2015/06/30 のログ
ご案内:「教室」に相楽 満さんが現れました。
相楽 満 > 「ぷはぁ……」

体調の悪さを自覚してより、寮からここまで来るのも一苦労になってしまった。
しかし見つければすぐにでも報告できるように、教室で調査を進めたかった。
……今求める師が居るかどうかは別にして。

相楽 満 > 「ふぅ……んー……」

とりあえず酸素缶を取り出し、吸引する。
自室に数本のストックがあるからいいが、そろそろストック数も増やさなければいけない。
今後使用頻度は増していくだろう。

「……しゃ、頑張るか」

先日先輩に翻訳してもらった本と向き合い、読み進める。
狙うは治癒の魔術。
遺伝子異常に対する特効魔術が存在するかどうかは本当に賭けだが、やらないわけにはいかない。

相楽 満 > ぱらぱらと本をめくっていく。
多くの魔術が記されているのは確かだ。
基礎理論だけは学んだものの、それだけで足りるような内容ではない。

病気に対する魔術はいくつかある。
怪我に対する魔術もいくつかある。
しかし狙うものがピンポイントで見つかるというわけではない。

相楽 満 > 本を読み進める。焦り始める。
ここに無ければ本当にどうしようか。
心臓を握りしめるように自分を追い込み始める。

まだ三割も読み終えていないが、酸素を吸引する。
手に嫌な汗がにじむ。

「……けっこー、キツいな……クソ……」

覚悟はしていた。だが目前まで死が迫ってきている現状、平然とはしていられない。

相楽 満 > 酸素を吸引しながら考える。
見つからなかった時、自分はどうすべきか。

恩師以外には語らずに去るべきか。
それとも死ぬまでここで甘えるべきか。

いや、前者を選択することは決まっているのに、それでも誰かに甘えたいという考えが浮かんでしまう。
悪い傾向だ。死ぬときは静かに死んでしまいたいと考えていたのに。

相楽 満 > 「……わかんなくなっちまったなー」

ぼんやり考える。
本と向き合うはずが、そんな気分ではなくなってしまった。

進めなければいけないのに、進めれば自分は進退を決めねばならない。
ならば、このまま進まなければ心地よい時間を過ごせるのではないだろうか。
そんなことを考えて、本を前に硬直してしまった。

相楽 満 > 「でも……」

こんな自分のために、未来の薄い自分のために戦ってくれた子が居た。
その子のためにも、出来る限りはしなくてはいけない。
怖かっただろうに、あんな場所までついてきてくれた彼女への感謝を込めて。

「やらなきゃ、な」

本を開く。
再び読み始める。
さて、見つかるだろうか。
いや、見つけなければ。

相楽 満 > 「……これとかどうなんだろ」

簡単な筋力の修復の魔術だ。
基本的には筋肉痛などの治癒を加速するために使うようだが。
自分の体にも有効に働くだろうか。

「……一応メモっとこ」

付箋を貼り、メモする。
そして次のページへ。

相楽 満 > ぱらぱら本をめくり続け、瞬く間に時間が過ぎていく。
何故だろうか、集中できる。
読み進めていける。
そして一つ、二つとメモを増やしていく。

「……どれが当たりかわかんねーけどな」

ため息。
酸素をまた少し吸入しつつ、ひと段落つけた。

相楽 満 > あれやこれやとメモを増やし。
あれでもないこれでもないとページを飛ばし。

「ふぁ……ん。そろそろやめるか……」

長いこと集中していたためか、ずいぶんと疲れた。
ついでに眠い。

「帰るかー……ストレッチと勉強頑張んなきゃな……っと」

立ち上がり、酸素を吸いながらかばんに物を詰め込む。
かばんを担ぎ、ふらふらと教室から出ていった。

ご案内:「教室」から相楽 満さんが去りました。
ご案内:「教室」にリグナツァさんが現れました。
リグナツァ > 朝。試験前日ということもあって大講堂は空席が目立つどころの騒ぎではなく、転移荒野もかくやという植生のまばらさ。
「…元より試験を受けずに聴講と実習のみを目的とするものも多いと聞くが、ここまでとはな」
教壇の上に置いたレジュメが幾ら余ることになるやら。

「……まあいい。講義を始めるぞ。」
まばらな生徒たちが緩慢な動きで携帯端末をしまうのを、リグナツァは少しだけ待った。
「明日の試験だが、私の受け持ちから諸君らに20点やろう。努力と向上心を持つものには褒賞を与えるのが常だ」
結果が出るかは別だが。小さな声の呟きは、生徒たちのどよめきでかき消された。

リグナツァ > 「私からの試験は、一人最短で1分で終わる」
更なるどよめき。先ほどまで怪しげに当然だろう、既に講義中に教員が増えるアナウンスはあっただろうが、まったく出てこなかったのだから)
リグナツァを見ていた生徒たちが、『ホントですか!』『優しみを感じる』などと声を上げる。気安いものだ。これを本物の学生にするのは骨が折れるだろう。…だが、受け持った以上は蛮民と呼ぶつもりはない。

「あまり浮かれるなよ学生ども。あいにくだが出来の悪いものには多少の出費を強いることもある」
優しげなる教員そのものであった声を、普段の尊大なものに戻す。ぴいぴい喚いていた学生たちはもう一度リグナツァを見た。
「訂正する。貴様らに出来の良いものは居ない。…なぜなら試験科目は転送を行わせるからだ」
納得いかないという声が四分の三。声を上げなかったものが残りである。
実技に絞っていえば、他の教員の行う試験には転送は含まれて居ない。だから、わざわざそんなものをやらせるのか、と思うものが大半。四分の一は新教員の受け持ち領域を事前に予想できていたものだ。

リグナツァ > 「召喚術(同世界内での生命の"取り寄せ"を召喚と呼称するような科目をそうは呼びたくなかったが)科目において、最も人気の高い領域は何か。
転移だ。これは論を待たない。
物を取り寄せることは便利だろう、何かを呼び出して労役に使わせるのも有意義だろう、
だが一瞬で異なる場所に現れること。これが人間の欲望に適わないはずがない。この欲望を持ったことのないものが居るはずがない。」
リグナツァ自らも召喚を行うには呪文書の用意が要る。頻繁に無詠唱で使っている転移とは比べるべくもない。
「だがな学生よ。転移を覚えて終わりならば、この講義もそれで終わりなのだ」

リグナツァ > 「我が帝国には転移管制官が居り、これは官職としては外交官にも劣らぬ要職として認識されている」
「だが彼ら自らが転移を行使することはない。……何故かわかるか」
見渡したところで『帝国って何だろう…?』などとささやく生徒しかいないため、答えを述べる。
「彼らは人を送る役職だからだ。広大な帝国の属州のその全ての港へと一つの失敗もなく送り届け、あるいは転移術同士のバッティングを防ぐ」
「大人数と共に自らも転移を行うものは転移管制官のほかにも居る。だがそれは転移術も使える官吏が一人居る、というだけのことだ。転移を職としているわけではない」

「諸君らは。……ただ自らの怠惰を貪る為だけに、目的地と寝床を往復するためだけに術を用い、今日この場に現れることもなく召喚術に見切りをつけたものとは違う」
「自らでは行ったこともないような場所、聞いたことさえないような地へ他者を送り出すときに、青ざめた顔をして辞退するものとは違う」
「社会を、国家を、世界を、その利用によって変えうる最重要職の見習いだ、徒弟だ、志望者だ」
そして果てには、自らの世界のみならず異世界へさえも門を開いてその手を伸ばすだろう。

「……このリグナツァは、転送の試験を行う。衝立を挟んで見えぬ位置にある印に、自分とは重量も身長も属性も契約精霊も魔力量も異なる人間を一人、転送してもらう。」
「位置の確認は三十秒まで。転送術のほうは幾ら掛けてもいい」
しんと静まり返った行動に、リグナツァの声が響く。
先ほど確認した、四分の一のものたちからはメモを取る音が立ち始め、リグナツァは少しだけ笑みを浮かべた。
「結構。明日しどろもどろで試験を受けるものたちと同じ顔にはなるな。……だが、こちらも用意したものがあるのでな」

手元のレジュメの上に、あらかじめ印を刻んでおいた輝石を載せると、講堂の隅々まで魔力を込めて認識を拡張する。
余るのは5割というところ。予め少なめに刷ってあったのだから、この講義が大きく平均点を上げることはないだろう。
そう思いながら結句を口中に唱え、レジュメを"飛ばした"。出席者一人ひとりの机の上に、寸分たがわず。
「よく読んでおけ。見所のある欠席者があれば渡すのも良いだろう」
「ただ、これは書いていないが」
「"透視"や"遠見"に類する呪文、魔具の使用は試験中は常に許可する。……実務上も使われていることだからな」
「以上。このリグナツァを失望させるな」
余りのレジュメを持つと、生徒の列間を歩んで講堂を後にする。

ああ、このリグナツァは門を開くとも。

ご案内:「教室」からリグナツァさんが去りました。