2016/08/09 のログ
尋輪海月 > 「……うん。まぁ、その……言えない訳じゃあないけれど、むかーし、ちょっと厄介なことになっちゃって……」

「あんまり人には話さないけれど、まぁたまには」と、帽子を取って、髪を片手で軽く梳いた。
黒髪の中、多分染めきれずに残っているだろう、炎のような紅い毛と。夜闇に眼が慣れてくれば、その紅い眼も、しっかりと見える。確認出来るだろう。

「生まれつきは黒髪黒瞳だったんだけど、……中学くらいの時かな、段々、茶髪というか、抜け替わって、赤毛になってきたというか……まぁ、それだけなら良かったんだけど」

……視線を空へ。

「……中学二年くらいの時、体育の授業中で、使ってたフラフープが、急に燃え上がってさ。
……なんでか、あたしは全然火傷しなかったのに、近くに居たクラスメイトが、それで大火傷しちゃったんだ。
あたしがフラフープを燃えさせた、って言われて……最初は驚いたというか、違うって、思いっきり否定したんだけど」

……一息をつく。目元を手で抑える。

「……あー、ごめん。続きはちゃんと話すけど、こんな具合にちょっとずつ間をおかせて」

三谷 彰 > 「……あぁ、そういうことだったのか。勿論全部今言えなんていわねぇって。一応初対面だし話しにくいこともあるだろ」

 相手の話を聞いて少し考える。
 自分も朝起きたらいきなり能力が発現していた側の人間だ。ただ視力が上がるという効果だったから回りに被害が及ばなかったがもしこれが破壊を伴う効果だったなら自分も同じような状況だっただろう。
 空に向けていた視線をほんの少しだけ海月に戻す。

「その、今も制御は難しいのか?」

 相手が気にしている事は百も承知だ。
 だがもしそれで再び暴走をすればそれこそ彼女が傷つく原因になる。それに最悪の場合……
 そこまで考えて軽く頭を振るう。今最悪をかんがえてどうするというのだ。 

「もしそうなら制御の練習くらい付き合うぜ。表向きは風紀委員の仕事としても十分通るし、何かあっても十分対応できるから安心だろ?」

 表向きは能力の制御の大変な生徒の能力の訓練。十分風紀委員の仕事といえる内容だ。
 まぁ生徒指導課の仕事であって戦闘メインのマルトクの仕事かといわれると疑問だが戦闘以外の時は休んでいるというのも変な話だろう。

尋輪海月 > 「……あ、はは……ご、ごめん。実は割と話しつらいというか。言ってみて、若干やっぱ、きつい」

ぐい、と、額を拭った。
……話すだけで、彼女にとっては、相当な負担になる。
所謂「トラウマ」といった類。

丁寧に放置してた、溶けかけのアイスを手に取り、流しこむように一気食いすると、一息をついた。
視線をそちらへ合わせるように向けると、首を振った。

「全然。さっきこぼしたけど、演習場で異能を発動したら、あっという間に暴走して、気を失うまで発動が止まらなかったよ」

「危うく焼け死ぬところだったー」と、気楽に言ってはいるが、先の発言といい、そう簡単に言えたものでは、決してないはずだ。

「……や、……良いよ」
首を再び振った。掌を目の前にかざし、眼を細く。……遠くを見た。

「……あたしの異能は、人を殺せる。簡単に。あっさりと。沢山の人を。だから……本当に、使っても、三谷先輩が大丈夫そうな位、すごく強い人だったらいいけれど。……危ないから」

『本当に、危ないんだ』と、念を押すようにして、断った。

三谷 彰 > 「……そうか」

 発言の後についた気楽な言葉。だが真実は決してそうではないだろう。そんなこと目を使わなくてもわかる。
 
「まぁそうだな……実力を見てない以上。不審がるのも仕方は無いし無理にとはいわない……か」

 一瞬能力を発動させる。黒い目が真紅に染まり全てを見通されているかのように錯覚を受けるかもしれない。
 そのままニヤリと笑うと。

「まぁ気が向いたらいつでも委員会街の風紀委員の施設に来てくれ。大丈夫だ俺はそんなのじゃ死にはしねぇよ」

 だがそのニヤリとした顔とは裏腹に優しそうな声でそう答える。
 そしてふと能力を解除。目は普通の黒へと戻る。

「その内実習とかで信用してもらってからだけどな、流石に今のままじゃ信用は無いだろうし」

 今ここで戦えばすぐに証明できるだろうがそんな事をすれば本気でまとめて風紀委員に捕縛されてお仕舞いだ。
 だから今は流石に厳しいだろうなと思う。

尋輪海月 > 「――ひぁっ?!」

――不可思議な感覚に、思い切り悲鳴を上げた。思わずそちらから大分に距離をとって、暫し眼を丸くしたまま見据えていたが、……はっとしたように、

「……あ、あぁ、えと…………は、はい……」

思わず、するなと言われていた敬語で返答した。
……瞳が、黒瞳へ戻るのを見届け、何処か――羨ましそうな。
片手で自分の紅い眼を押さえつつ、ウエストポーチからケース――中はコンタクトレンズのようだ。――を取り出しながら、

「……そ、そう、だね……その、まぁ、えと」

口をもごつかせ、

「……よ、宜しく……お願いシマス……」
カタコトになる位、初めてこんな事を言ったというような顔で、ぼそぼそと。

「…………あ、そ、その!!れ、礼と言ってはあれだけど!!」
すぐに、はっとしたように、

「三谷先輩、何か乗り物とか乗ってたりしないかな?!例えばバイクとか、バイクとか、バイクとか……!!」
露骨。

三谷 彰 > 「おう、待ってる」

 今度はニッと笑い返しそれで締めくくり。
 相手が露骨に話を変えるならあえてそれに乗っかり少し考える。

「……チャリとかなら? いや、まぁ仕事の関係で現場まで乗り物出してもらうことはあっても乗る事はないな」

 場合によっては車などに乗ることはあっても自分の運転でという事はまず無い。
 相手の反応を見て。

「そういうアンタは話の振り方からするとバイクか? あれ乗れたら気持ち良いだろうなって思いながらも。免許とか取る時間も金もないんだよな。それにまだ17だから乗れても原付だし」

 そういうと顔をしかめる。
 いくらなんでも現場に原付で登場して戦うというのはいくらなんでも締まらないにも程があるだろう。

尋輪海月 > 「…………あー」

視線を逸らす。そうだ。そうなのか。いやそうだった。
……十七歳。年齢の壁。とても気まずくなった。
視線をそらし、泳がせ、考えに考え、結論。

「……あ、あの。持ったら教えてね。修理とか、一応一通りマニュアル通りなのとかは出来るから。こう、それで……その」

ということらしかった。空になったアイスのカップやら使い捨てのスプーンやらをビニール袋にまとめると、すっくとベンチを立ち、

「それでは、そろそろ帰らないと泊まってる寮へ行く終電逃しちゃうんで……失礼っ」

びしっ、と、小さく敬礼っぽくない敬礼をした後、
歩き出した。……扉の前で、一度足を止め、振り返る。
カラーコンタクトなのか、瞳が黒瞳になっているその眼で、
真っ直ぐにそちらを見て、

「……では、また、今度」

――模擬戦。先ほど上がっていた、あの話のことについての、たった一言で、何か、伝えるような。
……ぱっとまた前へ振り返って、扉を開け、此の場を去っていった。

ご案内:「屋上」から尋輪海月さんが去りました。
三谷 彰 > 「ああわかった。修理とかなんて出来そうもねぇしな」

 そう言ってから「あ」と呟き。

「それこそツーリングとか行っても良いかもしれねぇしな」

 などと冗談交じりに言葉を返す。
 相手が帰っていく用意を済ませ去っていく時相手に軽く手を振るう。
 姿が見え七区なると一息つき遠くを眺める。

「……ホント。俺達が動く事態になる前に来てくれれば嬉しいんだがな」

 異能が暴走した場合最悪動くのは自分達マルトクだ。
 そうなるのは気分的にもあまり良い物じゃない。いくら何でも知り合い相手に本気で戦うなどしたくは無い。
 最後の言葉を良い方向に捉え軽く空を見上げる。
 もう少し見回りしてから帰るか。そう決め彼は彼女から少し遅れて下の階へと降りていったのだった。

ご案内:「屋上」から三谷 彰さんが去りました。