2015/10/04 のログ
■流布堂 乱子 > 「なるほど、使い方が肝要で――」
打ち合わされる両手を、
しなやかかつなめらかに動く右手を見てから、
今度は左手に目を動かして、
最後に落ちたバラをまじまじと見た。
ご感想は?なんて感じで見つめられてしまうと、
さっきみたいな無粋なことを重ねて言うことは勿論出来ず。
ほんの少しだけ視線を泳がせてから、
「その――」
「その指先だけで、今の手品ができているというのが、私は凄いことだと思います。」
ほんの少しだけほつれた口調を取り繕えるように、少し息を吸って、
「先程から、話を聞いていますから。
静歌さんが魔術を使えないことを私は知っています。
でも、仮に"魔術だから何が有ってもおかしくない"と思われてしまっては……」
「……それでは勿体無いな、と。そんな風に、思います。」
その業の素晴らしさに、少しでも傷がつかなければいいのにと。
そんな業が、乱子も欲しかったのだけれど。
「ああ、体のことというのは……逆の意味です。おそらくは。」
指先でもう一度ランタンをつつくと明かりが増して、少し硬い乱子の表情を照らした。
「気兼ねなく被害を出さないと体調に影響が出る、という意味ですから」
ランタンに封じられた炎は、とても小さく。
仮に溢れ出れば、何処まで広がるともわからないような熱さで。
「でも解体かぁ……解体は悪く無いですね……
文化祭の余興とかで、1/1校舎爆破解体とかできたらいいですよね…」
次の瞬間には、ちょっと陶然とした表情に変わっていた。
■四十万 静歌 > 「あはは、その通りですね。」
ですが、と言葉を区切り――
「あくまで演出で、
そして……
魔術や異能があるこの世界では、
本当になんでもできます。
逆に、“手品でないとできない事がないほどに。”」
そういってバラの花を拾い上げ、
乱子さんに差し出して――
「だからいいのですよ。
本当に大切なのは、舞台の上の奇跡を楽しんでいただくこと。
なんて。」
とクスリと笑って――
「種も仕掛けもございません。
種も仕掛けもばれなければ、いいのですよ。」
と、じっと見つめるだろう。
「それにしても、破壊していないと、影響が。
ですか。
よほど酷い破壊衝動を秘めているのですね。」
うん、と頷いて。
「なら、
やはり解体系の資格の勉強をするといいと思いますよ。」
きっと力になると思いますし、
それから――と一つ頷いて。
「耐久調査――
とかの依頼や、
気がねなく破壊できる場所の知識辺りもよさそうですね?」
なんて真剣に考え――
でも、と言葉を区切り、
「その衝動は本当に、破壊以外では癒せないのでしょうか?」
などという言葉がふっともれ出た
■流布堂 乱子 > 「あ、ありがとう、ございます。」
何処を触っても壊してしまいそうで。
手のひらを広げて受け取った薔薇の花は、その姿が当然であるように堂々としている。
その種も仕掛けも、乱子にはきっと見つけられないだろうから。
「……そう、ですね。
未知のことが、鮮やかに起こったなら。
それは素晴らしくて楽しいことでしょう。」
無理に勘ぐらずに楽しめればそれが一番。
そんなシンプルな答えを揺るがずに持っているのなら、
「…要らない心配でしたね。ますます文化祭が楽しみになりました。」
見つめる瞳に、ほんの少し微笑んで答えた。
もらった薔薇の花を上手く仕舞う場所も、今の服装だと思いつかずに。
とりあえずは髪に挿してみると案外に上手く収まるもので。
「あまり存じ上げませんけれど、そういえば産業区の辺りではそれなりに仕事があるかもしれませんね。
……今までは無目的に立ち寄ることもなかったのですけれど、壊していい場所が増えるのは好ましいことではありますし。」
ふむ。と講義要項の目次の辺りに取って返して、目当ての講義を探しながら、
静歌の呟いた言葉に、
ランタンに伸ばした指先を途中で止めた。
「おそらくは、あると思いますよ」
「あまり長い付き合いとはいえませんけれど、少し分量が多いとはいえ食事や睡眠と並んだ三大欲求のようなものでしょうから。
スポーツや芸術に打ち込んだり、なんとかして理屈をつけて誤魔化したり出来ることもあるかと思います。」
机の上をなぞりながら、取って返した指先が、静歌に向けて伸びる。
「……とはいえ、そうしないのは単純に価値観の問題でしょうね。」
ゆっくりと、頬に触れるように。
「『だって、物を壊すより上等なことがありますか?』」
■四十万 静歌 > 「ええ、お任せ下さい。」
とふんわり微笑むだろう。
「最高の舞台をお見せしま……したい、
で、できたらいいなぁ……」
なんて、と照れくさそうに頬をかき――
「とても良くお似合いですよ。」
と髪飾りにしたようすにサムズアップするのである。
「研究区あたりでも探しがありそうですね。
ええ、この際行動範囲を広げるのをおススメします。」
と、いって、指先が伸びると――
まるでそれが当然であるかのように“違和感なく”――
やわらかく頬にふれようとした手をそっと優しく包み込んで撫でようとしながら――
「そうですねぇ。
今の乱子さんにとってはそれが一番なのでしょうけど……」
静かに微笑みを浮かべいうだろう。
「これからもそう、とは限りませんしね。
まだ私も乱子さんも学ぶことも、
知ることも、経験すべきことも色々あるでしょうから。」
ね?とでもいうかのように語りかけるだろう
■流布堂 乱子 > 「……ああもう、
どうしてそこまで覚悟が決まっているのに、心配させられるんでしょうか」
はぁ、と溜息をついたところで
不意を突かれて褒められた。
「え……そ、そう、ですか?そうなんでしょうか?」
稚気の現れめいて、『やっぱり落ちちゃいますね』なんて言うつもりで挿したそれを、
そんな風に言われるとは梅雨とも思わずに。
「……その。その態度って、油断させようとしてたり、しませんでしょうか?」
自分の頬が微かに朱色に染まっていると確信していた。
「研究区でしたら出入りはするのですけれど、あの辺りは機密が多いのであまり発注はなさそうに見えましたね……
もちろん、入ることができたらこれ以上無く嬉しい事なのですけれども」
研究所へのハック&スラッシュに直接参加することはないとはいえ、
見取り図だけでも渡せれば大変良いビジネスになる。
「……一応、図面も引けるようになったほうが良いかもしれませんね。」
段々と勉強に対しての意欲を増しながら、伸ばした指先は。
その指は人の体温を模倣しているから、燃え上がるようなこともなく。
長大重厚な爪先はまだそこに顕現していなかったから、傷つけることもなく。
鱗をなしているわけではなかったから、包まれた手の柔らかさを受け入れることが出来て。
未だ、今は。
「いいえ。今は、こうして貰えた方が嬉しいです。
…………すみません。」
乱子の左で、ランタンの火が小さく踊る。
だが、その明かりの陰で伸ばされた右手は、いつ変わるともしれず。
「いつか。
……この髪が、薔薇の花が似合わないほど紅く染まっていたら、決して私に触れられないで下さいね。
何を知ろうと、経験しようと、私がどんなに変えたいと願っても、
その時の"私"の価値観は動かせないですから」
その時の自分自身を真似て伸ばした指先を、ゆっくりと引き戻した。
■四十万 静歌 > 「ううう、すみません。」
かっこつけたかったけど、つけきれず、
しゅんと小さくなりながらも、
そうなんでしょうか、といわれると、嬉しそうに微笑んで、
「はい、とてもよく。
ちゃんとした簪とかにしてもらってもいいかもしれませんよ。」
なんていって、油断させようとというと、
不思議そうに首を傾げるだろう。
「油断、させるって、何の為にです?」
本気で分からないという顔をしている。
眼をじっと見てもきっと眼もそういってるだろう。
「とりあえず、何をするにせよ、
建築関係の勉強は必要そうですね。」
頑張りましょうねと、微笑みかけ――
ぬくもりを少しばかり堪能しながら――
「――私には詳しい事は分かりませんが……」
本を閉じ、立ち上がって片手に本を抱えながら、
じっと眼を覗き込むように顔を近づけ――
「――そうならない事を祈りながら、
一つおまじないでもかけましょうか。」
そういって額に軽くキスを落とそうとするだろうか。
「――貴女が、いつの日かそんな風になってしまったなら、
少しでも貴女の心が抗えますよう、
貴女の本心が価値観に打ち勝てますよう――」
そんな言葉を“違和感無く”まるですっと心に入るようにいうだろう。
ただの言葉だ。
それに意味があるかないかは関係ない。
その時になってみればただの無力な言葉に過ぎないかもしれない。
けれど、望まぬことであれば、
少しでも励みになればいいな、と考え――
「――それでは、そろそろ私はこの辺りで。
またいずれ。」
くすっと離れて一礼するだろうか。
■流布堂 乱子 > 「いえ、こちらが勝手に心配することですので、
謝られることはないです。……無いので。」
こくこくと頷きながら、
たぶんそれも、ステージの上とのギャップというものではないかとそんな風に自分を納得させながら。
「…………考えて、おきます。」
その嬉しそうなほほ笑みが本当に邪気がなかったものだから。
頬を染めてうつむいて、そう答えるのが精一杯で。
『何のためかはわかりませんけど、絶対そうだと思います』
という言葉を表明する気力が残されていなかった。
この人はそういう生き物なのかもしれない。
引き戻した手に残っている、もう一人分の体温。
左手を重ねて、逃さないようにしながら。
「おまじない、ですか…?」
立ち上がる静歌を見上げながらオウム返しに繰り返して、
先ほどのお返しに、何をされても受け入れようと、そんなふうに思っていた。
乱子の額から、炎のようにうねる焦げ茶の髪がかき上げられた時には、
その思考はどこかに飛んでいってしまって、
額に口吻られた時にはそもそも思考がほんの少し止まっていた。
だから、その言葉を聞いた時には、
『こうやって生きていくしか無い』なんて意固地で固まった心も多分、閉じている暇はなかった、はずだ。
「――――え、あ、はい。
それでは……また。」
なんとか自分を取り戻して挨拶を返すと、
静歌の姿が見えなくなるまで待ってから。
ランタンの火を指先でつついて消すと、
指先で、額におそるおそる触れようとして――
■四十万 静歌 > 「――」
少女は静かに背を向け、
本を借りてその場を後にするだろう。
ご案内:「図書館」から四十万 静歌さんが去りました。
ご案内:「図書館」から流布堂 乱子さんが去りました。