2016/12/15 のログ
ご案内:「屋上」に咲月 美弥さんが現れました。
■咲月 美弥 > 「どうしようかしら」
扉の向こうで指先を合わせて思案する人影が一つ。
まるで闇から湧いて出てきたような姿の現し方をしたそれは屋上にちらりと目を向けた。
こんな寒い日にまさか天体観測をしに来ている生徒はいないだろうと思ってこの場所に来たのだけれど
「思いっきり先客がいるわねぇ」
しかも一瞬こちらの気配に気が付いたような素振りもあってドキリとしてしまった。
正直この月の下じっとしているのはつらいのだけれど……かといって脅かせてしまいたくもないし。
■東雲七生 > 「………ふ、ゎ……ふ。」
ぼんやり月の光を浴びながら、取り留めの無い事を考えていたら。
不意に欠伸が口を突いて漏れ、どうせ誰も居ないからとその場で大欠伸をする。
さながら小型犬の様な様相で、欠伸を終えるとそのまま二、三度頭を振る。
「んん……」
こきこき、と首を鳴らしてから目を擦って。
ひくり、僅かに肩が揺れると顔を上げて扉の方へと目を向けた。
「誰かー……居るー?」
■咲月 美弥 > 「い、いませーん」
咄嗟にそんな答えを返した後返事しなければよかったなぁと思う。
ほかに応え方はなかったのかと自分でも少し呆れてしまいそう。
ばれてしまっては仕方がないのでそっと顔だけみせて申し訳なさそうに微笑んで見せる。
邪魔する気はなかったのだけれど。
■東雲七生 > 「何だ、やっぱり居たんだ。」
先程感じた気配は気の所為なんかじゃ無かったらしい。
敵意や殺意といった害意じゃなくても感じ取れるのは、日頃の鍛錬の賜物かな、と少しだけ自惚れながら笑みを浮かべる。
「別に気にしないで出てくれば良かったのに。
借り切ってた訳でも無いしさ。むしろ先生に見つかったら怒られるくらいだし。」
子供っぽい笑みを浮かべたままで月明かりの下、少女を見遣る。
こんな時間にこんな場所に来るくらいだから、きっとこの子も空なり街並みなり見に来たのだろうと見当を付けて。
■咲月 美弥 > 「邪魔してしまってごめんなさいね」
申し訳なさそうに言いながらその姿をあらわにする。
そして月を見上げて目を細めた。
それに照らされるように頬には紅がさしていて、息も少しだけ上がっていて。
「綺麗な月なものだから魔が差してしまって」
微笑みながら少し離れたところに腰掛ける。
一応本人が気を付けているけれど風向きによっては
甘いくらっとするような香りが届くかもしれない。
「そうねぇ……先生に見つかったら確かにちょっと面倒だわ?」
くすくすと笑いをこぼしながらフェンスに背を預ける
■東雲七生 > 「別に、邪魔だなんて。」
全然、と首を振りながら否定する。
一人でいるのは少し退屈だったところだし、話相手が出来るのは有り難いと告げて。
「あ、やっぱり。君も空を見に来たんだ?
綺麗な月だもんね、満月なのかな、今日は。」
一度夜空を振り返ってから、夜風に伸ばした髪が靡いて、身を竦める。
と同時に、鼻をすんと鳴らしてから、不思議そうな顔で少女を見た。
「香水?……良い匂いだね。」
■咲月 美弥 > 「そうね、こんなにも綺麗な月だもの」
魔が差した……まさにその表現通りで魔には魔の時間があるというもの。
月明かりの下というのはある意味それらしいといえばそれらしいかもしれない。
「昨日は流星群で今日は十五夜でしょう?
その……こうテンションが上がるといえばいいかしらね」
身を撫でる風に揺れる髪をそのまま流れるように手で押さえ
続いた言葉に申し訳なさそうに言葉を返す。
「あまり気にしないでくれるとうれしい……かしら
"私が"我慢できなくなってしまうから」
初対面で褒められるのは嬉しいけれど、こんな夜には少し色濃すぎる香りで
人を誘う香りと同時に抑えきれない時期でもある。
明日くらいには少しはましになっているかもしれないけれど。
■東雲七生 > 「はーん、そうだったんだ。
今日が十五夜、ってのは見たら分かるけど、流星群があったんだ?」
それは知らなかったな、と少し肩を落とす。
知ってたらもっとちゃんと夜空を見たのに、と昨夜の自分を思い返して溜息を溢した。
そしてもう一度だけ鼻を鳴らしてから、小首を傾げる。
「うん?……まあ、気にするなって言うなら気にしないけど。」
香水の匂いなら多少は慣れているつもりだ。
しかし、微かに漂うこれは単なる香水とはまた違う様な気もする。
それが気にかかったが、気にするな、と言われてしまえば素直に疑問も引っ込めるしかない。
■咲月 美弥 > 「ええ、そうみたいね。おかげで随分騒がしくって」
困ったような笑みを浮かべる。
空に星が流れるさまを見学に来るのは決して人だけではなくって
むしろそういった夜は人以外のほうが多いくらい。
だからこそ当てられて……しかも今日は満月だなんて。
小さく苦笑のようなものを漏らしながら空を見上げる。
星が流れるのは昨日の名残か。
「ごめんなさいね。ありがとう」
そうしてぽつりと言葉を漏らした。
■東雲七生 > 「昨日もここで?」
それとも他の場所でだろうか。
流星群なんて何処でも見れるだろうけど、騒がしいとなるとそれなりに場所を選びそうだと七生は思う。
まあ、話を聞き付けた生徒たちが屋上に集まった、という事も十分考えられるけれど。
「あ、流れ星。
……え?はは、別にお礼を言われる様な事じゃないって。
俺、東雲七生。二年生。君は?」
同じ色の髪の少女に少しだけ親近感を抱きながら、笑みを浮かべて名乗りをあげた。
■咲月 美弥 > 「ここでも、かしら」
地味な違いかもしれないけれど光源の有無や風の通り抜け方というのは
意外と重要で、そういう意味ではこの場所はお気に入りだった。
同じように考えるものもそれはそれなりにいて、昨日はそれなりに影があったように思う。
「……」
流れ星に小さく願い事をつぶやく。
流れ星が流れている間に3度唱えたら……なんてお話があったけれど
その条件を満たすならきっとその夜は流星群が降っている時期だろう。
「あら、二年生…一応先輩なのね。ごめんなさい
私は咲月 美弥。一応一年生……かしら」
あまり敬語等が得意ではないのよと少しだけ申し訳なさそうにしながら自己紹介を返す。
緋色の髪というのはそう多くないけれど目前の彼はおそらくれっきとした人間
この場所に長くいたならうっすらと此方にも気が付いているかもしれないと思いつつ
それはそれで構わないかなとぼんやりとも思う。
■東雲七生 > 「そっか、ここでも、か。
てことは、もっと色んな場所知ってる?眺めの良いとこ。」
屈託のない笑顔を向けて、一歩、少女へと歩み寄る。
七生としては夜空を眺める場所などこの屋上か、時計塔の天辺くらいしか手持ちが無いのだ。
これを機に、もっと違う場所を開拓出来ればと期待しつつ。
「咲月……美弥。そっか、咲月っていうんだ?
へへ、一応先輩だけど……まあ気にしなくて良いよ。真っ当に先輩扱いされる方が稀だしさ。」
諦めた様な笑みを浮かべて改めてよろしく、と告げる。
時折夜空を見上げ、再び星が流れないかと探しては。
「咲月は今年の春からこの学校に?」
機を見て問いを投げたり。
■咲月 美弥 > 「好みによるけれど……素敵な場所はいくつか
純粋に空を見るなら、やはり高いところが一番ね」
見上げたままのんびりと答える。
そうして少しだけ近づいている彼に少しだけ目をしばたたかせる。
甘い香りは一歩近づくたびにより強く鼻をくすぐるだろう。
それは付けすぎた香水のような嫌味のような印象はなく、けれど強い蠱惑的な香り。
それに当てられてしまわないか幾分か心配そうな表情を見せる。
夢魔はそれで意識を奪うことすらあるのだから。
「ええまぁ今年の春から……そんな所」
曖昧な笑みを浮かべる。
実際はもう少し最近だけれど、お祭りで浮かれる学生を見ているのはそれはそれで楽しかった。
開放的な気分になってよい雰囲気を醸し出しているカップルなども幾らか見られて、
それはこの場所も例外ではなかった。
■東雲七生 > 「だよねえ。
俺もさ夜空観たい時とか屋上とか時計塔の上とか行くんだけど。
他にもどっか良いとこ無いかなーって思っててさ。
なあ咲月、良かったら一つ良いとこ教えてよ。」
近付き過ぎす、かと言って声を張らなきゃならない程遠くは無い距離。
にこにこと幼子の様な笑みを浮かべてから、すん、と鼻を鳴らす。
「うん、やっぱり良い匂いだね。どこの香水?」
売ってる店が解れば、同居人にもお奨め出来るかもしれない。
そんな事を考えながらふわぁ、と欠伸を噛み殺す。
何だか少しだけ、頭がぼーっとするような。その程度で済んでいるのは、きっとある程度の免疫のような物が出来ているのだろう。
夢魔に対してというよりは、異邦全般に対して。
「そっかぁ、どう、この島。この学校は。
少しは気に入って貰えてると良いんだけど、先輩としてはさ。」
にこにこと笑みを崩さないまま、フェンス越しに見える夜の常世島を眺める。
冬の夜の澄んだ空気の中に在って夜景は一際輝いて見えた。
■咲月 美弥 > 「そう、そうね。構わないわ」
近づいてくる様子を心配げに見守っていたけれど
しっかりと意識を保っていることを確認すると少しだけ生来の悪戯めいた笑みをこぼす。
「独自調合……かしら、そんな所」
少しだけ自身の胸に手を当て目をつむり……
その後今度はゆっくりと近づきこちらから手を取る。
あの距離で平気なら……これくらいには抑えられる。
「好きよ、この島」
星の砂を散らしたような夜景に目を向け、一つ深呼吸をした後
短く答え小さく笑い声を響かせながらながら手を引いて歩きだす。
■東雲七生 > 「そっか、サンキュ!」
咲月の顔に笑みが浮かべば、少しほっとした様子を見せる。
すぐに、にぃっ、と子供っぽく笑みを浮かべればまた一歩、歩み寄って。
この場に先に居た事で、変に気を使わせてしまったのではないか、と心配していたのだ。
「へえ、独自調合。そんな事できるんだ?すげーじゃん!」
疑うようなそぶりは微塵も見せず、そもそも疑うという事を考えても居ないかのように感想を口に。
そうしている間に手を取られて、少しだけ頬を赤らめた。
単純接触にはまだ少し心に余裕が無い。
「え、えっと。そっか。なら、先輩として嬉しいよ。」
あはは、と半分照れた様に笑いながら。
手を引かれるままに付いていく。
■咲月 美弥 > 「こっち」
笑みを含ませて階段を下り、歩を進めていく。
誰もいない廊下を靴音を響かせ、まるであいびきをする恋人のような雰囲気で
時折振り返りそこにいたずらっぽい笑みを浮かべながら。
やがて建物の間、奥まって少しだけ開けた中庭のような場所で立ち止まり、
勢いそのまま手を引き寄せるようにして体を近づける。
「ほら、見て?」
至近距離で囁くように言うと一歩だけ離れ、空を見上げる。
■東雲七生 > 「こっち……って、えっと、中?校舎の?」
手を引かれるがままに進んだ先は夜の校舎。
暗いのは気にならないが、如何せん先生たちの目を盗んで屋上に来ている手前、
見つかったらと考えると少しだけ背筋が冷える。
それに、何だか必要以上に健全で無い事をしているような気分がして妙に落ち着かない。
「あ、えっと……ここ?」
屋上に居た時よりもそわそわと、落ち着かない様子で居たが。
促されるままに夜空を見上げる。
■咲月 美弥 > 足を止めたそこは建物に囲まれた場所。
昼であれば屋内に明かりを取り込むために設計されたようなこじんまりとした場所で
昼そこから空を見上げても、正午以外太陽すら見えないことが多いようなそんな隙間の場所。
それでも彼女は楽しそうに答えるだろう。
「ええ、ここ」
と。そして再び片腕を取り、自身の胸元に当てるように沿う。
けれどきっとそれはあまり気にならなかっただろう。
……そう。今は深夜で、そして今夜は満月だった。
夜だからこそ屋内は真っ暗で、夜空を照らす人工物の明かりは全て囲まれた壁に阻まれ
見上げた闇の中切り取られた額縁のようなそこに、ぽっかりと浮かぶ真円の真珠のような月。
その周りには僅かに星が煌めき、静かにやさしく月光が降り注ぐ。
まさにこの時期、この時間にしか見られない……そんな光景。
■東雲七生 > 少しだけ胸の鼓動が高まる。
異性と二人きりで、こんな所に居て、万が一誰かに見つかったらとか。
それが先生では無く、生徒であっても、最悪知り合いの可能性だってあり得るとか。
そんな事を考えて、居たのだけれど。
「………わぁ。」
それらの杞憂は全て、脆く消え去ってしまった。
見上げた夜空に、浮かぶ満月。
小さく切り取られたかのような光景が、普段見落としそうな場所である事も相俟って酷く幻想的に映った。
静かに腕を取られていても、案の定七生は意に介さない。否、意に介する余裕すらない程にその光景に見惚れていた。
「すっ……げー……凄いじゃん咲月、こんな場所いつ見つけたのさ?」
まだ一年もこの学校に通ってないのに、と僅かに興奮で紅潮した頬で振り返りつつ。訊ねる。
きっと答えが返って来てもきっとうわの空で、月を見上げているのだろうが。
■咲月 美弥 > 「……秘密」
月光の元、濡れたような瞳と艶やかな唇を形よく細め、
まるで繊細なものを前にしたような様子で小さく小さくつぶやく。
冷たい冬の空気に少しだけ上がった息が溶けていく。
そして感嘆し見上げる様にゆっくりと優しげな笑みを浮かべた。
それは本当に穏やかで、見る者の心を癒すような笑みだったけれど見るものは居なかっただろう。
この場所、この時間では……そう、今だけは二人きり。
そして見ていて欲しいのは、私ではなくこの風景。
空を仰ぐ彼に小さく心の中で呟く。
(……会えてよかった。)
そのまま彼女はそっと手を離し、ゆっくりと離れていくだろう。
空に見惚れたままであるならば、おそらく気が付かないような静かさで、そっと。
そうして音もなく夜の闇へと溶けていく。
甘い残り香と僅かな温もりだけを残して、まるで出会った事それ自体が一夜の夢であったかのように。
■東雲七生 > 「はぁー、そっかー……」
呟きが聞こえた気がして、反射的に相槌を打つ。
相手によっては頗る気分を害してしまいそうな反応だが、当の本人は新たな発見と美しい光景に夢中だった。
髪と同じ紅い瞳を輝かせながら、たった今知ったばかりの景色を見つめ続ける。
傍らの少女の笑みにも気付かないまま、子供の様にはしゃいで、すごいすごい、と連呼しつつ。
「……な、咲月。また来月も見れるかな!?」
少女が離れてから少し間が空いて。
まだ興奮を残したままに七生が振り返れば。
「……あ、あれ?咲月?」
■咲月 美弥 > 仮に傍で空を見上げる彼を見た者がいるならば、こう称するだろう。
『一片の絵画のようだった』と。
その場所には月光がまっすぐに降り注ぎ、それを仰ぎ見る紅の髪と瞳を持つ少年。
月明かりが作る光と影に照らし出される様は活動写真の一瞬を切り取ったようで
例え空が見えずとも、見る者の心を奪うような光景。
そこにはたった一人でよかった。
いや、一人だからこそ時間が止まるような一瞬になったのだろう。
夢魔にとってはそんな幻想の一時を作り出せたことだけで十分だったのかもしれない。
彼女の真意は……それこそ彼女しか知りえないのだけれど。
■東雲七生 > 「っかしーな……トイレでも行ったのかな。」
小さく辺りを見回して、頻りに首を傾げていたが。
まあ手洗いに立ったのならすぐに戻って来るだろうと再び夜空を眺め始める。
それから数刻、額縁から月が抜け出すまで、夢現の態で月を眺めていたのだった。
充分に月を見た後も、少女が居ない事に怪訝そうな顔をしていたが。
「あー……多分先帰っちゃったんかな。
ちゃんと礼を言っときたかったんだけどなー……。」
少しだけ気の利かない自分に不満げに頬を膨らませる。
もし学校内で見かけることがあれば、改めて礼を言おうと心に決めつつ。
ご案内:「屋上」から咲月 美弥さんが去りました。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。