2016/05/26 のログ
ヨキ > 相手が困惑するのもお構いなしに、ぽんぽんと言葉を重ねてゆく。
親しみとも馴れ馴れしさとも取れる様子からして、
この教師が生徒からの好き嫌いの分かれるタイプであることは想像に難くない。

後ろ姿まで犬が二本足で歩いているような有様だったが、
よくよく見れば尻尾がなかった。服の下にでも隠しているのかも知れない。
彼女の呟きがヨキに届いてしまったかどうかは、判然としない。

そうして、数分ののち。

「――やあやあ、お待たせ。尋輪君」

ヨキが連れてきたのは、これまた個性的ななりをしたリザードマンの用務員だった。

彼を超えるほど背がでかく、頭のてっぺんが天井すれすれだ。
特注らしい大きな作業服姿は人間と変わらないが、鱗の生えた顔はどう見てもトカゲだった。

「済まんな、生徒手帳を入れたままらしくて」

ヨキの言葉に用務員は、『あいあい』とだみ声で答えた。
電子錠にカギを差し込み、あれこれと操作してゆく。
作業服の後ろ腰から床に垂れた太い尻尾が、ゆらゆらと揺れていた。

がちゃん、と音がすると同時、ロッカーの扉が開く。

『じゃあね、ヒロワさん、気を付けてね』

親しげに海月へ手を振って去ってゆくリザードマンは、指が三本きりだった。
用務員を見送ったのち、ヨキが持っていたやかんを肩に引っ掛けた。

「ほれ、という訳だ。中の荷物を確認するがよい」

尋輪海月 > 「……」

【間もなくして帰ってきた相手と、その相手が連れてきたのは、見上げても恐らく首の仰角の足りぬ――】

「あふ」

【ぽん。 空気か何かを溜め込んでいた容器の栓を抜いたような幻聴でもあったような。
許容量を超える情報量と、目の前のリザードマンの用務員が、なんでか異常な程器用に、結構近代的なデバイスを使って鍵のロックを解除してくれている光景が、彼女の頭の、なんかこう、抜けてはいけなさそうな栓を容易くふっ飛ばしたようだ。】

「……ぁ、あ、はい、ああ、どうも、ありがとうございま……良い一日を……へへぇ……」

【上の空に立ち去っていくリザードマンさん。
なんだ、見かけによらず結構良い人だ。尻尾ゆらゆらしてんの可愛いな。なんだあれ。
現を抜かしきったままに背中を見送って…………漸く、はっと。】

「……っぁあああ、そうだ?!手帳!手帳?!」

【開いたロッカーの中身は、こう、筆舌に尽くし難いごちゃごちゃ具合。貴方の案内の言葉の終わる終わらないのうちに中身をゴソゴソと漁り、】

「ぁあったー!!!」

【掲げるのは薄っぺらい手帳。だけどそれを掲げる様は何かこう鞭と拳銃を持った探検家の、宝物を見つけた時のような輝かしそうな何かを感じさせるもので、】

「あああ……ホント良かった……これ無かったら定期券の購入とか学食利用以前に退学になるところで……っ」

ヨキ > 「彼はシステム周りに大層詳しくてね、ヨキもいろいろ世話になってるんだ。
 両手の指が六本しかないから、人よりキーボードを叩くのに時間が掛かるとは言っていたが」

笑いながら話す語調は、至って日常会話そのものだった。
デジタルでハイテクなガジェットを使う異邦人はそう珍しくないのだろう。

散らかったロッカーには一瞬ぎょっとするも、
慣れっこで漁る様子から本人の荷物に相違ないと判断した。
やがて海月が無事に手帳をサルベージすると、ヨキもまた顔を明るませた。

「おお、あったか!良かった良かった。
 ははは、安心したよ。失くしたままで偽造とかに走られても困るでな」

喩えが極端だ。

「慣れないうちはいろいろ驚くこともあるだろうがな、
 日本とそう変わらんよ。困ったときは、学内の誰も彼もが親切だ」

言ってから、ふと海月を見遣る。

「日本から来た日本人、で合ってるよな?」

尋輪海月 > 「あ、あぁ……そう言えば、さっきのあのなんか、こう、凄い人……指があれだと大変そう……。……あれ」

【自然と応対してしまってから気付いた。非現実的なはずなのに、目の前のこの教師……教師?教授?兎も角、話していると、自然と会話が通ってしまった。驚け。気づけ。なんだおかしいだろう私。】

「……ぎっ、偽造なんてしたら一発でお縄じゃあないですか…!しませんよッ!」

【ぎょおっと驚いて、慌てて弁明。 ……やろうと思えば出来てしまうんだな。成る程。などとは欠片も思ってない。思ってないと顔に出ている。】

「な、慣れても驚かされそうな要素をちらほら見てるんですけど、え、ええと、はい、あ、ありがとうございます……っ」

【小さく頭を下げ、照れたような笑み。……が、次の問いかけに、一瞬凍りついた。】

「……に、日本人……ですよ、そら。どっからどー見ても……っ」

【……さり気なく、そちらと正対していた姿勢をやや横にして、視線を逸らしながら。】

「……あ、あぁ!そうだ!定期券買う為の通学証明証!あれも作らないと行けないんだった……!そ、そろそろ私はここらで失礼しますね……!?」

ヨキ > 言い切ってから不意に困惑する海月に、くすくすと小さく笑う。

「そう。これが常世島。見かけは最初驚くやも知れんが、案外『フツー』だよ」

偽造しないとの弁明には、よろしい、とばかり笑みを深めた。

「うむうむ、真っ当な学生生活を過ごすが賢明よ。
 悪さをすれば、鬼の公安風紀が黙っておらんでなあ」

脅すような言葉だが、顔は平然として笑っていた。
日本人、という言葉と共に目を逸らされると、一度瞬きして、だがそれ以上は詮索しなかった。

「いや、それは失敬した。
 ここは本当に人種の坩堝というやつで……日本人に見えてそうでない者も、少なくなくて。

 何か困ったことがあれば、このヨキをいつでも頼るがよい。
 ヨキはいつでも君ら生徒の味方なのでな」

辞去の言葉に頷き、微笑んで海月を見送る。
照明の光を受けた金色の瞳が、金箔でも散りばめたようにちらちらと輝いた。

尋輪海月 > 「……フツー、か。これが……」

【一瞬、素だったのかもしれなかった。がしり、と、髪を片手で少し掻き上げる動き。
横顔が、微かに救われたような笑顔でいたかもしれなかった、が、……はっとして。】

「あ、いや、す、すいません何でもないです!いや、あの、分かってます、そりゃあもう!ルール破っちゃ駄目ですよね、此処追い出されますもんねぇ!?」

【慌てて手を降ろしながらそうですそうですそのとおりですとややしつこい程の肯定を重ねて告げてくる。
何となく落ち着きのなさの目立つ少女だったが、最終的なその言葉に、一瞬、本当に一瞬だけ、心から驚いた、というような顔と、】

「……ぉ、う」

【……バレかねない、女性らしさの欠けるようで、微妙な口調の……】

「……有難う御座います。ヨキさん。……あの、今度、先生?…の講義か授業がある時、……見に行って、みますんで。……本当に、有難う御座います。」
【相手が果たしてそれをどう受け取るかは分からないけれども、自分なりに取り敢えずまずは、してもらったお礼をしたいのだった。 ぺこりと頭を下げてから、ゆっくり歩き出していく。 ……見えなくなる間際、もう一度だけ振り返り、今度は深々と頭を下げた後、……今度こそ、廊下を歩み、立ち去っていくのであった。】

ご案内:「職員室」から尋輪海月さんが去りました。
ヨキ > 「良いことをすればみな君を認めてくれるし、悪いことをすれば咎められる。
 この島の懐の広さは大したものさ。慣れればきっと、居心地もよくなる」

奇異にも映る様相のヨキが、日本人と大差ない身振りで答える。
海月に見え隠れする粗野さの片鱗にも、然して気にした風はない。

「どう致しまして。
 ……何、ヨキの授業を?ふふ、嬉しいな。

 ヨキがやっているのは、金工の実習と……あとは座学の講義もいくつか。
 比較的ウケがいいのは、『芸術文化論』かな。
 絵画でも映画でも漫画でもゲームでも、何でも引っ張り込んで勉強する科目さ。
 履修してなきゃ単位はやれんが、覗きに来てくれるのはいつでも歓迎するよ」

会釈を返して、海月を見送る。
遠目にヨキを見直せば、改めて背の高いことが判るだろう。
人波の中でも、それなりに目立つに違いない。
どことなく老けた言葉の選びに反して、職員室へ入ってゆく足取りは年相応に若かった。

ご案内:「職員室」からヨキさんが去りました。
ご案内:「保健室」に蓋盛さんが現れました。
蓋盛 > 回転椅子にぐったりと体重を預けている養護教諭の姿がある。
保健室の入り口の戸は半開きになったままだ。
首には冷たく濡れたタオルが巻いてあり、襟に染みを作っている。

「急にあたしの許可なく暑くなりやがって……。許せん。
 健康を司る養護教諭に気候ごときが何故逆らう?」

世迷い言を聞く相手がいるわけでもないのに垂れ流している。
この養護教諭のいつもの仕事の様子だった。

ご案内:「保健室」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > がらりと保健室の引き戸が開いて,生徒を抱えた白衣の男が姿を現す。
生徒を抱えて両手はふさがっているし、棒立ちの様子からは足で開けた形跡もない。
……だが、この保健室ではいつもの光景だろう。

「……健康を司る養護教諭なら,だらしなく愚痴る前に気温を司る文明の利器を活用したらどうだ?」

垂れ流された言葉が答えを求めたものではないと知りながら,白衣の男は苦笑交じりにそう呟く。
それから、“すまん、熱中症を出してしまった。”といつも通りに簡潔な状況報告。
そしていつも通りに,気を失っている生徒よりもこの白衣の男のほうが余程顔色が悪い。

蓋盛 > 「だってあたし一人しかいないのに冷房使ったら負けた気になりませんか?
 まだ五月だし、みたいな!」

戸の開く音に反応して発条仕掛けのように身を起こし、訪問者に応対する。
デスクに置いてあったリモコンを手に取って操作するとみるみるうちに涼しくなっていく。
やっぱり文明ってすごい。蓋盛はそう思った。

「獅南先生の授業で熱中症だけで済んでるなんて、
 むしろおとなしい方じゃありません?
 ……あ、そのへんにあるお茶飲んでてもいいですよ」

熱中症でダウンしている生徒を引き取って、てきぱきと処置していく。
切り替えは早い。

獅南蒼二 > 切り替えの早い応対も普段通りで,別段驚くこともない。

「まぁ、分からないでもないが…何と戦っているんだか。」

苦笑を浮かべつつ生徒を引き渡す。
小柄な少年で…獅南は“熱中症”と言ったが、どう見ても熱傷の痕がある。
きっと火炎魔術の実験でもしていたのだろう。
……尤も、しっかりと応急処置はしてあるので,丸投げと言うわけでもない。

「案外と見込みのある生徒なのだがな……お、なら、有難くいただこう。」

毒でも入ってるんじゃないだろうな?なんて冗談交じりに呟きつつ、お茶を注ぐ。
小さく息を吐いて、適当な椅子に腰を下ろし…お茶をくっと飲み干した。

蓋盛 > 「って全然おとなしくないわ……!」

処置の過程で服を脱がして熱傷に気づく。
いろいろといつもどおりだった。

「フフ。平凡な日常だって常に戦いの要素を入れていかないと人間ダメになっちゃいますよ。
 平和は好きだけど、退屈は嫌いなもんで」

あらかた済ませると、自身も獅南に向かい合うように座って
冷たい茶を口に含む。

「見込みがあるんなら、もっと丁重に扱ってやればどうです?
 獅南先生は、叩いて伸ばすタイプですか」

小首をかしげる。
窘めるような言葉ではあるが、それほど獅南の方針に興味があるようにも見えない。

獅南蒼二 > はっはっは。って感じで嗤っています。
教師としてどうかと思いますが、そういう人なので仕方ありません。

「戦いの要素を入れていかないと、か、同感だな。
 叩いて伸びる生徒ばかりではないが,誰でも失敗から学ぶものは多いだろう?
 見込みがあるということは、それだけ自分を過信しているということだ。」

無駄に高い鼻は圧し折ってやらなければな。なんて、嗤う。
きっと失敗することが分かっていて、やらせたのだろう。
成功することが分かり切った理科の実験なんて、退屈の極みだ。

「高い鼻を何度も圧し折られれば、将来は私のような謙虚な人間に育つというものだ。」

二杯目のお茶を勝手に注ぎながら、言ってのけるオッサン。

蓋盛 > 「獅南先生の鼻は随分と複雑骨折したまま育っちゃったみたいですね」

気がつけばすっかりこの男も保健室に慣れてしまった。
酒置き場と勘違いしている馴染みの教員までいるし、
どいつもこいつも保健室をなんだと思っているのだろうか、全く。

「おっしゃることは立派ですけども、本当は昔散々手ひどくやられたのを
 教員の立場でやり返してみたくなってるだけだったりはしないんです?
 負の連鎖、今こそ断ち切るべきなのでは?」

意地悪っぽく言って、傍らのおやつボックスから取り出したせんべいを齧る。
本気で進言しているわけではない。
自分の管轄以外のことは基本的にどうでもいいのだ。

獅南蒼二 > 「否定はできないな。」

なんて苦笑を浮かべつつ…煙草でも吸いかねない雰囲気だ。
でもさすがに最低限のモラルはあるらしく、ポケットの中で転がすにとどめておく。
なお、このロールをご覧の皆さまは、類は友を呼ぶ、という言葉があることを覚えておいてほしい。

「ほぉ、確かに一理あるな。だが、1つ肝心なことを忘れている。
 科学だろうと魔術だろうと、研究とは本質的には連鎖反応だ。
 医学の世界だって、不憫だと思いながらも延々動物実験を行ってきたじゃないか。」

本気でないことが分かっているからこそ、こちらも苦笑交じりに返す。
お互いに相手の領域には踏み込むことなく、聖域を犯すことなく。
あ、でもおせんべいは1枚奪う。
不思議な魔法で奪う。

蓋盛 > 「はは、語るに落ちてません?
 ま、教師生活楽しそうで、何よりです」

動物実験というあまりにあけすけなフレーズには流石に苦笑する。
こんな邪悪なトークを気軽に振られている自分がどう捉えられているかについては
あまり考えないことにした。
せんべいについては気にしない。どうせ余っているのだから勝手に持っていけば良い。

「それに、あまりそのことについてはとやかく言えないな。
 異能の“実験”を繰り返してきたのは、あたしも同じですから」

唇の前で人差し指を立てる仕草、潜めた声。

ご案内:「保健室」に十六夜棗さんが現れました。
獅南蒼二 > 「どこかの不良教師ほどではないが、まぁ、楽しんでいるよ。
 さて、不幸な被検体を尤も多く作りだしたのはどの分野だろうな?
 科学か、医学か、魔術か異能か…。」

小さく肩を竦めて、せんべいを齧った。
目の前の養護教諭について多くを知っているわけではない。
だが、少なくとも、一目置いては居るつもりだ。
そうでなければこの白衣の男は保健室になど訪れることは無かっただろう。

「……おっと、患者が増えたかな?」

十六夜棗 > 保健室の扉をノック3回。

「すみません、失礼します。」

声をかけてから引き戸を開けて、一礼。
頭を上げて中に居る人物に、あ、と声として出るか出ないか程度に漏らし。

もう一度一礼。

「ちょっと感電しまして。」

端的に状態を言って先生達の方へ歩く。
足取りそのものはしっかりとしていた。

蓋盛 > 「不良教師? はてさて誰のことやら?
 不幸にしたぶん、幸福な世界を築き上げていきゃいいんですよ」

わざとらしく首を傾げてみせていると、ノックの音が転がる。
新たな来客のようだ。やれやれ忙しい。

「や、こんにちは。こっちの不良の白衣は気にしないで。
 ……感電? ちょっと診せてもらってもいい?」

にこやかに挨拶。
漏電事故にでも遭ったのだろうか? その割には平気そうだ。
近づいて女子生徒の様子を確認しようとする。

獅南蒼二 > 「不良の白衣はお互い様だろう?」

肩を竦めて笑いつつ、お茶を啜っている。
普段の獅南を知る者からすれば、随分と“リラックス”しているように感じるだろう。
授業中は少なくとも、決して見せない表情だ。
ついでにせんべいをもう1まい拝借する。