2016/01/09 のログ
リビドー > 「産業革命、か。
 神話や魔術……オカルトとの決別はその時点から始まった――と評する者も少なくはない。」

 真実かどうかは別として、と呟く。
 蒸気機関について記された書物へと一度目を配らせるものの、すぐに蒼二と向け直した。

「とは言え、与太話にしか過ぎないがね。
 ……ああ、宜しく頼むよ。ボクもようやっと暇が出来てきた。」

獅南蒼二 > 「技術がある一点を境に加速度的に発達するのは稀な事ではない。
 一定量の知識が蓄積され、何らかのきっかけを経てそれらが開花する。
 ……と言っても、きっかけと思えるものは数え切れんな。
 蒸気機関、内燃機関、コンピュータ、世界大戦、原子力、インターネット。
 つまりは、それらすべてが点ではなく線の一部に過ぎんということだ。
 などと……歴史考証などしても、あまり価値は無いか。」

自分で自分を嗤うようにそう呟いて、肩を竦める。
リビドーの言葉には、小さく頷いて…

「ほぉ、私も最近まで籠っていたのでね…アンタのことは知らなかった。
 若作りの魔術でも研究していたのか?」
皮肉めいた答えを返した。

リビドー >  
「違いない。ま、その辺は乗算みたいなものかもしれないな。
 知識が開花し、実用化されれば手段が増える。分野が増える。"出来る事が増える"んだ。
 10の二乗と11の二乗じゃ……と、それもそうだな。ボクは好きなんだが。」

 自嘲する獅南に陰のある苦笑を浮かべて返す。
 そう言えば、彼の顔は大分疲弊している――そんな事も脳裏に浮かべたか。

「若作りをするなら酒でも呷っているさ。そうだな、何かおすすめの酒でもあるかい。
 ……しかし、大分疲れているみたいじゃないか。身体に悪いぜ。
 尤も、身体に悪いものは美味しかったり楽しかったり、魅力的だったりするんだよな。」

 皮肉と言うには少々締まらない、曖昧な言葉を返した。

獅南蒼二 > 「規格化し大衆化することも非常に重要な要素だな。
 その技術がいずれ金になるからこそ、研究はより加速していく。
 魔術学に最も欠けているのは、この部分だよ。」

好きではないが、学ぶべきものはあったよ。などと笑って、
それから少し、考えるようなしぐさをする。

「私は酒があまり得意ではなくてな。
 月並みだが、ウィスキーが好きなら“崑崙”でジョニーウォーカーのスウィングを頼んでみるといい。
 倉庫にでも眠っていたのか、だいぶ古いボトルらしくてな、悪くなかったよ。」

「…まぁ、酒よりも、身体に悪い食後のラーメンよりも、
 誰とのどんな話を肴にして飲むかの方が、重要かも知れんが、ね。」

若作りの秘訣を聞くのは面白そうだ、なんて、冗談交じりに笑う。

リビドー >  
「今でこそ規格化や大衆化が進んでいるが、それまでは秘密主義なきらいが有ったと認識しているよ。
 ……ま、異端視されて怪物認定や魔女狩り、焚書にでも遭えば当然そうなるが。
 いや、この場合はどっちが先か。何れにせよ、これからは伸びるだろうな――」

 未だに秘されている魔術は秘されていると言え、
 現状に於いては、特に常世島に於いては規格化や大衆化が進んでいる――
 ――大衆の手の内にある技能の一つとして人の手に落ち、加速度的に掘り進められている。掛け合わされている。
 故に、これから『魔術』も爆発的に発達するのだろう。きっと、恐らく。

「…………ふむ。聞いたは良いが、確かにそうだ。
 相手と肴の方が重要だ。よく考えてみれば一人酒など退屈だ。
 すっかり忘れていたよ。全く、ボクとした事が。」

 その内教えてやるとも、と、快い風に応えるだろう。

「しかしそうだな。暫く籠もっていたと聞いたが、何か成果はあったかな?」

獅南蒼二 > 「旧時代の魔術に関しては専門外でね。
 だが一般的に、科学に比べて魔術は、才能に左右されやすいと認識されているきらいがある。
 ある意味でそれは全く正しいのだが……才能に拠らずそれを行使できるほどに規格化が進めば、世界を覆すことができるだろうさ。」

それこそが、魔術の“産業革命”となり得るのかも知れない。
しかし全ては夢物語である……尤もこの白衣の男は、その夢を、夢で終わらせるつもりはないようだが。

「不老長寿の薬は品薄でね。私が老衰でくたばる前に頼むよ。」

そんな風に冗談を交えつつも、成果を聞かれれば自嘲気味に笑う。
その表情からも、ある程度想像がつくだろう。

「錬金術の一部を規格化しようと試みたのだが、ことごとく失敗に終わった。
 膨大な時間をかけて完成したのは、山のような賢者の石の“まがいもの”ばかりだよ。」

リビドー >  
「違いない。これはボクの認識だが――ある種の芸術に近いからな。
 良い絵が理論だけでは描けない様に、魔術も理論だけではままならん。
 とは言え絵の描き方だって積み重ねられた技術や知識で規格化されつつある。
 魔術だって才能にされやすい部分があるとは言え出来ないものではない。覆すのは遠くはないかもしれないぜ。
 それこそ蒸気の様に使い潰され、電気みたいに使い回される。」

 夢物語に皮肉を一つ差し込めば、満足そうに一つ頷いた。

「不老長寿か。これはあくまで想像だが、買った後が大変そうだ。
 何時までモチベーションを支払えるのやら。……と、錬金術か。」

 錬金術。
 その単語を耳にすれば、険しい顔を見せる。
 唸り声をあげた後、ゆっくりと口を開いた。

「錬金術は扱いが難しいと言うか、時代の徒花と言うべきか。
 あの技術は少々産まれて来るのが早すぎた――無理くり科学の分野を扱おうとすれば、無茶をせざるを得ない。
 先取りしすぎた技術を積み込んだゲーム機に良く似ている。或いはバグ技を再現するようなものだぜ、きっと。
 分からないものを強引に扱うのはそう云う事だ。……錬金術が無ければ今の形の科学もなかったかもしれないがね。」

獅南蒼二 > 「湯水のごとく魔力を消費する世界か。
 そうなれば第4次世界大戦は大魔術師の戦争になるな…塹壕戦よりは派手で面白そうだ。
 尤も、そうなってもライフルやミニガンの方が使いやすいと思うがね。」

貴方の言葉に、獅南も同様、頷いた。無論、魔術は万能ではない。
科学によって生み出された既存の技術の方が手軽で、なおかつ優れているなどという事態はざらにある。

「クーリングオフは2週間だったか。どうにも間に合いそうにはないな。
 ……あぁ、確かに科学のはしりともいえるな。試行錯誤の中から様々なものが生み出された。
 試行錯誤であるが故に再現性に欠ける部分も、叩き上げの技術であるからこその“職人芸”といえる部分もある。
 そういう意味では、バグ技を再現する、というのは的確かも知れん。
 できないことはないが、それを狙って毎回出すのは難しい。」

リビドー >  
「大魔術師や誰にでも扱える科学の叡智だけじゃない。
 キミも嫌いなアレが来る。特異なミュータントも交じった戦争だ。ああそうだ。"超能力者""異能使い"だよ。
 彼らをヒーローはキミだと扇動し、使い潰すのは想像に難くない。

 ……そうともなれば、地獄の窯の底よりも混沌とするだろうな。
 どうだい、その未来が来たら地獄にでも逃げないか。まだマシかもしれないぜ。
 それに案外、住み良い所かもしれないよ。ラム酒位は呑ませてくれるかもしれないな。」

 使えるものは何でも使うのが戦争だ。
 そこに異能者が入らない訳がない――おあつらえ向きな施設や団体も、ある。何処とは、言うまでもないだろう。

 何はともあれ冗句混じりに誘ってみせれば、手を差し伸べてみせた。

「そうだな。そう云う意味でも芸術的か。
 いや、奇跡の創造と再現を行うものが芸術なのかな。はてさて。」

獅南蒼二 > 「面白い、ならば私はその時に備えよう。
 選ばれた一握りの者によって大局を左右されるような戦争になってはならない。
 理不尽な正義を振り翳すヒーローは映画の中だけで十分だ。
 よく学び、魔術を身に付けた“凡人の集団”こそが世界を動かせる“主役”となるよう。
 作り出すとしよう……彼らが携える武器を、彼らを守る盾を。」

くくくく、と、楽しげに笑う。
それこそ、そんな混沌とした未来を、望んでいるかのように。
事実、この危険な魔術学者はそれを望んでいたのかも知れない。
戦争というステージに“異能者”たちを引きずり出し、誰もが受け入れざるを得ない形で、魔術学の優位性を証明することを。

「アンタと酌み交わすラム酒は惜しいが、その戦争が終わってからだ。
 先に行くも後から来るも好きにするといい…なに、地獄行きの切符は予約済みだから心配するな。」

その手を取ることはせずに、するりと横を歩いてすり抜ける。
研究の光明が見えたわけではないが、少なくともこの男にとって、貴方との会話は良い気分転換になったようだった。
すり抜ける瞬間の、男の表情は楽しげで……

「……残念だが芸術は分からん。
 今度、地獄に落ちずとも飲めるラム酒の店でも探しておくよ。」

……そうとだけ言い残せば、もう振り返る事もしなかった。

ご案内:「図書館」から獅南蒼二さんが去りました。
リビドー > 「キミも人が悪い。
 そこまで行くと、異能者どころか"その上"すら飛び込んで来る。
 ――いや、それすら討ち果たし、再び"凡人の集団"を主役に据える気かい。
 全く……と、行ってしまったか。」

 止める事はせず、横を過ぎる獅南を目で追うに留める。
 楽しげな表情も、確かに見えた。

 思惑を推察したが、与太話じみたそれが何処まで当たっていたのだろうか。
 そう一人ごちてからスマートフォンで時間を確認する。良い時間だ。

「ボクも帰るか。ここへの用事は今度で良いだろう。
 ……お互いに良い気分転換になったのかな。これは。」

ご案内:「図書館」からリビドーさんが去りました。