2016/07/19 のログ
■伊都波 悠薇 >
「――似合わない、ですか?」
きゅっと、手を握る。
「それは、私が――……未熟、だから。ですか?」
怒ってるわけではない。感情は、どちらかというと寂しさか。
ただ――自分への……
「不格好で、うまくできなくて。不釣り合い、だからですか?」
責めているわけでもない。ただ”訊いていた”
理由を。どうしてという、何故を。
「姉は、何でもできるんですよ。うまく、なんでも――
でも、優しいから。殺す気に全くなれないんです。だからどこかで、ブレーキがかかる。毟り蕾で、ブレーキをすれば、どこか、壊れますから」
すらすらと、口から出てくる。
その言葉に違和感は――
「だから、姉にはこれはできなくて。だからちょっと、ぬか喜び、しちゃってたかもしれません」
■谷蜂 檻葉 > 「そう、似合わない―――」
そっと、握った掌をやや強引に解きほぐし、掴んで自分の胸に寄せる。
「それはハルカちゃんが未熟で、未完成で、まだ色々と見れるはずだから」
静かに、ヒビ割れた水道管のように零れ出る言葉を全て聞いてから、ゆっくりと言葉を紡ぎ直す。
「だから、そんな鋭い”刃”に魅入られるような真似事は止めたほうがいいって私は思う。
お姉さんの行かない道だからって、わざわざ『立ち入り禁止』の看板がある道に進むことはないわ。
未踏の地の踏破に喜ぶのは当然の事よ。
でも、それが本当に『喜び知らしめる大地』なのかは、また別問題。
……私の心配、通じる?」
■伊都波 悠薇 >
「はい、通じます」
こくりとうなずいた。表情は変わらず笑顔だった。
ずっと悠薇は笑っている。先輩に対して、感謝を抱き。
わざわざこうしてくれていることに、心から喜びながら――
内心で自分に、未熟者と罵りを投げかけて
「……頑張って得られたものが、すべて良し、とは限らない、ですもんね」
彼女は、自分を否定してるわけじゃない。
むしろ、肯定しながら。そっちじゃないよと、呼びかけてくれているのだ。
それに、マイナスのものなんて抱くはずもない。
「――どんなに頑張っても、得られないのは……理不尽なものの、異能の、せい……なんですかね?」
ぽつり、こぼしたのは――
■谷蜂 檻葉 > 「とても残酷な事、だけれどね。」
どれだけのことが解るかは、完全に憶測。
『何もかも順風満帆に持っている自分』に比較して、
この悩みについては小説の登場人物への共感程度にしか理解は及ばない。
ただ、溜息のように彼女の言葉に改めて肯定し、手を離すと静かに伊都波に手を伸ばす。
彼女の頭を、無性に撫でたくなって。
それが、届くか躱されるか。
伊都波が次いで呟いた言葉に、その手が止まる。
「……異能?」
―――そういえば、彼女から魔術も、そして異能についても聞いたことはなかった。
■伊都波 悠薇 >
「――残酷、でしょうか。因果応報、なのかもしれません」
くすっと笑う。自嘲でも何でもなく。才のないという自分を受け入れない。
そんな、未熟な自分のと。事実だけを口にして――
その笑顔は本人にはふつう。
だが他人には――
「かもしれない、って。姉が……もともと、異能も、魔術も――私は0っていう診断ですから」
■谷蜂 檻葉 > 「残酷よ。 なにせ、因果の原因からして既に前提が破滅的だもの。」
圧倒的強者を最も身近に置いた人間がどうなるかなんて、その影として張り付くか、ねじ曲がるかだ。
事実は小説よりも奇であるが、けれど最も取り上げられる題材とは往々にして現実に基づいた作りをしている。
「そんなふうに笑うよりは、いっそ泣いてくれたほうが有り難いかもね……。」
極々自然な、壊れきった笑みに、自然と困ったようなため息が出る。
「……お姉さんが? それっと、ええと……どういうことかしら。
お姉さんの異能がハルカちゃんになにか関わっているって事?
そうじゃなくて、誰かの異能が、ハルカちゃんに?」
■伊都波 悠薇 >
「そうでしょうか」
どうだろう。張り付いている……と言われればそうかもしれない。
待ち続けるというのは、そこから一歩も動かないという意味でもあるし――
「泣く、ようなことじゃないですし。何度もあったことで、尚且つ――まだ、泣けるだけ、やりきってないかもしれませんから」
諦めてないのだと、応え――ため息なんて似合いませんよと、先輩の頬を撫でた。
「――いいえ、私自身に。異能があって、認識されていないという話。みたいです……だから、研究区で詳しく調べてもらったほうがいいと、姉に勧められてます」
困ったように。まだ、どうするか、考えあぐねているのだと
■谷蜂 檻葉 > 「強いっていうか…… どっちかって言うと頑固なだけかしら。」
もう一度、溜息。
けれど先程までの憂鬱なものではなく、カラッとした気の抜けたものに変わる。
「へぇ、ハルカちゃんに異能が。 そりゃ早く調べておかないとね。」
決めかねたような伊都波の言を知ってか知らずか。
ハッキリと決まったようにそう告げる。
「貴女の『体』のことだもの、いち早く調べておかないとね。
悪いところがあるなら治す、良いところは伸ばす! にしても、知らなければどうしようもないわ。」
■伊都波 悠薇 >
「……頑張り屋って、姉はいってくれますけれど」
ふわり、微笑んで。あいていた窓から風が、部屋の中に舞えば
髪がさらりと流れて、泣き黒子と――素顔が見えて。
「――はい。でも、もう少し勇気が出てからで」
やっぱ、怖いのだと。そう、苦笑し。
すべての努力が、全部無意味だったのだと知るのは――
「治せるもの、だといいんですけど」
ゆっくりと起き上がり――
「すみません、時間いただきすぎちゃいました。いい時間ですし、その――」
さて、ここで。悠薇一世一代の勝負である。
「その……ちょ、ちょっと別れるの名残惜しいのでどこかでお茶をしてからかえりましぇんか!?」
――敗北濃厚である
■谷蜂 檻葉 > 「其処が、きっとハルカちゃんの新しいスタート地点になるわ。
色々なものを引き継いで、それでも何もかも違う視点から始まる、新しいスタートに。」
『すみません、時間いただきすぎちゃいました。いい時間ですし、その――
その……ちょ、ちょっと別れるの名残惜しいのでどこかでお茶をしてからかえりましぇんか!?』
「……っふ……」
小さく
「ぷふっ…あはははっ……!」
大きく、笑う。
「あは、あはははははっ! ――はぁー、おかし……んん”っ勿論、私もこんな味気なく終わるのは嫌ね。
甘いものでも食べて、それから帰りましょうか♪」
よぅーし、と楽しげに鞄を拾い上げると、悠薇にエスコートするようにして手を伸ばす。
まだ、痛みが術なしで完全に落ち着くまでには時間がかかる。
その間を、また取り留めのない話で過ごすのは、きっととても悪くない選択肢だ。
■伊都波 悠薇 >
「ぁぅ……」
恥ずかしさにうつむきつつ――
「わ、わらいすぎですよぅ……」
手を取り、服の袖をつかみながら一緒に歩く。
勇気を出した一歩は、進んだような気がした
ご案内:「保健室」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「保健室」から谷蜂 檻葉さんが去りました。