2015/10/12 のログ
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > ──放課後の屋上。
そっと校舎内と屋上とを区切る扉が開かれ、ひょっこりと東雲七生が顔を出した。
右を見て、左を見て、もう一度右を見て。
屋上に誰も居ない事を確認すると静かに扉の隙間をくぐる様に足を踏み入れる。
「よしよし、誰も居ねえなっと!」
少し大きめの独り言。
辺りに人の気配が無いか、最後の確認である。この声で誰も反応しなければ、正真正銘掛け値なしで屋上には七生一人という事だ。
■東雲七生 > もしかしたら誰か隠れてるんじゃないだろうか。
そう思って少しの間身構えていたが、どうやら本当に誰も居ない様だと判断してゆっくりと歩き出した。
時折頬を撫でて通り過ぎていく風はだいぶ冷たくなってきている。
冬の訪れを確かに感じながら、七生が足を止めたのは屋上のほぼ中央だった。
担いでいたデイパックを下ろし、制服の上着も脱いで夕暮の下、Tシャツ姿になる。
若干の肌寒さを感じながら、その表情には決意が浮かんでおり、七生の周囲だけ少し空気が張りつめられる感じがしている。
これから何を始める気なのだろうか。
■東雲七生 > 「いっ……せーの……せっ!」
やたら気合の入った掛け声とともに、七生がとった行動は。
──倒立。逆立ちである。気合いを入れた逆立ち。
両手をしっかりと地面につけ、代わりに足は宙へ。
至って普通の逆立ちを、本人は真剣な顔でやっている。
何故か?
今まで出来なかったからである。
──少なくとも、夏休みが終わる頃には全く出来なかった。
■東雲七生 > ──腕力を付けよう。
そう決心したのが9月の末。
というのも、ふとした拍子に開かれたクラス内の腕相撲大会で見事最下位を記録したのである。
参加者はクラス内の男子全員と、女子数名。その中で、最下位。
流石の七生もショックが大きく、その日から腕力トレーニングをコツコツ続けて来ていた。
最初の目標は、まず逆立ちが出来るようになることだった。
「……と、ぃ……おおっ、……ふー。」
そんな決意から半月が経ち。
ふらつきながらも3分近くの間、倒立を続けられるようになった。
ご案内:「屋上」に谷蜂 檻葉さんが現れました。
■東雲七生 > 「あっ、……ちょ、やば……」
3分経過して、腕が震え始める。
流石にこれ以上は盛大に倒れる恐れがある為、そのまま前転して仰向けに寝転んだ。
「今のは、自己ベストだった気がする──」
少しだけ満足げに空へと腕を伸ばせば、まだ少しぷるぷるしていた。
まだまだこれからだ。逆立ちしたまま歩けるようにならなければならない。
道程の過酷さを再認識しつつ、七生は息を整えた。
■谷蜂 檻葉 > 文化祭、それに中間試験も近づいてきた秋の中頃。
一時期の眠気も大分消えて、生活も落ち着いてきたこの日
図書委員の仕事もなく、最近足の遠のいた屋上へ檻葉は気分展開に足を向けていた。
カツカツと足音軽やかに階段を登り、いざ扉を。
と、視線を向けると僅かに開いたそこからビュウビュウと隙間風が吹き込み
誰か居るのだろうかと手をかけた所で何かが倒れこむような音がして
「―――だい、……じょうぶそうですね?
こんにちは。いい天気ですね。」
急いで扉を押し開けたところで、何もない屋上で寝転んでいる少年を見つけて苦笑気味に微笑みかけた。
■東雲七生 > 「ほぁっ?」
素っ頓狂な声を上げながら声のする方へと視線だけ向ける。
目に入ったのは夕焼けの様な橙色の髪。それが声の主だろうと判断すると慌てて横たえていた身体を起こして振り返った。
「えっと、うん、大丈夫!あは、はは。
……そう、っすね。良い天気!」
別段見られて困る事をしていたわけでも無いが、取り繕う様に笑みを浮かべて。
相手の言葉に合わせてから、本当にいい天気だったかな、と確認する様に視線だけ空へ向けた。
■谷蜂 檻葉 > 視線を上げれば、確かに晴天……だが、
西の空には遠く厚い雲がかかっており、この後は雨が降っても可怪しくはなさそうだ。
―――驚かせちゃったよね。
起き上がる少年は見るからに慌てており、少し悪いことをしてしまった気分になる。
「お昼寝……んー……ふふ、秘密特訓か何かかな?」
何度か、此処のベンチで寝息を立てている生徒は見たことはあるが時期が違う。
それに彼の服装―――上着がシャツだけではよほど丈夫でもない限りは風邪をひくだろう。
くすくすと笑みを浮かべながら近くのベンチに腰掛けて尋ねる。
■東雲七生 > 見上げた空模様は明日、早ければ今夜には一雨来そうな様相だった。
まあ、真上は晴れてるからギリギリセーフ、と自分に言い聞かせる。
「うん、まあ……そんなとこ。
特訓って呼べるほど大それたことしてないけど。」
照れ隠しなのかはにかむ様に笑いながら、傍らに無造作に置いていた制服の上着を手繰る。
ベンチに腰掛けた少女を一瞥し、その容姿から学年を推測しようとして僅かに眉をひそめた。
……多分、先輩だろうか。
「あっ、俺。一年の東雲七生っ!」
分からない時は自分から名乗れば、大抵向こうも合わせてくれるだろう。
そんな期待をしつつ、自分の胸に手を当てる。
■谷蜂 檻葉 > 「ニ年、図書委員の檻葉です。 よろしくね、東雲君。」
胸に手を当てて名乗る少年に、やはり微笑ましげに――大分、年下に見られているのかもしれない。
同じように仕草を真似して名を名乗る。
「図書館、利用していたら何処かで会ってるかもしれないけれど……。
……体育会系?」
うーん、と首を傾げながらあまり見たことのなかった少年を観察する。
■東雲七生 > 「あっ、二年……檻葉先輩っすか。
はい、よろしくお願いしまっす!」
やっぱり先輩だった、と慌てて一礼する。
この学園では見た目だけで学年を推測するのは割と難儀するものだ。
年上の同級生、年下の先輩のみならず、見るからに同年代な先生まで居るので厄介極まりない。
ただ年上だからというだけで此方が身構える事を良しとしない同級生も居るので確認だけは怠らない様にしよう、とは思っているのだが。
「図書館……は、たまーに行くくらいっすかね。
それも結構最近になってからっすし。
あ、体育会系……ってほどじゃあないっすよ。 ちょっと運動神経が良い、ってくらいで。」
実際に自分が何系に分類されるのか上手く説明出来る自信は無い。
どっちつかず、とも言える様な気もするし、と軽く首を傾げる。
そもそも一目でスポーツマンと見られるほど体格に恵まれてない事はそれなりに自覚もあった。
■谷蜂 檻葉 > 「あはは、そう畏まらなくてもいいよ。
歳も何も此処だとそう大した意味もないだろうし。」
檻葉さんとか、そういうのでいいから。
可愛らしいなぁ、なんて内心でほのぼのしながら「いいのいいの」と抑えるジェスチャーを見せる。
「そっかぁ……参考書とかだけじゃなくて、娯楽本も結構入荷してるからぜひ読みに来てね。」
流石に漫画はあんまり置いてないけど、面白い本は多いから。
そう笑って、興味を引けないか反応を伺う。
利用されても"利益"があるわけでもないが、自分が好きな場所をまた誰かも好んでくれるのなら、それに越したことはない。 それ以上に、自分が手をかけた場所を気に入ってくれるのならば嬉しく思えるから。
「―――ところで、実際さっきまで何をしてたの?」
と、大まかな自己紹介が終わった所で再び寒空で寝転んでいた話題に立ち返る。
運動するには此処よりも演習場があるだろうし、大して広くないこの場所ではやれることも限られてるだろうし……。気にならないことはなかった。
■東雲七生 > 「いやまあ、そう言われても……一応、学校でのケジメみたいなもんなんで。
もし外で声掛ける時があれば、そうしますんで!」
少し考える様に視線が宙をさまよってから、にぱっ、と子供っぽく笑みを浮かべる。
そのスタンスは、何度か話をした事のある教員のそれを模したもの。意図しているわけではなく、知らず知らずのうちに感化されてるのに近いものだったが。
「はいっ!
ダチに何人か、図書委員居るんで……えっと、たまにそういう話は聞きます。」
1学期の頃は活字を目にするだけで睡魔に襲われていたが、ここ最近はそれも克服されている。
少し気になる事もあるので、図書館は何度か利用しますと告げて肯いた。
そして何をしていたか問われれば、少しバツの悪そうにその顔に苦笑を浮かべ。
「えっと、トレーニングっすよ。逆立ち──っす。」
彼女が見たのは丁度力尽きて転がった直後だろう事も簡潔に説明して。
手に持っていた上着を肩に羽織った。少年の腕よりやや長めの袖が風にはためく。
■谷蜂 檻葉 > 「ま、言葉崩れても気にしないよ。 ってことで。」
彼なりの敬語表現に、うんうんと頷いて了承する。
元から大分軟らかいし、多分熱くなればすぐ崩れそうだなぁ。
……なんて、失礼な事を考えながら。
「あら、そう? それなら勧誘は十分そうかな。」
本を読もう、なんてもう耳にタコかもしれないわね。と、クスクス笑って切り上げた。
「逆立ち?」
なるほど。と、倒れたような音の出処にも納得して頷いて
「バランス感覚無いと全然出来ないのよね。
懐かしいなー……今、出来るかな?」
そう言うとベンチから腰を上げて"スカートのまま"
「よっ」と構えて、全身が綺麗に弧を描いてふわりと紺色の花弁が華を開き――――
きるまえに、不自然な風によってまるで重力が逆転したようにスカートが閉じた。
……その分髪が大分バサバサと大きく広がっているが。
■東雲七生 > 「……っす。」
苦笑しつつ、一つ頷いて。
少し自信無さげに見えるのは、心裡が表れたか、それとも元の童顔な所為か。
「まあ、本を読んでるより体動かしてる方が好きっすけどね。
それでも、読書が嫌いって訳じゃないんで!」
雨の日とかよく本読みますし、と笑いながら答える。
「そっす、逆立ち。
俺の場合、バランス感覚より体支える腕の力が──って!?」
思わず。反射的に手で顔を覆う。
無茶をする知り合いはそれなりに居るが、スカートのまま逆立ちしようとする者はそう居ない。
すぐに悲鳴か何か聞こえるだろうと思ったが、しかし、そういうわけでもなく。
不思議に思いながら、恐る恐る指の隙間から様子を窺って……
「……わぁ。」
その不可思議な光景に、小さく息を吐いた。
■谷蜂 檻葉 > 「あ、やれるやれ―――」
逆立ちをして数秒の間は綺麗に重力に逆らうような姿勢で居られたが―――
「わぷっ」
逆巻く風に煽られて自分の長髪がパシンと顔を打って
「わ、ひゃあっ」
8秒少しで記録は途切れてしまったようだ。
そのままバランスを崩して東雲の方に倒れこんで……
「あだぁっ!?」
違う悲鳴が上がった。
強かにお尻を打って、体をくの字に曲げて横倒しに痛みに耐える。
倒れてくる間に一瞬寒色系の何かが視えた気もしたが、気のせいだろう。
「あ痛ったたた……
か、髪が当たらなければもうちょいやれたと思うけど、やっぱり少ししか出来ないわ、逆立ち。」
打った場所をさすりながら、少し顔を赤くして立ち上がる。
「ちなみに、東雲君はどのぐらい出来るの?」
■東雲七生 > 「あっ、危な──ッ!?」
大きく揺らめいた姿に咄嗟に手を伸ばそうとして踏み止まる。
支えられるかと言えば、ちょっと自信が無い。ちょっとというよりは、かなり無い。
巻き添えで錐揉み倒れる方が危険度が増す、と判断して先輩が上手く受け身をとれることに期待……
……したんだけど、やっぱり無駄骨折った方が良かったかもしれない。
そんな後悔を無理やり振り払って、思い切り尻もちついた檻葉の顔を覗き込む。
七生のその頬がやや赤らんでいて、目も泳いでるのはきっと夕日が眩しいから。
「大丈夫っすか、先輩……? あ、大丈夫そっすね。
……俺っすか? ええと……最近はギリギリ3分くらい、っすかね。
最初のうちはそれこそ3秒と保たなかったんすけど、案外コツと筋トレをしっかりしとけば何とかなるんだなって。」
あは、と笑いながら自分の腕を軽くさする。
同学年の男子達より遥かに細く華奢な腕は、檻葉とそう大して変わらないように見える。。