2015/09/26 のログ
■谷蜂 檻葉 > 「それ以上は後から部屋で考えても良いんじゃない?」
苦笑しながら立ち上がって、少し行儀悪く机に体重をかけるように静歌のすぐ横にもたれる。
「じゃがいもは家にあったし、フライドじゃなくてマッシュで良いんじゃないかな。」
明日のご飯にもなるしね、と提案して―――
「……なるほど。」
確かに佐伯が居たのも一応甘味処、か。
「いや、大したことじゃないから良いんだけどね。
昨日お話して、学園祭近いでしょ? そこで手品のステージをやらないか……って話になったの。」
■四十万 静歌 > 「それもそうですね。」
といいつつ、宿題のプリントを、
丁寧にしまい、片していくだろう。
「マッシュポテトにするなら――」
いっそ、サラダにしてもいいかなぁ、
なんて、考え始め――
ステージの話を持ち出すと……
「え?しないんですか?」
と、何故かきょとんとした顔で首を傾げるだろう
■谷蜂 檻葉 > 「……あれ? 思った以上にやる気?」
きょとんとした顔で「やらないの?」と言われると逆向きに首を傾げる。
「もっとこう、場数を踏んだら――とか、尻込みするかなー……って思ってたけど。
……前と違って、事前に人を呼んでやるのよ?」
多分、前の倍以上は集められると思うけど。
なんてちょっとした脅しをかけてみる。
■四十万 静歌 > 「いえ、やる気というか、
尻込みするか以前に、ですね。」
んー、と少し考えこむようなしぐさをしたのち、
じーっと上目遣いに目を覗き込もうとしつつ――
「その、こんな絶好な機会なんだし、
檻葉さんならやろう!
っていうかなと思って、
その、前回のステージからずっと、ええ。」
覚悟してました、と、
冷や汗だらだら流しながらいうだろう
■谷蜂 檻葉 > 「―――ほほう。」
覗き込まれるままに、高みから四十万を見下ろすように覗き返す。
「……ふ、ふふふ!
覚悟してくれてるなら話は早いわ。
静歌のやる気が満ち溢れているようで何より!
もう少しゆっくりやっても良いんじゃないかななんて思ってたけど……
それじゃあ、今日から学園祭に向けて特訓といきましょうか!」
しまった、だなんて思ってももう遅い。
その紫紺の瞳は妖しく輝き、先の舞台を見据えていた―――
■四十万 静歌 > 「まぁ、ただ、何度もやるのはしんどいので、
1ステージだけですけどね。」
なんて、クスリと笑って――
「少しばかり派手な演出も考えて見ましょうか。
ちなみに、それ以外では占いの館やる予定ですよ。」
なんというか、折角なので稼ぎたいのである。
稼ぎたいのである。
「でも、その――
特訓といわれるとちょっと怖いですね。」
そして、目を逸らすだろう。
■谷蜂 檻葉 > 「うんうん、午前の部・午後の分1つずつね!」
しかし、回りこまれてしまった!
「お互いやれることは増えてきてるし、どんどん進化させていかないとね!
じゃあ占いの館の方にも広告とか置いておこっか。
そうそう、ポスターなんだけど作るのが上手い子が居てね……
あっ、ちょっと! 目を逸らさないっ!」
なんて。
周りに人が少ないこと良いことに、
学園祭に向けて姦しく楽しく相談/お喋りして夕暮れを迎える……
■四十万 静歌 > 「 」
まさか、そういう事になると思いもよらず。
絶句していたらたたみかけられた。
うん、もうこの激流に流されるしか、と覚悟したのはいわずもがなである。
――夕暮れを向かえ、二人一緒に帰るだろうか
■谷蜂 檻葉 > 二人が仲睦まじげに話すのを、最初はにこやかに見守っていた図書委員が
やがて流石に出てけと追い出しにかかるまで、残り十数分を切った―――
ご案内:「図書館」から谷蜂 檻葉さんが去りました。
ご案内:「図書館」から四十万 静歌さんが去りました。
ご案内:「図書館」に橿原眞人さんが現れました。
■橿原眞人 > 昔のことを、知っているだろうか。
今ではない、“かつて”のことを。
ほんの、数十年前のことを。
図書館の中を俺は歩いていた。
別に目的意識があったわけじゃない。今求めている情報も、この図書館の書架にはないだろう。
静か――とはいえない。図書館で喋るのは、どこの学校でもそうだろう。
そんな、僅かな静寂の中、俺は歩く。
俺がやってきたのは、“かつて”を記した書架だった。
ここには数多の歴史が記されている。
この地球が生まれてからのこと。
人類が生まれてからのこと。
そう、ここにあるのは、かつて“普通”であった人々が残した歴史。
世界に存在していた魔術も異能も、知らなかった人々の歴史。
いや――正しい表現ではないかもしれない。この歴史書の中にも、異能や魔術が登場することはある。
だが、それを現実のものとして見ていなかった人々が読んだものだ。
ほんの、数十年前のことだ。
■橿原眞人 > きっと、ここに魔術師がいれば怒るかもしれない。
きっと、ここに――まさに俺がそうだ――異能者がいれば不平を言うかもしれない。
きっと、ここに、異邦人がいればそれは違うというかもしれない。
この世界にも、彼らは存在していたのだ。
ただ、今よりもずっと数は少なく、歴史の影に隠れてはいたが。
彼らはいうだろう。我々も世界に存在していた者だと。
“普通”に存在していた者の一つだと――
だけど、そうではない。
俺が目を向けたのは、そう言ったものが“普通”ではなかった世界。
ほんの数十年前まで、魔術や異能はオカルトで、神話や伝承は現実のものだと思っていなかった人々。
その人たちが生きた世界に目を向けたい。
「……20世紀か」
俺はそう呟いた。
手に取った本は、近代史。
“世界の変容”が起きる少し前の時代だ。
それを、ぱらぱらとめくってみる。
■橿原眞人 > 異能。
魔術。
異世界
出てはこない。あたりまえだ。
かつての時代のこと。大きな戦争があったこと。人類が目覚ましい発展を遂げたこと。
それらは書かれていても、異能や魔術については出てこない。
この書物は、異能や魔術の存在が現実のものだと知らなかった人たちに向けて書かれたものなのだから。
それらは架空のもので、ファンタジーで、現実ではなかった。
この時代から、人はどう変わったのだろう。
きっと、今の時代に生まれた俺たちには想像もできない苦難があったはずだ。
学校で、“世界の変容”の事は学んだ。
そこで起こった事件、異能者や魔術師の需要、異邦人の“人”権問題――
それらについては、詳しく書かれている。
だけれども、そうではない人々はどうか。
かつて、この世界で、“普通”であったと信じていた人々については。
異能者は魔術師、異邦人はいわば、この世界に突如目に見えて現れた。
少なくとも、“普通”の人間にはそう見えたはずだ。
既存の価値観の破壊。科学はどうなったのか? 宗教は?
それについては、今を見ればわかる。
なんとか、融和している。人は問題なく生き続けている。
それでも。
それでも、あの世界の変容の中で、世界は大きく乱れた。
そのときに、亡くなった命たちは、どう思ったのだろう。
世界は何と理不尽なのだろうと、思っただろうか。
■橿原眞人 > 「……きっと、何もわからないまま、死んでしまったんだろうな」
今の俺には、想像しづらいことだが。
きっと、今に生まれた俺たちには想像できないことだが。
何とか考えるならば、そういう感じになる。
視点の問題だ。
かつて“普通”だった人々にとっては、それは天災のようなもので。
かつて“普通”ではなかった人々にとっては、大手を振って表を出歩けることになる機会を得たことになる。
その中には、異能や魔術の実在を見て喜んだ者もいただろう。
このまま歴史の影に隠れていたかったと思ったものもいただろう。
異能が発現せずに、苦しんだ者もいるだろう。
そしてその逆も。
だが、俺はどうしてもかつて“普通”であった人々に思いを馳せてしまう。
かつて“普通”であって、世界の変容で現れた混乱の中で死んだ人々に。
俺も、なんとなくわかるからだ。
いや、わかることなんてできない。ただ、同情できるというだけ。
ある日突然降ってきた意味の解らないものに、日常を奪われた者という点。。
それは理解できる。
だから、思う。
魔術も異能も異世界も、見えなかった時代に生まれていれば。
俺は家族を失わなかったのだろうかと。
これは、意味のない想像だ。
魔術や異能がなくとも、理不尽な死は存在しただろう。
その原因が違うだけ。
20世紀に生まれていたとしても、俺の家族は理不尽に死んだかもしれない。
■橿原眞人 > この考えは、酷く一方的なものだ。まるで、“普通”であった人々だけが可哀そうだというようなものだ。
魔術や異能が現実に現れた時、彼らは社会にすぐに受け入れられはしなかっただろう。
今でさえ、完全ではない。だからこそこの常世学園がある。
この島が、ある種のユートピア、まさしく「常世の国」だからだ。
無論、落第街がどうとかの話もあるけれど、異能者や魔術師、異邦人が普通に日常を送っている。
いずれ世界はそうなっていくはずだ。そのためのモデルケースが、常世学園だ。
しかし、
世界のどこかでは、未だに偏見などで見られている者たちもいるだろう。
受け入れられていない者が存在している。
それらの行為は、かつて“普通”であった人々によって引き起こされることが、多い。
力を持てなかった、かつて“普通”であった人々によって。
いつかはそれも消えていく。この世界は新たな秩序で包まれる。
かつての、ほんの数十年前の現実の名残りは、消え去っていく。
以前に、異能者を憎む教師に出会ったことがあった。
きっと、彼が生きた世界だとそうだったのだろう。世界の変容で、それが狂ってしまった。
以前に、機械の人形の少女と出会ったことがある。名はシュリクだ。
彼女のいた世界――彼女は、時代と言っていたが――は、魔術は禁忌の存在だったらしい。異能は普通のものであったと。
この世界の動乱は、あらゆる全ての存在を変えてしまった。
ふと、思い出すことがあった。図書館に入る時に見たパンフレットだ。
別に行く気もなかったために、そのまま棚に戻してしまったが。
それは、「国立常世新美術館」にて今開催されている展示のパンフレットだ。
異能によって作られた形、異邦人の感性によって描かれた世界。
それらが写真で現れていた。
今ではこうして、これらのことも人々に受け入れられている。
今はまだ新しい芸術だが、いずれそれも普通のものとなっていくだろう。
既に、異能者も異邦人も、世界に認められた、この世界の住人なのだから。
世界には暗雲だけではなく、光明が見えている。
互いに、融和できるのだと。
全てに影響を与えても、未来への道が拓けている。
でも、俺はそんな世界を嫌いだと、言っていた。
■橿原眞人 > 何故か。
簡単だ。
世界の変容によって出現した「門」によって家族を殺されたから。
そしてさらに、それは人為的なものであった可能性が高いから。
この世界に違和感を感じていた。
何故、突然異能や魔術が世界の表舞台に立ったのか。
何故、「門」は開き、異世界をこの世界に招き入れたのか。
研究は続けられているが、今もはっきりした答えは出ていない。
誰かが何かを隠しているのではないか? かつて、魔術や異能が歴史の闇に隠されていたように。
そんな、わからない世界が好きではなかった。
そんな、わからない世界の何者かによって、日常を葬り去られた俺は、かつての“普通”だった人々に思いがいってしまう。
あの事件が起きる前までは、俺が異能も何も持っていなかったこともあるかもしれない。
この世界の理不尽を明らかにしたい。自分の受けた悲劇を解き明かしたい。
この世界の真実を知りたい――そうして、ハッカーになった。
俺はパタンと本を閉じ、本棚に戻す。
「……だけど、薄情なもんだな」
俺は師匠と出会って、その考えが変わりつつあった。
師匠はまさに、その世界の変容によって現れたような存在だった。
電子の魔術を使い、肉体ごとネットワークに没入してしまう。
そんな存在は、かつてではありえなかった。
師匠と暮らすのが楽しくて。
世界の真実を解き明かすためにと共に行動していたのに、そんなことを思っていた。
それも、また失われた。
俺の行いによって。
「……また、嫌いになってしまいそうだな。いや。
それはあまりに身勝手か……」
俺は、また憎みそうになっていた。この世界を。
理不尽によって、俺の大事なものを生み出すものを。
俺は異能者だ。
魔術も使える。
ハッキングも得意だ。
そうであっても、《ルルイエ領域》で見た者に勝てる気はしない。
現実に「神」が存在することは、今の時代誰でも知っている。
しかし、俺が見たのは全く理解できない代物だった。
師匠はあんなものと戦おうとしていたのだ。
古代の人々が恐れた神とは、ああいうものだったのだろうか。
いや、あんなものであるはずがない。
「……それでも、俺がやるしかない。
俺にしかできないと、師匠は言ったんだ」
ぶつぶつと呟く。
奪われたくないのなら、抗うしかない。
異能も魔術もないものよりも、その点においては俺はかなり状況はいい。
「……俺がやらないと、また理不尽を生むかもしれないんだ。
俺じゃない、誰かの」
■橿原眞人 > 師匠を失って絶望していた。
よりにもよって、自分が良いと信じて行動した結果がそれなのだから。
やる気も何も起きない。ただただ虚無感を感じ続けていた。
それでも、今日ここに来たことで。
かつて理不尽に晒された人々に思いを馳せたことで。
また、火はともりつつある気がした。
俺しか、あの化物を止めるすべはない。
俺は「鍵」だからだ。
そう自分に言い聞かせる。
師匠を失ってしまう原因を作った俺にできる償いはそれだ。
そして、家族のことにも思いを馳せる。
やはり、あれが人為的な物だったのなら。
どのような目的でやったとはいえ、許してはおけない。
あの事件と、今回の事は繋がっているはずだ。
師匠は、最期にそう示唆していた。
俺は踵を返し、書架を後にする。
心はまだ癒えない。たぶん、癒えることはないのかもしれない。
だがそれでも、少しずつ、前にすすめる気がしていた。
ご案内:「図書館」から橿原眞人さんが去りました。