2016/05/15 のログ
ご案内:「屋上」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > 「んん~っ、良い天気」

日曜の昼下がり、東雲七生は私服姿で学校の屋上へと来ていた。
先日の一件で自分の異能の未知の部分を知った七生は、勧められた事もあって改めて自分の異能を知ろうと思ったのである。
しかし今日は休日、訓練施設では自主鍛錬をする生徒たちがそこそこ居たので、逆転の発想で校舎の方に来てみた次第だった。

東雲七生 > 果たして七生の読み通り、日曜の午後に学校の屋上に人影は無かった。
当然である。だって日曜日だ。普通はこんな日に学校に来たりしない。
学校を訪れる用事があったとしても教室か図書室、あるいは職員室だ。屋上までは来ない筈である。
平時なら、七生だってそうするだろう。

「……だから都合が良いんだけどね。」

あんまり人目につくのは好ましくない。
自傷行為は褒められた事では無いのは七生もよく知っている。
むしろ咎められるべき行いだ。誰だって自分で自分を傷つける行為を良しとは見てくれないだろう。
こんな能力を身に着けている七生自身、似たような能力を持つ人間が居たとしたら、やっぱり、軽く引く。

東雲七生 > まあ、それはそれとして、だ。

先日の様な事を再び起こさない為にも、検証は早いうちに行わなければならない。
まずは異能が七生の制御できる域を越えて増幅し続けた事。
どういう状況下であの“暴走”が起きるのか、それさえ突き止めてしまえば対応は容易いだろう。

──突き止めることが出来れば、の話。

「えーと……とりあえず、手、切って……。」

使い慣れた片手に収まる大きさの折り畳みナイフを取り出して、手の中でくるりと回す。

東雲七生 > ナイフの刃を掌に当てて、そこからどうしたっけか、と先日の一連の流れを思い出す。

思い出す。

思い出して、

顔を真っ赤にしてその場に膝から崩れ落ち、べしべしと地面を叩き始めた。
もうこれは再現がどうとかって話では無い。穴があったら入りたい。
七生は地面を叩き過ぎて赤くなった掌をひらひらと振って冷ましつつ、ひとまず思考を切り替える。

「……こないだの再現は、また、日を改めて行うとして。」

要するに恥ずかしいからって逃げたのだ。

東雲七生 > それでは次は何をしようか。
暴走に至る経緯の他に気になった事と言えば、感覚の共有である。
確かに腕などの体の一部を生成するときは、触覚を共有している感覚はあった。
そうでなければ何かを掴んだりといったことは行えないだろう。

「んー……」

改めてナイフを持ち直し、掌ではなく、人差し指の指先をちょっと切ってみる。
指の腹から滲む血は一度大きく震えた後、七生の思い描く通りにビー玉ほどの球状になって指の上に鎮座した。

「触った感じが解るなら、剣とかにした時にも解って良さそうなもんだけど。
 ……今まであんまりそういうことは無かったし、何か条件でもあるのかな。」

指先の赤い球をじっと見つめてから、静かに目を閉じ。
そしてその球をそっと地面に転がしてみる。

東雲七生 > 地面に落とされた真っ赤なビー玉は、真っ直ぐにその場を転がっていき、ほどなくして勝手に停まった。
七生は一分ほど目を閉じてその場に立っていたが、僅かに眉間に皺が寄り、目を開ける。

「……ぜんっぜんわっかんねえ。」

視覚共有、ならず。

小さく唸りながらビー玉を回収に向かい、拾い上げたそれに着いた僅かな土ぼこりを払い落とす。
手の内で二、三度ビー玉を転がすとビー玉から細い針の様な棘が生えた。

「……んじゃ、次の検証。」

ちくり、と僅かな痛みと共に七生の指先に新たな赤が生じる。
皮膚を破った棘に連なる様に糸の様に伸びた血を、そのうちに取り込むかのように棘がビー玉へと引っ込んでいって、
わずかな間にビー玉には手綱の様な糸が付いた。

東雲七生 > それを、もう一度、目を閉じて転がしてみる。
ゆっくりと転がっていくビー玉の軌跡を、真っ赤な糸が綴っていく。
少し勢いをつけすぎたのか、ビー玉は屋上と屋内とを区切る扉の前で停まった。

「……お、おー……。
 なるほど、俺と繋がってれば、視えるんだな。」

視覚共有、成功。
目を閉じている七生の目蓋の裏には、やや煽り加減の屋上の扉が確かに視えていた。

東雲七生 > ただ、触覚はさほど感じない。
もう少し創った物の強度を落さなければならないだろうか、とぼんやり考えつつ。
ゆっくりと片目だけ開けてみる。視界が二重になった、というよりは“ビー玉の視点”が実際の七生の視界にワイプの様に小さく現れるといった感じである。
目を閉じればその小窓が全画面となって目蓋の裏に投影されるといった具合だ。

「……おー、これ結構便利かも。」

七生は素直な感嘆の声を上げる。
完全に屋上で不審者じみているが、まあ人も居ないし構うもんかである。

ご案内:「屋上」に水月エニィさんが現れました。
水月エニィ >  勢い良く扉を開く音。
 扉の先には少女の姿が見える。

「へぇ、こうなってるのね……」

 先客には未だ気付かず、周囲を見渡している。

東雲七生 > ハッ。
屋上の扉が開く兆しを見せたところで両目とも開く。
しかしまだ視界の隅っこにビー玉からの視点が映っており、七生は慌ててビー玉についている糸を巻き取った。

「……せ、せーふ……。」

うっかり予期せぬものが見えてしまう可能性も無くは無い。
そんなうっかり事故を防ぐためにも、迅速な行動は大事なのだった。

「……って、あれ?誰だろう、こんな時間にこんな場所で……。」

日曜の昼下がり。
わざわざ学校の屋上なんて訪れる奇特な人間は自分くらいだと思っていたのだが。

水月エニィ > 「……あら、先客。人のいない時間に人のいない場所だから、いないと思ったけれど。」

 軽く流すようにしゃべりながら、
 まっすぐに東雲を見つめてみせた。
  
「……まぁ良いわ。こんにちは。邪魔したかしら?」

東雲七生 > 「あ、えっと……ちはー!
 別に、邪魔とかそんなじゃ、全然ないから!大丈夫大丈夫!」

ビー玉との接続を切って、ポケットに放り込みつつ。
初対面である少女に向けて、人懐こい笑みを浮かべて首を振る。

「何か、用事?……あ、もし邪魔だったら俺の方がどっか行くけど。」

水月エニィ >  大丈夫、と言わんばかりに小さく首を振った。
 少々キツめの眼つきだが、大人びた顔立ちでもない故に威圧感はあまりない。

「屋上でするような秘め事はないから平気よ。
 最近編入したばかりだから、暇と体力のある内に校内を探索していただけだもの。」

 人懐こそうな表情に対し、放り込む素振りを目で追ってから少しだけ口元を緩める。
 
「むしろ、貴方の方が何かしている風にも見えたけれど――」

東雲七生 > 「そっか、なら良かった。」

にぱ、と笑みを浮かべたままで頷いた。
最近編入して来たばかりと聞けば、なるほどな、と一つ頷いて。

「そっか、てことは一年生なのかな。
 俺は東雲七生、一応二年生……っていうか、正真正銘の二年生。」

一応先輩にあたるのかな、と低い背丈も気にせず胸を張る。

「ああ、ちょっと異能の事で色々とね……。
 あんまり人目に触れさせたい能力でもないから、もう止めるけど。」

水月エニィ > 「先輩ね。分かったわ、東雲先輩。
 私は水月エニィと名乗っているわ。困った時は頼りにさせて貰おうかしら?」

 胸を張った素振りを見れば、意地悪そうに話題に乗って返す
 とは言え表情は険しくないあたり、皮肉テイストの冗句のつもりなのだろう。

「そう。それならあんまり聞かないわ。
 確かにそうでなければ、ここは択ばないでしょうね。」
 

東雲七生 > 「水月、エニィか……。
 うん、よろしくな、水月!勉強以外の事なら、おおよそ力になれると思うぜ。」

あ、でも魔法とかの事も駄目だ、と軽く頭を掻きつつ付け加える。
まあ、その時はその時で、魔法や魔術に詳しい知り合いを斡旋できるか、と考え直し。

「へへ、サンキュ。
 それにしても、わざわざ日曜に校舎の探索なんてしなくても良かったんじゃねえか?
 明日からまた普通に授業あるんだし、休みの日はしっかり休んどいたほうが良いぜ?」

そろそろ中間試験もあるし、と少しばかり真剣な表情をするものの。
地が童顔なのでどうにも迫力に欠ける。

水月エニィ > 「あら。初対面の性悪女にも気を効かせてくれる事。
 もう少し早く出会えれば買い物の荷物持ちでも頼んでいたかもしれないわ。」

 "結局親切な風紀委員が手伝ってくれたけど"とぼやきつつ、
 魔法や勉強以外なら力になれると言った彼を見る。
 少し、思案してみせて。
   
「この島の男子ってやけに親切ね。
 ……ん、講義や課題もまだ緩く、時間と体力のある時だからやっておくのよ。中間試験に入ったら出来ないじゃない。
 それくらいやっておかないと私のようなヤツはダメなのよ。何かあった時把握不足で痛い目を見たくないわ。」

 迫力に欠けるものの、それゆえの真剣・純朴さは伺い知れる。
 とは言え、私が手を抜く理由にはならない。呪いめいた空気を言葉に乗せてそう零す。
 表情は険しく冷たく、余裕のなさ位は読み取れるかもしれない。

東雲七生 > 「初対面だから性悪かどうかなんて分かんないし、
 仮にそうだとしても、性悪には慣れてるし……」

あはは、と少し疲れた様な笑みを一瞬見せるも、すぐにそれを仕舞い込んだ。
荷物持ちだって、まあ断る謂れが無ければある程度は協力するつもりではある、と頷いて。

「まあ、情けは人の為ならずってね、大体は下心だと思うよ。
 自分が困ってる時に助けて貰える下準備みたいなもんさ。」

少なくとも俺はそうだし、と肩を竦める。
それからやはり何処となく心配そうにしながらも、

「まあ……そういうなら、無理に止めろとは言わないけど。
 環境の変化って思ってたより疲れるもんだから、倒れないようにね。」