2017/03/18 のログ
ご案内:「屋上」に宵町彼岸さんが現れました。
宵町彼岸 > 「――♪」

階段をトントンとリズミカルに上がる音がする。
そのまま屋上の扉を開ける音と共に現れたのは幾分小柄な影。
吹き抜ける風と、春と、お日様の香り。
久しぶりの屋上と屋上から見える景色は相変わらず綺麗で……

「今日も誰もいないし重畳重畳……って」

思いっきりいた。全力で目立つ髪の色をした人が。
それはもう思いっきり屋上を謳歌していた。まさにこの世の春。
一瞬戻るべきかと考えたのは気づかいではなく単純に嗜好の問題で……

「まいっかぁ」

別に大したことないしと思いとことこと歩き出す。
お気に入りの日傘をさしたまま屋上の柵まで歩いていき

「どっこいせぇ……」

少し親父臭いと言われそうな掛け声をしつつ腰かける。
今日のお弁当は……サンドイッチか。
何を作ったのか忘れていたけどなかなか場にあったお弁当。偉い私。
そんな自画自賛をしつつ

「いただきまーすぅ」

お手手を合わせて一礼したあともぐもぐとしつつ空と景色を眺める。
今日も空も海も穏やかで、平和な一日。

東雲七生 > 「ううん?」

ひとまず意識だけでも空中浮遊を楽しもう、という名目の上でひたすらボーっとしていたところ。
足音がして、その後声も聞こえて、浮雲の様な意識を掻き集めて我に返る。
誰か来たのだ、と思い至って欠伸と共に僅かに身を起こした。

「………ふ、む。」

どうやらランチタイムのようだ、とそれだけ確認すると再び起こしていた上体を横たえる。
長い事お日様の下でぼーっとしてたせいか、まだ少し身体を動かすのが億劫だった。
ただ、興味が無い訳でも無いのか、視線だけはサンドイッチを食べる少女へと向けている。

宵町彼岸 > 今日は周りが愕然とする日だった。
まずちゃんと服を着ている。サイズはあっていないが。
教室に点呼時に来ている。最初は隣のクラスに座っていた。
鞄を持っている。教科書は一冊も入っていないのはいつも通り。
そしてお弁当まで持っている。……料理できたのか。
普段からは想像できない奇跡が起きたとざわつく周囲をしり目に
元気に点呼した後……

「んー……良く寝たぁ」

元気にいつも通り眠っていた。これで成績優秀者なのだから質が悪い
……オチとしては今日はお弁当は全く必要ない日だったりもするのだけれど。
そもそも授業がない日。ある意味平常運転。
とは言え、そんな日でも学校の教室にやってきて駄弁る学生というのは意外と多い。
彼女の周りにもそんな知り合いは存外多く……
結局彼女らとお昼近くまで過ごすことになったのだけれど

「あれ……多くない?」

食べているうちにふと気が付く。
彼女は比較的小食で……普段はあまり食べない。
それこそお昼はラン〇パックで満足出来てしまう程度。
けれどお弁当箱は控えめに言って男性運動部員のお弁当ぐらいのサイズはあった。
具材は本当に色々で、どうしてこんなに作ったと思うほど。
多分作っているうちに楽しくなって色々作ってしまったのだろう。

「……いやまぁ全く覚えてないけど」

楽しくなりすぎて謎の食材を使っていないのは奇跡だろう。
なんだかんだでレシピや手順を大事にするところがあるからか
水気の多い物は水切りもしてあるし……

「誰だこのお弁当作った天才。あ、ボクか」

当たり前だ。他に誰かが作るわけもないのだから。
とは言え食べきるにはちょっと多すぎる。

「……どしよこれ」

とりあえず食べられるだけもぐもぐする事にする。

東雲七生 > 「………。」

そういえば、今日は空腹を感じてない。
見ず知らずの少女の昼食風景を眺めながら、そんな事を考える。
朝はしっかり食べて登校してきて、出欠採った後はひたすら屋上でごろごろしてたわけだから、
つまることろ摂取したカロリーを消費しきれていないだけなのだろう。
思い返せば友人と雑談さえ碌にしていない気もする。

「……んー、ふわぁ。」

何やら量を多く持ってき過ぎてしまった様子の少女を横目に、隠すわけでも無く欠伸を一つ。
小型の動物を思わせる所作の後は、再び「他に見るものも無いから」と言いたげに視線を少女へと戻した。

宵町彼岸 > そんなほぼ完ぺきな一日には実は点呼数時間前に来ていて
担当教諭と幾人かの知り合いによる修正が行われたという涙ぐましい
裏事情があったりもするのだけれど……
目下今の問題はこの多すぎるお弁当をどうするかだった。
食べられるだけ食べてしまったし……
ああこれ、食堂に向かう人達を呼び止めて一緒に食べるのが正解だった奴だ。
そんな事を考えているとふと赤い髪の先人に目が向く。

「……いる?」

そちらに向かって首を傾げながら訪ねてみる。
どうせかお弁当箱なんて持って帰るのを忘れるのだから
それが温かくなってきた場所に放置されれば……
どんな"楽しい楽園"が出来上がるかは想像に難くない。
男子生徒はいつでもお腹を空かせていると
誰かが言っていた気がするのでそれを信じての提案。
残念ながら彼はお腹がすいていないのだけれど。

東雲七生 > 「えっ、……んと、じゃあ、もらう。」

空からは暖かな日差しが絶え間なく降り注ぎ、油断すれば再び意識を引っ張り上げていきそうになる。
まあ再びの午睡に入るのも悪くないかな、とぼんやり考えていたところで声を掛けられ、七生は少しだけ驚いた様に目を瞠った後に、頷いた。

別にお腹が空いているわけでもないが、どうせそのうち減るのだろうし、と考えた上で。
だったら貰えるものは貰っておこうの精神で手を差し出した。
……ベンチに寝転んだまま。

宵町彼岸 > 食べきれないから食べてしまってなんて事情だけ見れば大変失礼ともいえる。
最もそんな事を気にするような性格でもないけれど。
一般常識とかそういう物とは程遠い彼女からすれば悪気は完全に0。

「ん。全部食べちゃっていいよ?」

とすれば寝ころんだまま差し出される様子にも特に気にせず
座ったままずりずりと近づき手の上にバスケット事ぽんっと乗せる。
見ようによっては何とも緩い空気の二人。
幸いにも今回は変なものはなにも含まれていない。
ホームパーティーかと突っ込む量という事以外はいたって普通の
一口サイズサンドイッチ。

「……何かあるの?」

何を熱心に見上げていたのだろうと空をぽけーと見上げてみる。
勿論空には雲と太陽しかないけれど、この島ではUFOは珍しくない。

東雲七生 > 「食べきれない量持って来るなんてうっかりしてんね。
 とはいえ今はそんな腹減ってないし、後でおやつ代わりにでもするけど。」

いいよね、と特に確認もせずに渡されたバスケットを鞄に仕舞い込む。
授業が無い事は前以て知っていたから、鞄の中はスッカスカ。バスケットの一つや二つ簡単に納まった。
へにゃり、と笑みを浮かべてから何かあるのかと問われれば、一度視線を空へと向けて。

「いや……別に、何も無いと思う。
 ただここで寝転がったら、やけに良い天気でそのまま眺めてただけでさ。」

ひらひらと手を振りながら答える。
何か目当てがあって空を見てた訳では無いと。実際、少女が屋上に姿を現してからは其方を見ていたことからも窺えるだろう。

「奇抜な格好だけど、科学部とかの所属?」

学年は同じ……にしては見掛けた覚えがないから、一つ下くらいだろうか、と見当をつけつつ。

宵町彼岸 > 「うんうん、そうするといいよ」

食べ物を無駄にするのは良くない。
なら健康な男子に美味しく食べてもらおうそうしよう。

「ふぅん……まぁそういう日もあるよね。
 ボクはいつもそんな感じだけど」

そういえば忘れていたけれど学生は今ほとんど休みだった。
春休み?そんな感じのもの?とにかく同学年の皆は今頃休みを謳歌しているはず。
研究室に籠りますなんてそう多い数ではない。

「あー……えっと、あ、そうだ
 異能を医学転用する研究室にいるよ。
 クラスは……なんだっけ?まいっか。
 服は……適当に選んでるから多分そんなかんじ」

どんな感じというのだろう。
数秒停止した後こめかみをトントンとたたいてのんびりと答える。
とは言えあまり自分の事には興味がないし、よく思い出した方。
相手は若そうに見えるし、ゆっくりしたい時期なのだろうと思う。

東雲七生 > 「じゃ、遠慮なく。
 さんきゅーね、ええと……知らない人。」

名前も知らない様な相手から食べ物を平然と受け取れる程度には、七生もまた一般常識が欠けていた。
欠けていた、というよりは意識して棄てているに近いのだが。

「うんうん、そういう日だったってこと。
 このまま寝るもの良いかもなーって思ってたところで、君が来たからさ。」

だから何だという訳でもないし、絶対に寝たかった訳でも無い。
ただ何となく時間を潰していただけ、と説明して。

「ふーん、異能を医学テンヨー…‥ふぅん。
 適当に選んでるにしたって、だいぶブカブカだけど。
 引っ掛けたりしないよう気を付けてね。」

まあ他人の服の趣味にとやかく言う様な性格でも立場でもない。
春の日差しで半ば溶けかかった様な笑みを浮かべてから、改めて少女の事を眺める。
やっぱり見知った顔の中には居なかった。まあ、だから何か困るのかというと、案外そうでもないのだけれど。

宵町彼岸 > 「はぃどーぞ」

知らない人から食べ物をもらってはいけないというのは
小学生辺りから叩き込まれる一般常識らしい。
とは言え、毒が入ってるわけじゃないんだし今回は目を瞑ってもらおう。
誰がかは知らないけれど。

「あるよねぇ。だれだっけ?
 なんでもない日おめでとうっていった人」

こうしてぼーっと空を眺めるのもそれはそれで悪くないと
街並みに目を向けながら思う。

「そだよー。
 んぁー……だってぴっちりした服って着るのめんどいじゃん
 ボクそういうのきらいなんだよね
 変な人とかよく引っかかるね!そいえば。
 あれ?ひっかかったっけ?まいっか」

既製品だと色々過不足があるというのもあるし
そもそもあまりにも無頓着だった。
目の前の彼はそこそこ気を付けてはいるようだけど……
それでも感覚としては近い感覚の持ち主ではないかとふと思う。

東雲七生 > 仮に毒が入っていたところで、あまり気にせず受け取っていた事だろう。
少しだけ得をした、と嬉しそうに鞄を一瞥してから赤い目を細める。

「さあ、それは知らないけど。
 別にめでたいとまでは思ってないしさ。」

けらけら笑いながら肩を竦める。

「あ、いや……変な人って。
 俺が言いたかったのは、ドアとかに挟んだりとかって意味での引っ掛けない様に、だったんだけど。
 まあ、それはそれで気を付けた方が良い気もする……」

あまり頓着していないらしい様子に、少しだけ呆れた様に笑う。
話を聞く限りではオーバーサイズの服を好んで着るだけのようだからとやかく言う事でも無さそうだ、と判断した。
七生自身、袖の余るシャツを着たりもする。その延長なのだろう、と。

宵町彼岸 > 「あ、思い出した。帽子屋さんだ。
 水銀吸いすぎ注意?まぁいっかぁ」

どうでも良い事はおいといて、人懐こそうに目を細める姿に小首を傾げる。
なんというか……受ける印象と実際に差があるというか
無頓着そうな空気の割にきちっとしているというか
わかりやすく言うと周囲に女性がいる雰囲気がある。
今のところ具体的にはわからないけれど。

「そうそう……赤い制服着た人とかに
 酔ってない?とか変なお薬してない?とか
 こっち来てすぐは何度か聞かれたなぁ……」

それは変な人ではなくどう聞いても風紀委員です本当にありがとうと
誰かがいたら突っ込んだかもしれない。
実際問題危ない人も何度もひっかけているがそれはもう綺麗さっぱり忘れてたりもする。
そんなどうでも良い事よりも何気ない会話の方が面白そうと判断。
興味深げに相槌を打つ。

東雲七生 > 「帽子屋さん?水銀?」

よく分からないので首を傾げるほかに無い。
寝転んだままで首を傾げるので視界があちこち引っ繰り返ったりするが気にした素振は無く。
ついでに相手からの人物評にもそこまで頓着しない性分のようだった。

「赤い制服……あー、それって風紀委員か。
 まあ、それは無理も無いというか……うん、それも一応注意はしないとな。」

そっちかー、と少しだけバツの悪そうに苦笑い。
予想よりももっとずっと健全な事だった、と内心で反省。
オーバーサイズ故に緩みがちな襟元やらから覗く素肌に良からぬ連中が寄って来るのかと想像した自分を恥じる。

宵町彼岸 > 「そそ、まぁ些細なあれだよ。
 ボク結構思考が飛ぶタイプだから気にしないのが良いよぉ?」

寝ころんだまま器用に首を傾げるあいてにふわふわとした笑みを向ける。
服が寄ったりするところには無頓着な辺り相当眠いのかそもそも気にしないタイプなのか。
どちらにせよ春の平和な昼間の日差しの下で会話するにはちょうどいいのんびり具合。

「うんー。注意しないとだよねぇ。
 最近はああ、こいつかみたいな顔されるようになってきたけどぉ。
 まぁ実際ちょっとおかしな人m……」

――言いかけたところで再度屋上の扉があく。
其処には2年女子の姿。
此方を眺めるとその人物は『あ、カナタこんなところに』と漏らす。

『もー。教室でご飯食べるから待っててって言ったじゃんー。
 また忘れてるんだろうけど……。
 ごめんなさい。この子ちょっと変わってて……。
 何か迷惑かけませんでした?』

近づいてきた彼女は貴方に頭を下げる。
もしかしたら2年同士顔見知り程度かもしれない。

東雲七生 > 「そう?
 まあ、そう言うなら気にしないけど。」

分野の違う話なのだろう、と七生は自分を納得させる。
研究畑の少女と、典型的な運動少年である七生との隔たりは、
無頓着な少女が意図せず晒す谷よりも深いのかもしれない。
そんな細やかな擦れ違いも春の陽気がゆるゆると包んでいく。

「風紀に顔覚えられてる、って普段何してんのさ。
 いや、別に危なっかしいってだけだと思うけど?」

やれやれまったく、と苦笑したところで更なる足音と扉が開く音。
そっちへ顔を向けるより先に聞こえた言葉に、どうやら知り合いらしいと見れば。廊下でたまに見かけた様な気がする同学年が。

「あ、えっと……いや、大丈夫大丈夫。
 特に迷惑らしい迷惑も被ってないし、むしろ色々と恵んで貰ったし。」

慌てて身を起こして首振り手振り。
幼い外見に見合った笑みを後から来た少女へと向けた後、先に居た少女へと顔を戻して。

「カナタ、っていうんだ?」

宵町彼岸 > 「そういえばそうだった。ボクの名前カナタだったね。
 学生証忘れちゃって4時間ほど拘束されたんだっけ?誰かがそう言ってた」

数秒固まった後うんうんと頷く。
視線の行方は特に気にしていなかった。というか気が付いてもいない。
地べたにぺたんと座っているので身を起こせば覗き込みたい放題だったりもするが無頓着。
……どうも自分の名前というのはいつも思い出すのが骨だ。
そのせいで彼女を確保した風紀委員の目が死んでいた事は彼女は全く知らない。
周りの気苦労とは対照的に春の日差しのようにのんびりとしていた。

「でもこんなとこまで探しにきたって何かあったの?」

一緒にボク何か忘れてる?と女生徒に尋ねると、もう!と呆れたあと
諦めたような返事が返ってくる。

『やっぱ忘れてる……カナタ明日から研究所籠るから
 そうなる前にプリ取りに行こうってさっき話してたじゃん。
 急にいなくなったから皆探してるよ?』

いつもの事だけどとため息をつく女子生徒とは対照的に、そうだっけ?と首を傾げながらも立ち上がる。
小さく笑い詫びの言葉を口にして女子生徒を宥めつつ
置きっぱなしだった日傘をゆっくりと拾い、小さな音を立てながら閉じる。
それをみて迎えに来た女生徒は貴方に小さく頭を下げた後、何かをスマホ打ち込みながら付きそう。
そのまま日傘をくるりくるりと回転させ、迎えに来た女生徒に連れられて屋上の扉へと向かうだろう。
そうしてぼんやりとした表情のままふと立ち止まり……

「またねぇ?」

ゆるーとした口調とふわふわした笑顔を向けて告げ、のんびりと去っていく。

東雲七生 > 「自分の名前を度忘れか……」

流石にそれは呆れを通り越して感心してしまう。
しかし先程の所属に関するふわふわした言い方も併せて考えると、自分自身に関してはあまり頓着しない性質なのかもしれない、と七生はぼんやり考えた。
おかげで目のやり場に困ったり、目に毒だったり、眼福だったりしたのでもう少し気を払うべきだとも思うのだが。
そういう意味でも、風紀委員に安寧が訪れるのは遠いと予感させる。
穏やかな春の日差しに比べ、風紀委員冬の時代。そこまででもない。

それからはベンチにちょこんと座ったまま、カナタと呼ばれた少女と、呼びに来た少女のやりとりを他人事の様に聴いていた。

「ああ、またなっカナタ!
 あ、俺ナナミ!東雲七生!」

次に会った時に覚えているかどうかはおろか、また会う事があるのかすら怪しいけれど。
自分が一方的に相手の名前を知ったのでは公平さに欠ける、と名乗りながら見送った。

ご案内:「屋上」から宵町彼岸さんが去りました。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。