2016/05/16 のログ
水月エニィ > 「あら? 東雲先輩って女に苦労しているの?
 慣れているだなんて、大変ね。可愛い顔して女心が分かるやり手なのかしら。」

 零すような笑みには視線を向けていた。

「違いないわね。
 でも、それは私が困った時に助けてくれる人に見えたって事かしら?
 ――そうね。倒れた時には看病してもらいましょ。身体で返してあげるわ。」

 トーンを落とした、落ち着いた声色。
 少しだけ真面目にそう問うてから、誤魔化す様にからかうだろう。

東雲七生 > 「苦労してるっていうか、居候先の……何て言うのかな。
 まあ、苦労しててさ。……女心は分かんないけど。」

正直に答えつつ、苦笑を浮かべる。
性悪、と言うと聞こえは悪いが実際性根が悪い事も平然としてくるのだから仕方ない。

「人と人ってどこでどうつながるのか分かんないからさ。
 直接水月から助けて貰わなくとも、巡り巡ってって事も十分あり得るし。
 ………いっ、いや、別にそういうのはいいから……!」

頬を赤らめて、ふるふる、と首を振った。

水月エニィ > 「そう。大変ね。」

 答えに詰まっているように見えたのだろう。
 短く答え、話題を打ち切った。


「へえ。お人よしのようで現実的だけど、優しい方なのね。
 ――あら、可愛らしい。」

 赤らめた彼をからかう様に笑い、それとなく視線を外す。
 少しだけ赤らめた辺り、言っている自分も恥ずかしくなったのだろう。

(ああもう、あの聖女はこれくらいでダメなのね。)

 何が引き金になったのか、
 自分の境遇を思い返せば少し苛立ち険しい表情。一瞬だけ、妙な表情の変わり方をした。

東雲七生 > 大変なんです。
そう頷く顔は、どこか満更でも無さそうにも見えるかもしれない。

「現実的って言うか、どっちかと言えばすっげー理想しか見てない気がするけど。
 ……か、からかわないでくれる!?」

赤くなった頬を手で隠しつつ、ふるふると羞恥に震える瞳で水月を睨む。
やっぱり迫力に乏しかったが、それもすぐに少女の気配の変化に気付いてかきょとんとした顔になった。

「うん?……どーしたんだ、水月?」

水月エニィ > 「……ふん。ハッタリでない理想家ほど現実を見る奴もいないわよ。
 理想のためなら何でもするのが理想家でしょう。」

 覗かれた顔には陰りがある。応える言葉には怨嗟が篭る。
 恨みと呪いがある。悪い霊を引き寄せる程の恨みがある。
 少しだけ、空気が冷えた風に感じたかもしれない。

「……なんでもないわよ。
 嫌な事を思い出しただけ。」
 
 まとめて締めくくってみせてから、大きなため息をついた。

東雲七生 > 「ううん、ハッタリかどうかは……俺自身どうかわかんないな。」

苦笑を浮かべたままで小さく首を振る。
エニィの雰囲気がやおら固くなったのを見ると、怪訝そうにしつつもそっと歩み寄って。

「そっか、嫌な事か。
 ……ほれ、とんでけー!」

にぱっ、と子供みたいな笑みを浮かべると、
おもむろに手を伸ばしてわしゃわしゃーっと水月の頭を撫でようとするだろう。

水月エニィ > 「きゃっ、ちょ、も、もう!?」

 わしゃわしゃわしゃと頭を撫でられる。
 払いのけこそしないが、恥じらいと狼狽から身体を大きく震わせた。
 柔らかく艶やかな感触と、シャンプーの甘い匂いが確かに香る。
 
 ……気と力が抜けたのだろう。へたり込みこそしないが、ぐったりと東雲にもたれ込むように寄りかかろうとするか。
 それをかわせば、手ごろなフェンスへ。

「ぜぇ……も、もう、いきなり何するのよ……
 びっくりしたじゃない……」

 陰りは見えない。
 ……確かに嫌な事は飛んで行っている。

東雲七生 > 「にひひひ。
 嫌な事とかあった時にこうされると、結構嫌な気持ちどっか行くんだよな。」

経験則、というやつだったのだろう。
無邪気な子供みたいに満面に笑みを湛えて、どこか勝ち誇った顔をしていたが。

「え? わ、わ、ちょっと、水月!」

急に凭れ掛かられれば、驚いたようにその身体を支えつつ目を丸くする。
何か変なスイッチでもついていたのだろうか、と目を白黒させているところに自分が散らしたシャンプーの香りが鼻をくすぐって。

「ご、ごめんごめん。
 ……けど、大丈夫か?」

水月エニィ > 「……大丈夫よ。慣れていなさすぎただけ。
 変に混乱しすぎて疲れたわ……貴方が危険な人じゃなくて良かったわ。本当。」

 潤んだ瞳を整え、気を取り直して離れる。
 大きなため息。本当に狼狽して余分に疲労していただけなのだろう。

「友達なんていないぼっちには刺激が強すぎるのよ……。」

 ぷい、と、落ち着かなさそうに視線を逸らした。

東雲七生 > 「えっ、あ、そうなのか……
 それは、ごめん。……別に他意はないからさ。」

気恥ずかしさと申し訳なさから少し項垂れ加減に頭を下げる。
とんとん、と自分の指を突き合せながら上目遣いでちら、と顔色を窺う姿は到底先輩には見えないだろう。

「あ、友達……そっか。
 じゃあさ、良かったら俺と友達になってよ。
 今のお詫びも、改めてしたいからさ!」

ひょい、と顔を上げると再び満面の笑みを湛える。

水月エニィ > 「……面倒くささには自信があるけれど、
 慣れている東雲先輩なら問題なさそうね。」

 皮肉めいた軽口を叩こうとするも調子が乗らないのだろう。視線を合わせたり外したりしている。
 ため息のふりをした深呼吸でもう一度息を整え――

「そうね。感謝するわ。
 ……何をすればいいか分からないけれど、連絡先位は貰っておいても良いかしら。」

 スマートフォンを取り出してみせれば、ホーム画面を開いて待機させた。

東雲七生 > 「大丈夫大丈夫、俺の知ってる奴らに比べたらさ、
 水月なんて可愛いもんだって、いやホントさ。」

普段どんな仕打ちを受けてるのだろう。
へらり、と余裕の笑みを崩さないまま、こちらも端末を取り出す。

「ああ、うん。ええと……
 あ、はい。これ、俺のアドレスと電話。」

簡易プロフィール画面を呼び出すと、エニィへと見せる。
編入して早々先輩の連絡先を手に入れられるとか幸先良いなあ、とか他人事の様に言いつつ。

水月エニィ > 「ふん、猫を被っているだけかもしれないわよ。」

 言葉だけを返しながらメールを開く。
 視線と指はスマートフォンに向いている。

「……登録して、送り返したわ。これでいいのよね。」

 メールに乗せて連絡先を送付する。
 電話番号とメールアドレスに不審な所はなく、住所は女子寮となっている。

「さて、私はそろそろ行こうかしら。他も見ておきたいもの。
 ……改めて宜しく、東雲先輩。」

東雲七生 > 「いやー、仮にそうだとしても、……いや、やめとこ。」

例を挙げようとして恥ずかしくなったのか頬が赤くなる。
そしてそのままエニィの入力を待ち、それが完了した旨を伝えられると同時に自分の方の着信を確認。
おっけーおっけー、と頷いて。

「へー、女子寮か。
 俺は異邦人街の端の方だからさ、もし異邦人街に用がある時は声掛けてくれよな。
 ……そんじゃ、またなっ、水月!」

ぱぁぁぁっ、と明るい顔で大きく手を振る。
先輩、と呼ばれることがとてもとても嬉しいらしい。

水月エニィ > 「異邦人街、覚えておくわ。
 ……ええ。またね。また学校で会いましょう。」

 調子を取り戻したのだろう。
 整った笑みと共に軽く手を振り返し、くるりと背を向けてその場を後にした。

ご案内:「屋上」から水月エニィさんが去りました。
東雲七生 > 「迷子になんないよーになー!」

ぶんぶん、と手を振り続けて後輩の後ろ姿が扉の向こうに消えれば、ようやく腕を下ろした。
そして、一度大きく息を吐いた後、

「~~っ!!」

必要以上に異性と接触してしまった気恥ずかしさから再び地面をぺしぺし叩くのである。
当人のまえでは何とも無さそうな顔を“先輩としての矜持”で持ち堪えていたものの、やっぱり恥ずかしかった。
しかもほとんど初対面だったし。

「う~~……先輩だし、先輩なんだし、もっとこう、
 『おっと、これは失敬だったね。HAHAHA』みたいなリアクション取れれば良かったかな~っ!!」

一体どんな理想の先輩像を持っているのだろう。

東雲七生 > 地面を叩くのみ飽きたらず。
人の気配も無いのを良い事に、その場で転がりながら理想と現実の離れっぷりに身悶えること暫し。
服の汚れを叩き落としながら身を起こした七生は、ふと時計に目を向けて、

「あ、やっべそろそろバイトの時間!
 今日はどれくらい荷物あんのかな……」

少し慌てた様子で、ぱたぱたと屋上を後にしたのだった。

ご案内:「屋上」から東雲七生さんが去りました。