2017/01/06 のログ
咲月 美弥 > 「はぃはぃ。別にみてもいいのにぃ」

くすくすと笑いながらも少しだけ安堵した表情を見せる。
ゆっくりと膝元を払ってついでにスカートを伸ばし安心してみられるように服装を正していく。

「先月なんか顔を合わせただけで捕まりそうになったんだから。
 廊下で月見してただけよ?ひどいと思わなぁぃ?」

ぷくーと子供のようにほほを膨らませ見上げてみる。
そのまましばらくして少し噴き出すと

「まるで子供ね。実際私たちは子供だけど」

そう穏やかな表情に戻りながらつぶやく。
そうして続く”自身が不真面目”という言葉に笑みをこぼす。

「不真面目くらいが好きよ?
 大事なものを本当に大事って言えないくらい弱いところとか」

三谷 彰 > 「うるせ、そういうもんは大事な人に見せとけ!」

 見る気ないからな! とあからさまに視線を上に向ける。なんともわかりやすい行動をとっている。
 風紀委員の話を聞くと少しだけうなり。チラとそちらに軽く視線を移した。

「そりゃ災難だったな。たまにいるんだよなそういうの……夜の学校くらい忍び込むやついるっての」
 風紀委員としてはどうなんだといった発言を飛ばすが彼にとっては普通なのだろう。
 まぁそれで盗まれたり落書きされたりが実際にあったからこそ躍起になっているのだろうが。だからといって問答無用で追跡は違うだろうと彼は常々考えていた。

「ははは、まぁ社会的にはまだ子供の分類だな」

 同じように少しだけ笑い飛ばす。
 その後の言葉にはん? と少しだけ悩んで。

「ありがとさん。にしても大事なものね……たしかに言いにくいかもしれないな」

 実際ここに来た理由も自分を助けてくれた異能者みたいになりたい。ただそれだけで家族や友人は大事だが面と向かってはやはり言えないだろう。

「あんたはどうなんだ。そういうのちゃんと言えたりするのか?」

 変な意味もなくなんとなく聞いてみた。

咲月 美弥 > 「見せてるんだから楽しめばいいのに。
 まぁ見せてないとも言えるけどねぇ」

あからさまにからかって遊んでいた。
問答無用で切りかかられることも心配はしたけれど

「それで怪我しちゃうのも難儀な話だけどねぇ
 先生方も色々苦労しているみたいだから気持ちはわかるのだけれど」

相手にその気がないのであれば特に交戦することもない。
そう考えた矢先に切り返された言葉に少しだけ硬直する。

「……言いたいんだけど、言えなくなっちゃった。
 ううん。きっと言えたとしても、私は言わないわね」

穏やかに、けれど何処か諦めたような雰囲気で
ただ誰に言うともなくつぶやくように口にする。
その瞳は僅かの間遠くをみていたけれど

「でもそうやって聞き返すってことは何か心残りがあるんでしょう?
 なぁに?年始で家族が恋しくなっちゃったの?」

すぐにいたずらな表情を取り戻しクスクスと笑い始める。

三谷 彰 >  相手の挑発はこの話題では勝ち目が無いと理解しため息のみで返事をする。
 
「そりゃ気持ちはわかるし……まぁ正しいといえば正しいんだろうけどよ。少しは話せば良いものをって本当に思うぜ俺」

 戦闘部隊であるマルトクが何を言うかといった話だがむしろマルトクだからこそである。本当に話の通じない奴はそもそも追いかけっこなんてする余裕が無い事を痛いほど理解している。
 相手が硬直しつぶやいた一言。少し深く聞きそうになった口を閉じる。
 
「……そうか、色々大変なんだな」

 深くは追求しない。というよりできないが正解である。今日数分前にあったばかりの人がするような質問でも無いだろう。

「まぁ、そうだな。結構ここに来るの家族には反対されててな。帰りづらくて2年くらい顔も見てないし、連絡も取れやしない」

 情けない話だと付け加え苦笑を浮かべる。

「そろそろ一回は帰らないとって思っちゃいるんだけどなぁ……」

 そう言い少し遠くを見つめる。そこに広がるのは町なのだが……その向こうを見ているように感じるかもしれない。

咲月 美弥 > 「あらら、振られちゃった。ざぁんねん」

笑い声を含ませながら小さく首を振って
そうして吐露された言葉に少しだけ目を細めた。

「話し合うほどの余裕がないというのもまたどうしようもない事実だもの」

大惨事になる前に封じてしまわななければというのは理解できる。
けれど封じることはそれを先送りにして傷を広げることにもなりかねない。
思いや感情もまた、同じ。

「帰れるうちに……帰らないとだめよ」

きっとそんなことは彼自身が一番わかっているのだろうけれど。

「信じてあげられるなら、祝福してくれるって信じてあげてほしいわ
 言えなくなるその前に…ね」

とても優しげな声色で小さくささやいた

三谷 彰 > 「たしかにそれも事実なんだろうし、仕方ないっちゃ仕方ないんだよな」

 こういった話題に答えなんてあるはずも無く。結局はどっちつかずで終わってしまうものなのだろう。
 帰れるうちに帰らないと。といわれると少しバツのわるそうな顔をして頭をかく。

「そりゃわかってんだけどなぁ」

 喧嘩して一人でもやってやると啖呵を切って条件付で許してもらえた身。いまさら心細くなって帰ってきましたとも中々言い出せないのだ。
 といってもやさしい声で言われたのなら少しは揺らぎ。

「まぁ……春休みに少しだけ戻ってみる」

 とまるで反抗期の中学生か何かのような声音で返すしかないのであった。
 そうして少しだけ黙ってからあぁとぼやき。

「その、あんたもいつか言えると良いな。本当に大事なものを大事だって」

 何があったかはわからないが言いたいのにいえないのは悲しい事だと思う。だから言えると良いなと本当の感情を伝えた。

咲月 美弥 > 「いつか分かり合えるといいわね」

答えがないからこそそれに悩めるのだから。
そうして唸る少年は彼女にとってはとても微笑ましく映った。

「思ってる以上に許してくれるものよ?大丈夫
 一緒に過ごした時間は思っている以上に切れないものだから」

ヒトの絆はよく知っているつもり。
私自身があるいみそれの形の一つなのだから。
年相応に悩むような表情に笑いかけ、その下にいくつも感情を隠しながら彼女は微笑む。

「ありがとう。人づてでも伝えられたらいいなぁとは思ってるの」

自分ではけっして……伝えられないから。

三谷 彰 > 「だと、良いんだけどな」

 一緒にすごした時間が長いからこそ帰った瞬間棒でぶん殴られるんじゃないかとか色々と考えてしまうのだが。そういわれると大丈夫な気がしないでもない気分になってくるから不思議なものだ。
 相手の複雑な表情を少しだけ見やり正面からは見ないながらも語りかける。

「宛てはあるのか?」

 そこまでしてでも伝えたいのに自分では言わない。
 となるとそれだけの理由があるのはなんとなくわかってしまう。だからこそ何があったといえないのがどこか歯がゆかったりする。

「って聞きすぎだよな悪い」

 そこまで言ってはじめに言われた事を思い出し軽く頭を振るう。何かと面倒を見たくなるのは悪い癖だろうなと自覚はしているが直せないものである。

咲月 美弥 > 「まぁ怒られるのは確実だけどね!」

最後に期待を裏切らないお約束は付け加えておく。
絆が深ければ深いほどそういった反応は大きくなる傾向にあるのだから。

「……貴方はどうなの?
 お父さん……お母さんかしら?兄弟姉妹かもしれないけれど」

視線をそらして論点をずらすことが何よりも雄弁に語るかもしれない。
何もあてなどないのだと。

「いいえ、心配してくれているのだもの
 悪い気分ではないわ?どうせなら私のことよりあなたのことが聞きたいけれどね」

けれど穏やかな調子を崩さないのはそれに思うところも考えるところもあったのだろう。
それに、相手が優しければ優しいほどこれ以上は悲しませることになるから。

「私のどうしようもない話よりもそっちのほうがたのしそうだもの」

だからそっと羅針盤を動かす。
もっとあなたのことを聞かせてと。
 

三谷 彰 > 「まぁそうだよなぁ……」
 
 はぁとため息を吐き出す。怒られるの次元が高すぎる可能性もあるのが1番の不安だ。
 
「ん、俺は……姉さんだろうな。それ以外は色々と問題がありそうだ」

 そういうと顔を強くしかめる。
 相手が宛てが無いのは察したが話を変えようとしてきた時点であまり話したい事ではない事も察した。だからこそ自分の話を続ける。

「父さんは最後まで反対してたし、母さんも母さんでものすごい心配してたしな。戻ったらそのまま色々な話する度に心配されそうで……ほら、俺風紀委員だしさ。結構重症も多いんだよ」

 ハハハと空笑いを浮かべる。
 腕が千切れかけた事もあるから冗談にならないのだがそこまではいわない。それこそ相手の少女に心配をかけさせるだけだろう。

「話してると不安になってくるよホント」

 はぁと何度目かのため息。だがそうもしたくなるほど悩んでいるのだ。

咲月 美弥 > 「あら、お姉さん?
 推測だけど随分仲良さそうじゃない?」

ころころと笑いながら相槌を打つ。
目前の彼が察していることも分かっているけれど、それ以上踏み込んでこないのだから気が付かないふりをするのが礼儀。

「確かに風紀委員は大変だものねぇ……
 いやでも変なものに立ち向かわなければならない時だってあるし
 先日もなんだか大きな事件があったでしょう?」

確か一区画が燃える大騒動だったはずだ。

「そうじゃなくても話しづらい話題なのに
 そういうことに巻き込まれるかもなんて言えないわよねぇ」

フェンスに身を預けたまま小さく首を傾げた

三谷 彰 > 「よくわかったな、確かに仲は良い方だと思うぞ。別にブラコンとかシスコンとかそう
 普通に仲が良いとは思っていたし否定するつもりも無い。そういうと3回に1回くらい変な邪推を受けるがもう慣れっこだ。
いう意味じゃねぇけど」
「ん、あああの話か。俺は深く関与してないからなんともいえないが。結構でかい事件だったらしいな。捜査に結構な数が借り出されてたぞ」

 炎の巨人か何かが暴れていたという事件。詳細までは知らされていないがもう少し被害が大きければ自分たちが動く可能性もあるかもしれないから準備をしておけと言われていた事件ではある。
 といっても結局は動く前に解決されたのだが。

「まぁそういうことだ。親は異能とかにあんまり関わって欲しくないみたいだしさ……まぁ春休みくらいには戻ってみるさ。ありがとうな話して少しは楽になった気がする」

 一人でモヤモヤしていたが話すとずいぶん楽になるものだ。相手が話を引っ張り出すのが上手いとも言えるのだが。
 よっととフェンスから背中を離しそっちを向く。

「2年の三谷彰だ。あんたは」

 話すだけ話して名前も知らないというのも変な話であろう。そう思い名前を名乗り逆に相手に問いかけた。

咲月 美弥 > 「あら、家族は仲がいいに越したことはないじゃない
 どういっても邪推する人はいるものだから」

シスコンブラコンというのは放っておいても噂されるものだ。
特に男性はその傾向が強い。

「そうね、その気持ちもわかるけれど……」

確かにあの事件に巻き込まれていれば無事では済まなかったかもしれない。
それほどの事件にもいやおうなしに巻き込まれるのが風紀委員なのだから。

「けれど心配することも幸せの一つの形だから、心配させてあげるというのも
 思いやりの一つかもしれないわ
 さじ加減が難しいけれどね。
 楽になったなら……それは良かった」

ふんわりと微笑む。
心の底からそう思っているからこそ、かけらでも重荷に感じていたことが和らいだなら
とてもうれしく思う。

「……秘密。また今度会いたいって思ったら
 会えたら教えてあげる」

人差し指を口元に当て悪戯な笑みを浮かべる。
その時風向きが一瞬僅かに変わり、彼女が纏う香りが
少年の元に届いたかもしれない。
それは魅了するには不十分ながらも、甘く香しい……そして魔性の香り。

「それまでは秘密でいるね」

その姿勢のまま微笑んでそう、告げた。

三谷 彰 > 「……その考えは無かったよ。覚えとく」

 心配させる事も思いやり。そんな事考えた事も無かったがそういわれれば確かにそんな考え方もあるかもしれない。心配すらできる相手がいない存在も多くいるのだから。

「そうかよ、なら俺もカッコつけて秘密だとか言っておけばよかったぜ」

 少し苦笑を浮かべる。
 と同時、その匂いを一瞬感じとる。が……警戒はしない。それこそ今までで何かアクションを起こせるタイミングなどいくらでもあったが彼女はしなかったのだ。すなわち敵ではない少なくとも今この瞬間は。

「わかった、んじゃ次会う時にな……あんたもあれだ。なんか話したい事あったら今度はなしてくれよ。礼って訳じゃねぇけど。今回聞いてもらったんだし今度は聞くからよ」

 そう言い鞄をつかむとドアの方へ歩いていく。

「ってわけで、悪いそろそろ帰らないとセール終わっちまうから行くな。お前も早めに帰るんだぞ、また怖い方の風紀委員が出てくるといけないからよ」

 少しだけ悪い顔で笑うと後ろ手に手を振りドアから出て行った。

ご案内:「屋上」から三谷 彰さんが去りました。
咲月 美弥 > その姿を見送り、吹き始めた風にそっと髪を抑える。
空を見上げるその顔に浮かぶのは穏やかな笑み
穏やかな夜空を見上げ月明かりに照らされながら
小さく笑みをこぼす。

「おやすみなさい。良い夢を」

その言葉が夜に溶けるころ
その姿もまた夜の闇へと溶けていた。
静かに照らされる屋上はまるでその場所に誰もいなかったかのようで
笑みの形の月が、ただ静かにそこへ光を投げかけていた。

ご案内:「屋上」から咲月 美弥さんが去りました。