2015/07/09 のログ
■谷蜂 檻葉 > 静かに首を横に振る。
「『会えなくなってしまった彼女』に会いたいってだけよ。 ……だから、妖精郷の『門』であるこれを扱っていれば――って思ってたんだけど。」
普通の子じゃなかったみたい。まだ会えてないわ。 と、少し寂しげに笑う
サリナには、短い期間でも理解できる程度には檻葉に不相応な笑みに思えるだろう。
檻葉は「そういう風に笑う」ような雰囲気は持っていない。
魅入られているのか、それとも本当の彼女は――――
「―――あ、っと。 結構話し込んじゃったわね。 借りる本、あるかしら?直ぐに手続きしちゃうわよ。」
そう区切りを入れた言葉に時計を見れば、閉館時間がもう間もない時刻を指していた。
■サリナ > 妖精郷の門、門という言葉はどこかに繋がっているという意味がある。
それが、妖精達の居る場所との繋がりがあり、それをいくらか扱えるのだとしたら、オリハさんは霊験の担い手である。
…いずれにせよ、会えていないのならばまだ約束は果たされてないのかもしれない。
寂しげに笑う彼女は、先程とは違って別人のように見えた。
詳しい事をもっと聞いてみようと思ったが、それは時間が許さなかった。
「…いえ、お仕事中なのに引き止めてしまってごめんなさい。今日は借りるものはないのでこれで失礼します」
彼女が時計を見たので、釣られて私も見たが、そろそろ閉館時間だ。挨拶も済まし、そろそろお暇しようと図書館の出入り口へと向かった。
…なんだかとても頭に引っかかる。私には"約束"という言葉が綺麗に聞こえ過ぎて、妙な感じがするのだ。
「妖精の誰かと約束…それは約束ではなくて、もしかして"契約"なのでは?」
去り際に小さい声で呟いた。だが、背を向けた彼女にも聞こえたかもしれない。
ご案内:「図書館」からサリナさんが去りました。
■谷蜂 檻葉 > 妖精達は無邪気だ。
故に契約なんて言葉を彼らは『知らない』
それは原初の言葉で、 やくそく は果たすべきものだ。というだけ。
その【契約】としての力は実にお粗末で、魔術的な【制約】はあまりに大きい。
そして彼らが遊ぶ相手は常に『子供』だ。
―――その悩み、境遇全てを無視して、彼らが子供たちを選ぶのだ。
ありふれた「異能持ち」の少女は、そこで二度目を踏み外している。
「さようならサリナさん。 また、明日。」
彼女が抱え込んでいる闇は、一つだけではない―――
ご案内:「図書館」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
ご案内:「図書館」に『室長補佐代理』さんが現れました。
■『室長補佐代理』 > 図書館の隅。
日の光を避ける様に、男は隅のテーブルで本を読んでいる。
■『室長補佐代理』 > 世間は夏真っ盛りで、海開きもして久しい。
そんな季節に流石に黒ずくめのコートでいられるはずもなく、制服も上着を脱いで軽装である。
それでもまだ黒いザンバラ髪のせいで暑苦しく見えるが、当人は恐らく気にしていない。
■『室長補佐代理』 > 右手をズボンのポケットに突っこんだまま、左手に持った文庫本のページを親指で捲る。
利用者も今は少ないため、男の周囲には紙擦りの音だけが静かに響く。
他に聞こえる音は空調音程度だ。
■『室長補佐代理』 > 何故ここに男がいるのかといえば、理由は多岐に渡る。
まず、涼みにきたから。
外は暑すぎる。しかし空調がきいた図書館ならタダで休み放題だ。
つぎに、作業があるから。
まだ手を付ける気はおきないが、一応やらなければならない課題やら一般書類やらもある。
それをここで片付けたいという理由。
そして、最後に、丁度探している本があるから。
その本を今は図書委員に探してもらっている最中なので、こうして本を読んで待っている。
本当はここで作業をするのが健全な待ち方なのだろうが、連日連夜課題漬けと書類整理に追われている身としては、それは今は御勘弁願いたい所だった。
■『室長補佐代理』 > 何処の書架に在る本なのかまでは男も流石にわからないので、あとは図書委員に任せて待つばかりである。
一緒についていってもよかったのだが、この暑さではそういう気力もわかない。
用件だけ述べてさっさと座り込み、黙然と休み始めて既に数十分である。
広い図書館であるし、一時間くらいは待たされてることを男は覚悟していたため、あまり気にした様子もない。
■『室長補佐代理』 > 結構待っているのだが、声が掛かる様子もない。
常世学園の図書館は性質上、魔術的な意味で如何わしい本も山ほどある。
それらに絡まれて梃子摺っているのだとすれば、下手をすれば今日中に見つかることすら怪しい。
学籍番号は伝えてあるので、あまり掛かるようなら一度引き上げてもいいのだが。
引き上げても、見つかればそのうち谷蜂あたりが教えてくれるだろう。
ご案内:「図書館」にヘルベチカさんが現れました。
■ヘルベチカ > 空調を効かせていても、結局のところ作業をしていれば、額に滲む汗がある。
じわりと浮いた其れを、歩きながら掌で拭って。
エプロンの裾に触れてから。
思い出したように、ポケットのハンドタオルを取り出して。手を拭いた。
一息吐いて、近づいた相手へと声をかける。
「すみません、依頼いただいた本まだ見当たらなくて」
カウンターで貸出番をしていたところに、かけられた声。
書籍探しの依頼。時折ある。
検索機で探せばいい、と思う人もいるだろうが、
該当書棚を見てもないことなど、公共図書館ではザラな話だ。
だから、依頼されればとりあえず探しに行く。
相手がそもそも検索していなくても探しに行く。
お前の後ろにあるそのパソコンタッチパネル式だから
おじいちゃんも安心してご利用になれるとは言わない。
そう。この島は、色々な人がいるのだから。
例えば携帯電話が使えない人間もいるし。
見た目が子供でもその実100歳を超える者もいる。
だからきっとこの人も、マシンに触ったら
快音とともにトランスフォームして時速300kmで走りだしたりするんだろう。
そう考えておけば心の中は安泰だ。
だから探した。けれど、まだ見つかっていない。
エプロンの前ポケットから、検索レシートを取り出す。
「えぇと、この『アナール派とは何か』なんですけど、利用者多くて」
■『室長補佐代理』 > 「悪いな。課題で出ているから俺以外にも利用者が多いのか?」
面倒くさそうな顔で近寄ってくる、猫耳が特徴的な図書委員に声をかけ、じわりと滲むような笑みを向ける。
実際、まぁ見つからないだろうなと思っていた。
フランス現代歴史学の潮流だのなんだのなんて自分だって課題で出ない限り確実に探さない。
しかし、課題で出たのなら、安易に検索して安易に片っ端から借りる学生が確実にいるのだ。
男も御多分に漏れずそれなわけだが、男はそこで人にさっさと頼る。
専門家なら、らしい書籍を無理にでも探してくれるのではないかという善意に全力で乗ったのである。
結果、このように声をかけてくれるし親切に探してくれる図書委員と出会えたわけだ。
幸運なことである。
「他の代用できそうな本は何かないか?」
■ヘルベチカ > 「課題図書は貸出禁止にするので、一応図書館の中にはあると思うんですけどね……」
自らが歩いてきた方向、初夏の方を振りかえりながら、後頭部をがりがりと掻いて。
課題図書を借りられてしまえば、課題ができない学生が出る。
だから課題図書は基本的に貸出禁止だが、だからこそ書棚の間や他の書棚に隠す学生も出るのだ。
「すみません、書架と照らし合わせるICタグつけようかって話も出てるんですけど、何分予算がなくて」
申し訳なさそうな顔をしつつ、からからと笑ってそんな台詞。
問いかけを聞けば、うーん、と唸って。
「尻の穴に詳しい本とかあったっけな……」
■『室長補佐代理』 > 「いや、誰もそんな本さがしてねぇから。フランス現代歴史学の潮流だから」
自分でいいながらも男はそれが何なのかはあまり理解していない。
課題なので探せと言われて探しているだけで、むしろこれから知るところなのだ。
というかこの図書委員それで検索してたってことは関係ない書架を探していたのではないだろうか。
人体に関するあれこれやら保健体育のあれこれやらで探していたのだとすれば見つからないのも納得ではある。
「とにかく、そういうなんか、フランス現代歴史学関連の書籍何かないのか?」
■ヘルベチカ >
「えっ」相手の顔を見る。
「あっ」レシートを見る。
「えっ」相手の下腹部を見る。
「あっ」相手の顔を見る。
「はい」なるほど、というように頷いた。
「あ、いや、ちゃんと書棚は正しいところ探してましたよ?
フランス人すげえ未来に生きてるなって思ってただけで……」
うんうん、と頷く表情を見ると、確かに正しい棚を探してはいたようで。
再度の問いかけに、再び少し考え込んだ様子。
「書棚見ます?歴史の本なら量があると思うんで、課題に合わせて見てもらった方が早いかも。
俺達は課題図書ってとこまでだけで、課題の中身は聞いてないんですよね」
あっち、と指をさして、首を傾げた。
■『室長補佐代理』 > 「フランス人貶めすぎだろ」
いや、まぁ名前的にそう思うのも詮無い事ではあるとはいえるが。
異国の言葉の難しい所であると思う。
ふと、鉄腕アトムが欧米圏ではアストロボーイと呼ばれている理由をほんのりと脳裏を過った。
というか、なんでコイツ今下腹部をみたんだ。
少し目を細めながらも、溜息を吐いて笑う。
「そうだな、課題の中身も詳しくはしらないし、まぁ一緒に見たほうがもう早いだろう。連れてってくれ」
そういって、本を片付けて立ち上がる。
■ヘルベチカ > 「いや、なんかフランス人ってS'il vous plaitとかいいながら、
特殊な行為やりそうなイメージないですかね……俺だけ……?」
完全にフランス人に対する偏見と風評被害を垂れ流しつつ、首をかしげて頭の上に?マーク三つ。
まぁいいか、というように、二、三度頷いて。
「まぁ、書棚から必要なもの探すのも、宝探しみたいで面白いもんですよ」
相手の笑いに合わせて少年も笑う。
もしかすれば、わざと持ってこなかったのかも知れない。
そうだとしても、そんなことはおくびにも出さずに相手を先導して進んで。
「課題図書見ると三年の先輩ですよね。テスト明けから課題なんて大変すね……」
■『室長補佐代理』 > 「それについてのコメントは差し控える」
フランス書院という単語がある意味で全てを物語っているが、それについては多くを語る必要はない。
語るべきではないともいえる。
男は公安委員なのである。
雑な理由で自己弁護しつつ、猫耳の図書委員のあとをついていく。
宛ら迷路のようであるが、先導がいれば不安もない。
「ああ、俺は成績が悪いからな。
課題も追試も基本的に年がら年中たまっている。
お陰で今こうやって普段は探しもしないような本を探す羽目になってるわけだ」
今回の課題も補講組にだけでるタイプの課題だ。
だからこそ、こんなマニアックな課題を半ば教授の趣味でだしているのかもしれない。
■ヘルベチカ > 立ち並ぶ書架は高く、己の背後を歩く先輩すらも最上段へは手が届かないだろう。
「それ、言わなくても完全に回答になってますよね」
書架前に都度都度置かれているステップを、書架へと度々寄せながら歩いていく。
増設に増設を重ねたのか、幾つかの図書室を経由して。
渡り廊下を歩き、階段を上り、大きなガラス窓の隣を歩き、移動書架を動かして間を歩く。
窓の向こうを見れば、先ほど通り過ぎた通路が見えた。
度々香り、通路を埋める、紙の匂。
けれど、書店とは違う。歴史を得た、書籍の匂。
外の高い湿度からは隔絶されて、けれど乾ききってはいない空間の中。
「そうなんすか?なんか、サクサク要領よくこなしそうな感じもありますけど。
年がら年中溜まってたら、それもう別の授業みたいなもんですね。バイトとか委員会で忙しいんですか?」
隣、窓を見た。そこに反射して見える、相手の腕の徴を見た。