2016/11/21 のログ
ご案内:「教室」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 授業が終わり,生徒たちはざわめきながらも思い思いに散っていく。
普段と何も変わらない授業終わりの風景なのだが,ざわめきには理由があった。
■獅南蒼二 > 例年は常世祭などに一切の興味を示さず,理解も示さないこの男が,常世祭準備期間中の臨時休講を告げたのだ。
……と言っても,たかが3日間だけで,焼け石に水といったところだろうが。
■獅南蒼二 > 何人かの熱心な生徒の質問に,ぶっきらぼうだが的確に答えていく。
「希望する者については補習の講義を実施する。」
「レポートに関しては研究室のポストへ提出するように。」
等々。
■獅南蒼二 > そのうちに教室の人影もまばらになり,獅南はそのまま,その場で課題のチェックを始めた。
どうやら,この時間は防御魔法についての座学であったらしい。
■獅南蒼二 > 休講の理由は語られなかったために,一部の生徒は様々な憶測をめぐらすだろう。
「…………………………。」
以前も1ヶ月ほどの休講期間があり,その後にこの教師は“人が変わった”ように異能を毛嫌いしなくなった。
■獅南蒼二 > そしてその理由も,一切語られていない。
誰かが聞けばいいのだろうが,勇猛果敢な生徒は,まだいなかった。
「………………………。」
疲れ果てたような表情も,辛辣な皮肉も,全てを見透かすような瞳も,全てがそれを妨げていた。
■獅南蒼二 > 煙草を取り出して,指先で弄ぶ。
流石に教室内でそれに火をつけるほど常識知らずではない。
「……………。」
そうして1枚,また1枚と提出された課題のプリントに目を通していって…。
■獅南蒼二 > 赤のボールペンで1枚1枚に辛辣なコメントを入れ,
「……。」
出来の良いものをピックアップし,最後の数枚に達したころ…。
■獅南蒼二 > 「…。」
…獅南は静かに瞳を閉じて,小さな小さな寝息を立てていた。
近付かなければ,居眠りをしているなどとは思いもよらないだろう。
■獅南蒼二 > ピッ,と1枚のプリントに赤いラインが入って,獅南は静かに瞳を開いた。
「……いかんな。」
事も無げに小さく呟き,息を吐く。
それからプリントに手をかざして,何事も無かったかのように元通りに戻してしまった。
■獅南蒼二 > そうしてプリントの評価が終われば,それをバインダーに挟んだ。
……もう教室に残っている生徒は殆ど居ないだろう。
獅南は黒板に描かれた魔術文字の羅列を,几帳面に消していく。
が,半分程度まで消したところで,何かに思い至ったのかその手を止め…
■獅南蒼二 > 「………………。」
一歩下がれば僅かに目を細めて,全体像を静かに眺める。
防御魔法というのは概ね,面で外的な干渉を防御または反転するものである。
球体であるか平面であるか,そして厚みの差異はあるにせよ,発動の指向性が面であることに違いはない。
ご案内:「教室」に有賀 幸作さんが現れました。
■獅南蒼二 > 無論,それは物理的な盾がそうであるように,面の内側を守るためだ。
球体はその最たるもので,全方位からの干渉を遮断し文字通りの密室を形成する。
「………………。」
だが,それ故に防御魔法は一点突破に脆いという側面をもつ。
攻撃と防御の魔力絶対量が同値であれば,ほぼ間違いなく攻撃側が勝利するだろう。
■有賀 幸作 >
人影疎らとなった教室の戸が、控えめに開かれる。
最初に扉から覗いたのは、蓬髪であった。
「あー……」
間抜けた声と共に現れたそれは碌に手入れもされていない癖毛。
続いて出てきたのは、今にもずり落ちそうな黒縁眼鏡を掛けた胡乱気な瞳。
いずれも色は黒。邦人としては正しく珍しくも無い。
そんな平々凡々とした日本人の特徴を地味に取り揃えた男の視線が、教室の中にいる白衣の男に向き。
「お、おおお!?」
直後に、素っ頓狂な声と共に見開かれた。
■獅南蒼二 > それでもなお防御魔法が有効であるのは,攻撃に対して属性を合わせる技術の進歩と,
それから所謂避弾経始の概念を応用した“弾いて霧散させる”概念の存在である。
それらによって辛うじて有意なものとして存在してはいるものの,鉄壁の鎧とはなり得ないというのが一般的な見解であろう。
だが,必ずしも防御魔法が“面”である必要は無い……今まさに,何かを思いつきそうだったその瞬間。
「………喧しいぞ。」
全部ふっとんだ。見事にふっとんだ。
■有賀 幸作 >
「こ、これは失敬……よもや、まだ人が残っているとは思わなかったもので……!」
しどろもどろと言った体で、汗も無ければハンケチも無いと言うのに蓬髪の男は額を透き手で拭う。
バツが悪い時、悪童が痒くも無いのに頭を掻く仕草と似る。
「……もしや、まだ講義か何か続いていたのでしょうか?」
だとすれば、それは悪い事をしたと、男は殊更気まずく苦笑する。
何とも、気苦しい。
■獅南蒼二 > 小さく肩をすくめてから,貴方の方へと視線を向けた。そこに恨むような色はない。
「いや,片付けをしていただけだ。
お前の目に講義を受ける生徒の姿が映っているのなら,眼科か脳精神科へ行くことを勧めよう。」
黒板にびっしり書かれた魔術文字が防御魔法の術式であると,貴方には分かるだろうか。