2015/06/30 のログ
■渡辺慧 > 「…………いや、あれで男って無理あるんじゃね?」
いや、元からそうだったのかもしれないけど。
……ま、彼。……ややこしい。彼女に言った通り、自分も気晴らしは出来た。
最後まで飲みきる。…………うん。
やっぱり、甘い。
ご案内:「休憩室」から渡辺慧さんが去りました。
ご案内:「図書館」に生ヶ易案子さんが現れました。
■生ヶ易案子 > ――あんずさんは勉強が嫌いである。
■生ヶ易案子 > 嫌い、というのは正確ではない。
たとえば、大気に触れると死んでしまう嫌気細菌たちは、酸素のことを「嫌い」だろうか?
科学もしくは文意のどちらかに長けた賢明なかたは、こういう感想を抱くだろう。
「『嫌い』だと思うほどの感情や知能があるのか」、と。
まあそういう話である。
より正確にいえば、あんずさんは勉強が苦手である。
■生ヶ易案子 > そんな彼女が……自主的な予習復習どころか講義にもロクに出席しない彼女が、
この常世学園において、なにか致命的な事件にかかわるでもなく、落第街で違法行為にふけるでもなく、「普通に」留年しつづけるというある意味相対的に異常っぽい彼女が、
なんと図書室で何やら書物とにらめっこしている。
事件といえばまあ、事件だ。
図書室はいつも通り静かだが。
■生ヶ易案子 > 「しゅひぎむ……」
机に広げられているのは、課題ではなく、新しいバイト先の書類。
たどたどしくめくられる、やけに1ページの薄い箱のような本は、中学生向けの漢字字書だ。
「ぎょうむうえしりえた」
口に出してしまっていることに気付いて慌てて口をつぐむ。
図書館は静かに、だ。
■生ヶ易案子 > サボり魔留年王と名高い彼女にも、この島で日々を(すでに6年ぶんくらい余計に)送るための日銭が必要だ。
今までは主に日雇いの簡単なバイトを『異能』でズルしながらなんとかやりくりを続けていたが、今度のバイト先は、わりとしっかりした組織であった。
当然、仮にも一員となるとあたっての小難しい事項も多い。
一般教育課程が6、7年も中学1年生相当で止まっている身としては、個人で読解するにはあまりにつらい内容の書類だったのだ。
■生ヶ易案子 > たどたどしく、ページをめくる。
……辞書をひく、という行為は、慣れていない者にとっては非常に難しい。
なぜなら、辞書をひくのが苦手なひとは「ページをめくって、進むべきか戻るべきか判断する」という作業をかなりの回数繰り返すからだ。
それ1回にかかる時間が長ければ長いほど、辞書を1回引くのにかかる時間は蓄積するように長くなる。
■生ヶ易案子 > ……そんなこんなで小一時間。
(わからん!)
結局、声に出さずに脳内でそう叫んで、背もたれに身を投げ出すのであった。
書類も机に広げっぱなし。そもそも公共の場所に持ち出してこの状態な時点で、守秘義務とはなんだたのかという話である。
■生ヶ易案子 > ……そのまま、ぼんやりと図書館を見回す。
天井まで届きそうな本棚のミルフィーユ。
本当のところ静かではないが、静かにしようと努める利用者たちの織り成すかすかなさざめき。
いま眼前にあるはずの光景、自分がいるはずの場所を、……まるで空の虹でも眺めるような、遠い目で。
――今となっては、誰にとっても価値のない昔話だが。
昔むかし、といっても、世界にとってはそれほど昔でもないむかし。
彼女がまだ自分の異能を、その恩恵と呪いを、完全に割り切ってしまうよりも前には。
生ヶ易案子は、ずっと図書室で本を読んでいるような女の子であったことも、あったのだ。
■生ヶ易案子 > ……意味のない話だ。
意味のない話なので、しばらく背伸びをしたり、目に優しい照明と睨みあったりしていよう。
■生ヶ易案子 > ……さて。
普段のあんずさんには関係のない時間の移り変わりだが、そろそろ昼下がり。
講義を少なめに取っている生徒が、一気に自習に入る時間だ。
さすがに、席を開けたほうがいいかもしれない。
■生ヶ易案子 > 「――しっかし」
最後にひとつ、伸びをして。
「落ちつくんだか落ち着かないんだか、よくわっかんないなー、図書館は」
今となっては、だ。
ご案内:「図書館」から生ヶ易案子さんが去りました。
ご案内:「図書館」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > (──“「寝てません」鉢巻”
それは、学生通りの裏路地にひっそりと構えられた雑貨店で売られている、
所謂「ダサ鉢巻」の中の一つである。
白地に赤文字のちょっとポップな書体で「寝てません」とだけ書かれたシンプルな一品。
もちろん、売れ筋商品には逆立ちしたってなれないような代物だ。)
………くー。
(東雲七生は、その鉢巻をきっちり締めて居眠りをしていた。
テスト前日。成績劣等生のあるべき姿を全力で体現している。)
■東雲七生 > (なお、この鉢巻には他にも「自☆習」や「やればできる」等、
異邦人でも買わないだろうと思われるハイセンスな物も存在する。
しかしながら、少数の愛用者が居るらしく入荷数が少ないのも相俟ってか、常に品薄な非常にレアだという噂もある。)
……くー。
(なお、その噂とこの上なく幸福そうな顔で午睡を満喫する彼と事実関係があるかどうかは不明である。
べ、別に東雲くんのセンスが悪いなんてことないんだからねっ)
■東雲七生 > (また、この「ダサ鉢巻」の他にも同様にハイセンスなTシャツやトランクスなども同じ店に売られているのだが。
Tシャツの方はそこそこ購買層が厚いらしく入荷数も少なくないらしい。
トランクスは一周回って人気商品だったりで、世の中の流行り廃りというものはいつの時代も掴めないものだ。)
……んん……ん。
(なお、そのどちらも東雲少年のお気に入りである事はもはや語る必要もないだろう。
異能を持つ者の宿命とか宿業とか、きっとそういうものだ、多分。)
■東雲七生 > (白いカーテン越しに窓から差し込む日差しが夏を感じさせる。
気が付けば夏本番も目前となった今日、少年が図書館を訪れたのはもちろん翌日に迫った試験の勉強のためだ。
それなのに少年の手元には筆記用具はおろか、教科書の類すらない。
放課後一番乗りで図書室に来て、席を確保し、涼やかな空調の風に当たっていたら、)
……んんむ、にゅ……。
(僅か数分で眠りに落ちた。
紙の匂い、すなわち木の匂いには様々な効果があると言われているが、
この少年にとって催眠効果でもあるのだろう。部屋そのものが睡眠薬みたいなものだ。)
■東雲七生 > (図書館内には東雲の他にも勉強目的で訪れた生徒がそこそこ居る。
しかし皆一様に鬼気迫る表情をしていることからも、試験日前日の緊迫した空気が感じられるだろう。)
……んん、……くぁー……。
(もちろん、居眠りこいてる生徒なんて一人を除いて存在しない。
そこまで人生なめくされるほど、試験は甘くないのだ。)
ご案内:「図書館」に白崎玲刃さんが現れました。
■白崎玲刃 > 【そんな試験前日ムードな図書館の中
試験前日だというのに試験とは全く無関係な目的を持って図書館へと来ている生徒がいた
そう、玲刃である。】
ふむ……これと……あとこれか…
ああ、これも関係ありそうだな…
【彼は、図書館の魔道書のある本棚の前で数冊の魔道書を手に取りながら
何やら考え込みながら吟味している様であった。】
■東雲七生 > (そもそもこんなに気持ちの良い午後に寝ない方がどうかしている。
試験勉強なんてものは帰ってから家でやれば良いのだ。
眠りに落ちる直前、そんな事を思っていたことも無いでもない。)
……ふぃー……。
(何の為に鉢巻までしたのだろうか。
その理由は既に、夢の向こうへと追いやられている。)
■白崎玲刃 > ……まあ、これくらいで良いか
必要な術式が思いつけば後でそれに関した術式が載っていそうなものを探せば良いしな
【彼は、一応の目的の魔道書を選んだ様で
そのまま、数冊の魔道書を手に持ち、テーブルの方へと歩いて行く】
ふむ…空いてる席は……
ここしか無いな…
相席良いか?っと、寝ているか…
【玲刃は席を探すも
試験前日という事もあり、空いている席は殆ど無く
ちょうど、空いていたのが東雲の寝ているテーブルの席であった。
相席良いかと問おうとしたものの、東雲が寝ていた為、
起こすのも悪いと思ったのか、声をかけるのを止め、そのまま静かに正面の席へと座って魔道書を読み始めた。】
■東雲七生 > んー……。
(白崎の問いかけに軽く手を振って応じる。
寝つきは良いが、それほど眠りが深いわけではないようだ。
向かいで何をしていようと、安眠の妨げでない限り意に介さないだろう。)
■白崎玲刃 > 【玲刃は書架から持ってきた本のうち、
まずは、自身が使用する、混成魔術における、収納魔術の術式を作成するときにおいて参考にした魔道書や、
魔術の制御に関する書籍を読んでいる様だ。】
あの時の、あれを再現する事が出来ればな…
【玲刃はあの時、そう、クロノスとの一度目の戦闘を思い出しいながら呟く
あの戦闘において、さいこの体質により、超常が狂った中
強引に発動した収納の魔術は、武器を射出した。
もし、あれを再現し制御出来れば、
自分にとって唯一の攻撃魔術として使えるものを獲得できるのではないかと玲刃は考えていた。
玲刃は、魔道書を読みながら時折なにやら、ぶつぶつと呟いているが、
東雲が寝ている邪魔をするつもりは無いようである。】
■東雲七生 > ……ん、ふー……。
(小さく寝息を立てながら周囲の邪魔にならない範囲で午睡を続ける。
その後しばらく経てば、いつ起こそうかと痺れを切らした図書委員によって半ば引きずられる様にして図書館から締め出されたのだった。)
ご案内:「図書館」から東雲七生さんが去りました。
■白崎玲刃 > いや……しかし、だな。
もし、あれを制御して発動出来たとしても、射出する武器を選べなければ、貴重な物も射出してしまう可能性もあるな…
【玲刃は悩み呟きながら、魔道書を読み続ける
まずは、収納の魔術においての収納する物を分別出来ればと、
玲刃は術式の改善案を模索し、魔道書を読みながら構築してゆく】
いや……これだと、詠唱が必要になるか…
そうなると混成補助魔術の理念とだな…
【玲刃は、ある程度案が思いついた様では、
あるが問題がある様で、額を抑えて悩む。】
ああ、そうか。
こうして、収納の際に先んじて条件付けをして
発動の際に宣言を加えることで、その条件の物のみが出る様にすれば…
【玲刃は、はっとした表情で、
先程生じた問題の解決方法が見つかったという様に呟く。】
【東雲が締め出される様子を見て、
もしかして、起してあげれば良かったのかと、首を傾げながら
申し訳なさそうな表情をした。】
■白崎玲刃 > そうなると、
収納の魔術自体にも名前が必要になるな…
毎回いちいち収納の魔術とは、言いにくいしな…
【玲刃は、問題の解決方法に合わせて、
自身の収納の魔術に名が必要だと判断し考え始める。】
そうだな……
これで良いか
武器庫の門<ゲート・オブ・アーモリー>
【玲刃は、収納の魔術を思いついた名を唱えながら発動する
本来、収納の魔術は、発動時に名を唱える必要も無いのだが
付けたばかりなので、気分的に名を呼びながら発動したようだ。】
ふむ……こんな感じで良いか。
あとは、射出時の為に、
条件として、ナイフ、ロングソード、グレートソード
で条件付けすれば、魔剣などの貴重品は射出されない様に出来るか
さて……問題はここからだな…
どうやって、意図的に術式を狂わせて、射出させるかと
それをどうやって制御するかだな…
【玲刃は一息つく
しかし、ここまでは、目的の術式の為の、準備でしか無く
今回、作製するつもりの術式において中核となるのはここからであった。
どのようにして、術式を狂わせて、それを制御するかの案を得る為に
玲刃は、再び、魔道書や関連書籍を読みふけってゆくのであった。
しかしながら、言おう現在はテスト期間の前日である、
だというのに、何故にこの男は、魔術の作製などにふけっているのであろうか…?】
■白崎玲刃 > ふむ………これをこうして……
発動すれば……
【数十分後、魔道書を読み漁りどうにか意図的に収納の魔術を狂わせる方法を思いついた玲刃は
ここが図書館だという事を忘れて
早速発動しようとする。】
………とりあえずは出来たか……っ!
【玲刃の思惑通り、何とか収納の魔術は狂って発動し、
頭上に大きく、収納用の小規模の異空間との繋がる裂け目が出来、そこから剣が射出される。
成功した事を確認しながら玲刃はすぐに発動を止めるも、
もはや、後の祭りである、即座に発動を止めたとはいえ何本かの剣は射出され、
玲刃はかわすも、そのまま剣はイスやテーブルに突き刺さり音を立てるだろう】
あっ…………
【そう、ここは図書館である。更に今は、試験期間の前日
周囲のテスト勉強をしていた物や、図書委員から奇異の視線や、
集中を妨げられた事に対しての恨みの籠った視線が玲刃へと向けられる。
玲刃は、萎縮しながらイスや机に刺さった剣を抜きながら収納する。
不幸中の幸いではあるが、人には刺さっていなかったようだ。
余談ではあるが、
後日、玲刃は図書委員から図書室のイスや机や床の賠償を請求されたそうだ。】
■白崎玲刃 > あとは、制御か。
ここが問題だな、頭上じゃ無くて意図した所に開ければベストだが…
【剣を収納し終えた後、玲刃はもう一度席へと座り考えていた。
問題は、制御である、例え射出出来たとしても、自分や味方を巻き込んでしまうのであれば危険すぎる代物といえよう
故に、ここからがこの術式が実践に使用するに値する物になるかどうかの重要な分かれ目となる。
この術式に上手く指向性を与えられるならば、玲刃にとって唯一の攻撃魔術なる事であろう】
ダメだな………暴走させたままだと、頭上から無差別にであるし
従来通りだと、手の前に開き限定的だが、向きがこちら向きで、攻撃には使えず、自滅になるな…
【玲刃は額を抑えながら考え続ける
どういう方法をとったとしても、敵の方向へと指向性を持たせる良い方法が思いつかず
悩み続けていた。
良い方法が思いつかずダメかと思われていた
その時!】
!?……いや、待てよ。
ここをこう変えて、手の前に取り出す時と逆の向きで開けば……!
【玲刃に一つの発想が思い付く
従来の、収納の魔術の発動時の術式に手を加えて、
そのまま、裂け目の開く向きを反転させれば、手を向けた方向へと射出出来るという発想へと至ったのだ。
あとは、収納の魔術が狂った状態で、従来の発動時の開き方になる様に統合し調整するだけであった。】
■白崎玲刃 > あとは、これを発動して試してみれば…って
ああ、そうだった、ここは図書館だったな…
失敬失敬………ははは
【玲刃は魔術の作製に集中していて、
また、ここが図書館である事を忘れ、発動してみようとする。
しかし、玲刃が呟いただけの筈の発動という言葉に、
数人の生徒が反応し、
お前またやるのか……?という様な、視線を向けてくる。
その視線に、先程の惨事を思い出し、
忘れていたという様に、ばつが悪そうに苦笑いしながら、視線に恐縮し
再度席へと座った。】
よし、あれに関しては試しては居ないが多分完成といえるだろうし、
次は、こっちだな…
【玲刃が次に読み始めたのは、身体強化の術式に関連するに魔道書と、防御系の魔術に関する魔道書と、符に関する魔道書であった。
次に、玲刃が作ろうとしながら思いだしているのは、
活路とクロノスとの、公道バトルであった。
あの時に、活路が使用した呪符の絶大な効果を思い出しながら
自分も、いざという時に使用する為に呪符を作成することが出来ないかと思い
それに呪符作製の為の魔術を作成しようと魔道書を読み始めるのであった。
こうして、試験期間前日だというのにも関わらず、
玲刃は図書室には魔道書を読みながら思考錯誤を続けてゆくのであった………】
ご案内:「図書館」から白崎玲刃さんが去りました。
ご案内:「休憩室」に狛江 蒼狗さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > 狛江蒼狗は成績優秀であった。
【異能】や魔術の関わらない、特に一般的な高校生と同等の文系科目であれば模試でも9割方の得点を安定して取れていた程である。
然しながらそれは彼の頭の出来が良かったという訳では必ずしもなく。
弛まぬ努力を積み重ねて対応していった結果がついて来ただけの事で……。
よく言われるところの“努力する才能”が狛江蒼狗に備わっていたために得られたものである。
狛江蒼狗は項垂れていた。
休憩室に人は常時よりも多く、心地よくも憔悴を煽るテスト前の空気が流れている。
「………………」
隅の四人がけの椅子で、虚ろな視線を窓外の青空に向けながら雲を眺めている。
太陽が燦々と注ぐために、蒸し暑いこの時期はクーラーの効いた室内でも敬遠される席だ。
テーブルには缶コーヒーが3つ並んでおり、二つは空。
■狛江 蒼狗 > 狛江蒼狗は故あって一年ほど休学状態であった。
詳しい経緯はともかく、最低限常世学園に在籍できるだけの日数しか学校へ顔を出さず、委員会活動等で代替の単位を取ることもしなかった。
故に去年も3年生、今年も3年生である。
それは彼自体も当然の事だと認識していたし、それが必要だったから仕方のない事だとも思っていた。
(高々一年の遅れ程度、取り戻せる────)
取り戻せなかった。
当然今年度に入ってから授業には可能な限り出ていたし、その理解も一般生徒と同等に及んでいたと蒼狗は自負している。
ただ、理系関連の科目の単位も、自分の進級には必要なのだとテスト直前になってから気がついたまでのこと──。
■狛江 蒼狗 > 授業自体は去年に受けている。
出席率も、課題の提出も、成績も十二分であった。
ただ、去年に単位認定の試験を受けなかった以上その積み重ねは露と消えるわけで──。
今年の授業に出ていない以上、試験の成績だけで単位修得に必要な点数を得る必要があるわけで──。
一年も、別事(主にトレーニング)にかまけていては記憶も綺麗に蒸発していくわけで──。
「…………放心している場合ではない……!!」
蒼い瞳の青年は蒼白の頬を叩き、鈍った脳活動へ活を入れる。
狛江蒼狗は足を組み、3本目の無糖コーヒーを傾けながら思案する。
ご案内:「休憩室」に緋群ハバキさんが現れました。
■緋群ハバキ > 【先輩に頼まれ図書館に資料を探しに来た一年生。最早公安の業務なのか個人的な頼みなのか分かりゃしない】
【が、緋群ハバキはそんな事は気にしない。パシリこそ我が使命と言わんばかりの意気込みで、図書館のゲートを潜る】
【……と、つと休憩室の方へと目をやれば。以前公安資料室で些細な資料探しの世話になった先輩が】
【特雑の腕章は確かにその時コーヒーの抽出に腐心していた怜悧な顔で――】
狛江先輩、こんなトコで何やってんスか?
【赤マフラーも眩しい長身の後輩は、図書館という静謐を基本とする環境に於いて場違いな程度には大きな声で呼びかけた】
ご案内:「休憩室」に加賀背 雄さんが現れました。
■狛江 蒼狗 > (明日まで……あと何時間ある……!?)
今日は六月三十日、明日は七月一日。
幾ら世紀が変わり時代が変われども、その日付の刻みは四年毎の閏年にしか変わることもなく。
状況を再認識すると全身の汗腺が震え上がり、脂混じりの汗を分泌し始める。
現在放課後、だいたい午後5時前だろう。
そして蒼狗が受けるテストの開始時刻は午前9時である。
狛江蒼狗は休憩室備え付けのアナログ時計を見た。
秒針と分針と時針の絡むその盤を脳内で動かす────。
(…………じゅうろくじかん……???)
「……!?」
大声に音もなく座席から滑らかに立ち、低く重心を落とした拳法の構えをとる。
それほどに交換神経が働き過ぎていた。
時と戦うために。身が醒めていた。
「………………緋群……?」
記憶に残るその顔とマフラーを見定めると、蒼狗は構えを解き、何事もなかったかのように椅子へ腰を下ろす。
「……勉強…………だ」
震えている。微かに。
その表情は、死刑台の階段に足をかけた冤罪の死刑囚に似ていた。
■加賀背 雄 > (静かな空間はとてもありがたい。意識を極限まで研ぎ澄ますことができるからだ。
もうすぐ試験が始まる。それまでにきちんと学習しておかねばならない。
ちゃんとした生徒として、決して落第や留年、赤点など無きように……
ここは図書館。静謐さが支配する場所だ。 勉強には丁度いい。)
…はっ!
(大きな声にびくっとして顔を上げる。 聞き覚えのある声に、とりあえず読んでいた教科書を畳んで立ち上がる。
声のした方向へと歩いていくと、書架と書架の隙間から、たなびく赤いマフラ―が見えた。)
ハバキさん、こんにちは… 試験勉強ですか?
(会話をしている二人の所へ割り込んでしまうのはちょっと気が引けるけれど、
とりあえず挨拶がてらに小さくご挨拶。 図書館であまりうるさくするわけにもいくまい。)
■狛江 蒼狗 > (十六時間ということは……960分ではないか!!)
緋群との会話もそこそこに、狛江蒼狗の脳内は紛糾の極みにあった。
(960分といえば……えっと……)
不意に目を向けてみれば、緋群の知り合いらしき華奢な男子生徒が挨拶をしている。
恐らくは彼も蒼狗と同様の理由でここに居るのだろう。
日々予習復習を重ねて、ここへ最終確認をしに来た者と。
全ての積み重ねが存在しない状態で、ここへ最終決戦をしに来た者と。
その落差は崖下と崖上であり、同列に扱う事なぞできようはずもないが。
(……9600で、6を掛けて……54600秒……?)
狛江蒼狗は憔悴で四則演算すら危うくなりつつある。
だが、ここまでのロジックにより導き出されるはひとつ。
既に足元までも時の砂流に呑まれつつある────!
■緋群ハバキ > 【泰然として動かずその印象は山の如くであった先輩が、今や死地を前にした古兵の如くの表情を浮かべている】
【ハバキはそれだけで瞬時に悟った。構えを解く先輩に深く頷き】
つまり――試験ヤバ気ですか。
【ごくりと、喉を鳴らす。何故ならば――】
俺もです。
明日の試験ですか……。
【思案気な声を漏らす。自分は最早試験勉強など知ったことかと半ば現実を投げ気味であり、故に先輩のパシリを快く引き受けたのだった】
【……と、後ろから掛けられた声に振り向いておや、と目を丸くする】
雄くんじゃん。や、俺はパシリに使われただけなんだけど。
こっちの先輩は試験勉強中。雄くんも?
■加賀背 雄 > はい、静かな場所の方が落ち着きますから。 これ1つで何教科でも勉強できますしね。
(これです、とタブレットを持ち上げて見せる。 勉強に飽きたらSNSの運営、それに飽きたら勉強…
1台で色々なことがシームレスに使えるのはとても便利だ。)
パシリって…ええと、公安のお仕事ですか? その、テスト、明日からですけど…
委員会の業務って休んだりとかしないんでしょうか。
(確かに生徒が学校運営を引っ張るとは聞いているけれど、まさか試験前までするとは。
気合が入っているのか、目的と手段が入れ替わってしまったのか。
少し不安げに眉をひそめて問いかける。)
ええ、っと…あ、お話邪魔してしまってすみません。
加賀背 雄と言います。 この前ハバキさんと仲良くなって…
(なんとなく渋めな、年上っぽい先輩に頭を下げる。
たぶん公安? の人なのだろうと目星をつけて。)
■狛江 蒼狗 > 「……先輩として不面目な事だが……」
頷きを返すと、コーヒーの缶を傾ける。
カフェインの摂取量が、今後のテスト期間から三大欲求の一つを消し去ろうとする蒼狗の覚悟を示していた。
同じ戦場に置かれているという緋群へ、微笑みを投げかける。
それはどうあっても死ぬと解りながら、決死の突撃をかけんとする兵長の瞳である。
塹壕に待機していようと遠からず、というか明日から一週間かけて死ぬだろう。
だが、一夜漬けの苦しみを重ねなくても済む。
緋群もまた正しい死地の住人なのだ……。
「………………」
雄、と呼ばれた少年は緋群の友人のようだ。少なくとも知り合いよりは上の。
少年には随分余裕があるように見える。あれこそが一般的な学徒のあるべき姿である。
眩しさに目を細めて、眉合いを指で圧さえた。
「最低限の業務を除いて、活動は縮小されている筈だ」
と、雄の公安に対する疑問に横から答えを挟みつつ。
(大方、また上の者にいいように使われているのだろう)
「加賀背か。……俺は狛江蒼狗と言う。3年、公安委で“特雑”に所属している」
細かい説明は割愛しつつ、雄へ向けて小さく目礼を。
「なに、俺の事は気にせずとも二人で話していて良い……。なにしろあと950分だからな…………949分になった……」
蒼狗の視線はちらちらと時計に注がれている。
ご案内:「休憩室」に久喜棗さんが現れました。
■緋群ハバキ > 普段紙資料にばっか触れてるから電子媒体資料が落ち着かないマン……あと誘惑に負けそうで。
というか昨日の晩は負けました。
トコトコ見てたら夜が明けていて、あれ、俺は……勉強をしていた……はずでは……
【つまり学生に人気の動画サイト「トコトコ動画」にかまけて全く勉強が進んでいなかったのである】
【まぁそんな訳で、と肩を竦め】
最早現実逃避代わりに先輩からのおつかいをこなしてたんだけど。
……狛江先輩のこの姿を見ていると、流石に危機感が、湧いてきて……
【スマホを取り出しおつかいを頼んだ先輩に『すいません俺も勉強します』とメールを送信し、休憩室の椅子に腰掛ける】
一人より二人、二人より三人。
毛利の故事を引くまでも無く、団結は力ッス。
■久喜棗 > 暇つぶしに図書館で涼みにきたところ休憩室に知った顔を見つけ、そこへと歩いていく
袋からコーヒーの入ったフタ付きカップを取り出し、トンとテーブルに置き近くの椅子に座る
「こんな所で会うとは奇遇じゃな蒼狗よ…いや、お主も勉強ぐらいはするか、学生なのだからな
ん、今日は揃って勉強会でも開いておるのか?」
ストローでコーヒーを一口飲みこみ、ハバキと雄のほうを向く
「とすると、お主らは蒼狗の友達か?」
■加賀背 雄 > ソウクさんですね、 よろしくお願いします。 トクザツ……?
(頭を下げてきちんとご挨拶をしてから、解説を求めるようにハバキさんに視線。
でも雑ってつくぐらいだから、いろんな事を一杯やる…総務的なものを想像する。)
あの、ハバキさん。 ソウクさんが時計を気にしてらっしゃるのは…
(試験に怯えているのでは、と面と向かっては言えない。)
誘惑と勉強の配分をうまくやれば、どっちも楽しめますよ。
ああ、トコトコ動画を… あれ、時間泥棒ですもんね。
(ハバキさんのお返事になるほど、ってうなずく。 動画サイトの話が出た瞬間、
一瞬だけ身体が硬直したような、しなかったような。)
現実逃避代わりっていうか、そこはちゃんとしてくださいよ。
ほら、ソウクさんだって今すっごくちゃんとしてるじゃないですか。
皆で補い合えば…多分何とかなりますよ。
(ね、って二人に笑いかけてから、自分も着席。
鼻歌でも歌いそうな感じでタブレットを取り出して、勉強を再開。)
■狛江 蒼狗 > 「時間は大事だ」
(ヤマを……)
(ヤマを張らなくては……)
(ヤマを張らなければ、死ぬ……!)
無表情で寡黙な蒼狗の裏側では、心の声が大きく響いていた。
然しながらヤマを張るアテもなく。
公安委員会の職権濫用でどうにかなるかなるまいかという悪辣な手段にまで考えが及ぶ始末。
「ふふ……寄れば文殊とも言うしな……」
「共に戦うか」
三本の矢を束ねようとも、試験当日はどちらにしても孤独な戦いを強いられる。
知恵を出し合って頭に叩き込み持ち込むクレバーさも必要だ。
試験前日にこんな会話をしている時点でクレバーもスマートもあったものではない。
しかしこの誓いは心強かった。
「? 久喜……?」
近くに座った久喜に目を向け、首を傾げた。
見覚えのあるコーヒーショップの蓋付きカップを携えて、散歩途中といった風体だ。
「きみこそ、試験はどうした……」
休憩中なのだろうか。
それとも余裕だったりするのだろうか。
「……顔見知りの緋群と、その友達の加賀背だな……ここで偶然集ったのだ」
緋群の事は、公安で少々手を貸した程度のことであって、挨拶ぐらいはするが余り深い仲ではない。
友達、とそれで言い切れるほど蒼狗は人付き合いに慣れた人間ではない。