2017/05/27 のログ
飛鷹与一 > プシュッ、と小気味良い音を立ててプルタブを開けつつ、缶コーヒーを一口。

「…最近ドタバタしてた気がするから、こういう時間は地味に貴重な気がするなぁ」

風紀委員会の仕事は相変わらずだ。流石にもう所属して半年以上経過して仕事にも慣れた。
が、射撃能力の高さが判明してから、特別狙撃班に勧誘されたり後方支援とはいえ、出勤が増えたり。

(…まぁ、うん。給料に反映されてる分マシといえばマシなんだろうけど)

とはいえ、休息というのは矢張り必要な訳だ。どんなに力や才能があっても人は人。
疲れもするし休みたくもなる。今は狙撃銃なども手元に無く、身軽な状態だ。

「……先生や師匠は元気にしてるかな……あ、でも師匠は問題無さそうだな」

この前の電話でそこは分かっている。顔を見せに行くと言ったら拒否られたし。
その代わり、世話になった施設の院長先生には年末年始には顔を出そうかと思う。

「……と、お盆には休み貰って墓参りも行かないとなぁ…夏も忙しそうだけど」

ご案内:「屋上」にデーダインさんが現れました。
ご案内:「屋上」に宵町 彼岸さんが現れました。
デーダイン > 「―――おおぅ?!…おやッッ!!!?」

静かであった屋上に、まるで近日の初夏の熱さを思わせる様な熱い声が響いた。
その癖扉は妙に開け閉めする。
声の音源を辿ればその先には、
真っ白な仮面、全身を覆う黒ローブ、そして熱風を思わせるように風になびく赤マント!

誰がどうみても、きっとそれは不審者であった。
況や、風紀委員が見ればをや。

しかし、その実は授業が終わって息抜きに飲み物でも飲みながらくつろごうと考えているだけの教師である。

「どうした、風紀委員の少年よッ!!休憩かねッ?!仕事サボリなら許さんッ!!
……憂鬱そうな目でなにやら呟いている様だがッッ!!
困った事があるなら良い給えッ!!!」

彼の目で、何かを呟いているのが、そんな風に見えたらしい。
まったくもって、相手にとっては余計なお世話であろう事はいうまでもあるまい。

だが、これが不審者の本質なのかもしれない。
不審者、デーダインは自分がやろうとしていた事はさておいて
先客、飛鷹与一へと暑苦しく声(声?)をかけたのだった。

宵町 彼岸 >   
「……あっつぅ、死んじゃう」

騒がしい声に呼応するかのように
屋上の入り口の上、本来は登ってはいけないスペースで
もぞりと黒い塊が動いた。
それはさながら巨大な蝙蝠の様なもの。
日を遮る傘のような形状のそれの下から
暑さに上気し、加えてほんの僅かに不機嫌さを乗せた顔がのぞく。

「しかも騒がしぃ……」

それはそう呟くとそのまま半分溶けたかのような動きで
結構な高さからどさりと布袋のように地面に落ちてくる。
はっきり言って結構ホラーな絵面に見えるかもしれないが本人はいたって平気なようで……

「……じめんもあつぅぃ」

そのまま腕をついて僅かに上体を起こす。
数秒前まで僅かに不機嫌そうだったその表情は
今はひたすら眠そうに見えるかもしれない。

飛鷹与一 > 暫し、あれやこれやと脳内の片隅で考えつつも、基本は缶コーヒー片手にベンチでボーッとしていた。
…のだが、いきなり聞こえた大きな声にビクゥッ!?と、肩を竦ませる。
完全に気を抜いていたので油断した。いや、常に気を張り詰めている訳ではないのだが。

その声に振り返ってみれば………まず真っ先に脳裏に浮かんだ単語が「…不審者だーーー!?」である。
だが、こういう格好をした教師が居るらしい、というのを同僚から前に聞いた覚えがある。名前は――。

「…は、はい?いえ、本日は俺は非番です。あと、目つきがコレなのは元からです。
…って、えぇとデーダイン先生…ですよね?直接お会いするのは初めてですが」

この学園、生徒も個性的だが教師も負けず劣らずだ。だから、外見からして特徴的な教師は直ぐに目星が付く。
この黒ローブに赤マントな教師とはおそらく初対面である自分も、伝聞程度の情報で直ぐに断定出来たりするのだし。

…と、今度は畳み掛けるように何かが落下する重い音が聞こえた。まるで人が落ちたような…。って。

「……は?」

フとデーダインから視線を一度そちらに向ければ、そこにはホラーな絵面が展開され…いや、違うそうじゃない。
缶コーヒーは一度ベンチに置いておきつつ、慌ててそちらへと駆け寄り。

「あの、大丈夫ですか?暑いなら冷やしますけど…。」

と、言いつつ熱量操作の魔術を瞬時に展開し、彼女の周りの気温だけを涼しくしておく。
まぁ、これで数時間は彼女の周りの温度は快適に保たれるだろう。
ちなみに、彼女が動いたり場所を移動してもそれに合わせてその場だけ気温を調整するオマケ付き。

ご案内:「屋上」にデーダインさんが現れました。
ご案内:「屋上」からデーダインさんが去りました。
宵町 彼岸 >   
「嗚呼―……ひやっこぉぃ……」

自分の事なのに、はたまた自分の事だからか
周囲の焦り具合もどこ吹く風。
急いで駆け付けられて周囲が冷たくなると
幾分か満足そうな表情になり、
起こした上体を倒しそのまま地面に横たわる。

「んぁ―……快適ぃ。ありとーだよぉ?」

少しだけ視線を上げて駆け寄ってきた相手を見上げると小さく笑う。
落下の衝撃で服は乱れ、長い髪も地面に散らばっているものの
あまり気にした様子もなくぴったりと臥せて
少し涼しい程度の気温を楽しんでいた。

飛鷹与一 > 「あはは、快適な温度に調整出来ているみたいで何よりです…と、いうより何でまたこんな状態で」

少年の視点からすれば、落下音が聞こえたから慌てて目をやったら、何時の間にかこの人が倒れていたという状態。
姿は見えなかった筈だが…何処に居たのだろう?いきなり現れた、という可能性もゼロではないが。
…いや、温度は快適そうだから良いとして流石に地面に寝転がったままは見過ごせない。
むしろ、わざわざ上体を起こした筈が自分から寝転がってしまったのだが彼女が。

(…まぁ、うん。最低でもベンチに寝かせるくらいはしておかないと)

と、いう常識的判断により、一度彼女にお断りをしてから運ぶとしよう。

「あのー…そこで寝転がると服とか髪の毛に汚れが付くので、ベンチの方に移動しませんか?」

と、ベンチの方を指で示す…と、いうかあの教師が何時の間にか居ない!?
…うん、神出鬼没そうなイメージもあったし、また会う事もあるだろう。

取り敢えず、考えるのは後回しにして今はこの女性をベンチに運ぶ事を優先する。
幸い、ベンチは日陰になっているし、熱量操作魔術で彼女の周囲の気温は調整済み。
運びさえすれば快適さは変わらないだろう…と、いうかどう見ても自分が運ぶしかなさそうだが。

「…えーと、少し失礼をします」

律儀に前もって断りを入れてから、よいしょ、と彼女を抱き上げていこう。
それなりに鍛えているし、女性一人を抱き上げて運ぶ程度は問題なく。
そして、ベンチに強制連行…ではなく、移動させてそちらに寝かせようと。

宵町 彼岸 > 「春だか夏だかわかんないからぁ?」

投げかけられた質問に答えになったような、
はたまた適当にも聞こえるようにも言葉を返す。
ふんわりとほほ笑んだまま身を任せる姿はさながら濡れたタオルのよう。
初対面とかそういう事は特に気にかけないのがこの少女の常。

「――?」

抱き上げたなら異常に軽く感じるかもしれない。
一方で抱き上げられた方もわずかに目を開き、小さく首を傾げる。
感じたのは彼が纏う、彼に似合わぬ風。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「そう言われると……もうすぐ梅雨の季節ですねぇ、と答えてみます」

雨は多くなるがジメジメとして蒸し暑い。そんな季節がこれから到来する。
しかし、濡れタオルというか濡れ女というかまぁ、そういう例えがなんとなく来る感じの彼女の現状。

ともあれ、断りを入れて抱き上げたら妙に軽く感じた。…まぁ、いいか。
女性に体重を聞くのは野暮というものだし、そこを疑問に思えど深く気にはしない。
で、ベンチまでスタスタと彼女を抱えて歩いていけば、そっとベンチに寝かせておこうと。

「ほら、これなら髪の毛とか服もこれ以上は汚れませんし少しはマシかと」

少年はといえば、寝かせた彼女の隣に元々自分が座っていたので、そこに座り直す。
ついでに、飲み掛けだった缶コーヒーを口に運ぶ。相変わらずこの一帯だけは程々に涼しい温度を保ったままで。

宵町 彼岸 >   
「お母さん蛙が雨靴はいてちゃぷちゃぷらんらん…?
 そんな季節……だったかなぁ?」

梅雨……そういえばこの国は結構ジメジメする時期があるらしい。
雨で紫陽花や草木が濡れて美しい反面、じっとりとカビの生えそうな時期。
ある意味、今の彼女の動きにぴったりの季節。……のはずだ。

「まし…?ましー?
 ――うーん。多分そぅ?」

そのまま運ばれ、ぐったりとしたまま穏やかな涼しさを楽しむ。
抱き上げられた時に感じた少しだけ気になるような香りに小首を傾げるも
運ばれた後に投げかけられた言葉にふわふわと生返事を返して

「……ああ、でもこれはキミがしてくれてるんだよねぇ?
 ありとーだよぉ?」

首だけ動かして近くに居る相手を見上げ、のんびりと礼を口にした。
それはまるで知り合いのような近しい関係のようで
ぐったりと一見くつろいだ様子で真横のベンチに横たわる姿は
はた目にはある程度の関係にすら見えるかもしれない。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「もうそろそろだと思いますが…この島で梅雨を迎えるのは俺は初めてなんで、正直雨続きかは分からないんですよね」

と、小さく笑って。本土はそうだとしてもこの島の気候が同じ、だとは限らない。
そもそも、去年の今頃はまだこちらに来ていなかったから、梅雨をこの島で迎えるのは初めての事だ。

「まぁ、ベンチも地面も固いんで布団やベッドの寝心地には全然負けますけどね」

何ともグッタリとしているが、それでいてフワフワとマイペースな女性だ。
熱量操作魔術は…うん、安定している。何だかんだ人の為にちゃんと使うのはこれが初だけど。

「あ、ハイ。…快適な温度にしているつもりですが、暑かったり逆に寒くなったら言ってください。
調整は直ぐに出来ますから、別に手間でもありませんので」

彼女からのお礼に、コーヒー缶片手にそちらへと視線を向けて頷く。
一見すると二人は親しい関係だと思われるかもしれないが、多分というか初対面だ。
少年自身といえば、まぁこういう状況にも適応性はあるのか落ち着いたもので。
実際、慣れた感じで「あ、髪の毛にゴミが」とか片手で軽く彼女の長い髪を手漉きをしたりしている始末だ。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
宵町 彼岸 >   
「あれぇ?梅雨初めてなんだぁ。
 そっかそっかぁ。初めて仲間だねぇ」

知っている事と理解している事は違う。
身を切るほど理解している分その初めての季節が楽しみだった。
あくまでマイペースに言葉を選び、気ままにだらだらと時を過ごす。
しかし……髪を投げる手つきが随分と手慣れてらっしゃる。
なんというか、慣れている人の手の動き。
かといってそういう生業の物でもない。
ああ、つまりこれは……

「……恋人の香り?」

ある意味なじみ深い、そして目の前の彼に何処かに合わない空気の残滓が
僅か……ごくわずかに残っている。
例えるならそう、罪の香り。
それはそういう類の能力者でもなければ
気が付く事は無いかもしれないような僅かなもので、
けれど気が付いてしまえば警戒すべきもの。
……ではあるものの

「んーふー。何だか撫で方がいやらしー?」

くすくすと笑いながら成すがままに成っている。
仮に目前の彼がその本人であろうとそうでなかろうと、
彼女にとっては大して差のある事でもない。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「初めて仲間…うん、まぁそうなるんでしょうね。」

この島で迎える梅雨が、という意味では初めてだが梅雨の季節そのものは何度も経験している。
まぁ、それはごく当たり前の事で特別でも何でもない…筈。

「……は?」

いきなり恋人の香り、と言われれば流石に死んだ魚のような瞳もきょとんと丸くなる。
と、いうか何でそんな単語が急に彼女の口から飛び出てきたのかがサッパリ分からない。
流石に、少年も自身のそういう細かい匂いまでは分からないのだ。
そもそも、警戒されたらされたでまぁしょうがないという割り切りは出来る。

「……そりゃ、本土に居た頃に施設の妹分とかにやってましたからね。手馴れてるだけでイヤらしい事でもないかと」

小さく溜息を零す。何か含みのあるというか誤解されているのだろうか?
と、思いながらやんわりとそう切り返す。実際嘘は言っていない。
それに、こういう所作は大所帯の環境であれば自然と身に付く事も多い。

で、髪の毛に付着していたゴミなども取り除いたのでヒョイッと至極あっさり手を引っ込めて。
再び、缶コーヒーをちびちびと飲みながら…今更思い出した。名前とか聞いてなかった。

「そういえば、貴女も生徒さんですか?白衣、という事は教師か研究員の方かもしれませんが」

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
宵町 彼岸 >   
「じめじめしてていや……ってよく聞くけどそんなに大変なのかなぁ?
 嗚呼、でもボクの髪は癖が強いから大変かもしれないとか
 最近言われたってどこかにメモしてあったかも?」

のんびりと軽口を叩きながら片目でじっと相手を見上げる。
口にする事それ自体に大した意味はないのだけれど
揶揄われる事には慣れていないのかもしれない。
撫でられている事は別に嫌いではないけれど、
身に付いた癖でつい軽口を叩いてしまう。
引かれていく手の感触が若干名残惜しくもない事もないものの
それを引き留めるようなこともしもしない。

「どーだっけ……うーん……
 あ、そうそう。ボクは研究員だったはずー。
 一応学生としても扱われてるはずだけどねぇ」

どうにも自分の事は特に覚えておけないので
小首を傾げて数秒固まったあとのんびりと肯定して。

「共通点がいっぱい?なのかなぁ?ボク達はぁ」

この島で事情の無い生徒や教師の方が少ないかもしれないけれど
その分細かい所で一致する生徒というのはそう多くはない。

飛鷹与一 > 「確かに湿度は上がりますし、夏に向けて気温も上がりますから。
けど、俺は意外と好きですね。アジサイの花とか綺麗で和みますし。
あと、何かこうよく分からないんですけど雨音とか聞いてると落ち着く?感じがします」

のんびりとした口調の彼女と他愛も無い会話を交えながら、視線を感じればそちらを死んだ瞳で見返す。
勿論、瞳が死んでるだけで性格まで死んでる訳ではない。目付きはただの生まれ付きだ。

「…けど、メモって……もしかしなくても忘れっぽい性格だったりします?」

彼女の言葉にやや違和感。ただの疑問であり別にはぐらかされても追及はしないが。
彼女の軽口に対しても、ごく自然体でそれを咎めたり不審に思う事も無い。
疑問があれば尋ねればいいし、不審に感じた事はそれもやんわりと尋ねればいい。
それではぐらかされたならしょうがない。根掘り葉掘りは少年には合わない。


「…凄いですね、学生で研究者でもある、と」

研究者…正直、自身の面倒な異能と絡めてモルモット扱いされがちだ。
が、研究者にも色々居るし、思う所はあるが悪感情という程でもない。

「…どうでしょう。気のせいかもしれませんしその通りかもしれません。
お互い覚えてないだけで、案外面識とかもしかしたらあったのかもしれませんね」

缶コーヒーの残りを飲み干してから、ベンチ脇のゴミ箱に捨てて置く。
手持ち無沙汰になってしまったので、ベンチに深く背中を預けながら空を見つつ。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
宵町 彼岸 >   
「快適な温度だったら何でも良いんだけどねぇ
 そういうとこ、この島もこの国もきれーだよねぇ。うん」

半分目の前の人物に話しかけながら
半分は独り言で自己解決するかのように
自らの言葉にうんうんと頷く。
そのままだらりと寝返りを打ち、流れる髪の合間から
何処か冷たい、それでいて潤んだような瞳で
目前のヒトを見つめて微笑んで……

「うん。ボクなんというか、覚えておけないんだよねぇ
 それに人の顔とか見分け付かないし……
 まぁその分認識阻害には強いんだけどねぇ……意味ないけどぉ」

言いよどむでもなくあっさりと口にする。
そんな事はどうでもいいと言いたげな口調。
これは"宵町 彼岸"としては一応公開されているパーソナリティで
カタログスペックとして調べれば出てくるようなこと。
隠すような事でもない。

「……んー。ないと思うよぉ?
 覚えてないけど……けど、僕たちはきっと初めましてだよぉ。
 多分きっと」

珍しくきっぱりとした口調で初めましてと言い切る。
事実がどうかはわからないけれど……
自身の置かれていた条件に関りがあったなら、
目前の彼はきっともっとひどい状況になっているはずだから。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「まぁ、何事も綺麗な裏は何とやら、ですけどね」

彼女と同じく、こちらも半分は彼女への応答で、もう半分は独り言のように。
寝返りを打つ彼女を眺めていれば、冷たくも潤んでいるようにも見える瞳とかち合う。

「…相貌失認、というヤツですかね。同じかどうかは分かりませんけど。認識阻害…は、まぁ俺も強い…のかなぁ」

うーん、と考え込む。自身の場合、異能に助けられている…か、どうかは兎も角そういう部分が大きい。
そして、わざわざ彼女の発言を裏付けというか調べたりする事もしない。
あれこれ調べるより、相手に相対した方が手っ取り早いしその方が色々と分かるからだ。
むしろ、”天眼”を使えばそんなの関係なく分かるが、情報量と内容次第ではこちらが破綻する。

「……まぁ、普通そうでしょうね。そもそも、面識あったとしてそちらは覚えてない訳ですし」

肩を竦める。凄惨で陰惨な状況は既に”二度”…少年は身を置いている…が、少年は覚えていない。
思い出す事を拒んでいるのか、記憶そのものを破壊されているのか。
どのみち、互いに覚えていないなら面識があったとしても無意味なのかもしれない。

宵町 彼岸 >   
「だよねぇ……きれーならそれでいいよね」

そこに付随する物で価値が変わりすぎてしまうけれど。
ふと他人事のように思う。
ボクの価値はきっとその程度なのだろうとも。

「大体そんな感じだよぉ。
 面倒だけど意外と便利だよぉ?
 わかんない事とかどーでもいい事は覚えもしないもん」

わからない方が、気が付かない方が良い事柄というのは確かに存在するのだから
そんなものは覚えておかない方が良いに決まっている。

「……まぁもしかしたら僕が忘れてるだけかもしれないよぉ?
 ボクが住んでたところは全焼したみたいだからぁ、多分、になるけどねぇ」

施設に住んでいても、他のどこかでも、
このヒトはどこか大切に育てられたような印象がある。
それはきっと素敵な事で、だからこそ……
きっとあんな昏い世界とはかかわりがないだろう。
……願望に過ぎないかもしれない。
実際はそうではないかもしれないけれど。

飛鷹与一 > 「……ですね。…と、いうか。価値なんて自分と観測する相手次第でどうとでもなりますよ。
内容の美醜に関わらず…自分で自分の価値を完全に把握してる人なんてそうはいないんですから。」

ひたり、と瞳に光が点れば、まるで彼女の思考を見透かしたかのようにそう紡ぐ。
それは、ほんの一瞬のようで、既にその瞳はまた死んだ魚じみたものになっていたけれど。

「…まぁ、あれこれと無駄に悩む必要は無くなりそうですね」

ある意味、悩み多すぎな彼には羨ましいと言えなくも無い。
が、軽々しくそれを口にはしない。そうなってみないと実際、どういう状況なのか把握できないのだから。

「……全焼……全焼…っ…!?」

痛い。キリキリと頭が痛む。反射的にこめかみ辺りを押さえて頭痛を鎮めるように。
施設の記憶、体術の師匠の記憶、家族の記憶、親戚の記憶。
どれも、大切なもので”日の当たる場所”の記憶で。
だから、そんな筈は無い。”日の差さない場所”の記憶なんてある筈が無い。
異能で虐げられた事はあるが、それは珍しくも無い。だから違う。それじゃない。

「……それって、何年前くらいか分かります?…あぁ、変な質問ですいません」

こめかみを押さえたまま、軽く呼吸を整えつつポツリと質問を。

宵町 彼岸 > 「そうしてられたらいいのになぁ
 ずっとずっと、そうしてられたら素敵だよねぇ」

謳うように寿ぐ。
何もない、ただ美しいだけの世界を。

「悩みは尽きないけどね。
 それがボクだから」

その中に居られない異端は小さく呟いて、
見上げるその瞳にふと色が混ざった。

「うん。わかるよぉ?……けどね」

何時の事かと問う声にその唇が妖艶な弧を描いた。
それは眼前の少年への反応か、はたまた別の何かか…

「知らなくていいよ」

優しく、けれど何処か惹きつけるようにそう言いきった。
何故なら…それを調べる事は世界の色を変えるだろうと思うから。
そう、変わってしまうだろう。だからこそ……

「ヒツヨウなら避けて通れないだろーからねぇ」

"私"の口からは言わない。
ベンチに横たわり、ただ見上げているだけのはずの少女は
まるで深淵からのぞき込む怪物のような表情を一瞬、ほんの一瞬だけのぞかせた。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「そうしていられたら、それはそれで素敵なんでしょうけどね。
世の中結局、清濁併せ持って玉石混交が常ですから」

謡うように紡がれる言葉に、同意はするけれど結局、そうはならないのが世の中で人生というもの。

「…いいんじゃないですか?それが”貴女”に根付いているものなら。
俺はそれを肯定しますよ。…あー初対面で何言ってるんだコイツみたいな感じですけどね」

それが、発狂するか受け入れられないものだとしても。
異端は異端でしかないとしても。ああ、肯定してやろうとも。
所詮、怪物でも何でもない…ただの人間であるけれど。

「……。」

そう思った矢先、異端が、怪物が、その暗く底なし穴のような深淵を垣間見せて。
”知らなくていい”。例え、自分がそれに繋がりがあったとして。
おそらく、知ったらそこで”終わり”なのだろうな、と漠然と思う。

別に、少年は普通に恐怖も脅威も感じるし、きっと恵まれすぎた環境なのだろう。
しかし、それはどうでもいい。怪物が一瞬でも姿を見せたなら…。

その刹那だけ、”深淵の怪物”と”死線の天眼”がハッキリと交錯する。

「…ええ、”必要になれば”。避けて通れないなら小細工も何も無く臨むだけの事です」

と、言ってから肩の力を抜いて。そこにはもう、互いに怪物も死線もありはしない。

宵町 彼岸 >   
「玉石混合かぁ……
 根付いたものが本当に宝石だと良いんだけどなぁ
 あ、ラブラトライトとか好き―♪」

響きだけ聞けば他愛のない会話のはずなのに
何処か緊張感の様なものが走るのはなぜなのだろう。
……原因はわかっているけれど、それを変えられるかと言えば
厳しいとどこか冷静に思いながら唇の円弧を自然な笑みへと変えていく。

「ふふ、頑張ってねぇ?
 と言ってもどんなことになるかは私にはわかんないけどねぇ?」

見返された力ある視線にふっと息を抜くように吐き出すと
其処か悲し気な空気を滲ませながらそれは笑った。
ヒツヨウなんて来ないに越した事は無い。
真実なんてそんなに大切だとは彼女は思わないのだから。
けれど、それはきっと同じではいられない部分。
これがヒトで、オトコノコというものらしいから。

「あはは、よくわかんないけどおーえんしてるぅ」

その一瞬後にまるで何事も無かったかのように
朗らかな笑い声を響かせた。
艶やかな瞳で見上げながら紡がれた何処か甘える様な甘いゆっくりとした声は
まるで何も考える必要のないかのようで、
そこに居るのは危ういほど無防備に見える様な
着崩れた衣装のままで横たわり笑っている
能天気かつマイペースな白衣の女学生。ただそれだけだろう。

飛鷹与一 > 「まぁ、宝石じゃなくてもそれはそれいいんじゃないですか?むしろ、石が根付いた方が案外いいのかも。
…と、いうか俺はそんな宝石に詳しくないんですよね…あー、でも落ち着いた色合いがいいかも」

ラブラトライトってどういうのだろう?後で調べてみようかな、とかボンヤリと思いつつ。
会話そのものは、ただの世間話の延長程度のそれ。実際は…どうだろう?
楽しいかどうか、と言われると正直分からない。ただこういう会話もあるのだなぁ、と再認識した。

「頑張るのは当たり前で何時もの事ですから。だから何時も通りですよ俺には。
何が起こってどうなるかなんて分からないですけど…まぁ、それはそれで」

先を見据えても、分からないものが多いのだから。まず足元と今を見ていなければいけないし。
過去は…どうだろう?思い出してはいけないモノもどうやら自分にはあったようだ。
まぁ、それも”必要な時が来れば”思い出さざるを得ない事になるんだろう。
人間だとか男の子だとか以前に。考えや意見が違って当たり前。
それはヒトであってもそうでなくても同じようなものなのだから。
大衆の意見は偏りがあっても、個人個人の考えは差異があるように。

「…んー、応援はいいんで。取り敢えず忘れるでしょうし俺の事を適当に”記録”だけして貰えれば」

記憶ではなく記録。覚えられないなら、メモとかに適当に書き殴って貰えればそれでいいと思う。
取り敢えず、無防備…過ぎる気はするが、そんな白衣の女学生の頭を撫でておこう。

(…ん、確かにちょっと癖っ毛かも…)

が、撫で心地はいいなぁ、と思うので今度はもうちょっと長く撫でておこう。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
宵町 彼岸 >   
「きれーだよぉ?キラキラしてて、落ち着いてて」

大変そうな生き方だけれど、それはそれで彼が選ぶ道なのだから
"私"の出る幕ではないだろう。少なくとも今直ぐは。
将来どうなるかはわからないけれど……きっと何かしら答えを見出すなら
それはそれで誰かの選んだ道。口を出すことでもない。
それは私の道ではないのだから。

「記録?記録は得意だよぉ。
 ん、覚えておくねぇ」

撫でられる手に目を細めながら小さく頷く。
撫でる事は多くとも撫でられることは実はけっこう少なくって……
そしてその行為自体は嫌いではなかった。
だからこそ気が済むまで撫でるままで居させるだろう。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
飛鷹与一 > 「ふむふむ。ちょっと後で調べてみますね?」

宝石の輝きと落ち着いた感じが両立している、となれば興味は沸くものであり。

生き方はそれぞれ。当たり前のようでこれは結構大事な事で。
どういう道を選ぶかなんて今の自分には考えも付かない事で。
深淵の怪物と道が重なる事があれば、それはそれでおそらくどうしようもない事にしかならなそうで。
だからこそ、だ。陳腐に過ぎるが…己の人生を己らしく生きる。つまりコレではないかと。

「そうして貰えればありがたいです……ん、失礼しました」

記録されるならそれで十分。それすらされなければ、何も無かった。それだけで終わる話だから。
一通り、まるで子供でもあやすかのように頭を撫でてからそっと手を引っ込めて。

「…んー、俺はそろそろ戻りますが、貴女はどうしますか?」

と、軽く伸びをしながら尋ねよう。敢えて名前は名乗らないし聞かない。
特徴とかだけ記録はして貰えるのだし、次に会った時にでも追加で名前も記録して貰えばいいだろう、と。

宵町 彼岸 >   
「こんなにも良い日だもぉん。
 ちょっと新しい事があっても良いよね」

眼前の顔は相変わらず他の誰かと区別をすることはできないけれど、
声や思考、そして……もう一つはしっかりと記録した。
この先どう交わるかは別としても、中々面白い事になりそう。
……けれど今はもっと大事な事がある。

「ん―……」

慣れていないからか撫でられているうちに眠くなったのかもしれない。
ぼんやりとした声で生返事を返し頷くと
くるりとベンチの上で器用に丸くなる。
今日はまだまだいい天気。なら……

「……おやすみなさい」

もうしばらくここで眠っていても冷たい雨には降られないだろう。

飛鷹与一 > 「いいんじゃないですか?変化の無い日々も、それはそれで良いですけれど」

ささやかな新しい出来事があれば、それだけで心も多少は豊かになるならば。
さて、彼女はどうやら眠くなったのかもう一眠りするらしい。
ベンチの上で器用に丸くなる様子に、ちょっと笑ってから魔術を再調整。
いわゆるタイマー設定だ。このままだと夜に涼しくなった時に風邪を引いてしまうかもしれない。
おそらく、3,4時間もすれば魔術は自動的に切れて外気温は均一に戻るだろう。

「…じゃあ、俺はこの辺で。お休みなさい――良い夢を」

夢を例え見ないとしても、今は平穏に眠る時間を。
そうして、もう一度だけ猫のように丸くなる彼女の頭を撫でてから。
そのまま、一人屋上を後にするのであった。

宵町 彼岸 >   
「おやすみぃ」

投げかけられた優しい声に短く返事を告げる。
心地よい気温とそれを調整する様を肌で感じながら
まるでそれに気が付いていないかのような表情で腕の中に顔をうずめ
その数秒後には穏やかで定期的な吐息が漏れ始めるものの……

「……」

踵を返した途端、眠り込んだと思われていた瞳が音もなくゆっくりと開き、
去っていく背中をしばし見つめて……

『怪物と相対する者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心しなければならない。
 貴方が深淵を長く覗きこめば、深淵もまた等しく貴方を見返すのだから』

誰にも聞こえないほど遠くへ去ったことを確認すると小さく呟いた。
その口から零れた声は若い子供のようでもあり、年老いた老人のようでもある
混沌とした声色で……

「……まいっかぁ」

今度こそ本当に瞳を閉じる。
近くに誰かくればたちまち覚めるような浅い眠りでも平穏な時間と信じて。

ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」に飛鷹与一さんが現れました。
ご案内:「屋上」から宵町 彼岸さんが去りました。
ご案内:「屋上」から飛鷹与一さんが去りました。