2016/05/10 のログ
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 「誰も……居ないな。よし。」
こっそりと屋上に繋がる扉を開けて、七生は顔をのぞかせた。
今にも雨が降り出しそうな空の下、数冊の図鑑を抱えて扉をくぐり、足でそっと扉を閉める。
週頭の、それも天気の良くない屋上には人の姿は無く、人目を気にする必要はほぼ皆無だった。
「さて、のんびりやりますか。」
備え付けのベンチに腰を下ろし、隣に図鑑を平積みする
■東雲七生 > 「ちょっとくらいは異能の方も何とかしないと、って言われてもなぁ……。」
二年生になって初日、前年度の七生の成績などから割り出された指針は自身の異能についての理解を深めることであった。
今迄何かと理由をつけては自分の能力と向き合う事を回避し、
秋を過ぎたあたりからは自分の能力を“無いものとして”扱うのを己の目標としてきたが、「それは学園的にNG」と言われてしまったのである。
「……やりたくねーけど、非協力的って悪目立ちしたくねえしなぁ……。」
授業態度が悪いだけなら凡百の高校のいち生徒として何もおかしい所は無いが、こと異能に関してはそうはいかない。らしい。
■東雲七生 > 「俺の異能ったって、血を操って何か創る、だし。
制御も何も、暴走すりゃイコール失血死だろうし?
………使わないように、怪我しないようにすりゃ完封じゃん。」
ぶつぶつ言いながらベンチの上に横たわり、重ねた図鑑に頭を載せる。
今日この場に来たのは、勉強のためなどでは無かった。
少し不貞腐れたいし、あわよくばそのまま不貞寝したい。
そんな願望を叶える為にひと気のない屋上を選んだのである。図書館で寝てたら怒られるんだもの。
「……はーぁ。」
溜息を吐きつつ見上げた空は、七生の憂鬱な気分を投影したかのように暗い。
■東雲七生 > 「そもそも、こんな異能を学校から出てどう活かせと。
使われない方が良いじゃねぇかこんなの。」
曇天に向けて独り愚痴を連ねる。
枕代わりにしている図鑑は硬いし、天気は悪いし、独り言で無ければ愚痴すらいえない自分に何だか腹が立つ。
溜息を吐く事すら億劫になり、ぼんやりと空を眺めながら
一応、自分の異能について思いを馳せているポーズだけでも作っておくことに努めた。
■東雲七生 > 「………。
…………。
……あ~!!やだやだ!ダメだ、うじうじしてるのはどうも性に合わねえや!!」
徐に身を起こして大きな声を出して気持ちを切り替える。
不貞腐れる暇があるなら何かしら進歩できるための道を探している方が幾分もマシだった。
七生はベンチに座り直すと、枕にしていた図鑑のうちの一冊を手に取る。
その図鑑は、古今東西様々な種類の白兵武器を記載したものだった。
■東雲七生 > 以前、もう一年近く前になるがとある事情から自分の異能の力を用いて大剣を何本も作った事がある。
大剣が作れるのであれば、他の武器もと考えて一度試してはみたのだが、どういうわけか歪な物が出来上がってしまっていた。
「どーも何かを創る時は創るもんをしっかり知ってないとダメみたいだしな……。」
大剣に関しては当時足繁く通っていた模擬戦闘場での使用率が最も多かったから知っていたのだろう。
七生は図鑑のページをぱらぱらめくりながら思い返す。
「やっぱり刀とか剣とかって、シンプルにカッコいいからなー。」
使いたくなる気持ちはよく解る。
■東雲七生 > 「んー……槍。
槍かあ……あとは棍、斧、槌……ううん」
やっぱり剣とか刀ってかっこいいよなー
そんな呟きが口の端から漏れて、誰にも拾われること無く消えていく。
ぺらぺらと図鑑を眺めつつ、同時にその武器の特徴や性能を頭に叩き込んでいく。
どうせ創るのなら、自分で使う事も頭に入れておかねばならない。
出血をする、ということは大体“そういう状況”であるというのは七生自身も何度か経験している事実だ。
武器の扱い自体は、前年度の成績も上位クラスで納めている。いわゆる、得意分野だ。
ただ、それはあくまで模擬戦闘用の軸抜きされた武器だったが。
「んー、問題はこれを振るだけの腕力はついてる筈……だよな。」
ぶつぶつと独り言を交えつつ、七生は雨が降り出すまで屋上で図鑑を眺めつづけた。
ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。
ご案内:「保健室」に雨宮 雫さんが現れました。
■雨宮 雫 > 保健室です。
保健室には放課後、下校時刻ちょっと前まで保健課の生徒が詰めている場合があります。
要る、居ないの時間割はドア横の壁に張られたシフト表をご参照下さい。
また、居ない場合に出動を希望する場合は保健室内の電話で内線****番にご連絡をお願いいたします。
ご案内:「保健室」に鞍吹 朔さんが現れました。
■雨宮 雫 > というボードの張り紙の通り、保険課所属生徒Aこと、当番の少年が保健室のデスクで暇そうにスマホを弄っていた。
デスクには確認済の来客履歴や、使用された備品などが書かれた引継ぎ表などが置かれている。
今は、丁度誰も客が居ないので、暇潰しのブラウジングか何かしている、のであった。
「復帰一日目なのにー客がーこなーいのーかなー、かなー。
たーいくーつーなのかーなー、かなー。」
暇そうに、足をバタバタさせ。
長い、白い髪の毛がそれにあわせて左右に揺れていた。
■鞍吹 朔 > コンコン、とドアを叩く硬い音が響く。その後、ガラガラと車輪が回る音。
「失礼します。」
入ってきたのは、眼鏡の下に眼帯を付けた、地味めな女子生徒。
足取りが多少ふらふらしているようにも見えるのは、その目が関係しているのだろうか?
その女子はそのまま、近くにあったソファに腰掛け、休憩許可書を書き始める。
■雨宮 雫 > ノックの音に、足を止める。
客だ、ひゃっはー客が来た!という内心、大喜びのテンションを隠した穏やかな顔で、椅子を回してドアの方に向いた。
「はい、いらっしゃーい。
随分に足がフラッフラだけど、怪我?病気?薬とか手当てとか要る?かな、かな。
診断結果次第で病院も紹介するかな、かな。」
滑らかなセールストーク。
とりあえずはベッドに倒れる系かなあ、とは思っているが。
■鞍吹 朔 > 「鞍吹 朔。1年。怪我の後遺症の頭痛で、三十分ほど休憩させていただきたいのですが。
いつものことなので、目を閉じて休んでいれば治まります。
酷くなるようであれば容態が回復した後に早退させていただければと。」
セールストークも聞く耳持たずで聞き流し、休憩許可書を差し出す。かなりの達筆である。
しかしその額には若干脂汗が滲んでおり、顔色も悪い。相当に辛いようだ。
■雨宮 雫 > 「あらそっけないだね、だね。
まぁ病人なら当たり前だけども。」
指で摘むように休憩許可書を受け取ると、そのまま
ベッドにどうぞー
と片手でソチラを指した。
「今日は貸切状態だから、好きなだけ寝ていくといいかな、かな。
あと、手を貸そうか?そのまま倒れてもおかしくない顔色してるけど、ボクみたいに真っ白かな、かな?」
そのまま押せば倒れそうな様子に、どーする?と首を傾げた。
■鞍吹 朔 > 「慣れてますから。ええ。
『病気や落ち込んでいる時でも、私は人生を愛する』…なんて殊勝なことは言えませんが…っ。」
ベッドへ向かおうと立ち上がるものの、そのままふらついて壁に手を付いた。
目は若干虚ろになっている。
「………。手助けを頂けるなら、お願いしたいです。
体調管理はしっかりしてたはずなんですけどね、ええ…。こんなに酷いのが来るとは。」
壁に手を付きながらため息を付いて、ペコリと頭を下げてそう答えた。
■雨宮 雫 > 「愛してる人生なら、病気や怪我は少ない方が楽しいんじゃないかな、かな。
ボク的にはちゃんと治す、マジオススメだね。」
強がっている?っぽいのだが、体がついていってないご様子。
「怪我人、病人はとりあえず医者に頼っていいと思うかな。
はい、いくよー、ゆっくり歩きますよーだね、だね。」
じゃあ と前置きして。
お客様の手を引いて、ゆっくり体を支えながらベッドまでアテンドしようとする。
ベッドはそのまま寝転がれるように準備済で、今日は誰も使っていないから綺麗なものである。
■鞍吹 朔 > 「…治らないと言われてますし、治す気もありませんから。
その提案は魅力的ですが、ね……。ありがとうございます。」
礼を言って、手を引かれるままにベッドへ歩く。
少し道中でふらついたものの、特に転倒などもすることなくベッドへ辿り着き、
そのまま溶けるように体を放り投げる。
「……ふ、ぅ…。すみません、休みに来ただけなのにお手数を。」
■雨宮 雫 > 「ふーん?
治らない怪我とはまた、えらい災難だね、だね。」
横なった相手を隠すようにシャーっとカーテンを引いていく。
そうしながら、ちら、ちら、と少女の顔を見る。
そりゃあ真面目な顔で、見る。
まだ喋る余裕あるかな、かな?
あるなら、顔を拭くのに冷たい or 温かいタオル出してあげるから、希望を言うといいのだね。
無ければ、普通のタオルで拭いちゃうけど、ボクが。」
■鞍吹 朔 > 「……災難とは、付き合っていくべきだと思いますから。
泣いても喚いても状況が良くなるわけじゃないですし。『全てが失われようとも、まだ未来が残っている』、でしたか。
まだ全てが失われたわけでもないなら、悲観する程でもないかと。」
どうにもセメントのような心をしているようだ。
眼鏡を外し、腕で目の辺りを覆うようにして仰向けに…
…なっていたのだが、チラチラ見られるのが気になる様子。
「…ええ、一応は。
できれば温かいほうが嬉しいです、ありがとうございます。」
脂汗は相変わらずだが、少しはましになった様子。
■雨宮 雫 > 「未来ね、未来が無くなるってことは死んでる気がするけど……
まぁ、世の中死んでも続く人生もあるからね。」
カーテンを引き終わると、この辺の照明を少し暗くしておく。
どんな怪我か分からないが、目の辺りに何かあるなら光が辛いかもしれないし?という配慮のご様子。
決して、顔を見ているのを隠そうという意図ではない、ではない。
それから、少し温くした蒸しタオルを取りに離れていく。
カーテンの向こうから何かを出す音や、位置をずらす音が聞こえるだろう。
脇紙を挟んだボードを持って戻ってくる時には、タオルをそっと差し出す。
「はい、どうぞーだね、だね。」
■鞍吹 朔 > 「…命あっての物種、っていう意味ですよ。
死ななきゃ案外、何であってもどうにでもなるものですから。ええ、案外。」
部屋が少し暗くなると、目を覆っていた腕を退かす。
眼鏡を外した顔は……まあ、美人といえば美人なのかもしれないが、別段凄いというわけでもない程度の顔だった。
「何かと、ありがとうございます。私が来なければ仕事もなかったでしょうに…
……はあ…。」
眼帯を外してひとしきり顔を拭いた後、丸めて目の上に乗せる。血流を良くしよう、という知恵のようだ。
……外された眼帯の下には、アザや切り傷の跡がある。
■雨宮 雫 > 「なんだ、大体合ってるじゃないかな、かな。
まぁ、生きてればいいコトもあるしね、きっと、多分だけど。」
相手がタオルを目に乗せたのを確認して頷き。
ちらっと見えた傷跡に、興味をそそられまくって段々隠せなくなってきた。
近くにあった椅子を引き寄せて座ると、ボードに、ボールペンに、を用意して……
「さてはて。
ぁ、ボクはこの仕事大好きだからぜーんぜん、気にしないでいいのだね?
あ、でも気にしてるならちょっとご協力願おうかな、かな。
その怪我はちゃんと医者にかかっているかな、かな?
何だったらお薬色々出すけども……ボク、医者も兼ねてるから気になるのだね、だね?」
声だけは優しい、いや、実際、楽しそうな相手なだけに優しくしようとは考えているのだが。
■鞍吹 朔 > 「……ええ、きっと。
生きていれば良いことがある、それが当然の世の中になれば良いのですけど。」
さっきから何やら音が聞こえると思ったら、そういうことだったか。
そんなことを考えて、少しタオルをずらして息を吐く。
「人の秘密をほじくり返そうなんて、趣味がいい話ではありませんね。
医者には通っていますよ。手遅れですけど。こっちの目は既に完治して、跡が残っているだけです。
たまに頭痛止めの薬を貰いに行ったり、視力検査を受ける程度ですよ、医者は。
……治す気もありませんし。」
心底呆れたように、溜息をつく。
■雨宮 雫 > 「つまり、キミの人生は今のところ、余り良くはないのかな、かな。
まぁ、幸多そうには見えないけどね、そんな怪我してるのだし。」
ボールペンを指先で くるん くるん と回しながら相槌を打つ。
まだ、ボードに挟まれた紙は白紙のままだ。
「ボクは、キミが何でその怪我をしたのか?には興味がない、かな、かな。
聞いたってしょうがないし、意味無いし。
ボクの関心事は、怪我の具合、それだけなのだね。
ここで倒れるってことは、その頭痛止め、目薬はあんまり効いてないんじゃないのかな、かな?
そーいうコトを考えちゃうから、聞きたいだけかな。
治す気がないのも別に構わないけど、まぁ、痛いのも好きなのっていうのなら まぞ って記載だけにするけどね。」
へーら、へら と顔は緩い笑みのカタチ。
でも、視線は じー っとタオルとタオルの下に向けられている。
■鞍吹 朔 > 「他人に自慢できる程度には不幸かもしれませんね、ええ。
ここで意外だなんて言ったら鼻で笑ってあげますけど。」
はぁ、とため息。また目か頭が痛みだしたのか、少し眉根をしかめている。
「……かもしれませんね。ここ最近、低気圧が多いから痛みもひどいですし。
医者から貰った薬じゃ、抑えきれなくなってるのかもしれません。それで?薬の処方でもしてくれるんですか?
あと痛いのは嫌いですから、そこは誤解のないように。」
タオルに隠れて、目の周り全体は見えない。
しかし、ちらちらと傷や怪我の跡がある辺り、右目の周囲に傷がたくさんあるように推測できるだろう。
■雨宮 雫 > 「わぁい、どんな不幸か聞いてみたいものだね。
お茶くらいは出してあげるけど…………の前に。」
ボールペンを回す手を止めて、両手を軽く合わせて わぁい と笑う顔を深くする始末。
「真面目ーな方を先にしようかな、かな。
薬なら出してあげるよ、診察してからじゃないと駄目だけど。
痛いのが嫌いなら、オマケで鎮痛剤も出してあげるよ?
目から来る頭痛は頭の後ろとか超痛くなったりするけど…… 診察、してもいい?」
たんっと勢い良く床に両足をつけて立ち上がる。
長い髪を跳ねさせながら立ち上がって、ずいっと寝ている相手に顔を寄せる。
「診察、させてくれる?くれる?その、右目とか。」
■鞍吹 朔 > 「自慢話の種にするつもりは毛頭ありませんけどね。
自慢できるようなことでもないですし、聞いて面白い類のものでもないですし。」
妙に嬉しそうなその姿を見て、若干顔を顰める。
頭に響くのか、若干脂汗も滲ませながら。
「不真面目な方はしないでください。
……何でそんなに診察したがるのかは分かりませんけど、まあいいですよ。
医師免許とかあるなら見せてもらいたいですけど、闇医者だったりしたら後で面倒ですし。」
そう言って、タオルを取る。
……右目の周りは、刺し傷や痣の跡など、明らかに日常では付かないような凄惨な姿になっていた。
両目からはハイライトが消え、右目に至っては若干白内障のように白く変色している。
■雨宮 雫 > 「ボクはいつだって真面目だけども……あぁ、大分痛そうだねえ。
んー……闇医者が保健室で客待ちとか、中々壮大な仕込みだと思うけどもね。
はい、保険課のカードでいい?」
袖の中から免許書のようなカードを取り出して相手の顔の前へ。
生活委員会 保険課 技能は銀色の星マーク。
まぁコレ自体が偽造だともうどーしょーもないだろうが。
「中々、酷い具合になってるね、その目。
壮絶なイジメか拷問でも受けたみたいになってるけど……んー。
実際、右目って見えてる?
左目も強い光とかで刺すみたいに痛くないかな?
瞳孔の調節がうまくいってないっぽいよ、神経傷んでないかな、かな。」
相手にはカードを見せて、自分は相手の顔を見る。
髪の毛が相手にかからないよう、纏めて後ろに流しつつ、角度を変えて観察する。
■鞍吹 朔 > 「この島だと無きにしも非ず、ですから。最近はまた島内がきな臭くなってますし。ええ、色々。
…はい、まあいいですよ。偽造の可能性もありますけど、今のところは。」
見た目以上程度には警戒しているようだ。
まあ、それはそうだろう。目の前の相手の見た目が見た目だし。
「…………。ええ、一応は。ただ……」
そう答え、言い淀む。
しかしすぐに元の調子に戻り、受け答える。
「ただ、色が分からないんです。何を見ても、全部白黒に見えます。
色覚補強用の眼鏡を掛けてれば一応カラーに見えますけど、外してると何もかもがモノクロですね。
神経についてはその通りですけど、単純に両目の視力が極端に離れてるので、それも頭痛の原因だと言われました。」
そう言葉を交わす眼の前の少年の姿は、今や白と黒に塗り分けされたようにしか見えなくなっていた。
まるで一昔前のテレビである。
■雨宮 雫 > 「後で保険課に問い合わせてみるといいよ、雫君はいますか~ってね。
それはまぁ、いいとしてー。
ちょっと目元とかに触っていいかな、かな?
目元だけじゃなくて、顔とか頭とか、首とかも触りたいけど。」
わきわき、と片手の指をにぎにぎさせながら、触るのはこの辺、と自分の体で示す。
触りたい場所は 目の周り、顎、コメカミ、額、側、後頭部、首の付け根あたり のようだ。
「怪我が原因でそうなってるんだという前提だけど。
色が分からないのはねー、目にある色を感じる3種類の細胞が壊れてたりするとなるのだね。
ソレを治せばいいのだけど、全部白黒だと結構深刻だね。
全色盲っていう状態だね、この辺はもう聞いてるかな?
出せる薬はあるけど、目薬とかも切り替えて貰わないと駄目かな、かな。」
■鞍吹 朔 > 「ええ、そうさせて頂きます。
……別に構いませんよ、診察のためですし。ええ、診察。」
場合によってはセクハラで訴えれるんだろうな、などと考えつつ承諾。
する気は全く無いが。
「ええ、聞きました。
でも手術なんかで治してる余裕はないですし、眼鏡を掛けてれば影響はないので関係ないかな、と。
それに、あんまり治す気はないですから。
何度も言うようですけど、痛みを抑えられればそれでいいです。鎮痛剤を多めにしてもらおうかな、とは思ってますけど。」
何やら、妙に思うところがある様子……。
だが、おそらくこの様子だと聞いても教えてもらえないだろう。
■雨宮 雫 > 「なるほど、なるほどーだね。
じゃあ痛いのだけどーにかなればいいのだね?
それならそーいう薬にしようだね、だね。ボク、鎮痛剤とか大得意だね、だね。」
とりあえず、失礼して、と、両手の指でそーっと相手の顔に触れる。
優しく、優しく、壊れ物を扱うように、そーっと。
傷を刺激しないように指を動かし、目の周り、額、コメカミ、側頭部、後頭部、首の付け根、と指を滑らせて触診と……ツボを押すように動かす。
押す場所によってはちょっと痛かったり、気持ちよかったりするだろう。
一通り触り終わると、片手で相手の、もう朔、の両目を隠すように覆って。
「ドコ押された時が一番痛かったかな?かな?」
■鞍吹 朔 > 「……薬に得意も不得意もあるのか分からないですけど、そういうことですね。
目下、完治させようなんて思ってませんから。」
頭をひとしきり触られると、所々で顔を顰める。
目を剥き出しにしているのが辛いのか、若干右目のまぶたが痙攣し始める。
少しずつ脂汗も浮かび、少し頭もふらふらしてくる。
終わると、タオルを掴んで目に押し当てる。そのまま、ベッドに再び倒れ込んだ。
「……側頭部とか、でしょうか。正直どこも痛かったですけど。
特に、と言うなら。」
■雨宮 雫 > 「そりゃあ、本当に深刻だね。
自律神経もおかしくなりそうだけど、そのままだと……」
ふぅ と溜息のような吐息のあと、呼吸の仕方を切り替える。
目を隠すタオルの上から翳す手に気を集中すると、朔の方へと流して見る。
気功治療というと、すっごい胡散臭いが、雫は本物である。
個人差はあるが、暖かい水でも流れてくるような感覚と共に、痛みが和らいでいくハズなのだが……
「とりあえず、薬の前にちょっと処置してみようかな、かな。
大分喋ったし、疲れただろうしね。
深呼吸でもするといいかな、かな。」
そんなことを喋りかける雫の目は、薄く、翠色に光っていた。
■鞍吹 朔 > 「普段はもっと大人しいんです。今日が異常なだけで。ええ、今日が異常すぎるんです。
……そのうち慣れますから。」
慣れる、などというレベルの問題でもない気がするが、強がっているのかは分からない。
ともかく、顔にタオルを乗せたまま、ぐったりと寝そべっている。
「………。……?これは………」
すぅ、と頭の中で暴れ狂う激痛が治まる。
完治という程でもないが、少なくとも今はある程度楽になった。強張った筋肉から、力が流れ出すように抜けていく。
「……ふー……。
……何したんです?」
胸を大きく上下させて呼吸しながら、タオルの位置を動かしつつ聞いてみる。
■雨宮 雫 > 「心は強くても、体がついていかないコトってあるのだけどね。
特に神経とかは大事にしたほうがいいのだね、だね。
んー?
暖かいのは、ボクの治療の一種だね?
ボクの専門は東洋医術でね、気功って分かるかな、そーいうのも扱うのだね…………まぁ。」
こちらを見るのなら、手を引いていく。
朔の顔を見返して
「何でもいいよね、効いたのなら、良かったかな、かな。
じゃあ、後は薬取ってくるから寝てていいのだね。」
翠色になった目を細めてとても、とても嬉しそうに微笑みかけた。
■鞍吹 朔 > 「付いて行かせるんです。立ち止まったら腐るだけですから。
無理をしない程度に、壊れない程度に無茶をすれば…まあ、必要になれば、ですが。ええ。」
ふぅー…と、長く長く息を吐く。
そしてタオルをどけて、眼帯を付ける。
「…気功、なんてあまり信じてませんでしたが…
齧る程度に調べるのもいいかと思いましたよ。ええ。
……では、お言葉に甘えて……少し、寝かせてもらいますね。疲れましたし。」
嬉しそうな笑顔を表情も変えずに一瞥すると、左目を閉じて寝始めた。
相当参っていたのだろう、目を閉じればすぐに眠りの中へ。
■雨宮 雫 > 「ボクの特技だから、欲しくなったら呼んでくれればしてあげるかな、かな。
はいはい、じゃあ寝てる間に薬作っておくから。
起きたらもう一回、さっきのしてあげるから…………おやすみ、だね。」
ボードを脇に挟んで、そのまま、するっとカーテンのスキマから外へと出ていく。
外側では足音と、何かを出す音から始まって。
すぐに、何かをリズムよく混ぜる音がするだろう……
寝てしまうまで、どの程度、聞いていられたかは分からないが。
起きたら言った通りにまた、目に手を翳し。
保健室を出て行くときに漢方薬の薬包と目薬を渡すだろう。
くっそ苦い上に、目薬は大分染みるだろうがよく効くハズだ。
■鞍吹 朔 > 「ええ…その時はまた、お願い…します……」
すぅ、すぅ、と寝息を立て始める。
すっかり顔の皺も取れて、なかなか安眠しているようだ。
ぼんやりとした意識の中で、何かを混ぜる音が聞こえたような、聞こえなかったような。
そしてしばし後、再び安らぎが流れこむような優しい感覚と夢を覚える。
……嫌な夢を見た。
どんな夢かは忘れたけれど、嫌な夢を見た。
起きた時には、目の下に赤く筋が出ていた。
出る段階になって、それを急いで拭ったのは言うまでもないが……おそらく、見られていただろう。
薬の苦さと目薬の刺激で、また涙が出た。
ご案内:「保健室」から鞍吹 朔さんが去りました。
ご案内:「保健室」から雨宮 雫さんが去りました。