2017/04/23 のログ
■VJ >
「ごめんなさいね、慌ただしくして」
長居はしない。こちらの都合だけれど。
「あ、それと――レザーのジャケットにワカバは似合いませんわ
冬が始まる前に、外せるように。急いだほうがいいと思うけど」
そう言い残して、また彼女はヒールの音を響かせて消えた。
ご案内:「ロビー」からVJさんが去りました。
■獅南蒼二 > 言葉を返そうとするまえに,女性はさらりとロビーから去ってしまった。
小さく肩をすくめて,笑う。
「……本当に慌ただしいな。
だがまぁ,あの様子なら勝手に答えにまでたどり着くだろう。
いつもあんな調子なのか,あの女教師は?」
知り合いであろうヨキにそんな風に聞いてみつつ,
「…で,何だったか……弁当?
ただでさえ忙しい時期に,お前と話している時間が作れると思うか?」
話を戻した。折角なので珈琲のタブを開けて,一口飲み,
「……まぁ,崑崙で酒を飲むという点に関しては満場一致で賛成だがな。」
それが妥協点だろう。珈琲を飲み干して,缶をテーブルの上に置く。
■ヨキ > 「はは。言葉より先に手が出るか。
そうしたらまずは、拳よりも強い言葉と精神とを武器にすべきではないかと思うがなあ。
戦いの能力で言えば、ヨキなどへなちょこもいいところであるからな」
何しろ美術教師だ、と何故か胸を張る。
どうあれ「常世島の秩序」を旗印にやってきたヨキは、生徒相手に折れたことが殆んどない。
VJの弱音が弱音と受け取れぬほどには、このヨキという男は無神経なようだった。
「探してみて見つからなければ、またヨキらを頼ることだ。
我々は生徒を教える仲間なのだからな。――コーヒー、有難う」
礼を告げてVJを見送り、彼女が言い残した言葉にふっと笑う。
「……だってさ。
早いところ『カンを取り戻さなくては』いけないようではないかね、獅南先生?」
小声でにやりとする。
■ヨキ > やがて獅南に向き直り、残りのコーヒーを飲む。
「いや。ヨキも彼女を詳しくは知らないが、評判は悪くないぞ。
教師も人間だ、壁にぶつかることもあろう」
コーヒーにチョコレート。最高の組み合わせだ。
「そりゃあ……多忙なのはヨキとて同じだ。
話すヒマがないならそれで構わん。独りで勝手に過ごしてるから」
この図体のでかい、むやみに存在感だけは人一倍強い男が、無言で居座るつもりらしい。
「酒だけでもいいけど」
言葉とは裏腹に、どう見ても顔が(よくない)と言っている。
相変わらず嘘と強がりが下手だ。
■獅南蒼二 > ヨキの言葉に,小さく肩をすくめて…
「…なに,エンジンを掛ければすぐに思い出すだろうさ。
お前こそ,へなちょこの美術教師なのだろう? 振り回されんようにな。」
意外と負けず嫌い…いや,意外でも何でもなく負けず嫌いなのだった。
貴方が去っていった女性に向けた言葉には…何も言わない。
必要であればまた助言を求めに来るだろう。そして,必要でなければ手を貸す必要は無いだろう。
「そうか,悪くないのなら私よりはマシだな。
……で,多忙な美術教師は自分のアトリエで静かに仕事をするということを学んではくれんのかね?」
貴方のそんな顔は何度も見てきたし,ずっと変わらない。
そしてその顔をしたときは大抵,駄目だと言っても最終的には居座るときだ。
「…ソファとテーブルを片づけておいてやるから,そこでお前の仕事をしろ。
前のようにあれこれ口を出されては気が散るのでな。」
だからこうして,先に条件を提示しておく。この2人の距離感は,こうしてだんだんと分かりやすくなってきた。
■ヨキ > 「さすが。相当乗り回していたんだろうからな。悪い奴だ。
さて、建物の壁なら壊したことはあるが、バイクを起こすくらいの力がヨキにあるものかな」
へなちょこアピールがすごく下手だ。
こうして黙っていたって肩と胸板は獅南よりしっかりしている。
相手が続ける言葉に、冗談めかした顔で笑う。
「残念だったな。独りきりで仕事をするのは、もう十分やってきたとも。
もうちょっと気軽に、お前の所へ行きたくなっただけだよ」
言って、示された条件にいよいよ笑みを深めた。
「……ふふ、決まりだな。
お前もタダで美味い食事が食えるんだから感謝しろよ」
大口を叩く。他者に対して折れぬヨキであるならば、こうしてコツを掴まれさえすると操られるのは簡単だった。
「本当に邪魔になるときには、長居しないから。絶対にさ」
“絶対に”。ヨキが口にするとき、それは紛れもない真実だった。
■獅南蒼二 > 「若気の至りだ……もう時効だろう?」
獅南こそ,加齢と不養生によって体力の衰えは著しい。
体格も決して恵まれているとは言えないのだし,経験以外に勝っている部分は何一つ無い。
それでも決して強がりを崩さず,そしてそれをやってのけるのがこの男だ。
「それではまるで私がタダ飯に釣られたようじゃないか?
まぁ,感謝はするよ…そうでなければ出前の蕎麦くらいしか食わんようになってしまうからな。」
……この男は本当に,生活能力の欠片も無い。
教わったことや自ら必要を感じて学んだことはすぐに吸収するというのにこの体たらくである。
そんな獅南を気にかけてくれる貴方は,約束を決して破らず,嘘を吐くこともしない。
それは獅南が一番よく知っていることだった。
「いや,邪魔をしないのなら構わんよ。
……それに私も,お前に相談したいことがあってな。」
……最後に付け加えた言葉は,これまでになく深刻な表情だった。
■ヨキ > 「これからは、真面目にしていてもらわないとな?
それでこそ大人の格好がつくというものさ」
目を細める。ふざけ合って交わすような言葉の合間に、気遣いが交じる。
「全く、そのうち蕎麦さえ億劫がって食わなくなるのではないかと心配で敵わん。
それなりに腹の膨れた方が、頭も冴え渡るに決まっている。
どうせお前と過ごすなら、何かしらお前にとってもプラスにならねばな」
それから最後に「相談したいこと」と聞くや、ヨキの眉がぴくりと動いた。
「…………。何だ?」
唇を引き結ぶのは、真面目な話をするときの表情だ。
続きを促す。
■獅南蒼二 > 「これから? 何を言うか,私はいつでも真面目だろう?
警察に止められれば真面目に魔術で切り抜けるつもりだったさ。」
冗談半分,本気半分である。
あの蕎麦屋が居る限りは餓死することは無いから安心しろ。
なんて冗談にしても笑えない冗談を続けて…
「…お前も知っている女生徒の話だ。
ここでは人の目も耳も多い,続きは,お前が弁当を持ってきてくれた時にでも,な。」
…促された続きを,少しだけ話した。
分かるのは,それが周囲に聞かれては困るほどの内容だということ。
そして,共通の話題になり得る女生徒に関するものだということ。
恐らく,貴方もその女生徒に心当たりがあるだろう。
「……さて,とはいえまずは今日の授業を終えねばな。
チョコレートをもう一欠片もらっても構わんか?」
しかしすべてはまた後日,気兼ねなく全てを話せる場所で。
■ヨキ > 「魔術で切り抜けることのどこが真面目だ?
お前の魔術が上手なことは知っているが、下手をすれば常世学園の問題ともなりうるのだぞ」
そもそもヨキや獅南が籍を置いている時点で、常世学園の教員採用システムは半ば危ういと言ってよい。
とは言え、その口ぶりから獅南への信頼が今更揺らがないことは明らかだった。
「………………、」
獅南の口から「公言を憚るべき、共通の見知った女生徒」の話が出れば、察するのは容易かった。
そっと目を伏せて、微笑む。
「――分かった。その話は、あとでゆっくりしよう。
ヨキも用事は出来る限り片付けておく」
獅南の求めに応じて、半分に割ったチョコレートを差し出す。
「さて。込み入った話になりそうだ」
無論のこと、面倒がる様子はない。
打ち明けられるだけの信頼を受け取り、答えを返す強さに満ちた顔。
■獅南蒼二 > 「……お前が言えたことか?」
常世学園の問題,と,その言葉に思わず聞き返してしまった。
極右武力集団の構成員と,闇夜に暗躍する裁定者にして執行人。どちらもマトモとは言い難い。
だがそんな2人が,今日も教壇に立つのだから,この学園は実に寛大である。
「酒の肴くらいにはなる内容を用意しておいた。
……では,また連絡する。」
ありがとう。とチョコレートを受け取って,缶と吐きそうな書き込みの書類を持ち,獅南は立ち上がった。
通り掛けに缶をゴミ箱に放り込んで,そのまま教室へと歩いていく。
…獅南から短い用件だけのメールが届くのは,夕方になってからのことだった。
ご案内:「ロビー」から獅南蒼二さんが去りました。
■ヨキ > 「何を言う。ヨキこそは常世島が誇る正義の番人であるぞ。
自ら進んで行っていることに、後ろ暗さなどあるものか」
自信たっぷりに言い張った。正義のためにやっているのだから、殺人さえノーカウントという訳だ。
「どう致しまして。……連絡、いつでも待ってる」
別れの挨拶を返し、去ってゆく背を見送る。
「――…………、」
独りその場に残って、ふっと息を吐く。
やがてカフェインとカカオに冴えた頭で、次の講義へ向かうべく席を立った。
ご案内:「ロビー」からヨキさんが去りました。