2016/09/21 のログ
■リリー > 「ええよ?言うてみ?」
ぶすー、と頬を膨らませるリリー。
ここで読むのもなんか気が引けるが。
それでもだいたい向けられる視線の種類くらいはわかる。
「よし、決めた。」
王様スタイルを辞めて、その場を立ち上がる。
わざわざ辺りの椅子を退かして。
仁王立ちを基本形として。
軽く右足を後ろに下げる。
上半身は逆に左腕を後ろに下げるように。
そのまま右腕を前に突き出せばどうやらポーズが完成したようで。
「かの英雄のように。
誰よりも優しく。
仮面の下で涙を流し続けた戦士のように。
誰よりもお人好しで。
敵さえも救おうとした戦士のように。
闘えない全ての者のために、我が闘おう。
闘うことが罪だというのならば、私がその咎を背負おう。
世界は残酷だ。
闘わなければ、生き残れないのだから。
ならば我は、この拳を振るおう。」
呪文を一節唱える毎に魔力が四肢の先端にあつまる。
それはやがて、その道を知らぬ、それこそ英雄に憧れる年齢の少年少女でも見える濃度に。
やがて赤い色の光となる。
それはやがて牙となる。
篭手となる。
そして、大地を駆ける脚となる。
…それでもマントに下着の変人部分は変わらないようだが。
なお、この口上は一切喝采必要ない。
ついでに言えば戦う敵は今はいないし、拳を振るう相手もいない。
さらに言えば残酷な世界かどうか知るために調べに行くわけだし。
もっと突っ込むのであればこんなたいそうな時間をかけて魔力を練る必要も無い。
そんなことをする理由はただ一つ。
「…。なんじゃ、その目。かっこいいじゃろうが。」
ポーズさえせずに即変身して纏わないのには、本人曰くきちんとした理由があるらしい。
「ほれ、これでわかったか。我は本物だぞ?」
中二病。でもなく。変人、でもなく。
だが何回も言うが普通の人は変身しない。
「ったく…。」
何故か拗ねながら元の席に座る…、が。
ばきっ。
「きゃっ!?」
折れた。
見れば座るためにと手をかけた肘掛がそれはそれは綺麗に真っ二つになっていた。
「………。」
かっこよさ故に変身した、弊害。
食事には被害が及ばなかったと悦ぶべきか。
「………………。ちょ、ちょっとだけ待ってて…もぅ。」
直ぐに纏った魔力をとき、他所から椅子を持ってくる。
ラーメンを啜っているその顔は、物悲しそうで。
■小早川 妙 > 「いえ、結構ですからっ、ほんとにっ。」
全力でご遠慮の意図。
言えるわけ、ないのである…。もうなんていうか、申し訳なさそうにすらしてお断り。
醸し出される拒絶の意図は、変にリリーからその気を失せさせるだろう。
「……はぇ?」
変身するんですか!!
よくわかんないけど、本当戦闘モノっぽいですねこの人!!
やけに凝ったポージングにやけに凝った詠唱、
そして、演出である。
妙は魔法が屯と分からぬ。
だから、その変身シーンはといえば、
赤い光が四肢に集まってって、尖っていく風にのみ見える。
練られた大層な魔力も見えない…筈だけど、何かを感じた。
けど、「すごいかっこつけてる」って事は痛いほどわかる。
見てて聞いてて痛感するのだ。
ツッコミどころありすぎである。
かの英雄って誰!?戦士って何?!
戦うって?!ここ食堂ですけど!罪って?!
そんなことしなくていいですから!!
拳は振るわずちゃんと食事しててください!
「……あの、物騒な事は、やめてくださいね。」
変身を見て、凄い!ではなく。
心して口から出た言葉は、宣言をへなりと折伏せるような言葉だった。
ただ、良くも悪くも妙の目は変わりゆくリリーの姿に釘付けだ。
目を逸らすこともなく、今度はこちらが無礼なまでにじろじろ見ている。
「……はい、恐れ…いりました…ホンモノですぅ……。」
ほ、ホンモノの中二病だったー!!
幻想を具現化してしまった系の中二病だった!
ある種悲しそうにさえ見えそうな、もう泣きそうな顔で恐れ入ったと述べる妙。
食器を持つ手は震えて、驚きとか呆れとか、混ざり過ぎて困っている。
ツッコミたい、しかし、ツッコミを入れる程の度胸はやはりない。
「あっ。」
変身してパワーが強くなったのだろうか。肘掛けがばきっと…。
「……は、はい。お待ちしています…。」
どういうわけか、全く違う理由で悲愴感溢れる二人が食事する時間が暫し流れた―――。
■リリー > 「………うぅ。」
存外、存外。
受けがよくないことを読み取ったリリー。
想像はついたもんだろうけれど。
それなりに気合を入れた口上がかっこよくないと思われて結構ショックを受けているご様子。
「………せんよ。」
すっかりテンションは下がった御様子で。
「………。ずる。ん。ん…っぷ。」
むなしく響く啜る音。
「………。ご馳走様でした。」
それでも挨拶はちゃんとするらしい。
「ほれ………。いくぞ?」
テンションも戻りきらぬまま。
彼女を連れて食堂を発つ。
リリーがこの学園に身を置くのは、もう少し先のお話。
ご案内:「食堂」から小早川 妙さんが去りました。
ご案内:「食堂」からリリーさんが去りました。
ご案内:「ロビー」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 約1か月半ぶりの授業だが,やや欠席者が目立った以外は何も変わらなかった。
生徒にとってみれば,厄介な授業が戻ってきたとため息を吐きたくもなるだろう。
久々の授業となった今回の演習課題は非常に単純にして明快。
『誰にも感知されずにメッセージを伝えること。』
そしてそれと並列して
『他者の発信しているメッセージを読み取ること。』
念話や防諜魔術の分野を紐解けば,さほど高度な内容ではない。
だが,この授業には一切のヒントや助言が存在しないのだ。
知覚術式で生徒たちのアプローチを記録した獅南は,ロビーで缶コーヒーを啜りながら,それを眺めていた。
■獅南蒼二 > 努力と研鑽を惜しまぬ者や,すでにこの授業を何周かしている者のうち数名は,
術式構成の巧拙はあるにせよ,まさに最短距離で正解へと辿り着いている。
念話の術式に防諜のためのダミーを流す,
指向性を調整して他者には受け取られないよう工夫する,
内容そのものを暗号化し,防諜性を高めるなど,いずれの発想も悪くない。
一方で,不勉強な生徒や,まだこの授業に慣れていないのだろう生徒には,実に難解な課題だったようだ。
伝えたい相手の耳の知覚の空気を震わせて音を作り出そうとしてみたり,
文字情報を可視光を放つ術式に乗せて表示(当たり前だが周りからも丸見えである)してみたり,
モールス信号を使おうとしているツワモノも居た。誰がそれを理解できるというのか。
■獅南蒼二 > 1人1人の術式構成や魔術知識,発想力に点数をつけていく。
上は265点から,下は29点まで,もはや何点が満点なのかまったく不明である。
そして1人1人のレポートに点数とその理由,そして術式構成上の欠陥などをびっしりと書き込んでいく。
この男の書き込みに,生徒を褒める言葉など1つも無い。
どれほど優秀な生徒でも,どんなに才能に欠ける生徒でも,同列に扱って扱き下ろしていた。
「………こんなところか。」
全員分…といっても今回は10名強しかいないが…に書き込みを終えれば,ソファに凭れ掛かって,息を吐いた。