるのは歓迎である。
老人教師はふっと微笑み、おいでおいでと皺くちゃの手を招く。
そう厚く無い窓だが、声は届くだろうか。
■陽実 凛 > 手招きしてもらって、大きくペコリと頭を下げて、口の形だけ動かして『ありがとうございます』、とお礼の言葉。
鞄にカンペいそいそと仕舞って、他の生徒からは離れた端っこ、中段位の席へと足音を立てずに移動、着席。
移動中に女子用制服にジーパンって、と奇異な視線で見られるやも知れないけれど、他の生徒の視線は気にしないけどあまり近づかない素振り。
鞄からノートとペンを取り出して、授業は真面目に聞く構えを見せました。
言葉で挨拶しないのは私語もしないように、と言うつもりです。本人は。
■士尺 流雲齋 > 教室の中は様々な服装の生徒が座っている。
今さら服装などでとやかくいう者はないだろうが、
……生徒の何人かを見ると、鞄や手提げなどの荷物に混じって、細長い袋のようなものや、平たい影が見えるだろうか。
一見すると物々しい雰囲気ではあるが、老人はとみると、まったくの丸腰である。いや、杖があるからそうでもないか。
「なんじゃ?……あ、り、が、と、う、ご、ざ、い、ま、す?
ほっほ、そこまで気を使ってもらわなくても結構じゃよ。
じゃが、ありがとうの」
静かに、口の動きだけでの礼を言われたことに気付くと、老人は眉をハの字に曲げて困ったように笑い、それから、飛び入りじゃろうから、と呟くと。
下駄をからん、ころんと鳴らしながら歩き、端列の半ば、ちょうど少女が座ったところに1冊の教本をポンと載せて、ページを『概要』まで開いた。
「ま、最初じゃから、気楽にの」
そうとだけ、そっと囁く。
■陽実 凛 > ざっと移動中に目で捉えられた分だけは、備えに気付く。
その際にこの教室で実技が行われそうか、スペースが取ってあるかを見て判断。
視線の走らせ方が端的で速い。
「はい、……。」
喋っても大丈夫そう、だけれど。
教本の概要を読み込んで、ノートに授業名と題だけを書き写し、
「努力は、してみます。」
困ったような声色で、表情は変わらず、囁きを返しました。
気楽に受ける授業内容ではない、と思ったので。
■士尺 流雲齋 > 老人は笑ってくるりと振り返ると、からんころんと教卓まで戻っていった。
そうして元の位置に立つと、教本を眺め、呟く。
「はて……どこまで話したかのう……」
ぐるりと生徒たちの顔をひとりひとり見回し、次いで天井を眺める。
それから、窓の外から空を眺め……不意に、おうと小さく声を上げた。
やっと思い出したようだ。
「まだ、最初の方じゃな。
“魔法剣”
武芸全般と魔法の融合、というところまでじゃったか。楽器を使った魔法も一部入るぞい。
それから、これは補足になるが、武具としての“魔法剣”もあるかのう。武器自体が魔法を発する、アレじゃ。まあ、これは魔道具とかそのあたりの方が詳しいんじゃないかの?
さて。ここにいるお主らの何割かは、既になんらかの武術を学び、その後この科目を選択した者も少なくないじゃろう。
その判断は間違ってはおらぬ。なぜなら魔法剣とは、その芯となる武芸がなければ成り立たぬものじゃからの。
まだこれからというお主ら。今からでも遅くはないぞい、当分はゆっくりとした歩みでゆくから、合間合間に武術や音楽などの科目を入れておくんじゃよ」
■陽実 凛 > 手袋を嵌めなおし、ペンを握り。
老教師が見回す中、外で授業内容まで聞こえてませんでした、の意味で首を軽く左右に振り。
窓の外につられ気味に視線を向けて、すっと戻す。
そして、話の内容を書き取る癖をつけようとペンを動かし始める。
『主 武術武芸+副 魔法+? ?→魔法剣
及び楽器を使用する魔法との併用
技術とは別 魔剣、魔導具。
魔楽器による旋律とリズムと動きの幻惑?
聞ける付加魔術?』
自分なりの予想を付け加えているが、それはそれとして字が汚い。
内容と思考を手元も見ないで手早く書いたせいである。
ご案内:「教室」にセシルさんが現れました。
■士尺 流雲齋 > 老人の話は続く。
といっても、教本の補足や、固い話をかみ砕いていることがほとんど。講義に出ず教本を読んだだけでは、けっしてわからない仕組みである。
「魔法剣、ときくと、付加とどう違うのかとか、普通に魔法使ったほうがいいんじゃないかとか、そういう意見もよく聞くのう。
付加魔術との違いについては、これが難しい話になるんじゃが。
……正直なところ、同じ目的に達するための手段が違うだけじゃな。
ただ魔法剣の場合は、あくまで武芸の延長上という考え方が多いの。
後者については、これもまあ、よく聞かれるんじゃがの。
道具に宿している分だけ、普通に術を放つより、魔力の燃費がよくなる、という研究結果が出ておる。
人によっては、命中精度が上がるような気がする、というのも聞くのう。
もちろん、どう考えるかはお主らの自由じゃよ」
少々ボケが入り老いてはいるが朗々とした声。杖をつく手は震えをみせず、背筋もしゃんとしている。
「それで、当面の予定じゃ。
座学で基本的なことをやって、それから実習をやるから、そうじゃな……
夏が始まる前には演習場へ通うことになるじゃろう。
今すぐやらぬのはの、まだお主らの術系統を調べていないからじゃよ。
魔法剣というのは個人の素養が大きく現れるものでの、得意な属性やら、戦法やら、人によって違う。
それらは実際に体を動かしながらでないと、わからぬじゃろうからの」
そう言って一息つくと、時間を確認するように、壁にかかっている時計を見上げた。
■セシル > 教室のやや後ろの方の席で、熱心に説明を聞いている細身の人影。
後ろの方にいるのはやる気がないから、受け身だからというわけではなく、他の生徒の聴講の邪魔にならないようにするためだ。
女子生徒はもちろん、男子生徒ですら、セシルより背が低い者がこの学園では珍しくない。
(…なるほど、この世界では「音楽魔術」の分野も魔法剣と同じ分類と看做すのだな)
セシルが元の世界で学んでいた士官学校には、軍楽隊に入るための音楽科も存在しており、そのカリキュラムの中には、音楽に乗せて戦場で有利な効果を発揮することの出来る「音楽魔術」も含まれているとのことだった。
無論、魔術の適正は様々なため「音楽魔術」の行使の仕方も人による。
そのため、セシルの世界の軍楽隊は、それぞれの部隊の「音楽魔術」のあり方で編成が分かれているのだった。
(…ふむ、まずは術系統の確認になるのか…順当であろうな)
授業の説明に頷き…腰に差した二振りの剣に、気配だけで軽く注意を投げた。
■陽実 凛 > 見学と言う割に、カリカリとノートに書き込む音だけが話の内容に応じて早くなったり、たまに止まったりする。
『魔法剣とは、武芸の延長上であり、魔力の燃費が良くなる
ぎもん点 素材による? 武術にある気のがい念とのゆうごうの有無 あらかじめ魔法を宿した魔法具のみ?』
ひっかかった疑問点を追加して、少しの間思案する。
当面の予定についてを聞き、自分の戦法、腕の披露、魔法適正の確認。
この辺りでやっと他の生徒への意識を大きく向ける事となる。
手っ取り早い方法として、大きく息を吸ってその数秒後。
後方に、少し背中越しに闘気を放って反応を探った。
■士尺 流雲齋 > これは一例なんじゃがな、と前置きして。
背後にあったホワイトボードに、黒のマーカーでキュッキュと
何やら書き連ねていく。
「……もう卒業したんじゃがの、専用の注射器に回復魔法を詰めて使っていた子がおった。
魔法剣というとどうしても、攻撃的な面が目立つが、応用次第でいろいろ使えるという事じゃな」
“これから確認すること”
・武術もしくは芸能の確認 (複数種類の使い手は別メニューなので必ず申し出ること)
・得意属性・苦手属性 (ただし属性魔法剣は一通り行う)
・魔力測定 (中間試験時に合わせてやる)
などと、老人は生徒たちに背を向け、大きな字でだいたいそのようなことを書いている。
■セシル > 教室で、不自然に大きくなされた呼吸と、研ぎすまされた集中。
その後小柄な少女から放たれた闘気に綺麗に対応するかのように、剣に向けていた意識を鋭くして、少女に向け直す。
(風紀委員の制服が分からんわけでもないだろうに…何のつもりだ?)
教室で暴れるつもりはないだろうし、その場合には教師も放置することはあり得ないだろうが、下半身に軽く力を入れて体勢は軽く整えておく。
そうして、少女の気配に意識を向けてから、改めて教師の説明を聞き、確認事項はメモをとった。
■陽実 凛 > 闘気を放って、後方の様子を聞く。
反応した所と立てた音の大きさ。
幅広く探るならこれ位で十分とある程度の方向を覚えて、ノートに書き込んだ。
次に、続く授業内容を書き込んで
『回復魔法を道具に込めてた治りょう用の応用
注射器やメスと言う道具のイメージの補助があるかも』
確認事項もメモに取り、
『生徒同士の場合の相手候補』
と、先ほどの反応の音のチェックの上に、書き加えた。
■士尺 流雲齋 > 流石に、いくらなんでも背中に目はついていない。もっと人が少ないか、もう少し近ければ大気の流れでどうにかわかるのだが。とはいえ、たとえ気づいてもこの老人、直接剣を交えぬ限りは、よほどのことがなければ止める気などない。
のんびりと振り返り、穏やかな顔を生徒たちに向ける。
「ここまでで、何か質問がある者はおるかのう。
……む、なんじゃ?」
遠慮がちに、前から2番目の席に座っていた一人の生徒が挙手したので、さっそくそちらに顔を向ける。
『魔術を使わない魔法剣があると聞いたんですけど』
その言葉に大きくひとつ、頷くと、確かに、と同意するように答えた。
「よくぞ聞いてくれたのう。
確かに、そういうものはある。例えば“氣”を纏わせる方法。
例えば、……異能を纏わせてみたり、とかの。これもある種の応用じゃ。現に儂は、魔法剣のほかに、異能を用いた剣もそれなりにやっておる。
詳しくやる機会もあるじゃろうが、それはまた今度、のう」
他に質問はないか、教室をゆっくり見回してみよう。