2016/06/18 のログ
ご案内:「屋上」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
トトン、と外周の手すりに降り立つ。
日課の飛行を終えて、休みの学園の屋上。

「……ふぅ」

休みは静かでいい。
考え事も一服も、何にも阻まれない。

手すりから降りて着地、近くのベンチに座った。

寄月 秋輝 >  
腰を下ろし、刀を横に立てかける。
大きく息を吸い、吐き出す調息。
空を見上げれば、既に真夏の勢いの太陽。
さらにその奥、太陽の光に隠れて、本来は見えないはずの星々。

端末を開き、指から光の糸を生み出して接続する。

(……事件の動きはまだまだ大きいか……
 世界の問題か、能力者の数の問題か。
 これは本格的に、位相のズレではない可能性が高まってきたな)

自分の持ち上げた可能性をようやく捨てられる段になってきた。
もう少し平穏無事に生きてみるのもいいかもしれない。

ご案内:「屋上」に楢狗香さんが現れました。
楢狗香 > からん。

10時方向から音がする。屋上の四隅。

ころん。

7時方向。真後ろじゃない。

からん。

4時方向。視界には入っているはずだ。いや、最初から全周視界があればわかるはずだったが。
必要なのはおそらく視覚ではなく、認識だったのだろう。もしくは、■か。

ころん。

1時方向。制服姿の異邦の女が、近くにいた。

「おひさしにありんす?」

柔らかそうな紅い唇を 開く。

寄月 秋輝 >  
足音が聞こえた時点で、周囲の光を察知した。

一瞬身震いする。

何故彼女が『ここ』に?

こんなものにまで絡まれるとは。
やはり自分は平穏とは程遠いのだろうか、と感じながらも。

「……久しいですね。
 先日はどうも」

いつの間にか傍に居た女性に、あまり驚いた様子を見せないように語り掛ける。

楢狗香 > 一瞬まではそこに存在していなかった。
光が地形の違和感を伝えてくる。さか回りの、足音。違和感のある屋上。

「こちらこそ。
おすすめされた一品、お客さんにもお気に召しゃあてもらえたやうで。」

礼を言わせてもらいなし。と頭を下げる。
重力と風の流れに逆らって、異邦の女の髪が広がった。

何故、という言葉を思い浮かべたところに微笑を深めて

「そう、先日屋号もここの生徒になりゃあした。
よろしゅうにありんす。」

と、まるで問いへの答えるような言葉を紡いだ。

寄月 秋輝 >  
「あぁ、ここの生徒に……
 その制服を着ている道理ですね」

ベンチに座ったまま、ぺこりと一つ礼をする。
思考が読まれた……とは考えたくない。
疑念に思いそうなところに応えておいた、という程度だろう。

「お店に伺おうと思っていましたが、あれから機会が無く申し訳ありません。
 少しずつ余裕が出来てきたので、近いうちにお邪魔させていただきます」

すっと顔を見上げながら囁く。

楢狗香 > りぃ ん

手すりが鳴っている。泣っている。無っている。
光で見る分には、何もない。

「それは喜ばしくありんす。
ななかおいでらしゃぁせんで、場所でも伝え忘れたかと。」

最初から、伝えてなど。だがおそらく、行こうと思えばたどり着く気がするだろう。

「そう、ええと同級生…?
その縁でもしかしたら、こちらからそちらへお邪魔することもあるかと存じんす。」

同級、ではないだろう。おそらくは。
だがそこが重要ではなく。同じ生徒と言う縁こそが会話の本題のようだった。

こちらもまた、異邦の彼女から場所は問わない。教えなくてもいいのだろうか…教えなくても、来るのだろうか。

寄月 秋輝 >  
こっちへ来る。
つまるところ、避け続けることも出来ないという意味か。
元々避けていたつもりもないのだが。

「職人と客の関係だけよりは、まだ接しやすいかもしれませんね。
 それとも、ここでお願いしましょうか」

少し冗談交じりに言い放つ。
同時に、並列思考を一つだけ巡らせる。


あぁ、これは。

怪異だ。


幾度か、前の世界でも出会ったことがある。
自分の思考をも制御されるこの感覚。
おかしな物理法則以上に、それが恐ろしい。

楢狗香 > 「お話だけなら。」

思考への違和感は否定することもできる。
いや、おそらく違和感を感じている時点ではまだ正気ではあるということ。

「職人と客と言いやしょうが、接客業にありんすゆえ。
そう言いきられると少し自信をなくしやせ。」

困ったように笑う。その目が、見つめてくる。
恐れを見透かすように。視線は三つ。

「用があるとするなら、是非屋号と仲良くしやってくだしゃんせ。
拙速とはいきゃあせん。ゆくりと。矜持もありゃあし。」

三つ指をスカートに、頭を下げる。先ほどからベンチへ座る様子は、無い。

寄月 秋輝 >  
目を細める。笑みの形。
幾度か抗い、敗北しつつも生き延びて、正気を保ってきた『怪異』に見つめられる。
それ自体に恐れはない。畏れもない。
それに見初められることは、初めてでもない。

「特に気にすることもないと思いますよ。
 急いでいるつもりもありません。
 ただ、ここはちょうどいいと思いませんか?」

座ったままわずかに腰を浮かし、ベンチの幅をあける。
その横をとんとんと叩いてみせた。

楢狗香 > 困ったような微笑のまま、彼女は勧められたベンチを断った。
座らないのではないかもしれない。

「このような場で長話には、せめてもてなしの一つもできやせん。
…お、ええと。…話には興味もありんすが…。」

お客さん、といいかけてやめた。
いままで問われはしても名を問うたことは無かったはず。

こういう間柄をどう呼ぶべきか、惑ってやめた。

「不覚にありんす。
次は飲み物でも用意しときゃぁいけやせん。
ああ、でも少しお話していただけるというのなら。」

首を振り己の失態を悔いるように。そして気を取り直して、問いかける。

「…この学園でなにをしなさっておいでで?」

何を問うているのかは、如何様にも取れそうな。もしくは最初から見てでもいたのだろうか。


風が吹いていた。羽休めに何かが降り立つような。

からん。正面の彼女から足音がする。

寄月 秋輝 >  
「もてなしが必要とも思いませんよ。
 ここでは同じ学園に通う、ただの同門です。
 店を出た先でまで、客を相手にしていては息も詰まるでしょう」

相手が戸惑っている。
まだ自分は飲まれてはいないのだろうと理解した。

「そうですね……特に、何をしているでもないです。
 ただ学び終えたことを再び学び、平和を享受しているだけですね。
 今もそう、ただ平穏な今日を満喫していただけです」

楢狗香 > 白い繊手が持ち上げられる。
胸元をなぞり、薄い首筋からすっと通る顎、そして口元を柔らかそうに押し潰して。
わずかに開いた口腔に沿って横に滑らされた。笑みの形がその動きに合わせて深められる。

飲まれてはいない、戸惑っている。そう理解したのがよかった、とでも言うように。

「私事と仕事を分けるというものでありんすか。
しかし屋号の私事にも立場というものがありんす。癒し手がその在り様を忘れることは容易くありゃあせん。
もちろん…ああ、そう。同門にそれなりの気安さを持ちたいとは願いやし。」

ころころと、楽しげだ。とても。

「同門といえ、まだ屋号はなったばかりにありんすゆえ。
どのやうなことを学びにありなせ?」

もう少し具体的なことを聞きたいというような。
風がやんだ。

ころん。

右視界の端から音がする。不可思議な。

寄月 秋輝 >  
「……随分と仕事人ですね。
 公私ははっきり分けて損はありませんよ」

それが出来てないのがこの男でもあるが。
空を見上げたまま、視線を戻さない。

「人が今まで学んできたことの基本や、人としての生活のあり方。
 この世界での異能の存在や、魔術の立ち位置。
 この世に現れた、この世の物ならざる存在たちの話、などですね」

聞かれた通りに応えていく。
異変には気付いているのか、気付いていないのか。

楢狗香 > 「そうはいかないのがこういうお仕事にありんす。
それに、どう分けたところで己が己から逃げるのは容易くなし。
そんなお客さんにわたくしを見つけなおしてもらうことが耳かき屋のお仕事でありんすから。」

身をゆだねる。己の本質を再発見する。
気を張りすぎた現代ではきっとそういうことも必要なのだろう。

建前としては。もうひとつの意味がありそうなことには、気付いてしまってもいいし気付かなくてもいい。


口元を遊ぶ指先が、吸い付くような唇からやっと離れる。
艶やかに糸を引いているような、そんな幻が見える気がするだろう。もちろん視覚的にはそんなことはない。

「ああ、いい知識が満ちているようで。よいことをお学びになられているでありんすね。
屋号ももう少し教養を蓄えねばありゃあせん。」

からん。

異邦の女が少し、空を見上げたままの顔に近づく。覗き込むように、白い腕を伸ばして。
足音は後ろから聞こえる。そこの手すりはいつもどおりだ。


ころん。

伸ばした指の先端を、話し相手の唇へと沿わせてきた。
弾き飛ばしてもいい。すぐに相手の姿ごと消えるだろう。
ただそうさせてもいい。まるで幻だったかのように、滑る感触だけがはっきりと残る。

再びもう一度、屋上に風が吹く。
羽を休めていた何かが、何処かへ飛び去ったような。そんな風が。

寄月 秋輝 >  
「……それもまた道理ですね。
 では僕も、自分の戦いを続けることに疲れる前に、あなたの元を尋ねましょうか」

視覚はともかく、異能と魔術の感覚で相手は掴んでいる。
それでも包囲網から抜け落ちそうになる。
ある意味、恐ろしいな。と笑う。

「……あなたもここで学べば、変わってきますよ。
 ……何が変わるかまでは、わかりませんけれどね」

唇を撫でられる感触。
突如消える……否、最初から居なかったも同然のように消える女。

風が吹くと同時に、ぴちゃりと音を鳴らして口を開き、自分の唇を舐める。

厄介なものに魅入られてしまった。

(せめて夢だけは引き継がせてから狂い堕ちたいものだ)

ベンチから腰を上げ、刀を手にする。
彼女が消えたように、自分もまた偏光迷彩を纏い、手すりから身を乗り出して風に乗った。

ご案内:「屋上」から楢狗香さんが去りました。
ご案内:「屋上」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「教室」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 当人には制御不可能な異能のために、一般の学生と共に授業を受けることが困難な者を擁する「たちばな学級」。
クラスに宛がわれた小教室の長机で、ヨキは独りノートパソコンに向かっていた。

金工をはじめとする美術系科目の正規教員、年少の生徒の面倒見のほか、忘れてはならない業務がこの「たちばな学級」の講師だ。
名目上は非常勤ということになっているが、今のところ担任を務めているのは養護教諭の蓋盛椎月しかいない。
教師にも学生にも心身に大きな負担を伴うクラスの性質上、ヨキはほとんど担任のように頻繁に顔を出していた。

時刻は夕方。
授業後に学生らの相談に乗るヒアリングの時間を終えて、教室に残っているのはヨキ一人だ。
元より「たちばな学級」それ自体の知名度が低く、建物の隅にひっそりと教室が置かれていることもあり、通り掛かる人間は少ない。
人目を避けて仕事に集中したいとき、ヨキはこの教室をよく使っていた。