2016/01/16 のログ
美澄 蘭 > 「1つ残らず調べなくては理解出来ないか」と尋ねられると、困ったように眉を寄せて、

「………えっと…こういう働きをするのかな、という見当は、何となくはつきますけど…
論理構造ってほんの1フレーズで意味ががらっと変わったりしますから、念のため。

………それに、折角なので出てきた魔術文字を覚えてしまおうと思って。
初級の授業を、まだ途中の人間に出す宿題に出て来る文字ですから…覚えておいた方が、後々楽なんじゃないかな、って」

調べる時間を後々省けるなら、理にはかなってますよね?と、首を傾げて獅南の表情を伺う。

獅南蒼二 > 「無論、学ぶことに“無駄”なものなど何もない。
 無駄な学びをしたと後になって気付いたとしても、次は同じ失敗をしないと誓うのならそこに意味はある。」

答えはすぐに返って来た。
概ね肯定的な答えであり、蘭の考え方は正しいと言えそうだったが…

「…一方で、術式の構成や既習の魔術文字の情報から、未知なる魔術について推測する力も必要不可欠だ。
 魔術学を学ぶ者にとって、全ての魔術は未知なるものとして眼前に現れるのだからな。」

美澄 蘭 > 「………え、っと………」

獅南に言われた言葉を、かろうじて動かせる片手でこめかみを押さえながら、困惑の表情で咀嚼する。

「…そう、ですね…
ある程度術式の意味に見当がつかないと、怖くて使えませんから」

実際、先日"課題"を出された際にも、蘭は読める範囲で術式をざっくり読んで、「危険なものではなさそうだ」という判断はしている。
あの場ではああするしかなかったとはいえ、可能ならば丁寧に確認をしたいのが蘭の性分だが…

「………魔術の最先端って、大変なんですね」

最終的に、表に出す感想はそうなった。

獅南蒼二 > 理解力は十分にある、魔術師としての素養も同様に。
しかしこの生徒は柔軟性に欠けるようだ。これまでの授業では、まだ初歩の魔術しか扱っていなかったが故に、露顕しなかったのだろう。

「……あまり難しく考える必要は無い。
 術式構成はどのような言語であれそう大きく変わらんものだ。」
その課題に提出期限は無い、ゆっくりと取り組むことだ。
なんて、優しげに笑んでから、真っ直ぐに、蘭を見つめ、

「大変…か、確かにそうかも知れん。
 だが、誰かがそこを行かねばならんのだ、その機会を得られるのなら、自分の力を試してみたいとは思わんか?」

美澄 蘭 > 「そうですね…形や文字が随分違いますけど、力を持った数式みたいなもの、だとは思います。
………って、提出期限なかったんですか?次の授業まで、って先生が仰ったから急いでたんですけど」

びっくりしたように目を瞬かせてから、苦笑する。
獅南の、恐らく珍しい優しげな笑みにというよりは、期限の話についての反応のようだった。

…そして、「力を試してみたいとは思わないか」と聞かれると、少し悩ましげに眉を寄せて。

「…うーん…そうですね…
全く興味がないと言ったら嘘にはなりますけど………でも、少なくとも、今の私にはまだ早いと思います。
…まだ、「そこ」に至るための知識が足りませんし…力を行使して何かあった時に、知らなかったことを言い訳にしたくはないので」

真面目な顔で、最後にはそうきっぱりと言った。

獅南蒼二 > 「次の授業とは言ったが、どの授業とは言っていない。
 …という冗談はおいておいて、私が試したかったのはお前の感覚と熱意だ。
 感覚はともかく熱意は十分だろう…期限は無い、気が済むまで調べるといい。」

魔術的素養に優れている蘭なら、すぐにでも答えを出すだろうと予想していた。
だが、この生徒は敢えて面倒な手法をとり、確実性を求める。
……なるほど、珍しいタイプだと思う。

「まだ早い、か…
 …そうだな、この図書館の魔術書を全て暗記したころには、無双の使い手となっていることだろう。
 それだけの素養を持ちながら、多くを学ぶ……お前の将来が楽しみだよ。」

指をくいっと曲げれば、本棚からまた1冊、本がひゅん、と取り出される。
魔力を内包する人間と内包しない人間の科学的な分析が詳細に記された、医学書の類である。

美澄 蘭 > 「………ありがとう、ございます?」

熱意を評価されれば、首を傾げながらそう返す。
「感覚はともかく」の部分が引っかかったのかもしれない。

「…全部は、流石に厳しい気がしますけど…
でも、そうですね。何か、これっていう分野を見つけて…いつかは」

そう言って、はにかみがちの笑みを浮かべる。
…が。獅南が魔術で一冊の本を取り出すと、

「…?」

不思議そうにその本の背表紙を見つめる。
今年は生物を受講していないので、蘭の生物の知識は中学レベルで止まっている。
背表紙が読める文字で書かれているなら、内容の類推が可能かもしれないが…

獅南蒼二 > 首をかしげる様子をみて、楽しげに笑いつつ、
背表紙への視線を見て取ったか、小さく頷いて…

「……十数年前の“最先端”の医学書だ。
 いかなる人物に魔力が宿り、魔力は人体にどのように影響を与えるのか。」

…その本を差し出した。
魔力がある人間と無い人間の脳波や生命維持活動、身体能力、各臓器の解剖写真まで掲載されている。
両者には殆ど差はみられないが……ともかく、あまり見ていて気持ちのいいものではない。

美澄 蘭 > 本の内容を聞かされれば、露骨に表情が固まる。
祖母からの遺伝でそれなりの魔力を持つだろう蘭と、その母。
祖母が早世していることと相まって、「影響」というものについてはあまり想像したくなかったのだ。

「………そんなに、影響って…大きい、ものなんですか?」

片手でめいっぱい辞典を抱えているのもあるが…差し出された本は取らなかった。
ただ、強張った表情で、そう尋ねる。

獅南蒼二 > 「それは一概には言えないな…肉体的な変容が一切見られない例もある。
 ミトコンドリアが変異し魔力を代謝している例もあれば、血漿に魔力が溶け込んでいる例もある。
 だが、体内に多くの魔力を内包している魔術師がそれを急激に開放すれば、何らかの負担が生じるのは自明の理だろう。」

視線を蘭へと向けて…

「術式に関してはあれほど慎重に調べていたのに、
 自分自身の身体と、その魔力についてはまだ勉強不足なようだな?」

美澄 蘭 > 「…確かに、慣れるまでは初歩の術式でも数回使うだけでもすごく大変でした…」

魔力と身体の負担については、心当たりがあるようで頷く。
…そして、自分の身体のことについて指摘されれば

「…時間割の関係で、生物の講義は今年は取ってないんですよ」

治癒魔術を本格的に勉強するのにも不便なので、ちょっと後悔してます…と、苦笑した。

獅南蒼二 > 「そういう事だ。
 体内に内包している魔力の総量が多くとも、それを急激に放出する高出力な魔術を誰もが使えるわけではない。」

蘭の言葉に小さく頷いてから、

「あぁ、残念だが最近の生物学の授業で、魔力との親和性に触れるものは少ないな。
 その本を読めばわかるが、研究を通じて殆ど得るものがなかったようだからな。
 もし自分の身体と魔力について知りたいのなら、自分で調べてみることだ。」

その本を読むだけで十分かもしれんがな、と肩を竦めた。

美澄 蘭 > 「…つまり、高出力な魔術を使うのには、魔力以外にも重要な要素がある、ということですか?」

獅南の言葉に、更に質問を重ねる。

「………そう、なんですか………」

「殆ど得るものがなかったようだ」という言葉に、どこか安堵したように表情を緩めて。
この世界の世間一般の人間と比べて体内に内包する魔力の総量が多いとして、蘭もその母も、「肉体的な」問題、差異は感じられなかったのだ。
その実感と、十数年前の研究の結果が一致したことは大きな安心材料ではある。

「…そう、ですね…
………せっかく宿題の期限をなしにしてもらったんですし、その医学書、軽く目を通してみようかな…」

殆ど理解出来ないでしょうけど…と言いつつ、医学書にそろそろと手を伸ばす。

獅南蒼二 > 「無論だ。例えば…そうだな、どんなにガソリンを大量に詰んでいても高性能なエンジンを積まなければ速くは走れんだろう?
 それに、しっかりとしたタイヤが無ければ曲がれずに死ぬ。そういうことだ。」

それを出力する能力と、制御する能力。この2つがあって初めて、機能する。
なお、獅南は出力する能力も制御する能力もあるが、燃料が足りないのだ。

「食事の前には読まんほうがいい。あまり気分のいい写真ではないぞ。」

美澄 蘭 > 「………なるほど………」

車の喩えに納得したようで、真剣な表情で頷く。
蘭の弱点をあえて挙げるならば制御能力だろうが、これは現在目下訓練中で、一応成果は出しつつある。

「…まあ、医学書ですしね。気をつけます」

苦笑しながらそう言って、差し出された医学書を受け取った。

獅南蒼二 > 「…さて、私は少々、用事ができた。
 すまないが、先に失礼させてもらうよ。」

蘭が医学書を受け取れば、小さく頷いてから…

「あぁ、魔術学に関して読みたい本があれば、私に言うといい。
 お前ほど熱心な学生なら、いつかは“読みたいもの”が見つかるだろう。
 私なら、大抵のものなら手に入れることができる。」

…そうとだけ言い残し、ひらりと手を振った。
もう振り返ることもせずに、しずかに、歩いていく。

ご案内:「図書館」から獅南蒼二さんが去りました。
美澄 蘭 > 「あ、はい、ありがとうございます…!」

医学書を受け取り、魔術学の勉強についての助力を請け負ってもらえると、驚きと好奇心の高まりに頬を微かに紅潮させる。

「………頑張らないと」

向上心に、プラスの方向に火がついて。
医学書の貸出手続きを行い、勢いで魔術文字調べを全部終わらせて。

気がついたら閉館時間ギリギリだったので、急いで図書館を出て、学食で夕飯を食べて帰ったのだった。

ご案内:「図書館」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「図書館」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > 授業と研究だけに全てを費やしていた時期には、彼の姿を見ることは非常にまれな事だった。
だが、ここ数日は、毎日のように図書館で白衣の男を見たという目撃証言が寄せられている。
何処に寄せられているのかはまぁ、気にしなくてよい。
ともかく、図書館に頻繁に足を運ぶ生徒であれば、この白衣の男の変化に気付くことが出来るだろう。

「……………やはり設備が不十分だな。」

生物学、バイオテクノロジーに関する書籍の中から数冊の本を読み、男は小さく呟いた。

獅南蒼二 > 手元に並べられている本は、どれもやや旧時代的な科学雑誌やら論文やら。
特に細胞の培養技術やクローン技術に関するものばかりである。
現代においても、クローン人間の是非は問われ続けているが、かつてほどの熱意をもった研究はなされていないだろう。
遺伝子工学の研究者たちは異能と遺伝子との関連を調べることに忙しいのかもしれない。
……尤も、いまさら誰にも見向きもされない研究と堕しているのだが。

手元のメモには様々な情報が、普段の彼のメモよりよほど読みやすい字で走り書きされている。
丁寧なわけではなく、少なくとも日本語である、という点で、普段の魔術言語より読みやすい。

1枚目には、細胞に蓄積する魔力量、ミトコンドリアと魔力親和性との関係、その他さまざまな文献から魔力と生体細胞に関する情報が引用されている。
2枚目には、その細胞の培養方法、クローンの生成に関する技術的課題や効率の良い培養方法。

獅南蒼二 > メモを見るだけでも【賢者の石】という、彼にしては随分と漠然とした目標から方向転換したことが見て取れるだろう。
魔力を【生成】することには成功した。【制御】術式もほぼ完成している。
必要なのは魔力を【蓄積】する安価で強力なシステムである。
それさえ完成すれば“魔力を生産”するという、馬鹿げた空想が現実のものとなる。

「………………。」

獅南の表情は、真剣そのものだった。
きっと、冬休みの課題が終わらない生徒たちよりずっと、真剣な表情でページをめくっているだろう。

ご案内:「図書館」にリビドーさんが現れました。
リビドー > 「やあ。」

 後ろから足音と共に、声が掛かる。
 振り向いてみれば、リビドーの姿を認める事が出来るだろう。
 
「最近、図書館でキミの姿をよく見る気がするよ。
 いや、よくと言う程でもないのかな。あくまでボクの感覚だ。
 踏破し忘れた魔道書でもあったのかい。」

 彼自身は、生徒ではないがそこそこの頻度で図書館に足を運ぶ。
 確証とまでは行かないが。話題の種にするような口ぶりで言及するだろう。

獅南蒼二 > 声を掛けられれば手を止めて、静かに振り返る。

「そういうアンタもよく見るな。
 …いや、アンタは普段からここに居て、私が後から現れたのかも知れんが。」

小さく肩を竦めつつそうとだけ言い、視線は手元のメモへと戻した。

「さて、それを探すのなら禁書庫の棚の後ろでも漁ってみるしかないだろうな。
 残念だが、魔導書ではなく……科学雑誌に興味を惹かれてね。」

遺伝子工学やらクローン技術やら、それはそれは、危なげなものが広がっておりました。

リビドー >  
「おや、鞍替えかい。
 それとも映画にでも感化されたのかな。」

 本心ではない冗句を返す。
 そう言えば最近著名な映画の封切りがあったな、とぼやいてみせてからシニカルに笑みを浮かべる。
 重ねて"あれはいいぞ"、と冗談めかして奨めてみせただろう。

「ふむ。新しいロジックで錬金術でも組み直すのかな。
 確かこの前も、賢者の石を作ろうとして失敗とか言っていた。」

 視線を落とす。
 置かれているであろうメモや背表紙から、危なげな"それ"は察する事が出来る。
 一昔前――【大変容】の前ならば創作の中でしか取り扱われないような分野だ。
 ……とは言え実用化されていないだけで、研究そのものは行われていたであろう分野でもある。

獅南蒼二 > 「いや、単なる思い付きだ。
 それに、あの映画のような派手な使い方は流石に出来ん。」

小さく肩を竦めて、楽しげに笑う。
物を宙に浮かすだけならいくらでも再現できるのだがな。なんて、笑って、

「錬金術はどうも性に合わんようでな…発想の転換だ。
 賢者の石などなくとも、魔力を蓄積する方法はいくらでもある、ということさ。」

メモを見れば、クローン人間を作ろうとしているわけではないようだ。
単純に細胞を分化させ、単一の細胞を培養する手法について情報を漁っている。
恐らく、旧時代の科学技術レベルでも十分可能な範囲であり、この世界ではもはやさほど珍しくもない技術の範疇だろう。

リビドー > 「ははっ。同意だぜ、とは言え、だからこそ愉しくもある。
 人にせよモノにせよ力にせよ、あのように豪勢な使い方はそうそう出来ん。」

 他愛も無さそうに語ってみせる。
 子供っぽい笑みと楽しげに転がる声だ。

「ああ、そう来たかい。
 魔力の性質にもよるが、それこそ貯蓄するだけなら幾らでもよな。
 で、漁っている内容から察するに。生体に目を付けた訳だ。成る程な。」

 近場にある書物やメモを勝手に捲り、内容を改めるだろう。
 もとい、改めようとするだろうか。

獅南蒼二 > 「そもそも、植物が全く無いような惑星にマスクも付けずに降りるのはどうかと思うのだがな…まぁ、それは良いか。
 映画としては、楽しめるものだと思うよ。」

くくく、とこちらも楽しそうに笑って、それから、メモを差し出した。
まとまっているようで、実に多岐にわたる思考の痕跡が見て取れる。
魔術師や魔導生物が、細胞の中にどのような形で魔力を蓄積しているのか。
そしてそれを放出する際にはいかなる科学的、化学的な変化がみられるのか。
それを試験管の中で再現することは可能なのか。

……大量生産は可能なのか。

「質量あたりの効率では、やはり文献にある賢者の石には遠く及ばん。
 だが、コストあたりの効率を加味すれば、現時点では再優良賞だ。」

リビドー > 「ふむ。」

 向こうから差し出されたメモを見て取る。
 羅列順や筆跡などから思考の足跡を辿りながら読み込み、直近の思索を推測する。

「大量生産、か。
 ま、一品モノとしては賢者の石やアーティファクトにはそうそう敵わんからな……。」

 呟きながらもメモを返す。
 表情からも、興味を引いたことを察せるだろう。

「ああそうだ、魔力を持ったブロイラーの量産なんかどうだい。
 腹も魔力も満たせるぜ。いや、既に考慮済みかな。」

 思いつきだろう。やはり冗談めかした言葉だ。

獅南蒼二 > 「そういうことだ。
 それに、私が作り出したいのは大魔導士の持ち物じゃない…私のような凡人が使う魔力電池、と言えば分かりやすいかな?」

大量生産が必要な事も、生成の難易度やコストを問題視することも、
それで説明がつく。
一部の選ばれた者のためではなく、全ての凡人が魔術学の恩恵を受けるために。
……一方でそれは、非常に危険な火種を拡散させることにも繋がりかねないのだが。

「ははは、面白い発想だが、二兎を追う者は一兎をも得ず、だ。
 それに、折角の魔力タンクに歩き回ってもらっては困る。」

リビドー >  
「大体分かるよ。
 電気だって神や魔術師と言った選ばれしものが持つ神器から、人の手に落ちた。
 魔力もそのように落とし込みたいのだろう。」

 《大変容》以降、魔力も魔術も凡人の手に落ちつつはある。
 彼の思惑は兎も角として、何れは実現出来る事なのだろう。

「おいおい、ブロイラーは生きたまま消費者の手には届かんよ。
 ちゃんと加工する所までやってやらんとな。……ま、それだな。
 生きているモノを電池として利用するなら、"歩き回って貰っては困る。"」

 電気にしろ魔力にしろ何にしろ、
 タンクに好き勝手して貰っては困る。仮にコントロール出来たとしても、
 生き物をコントロールする技術が要る。ランダム性が生じる。
 そのランダム性に倫理を乗せる輩も出てこないとは限らない――凡人の手には余るだろう。

「だからこそ、キミは"細胞"に手を付けているのかな。
 いや、ここまで全てボクの与太話にしか過ぎないかい。」

獅南蒼二 > 「そういうことだな。
 動き回らず、意志をもたず、コストが安く、環境さえ作れば無尽蔵に増殖させられる魔力タンクだ…少々薄気味悪いのが玉に瑕だが。」

楽しげに笑って、リビドーの言葉を肯定した。
特に秘匿すべき事項も無く、技術的にも遺伝子工学の初歩、稚拙なものに過ぎない。
 
「ブロイラーを加工する業者を始めるつもりは無いし、
 それこそ、魔術師のクローンなど作っても“あの映画”のように制御することは難しいだろうからな。」

野心、その野望は大きいものだろうが、手法は現実的である。
あくまでも既存の技術を応用し、実験、実証を積み重ねる事によって新たな規格を作り出す。
……魔術師というよりは、技術者や科学者のそれに近い、手法であった。

リビドー > 「仕方あるまい。
 一見して訳の分からないものは、大抵薄気味悪いと扱いを受ける。
 理解出来ないものはそうなりがちだ。」

 くぐもった笑い声を漏らす。
 やっていることとしては科学者が行う新エネルギーの開発のそれに近い。
 ――とは言え、研究の果てに実用化されたエネルギーは一握りだ。
 
「さもありなん。クローンは電池や兵器には向かないからな。
 アレは、そうだな。創作物だ。芸術や文芸、映画と同じジャンルだ。
 言ってしまえば、道楽だな。実用性を否定する訳ではないが――」

獅南蒼二 > 「嘗ての魔法がそうだったように、か?」

そうとだけ言って、小さく肩を竦めた。
無論、この男はかつての魔女狩りを体験しているわけではない。
だが一方で、古い歴史をもつ魔法使いの系譜には、魔女狩りを生き延びた一族も存在している。
彼らの多くは人間社会へ不信感を持ち、地下組織化、その結果魔法は“閉じられた”技術となった。

「道楽か…その通りかもしれんな。
 もっとも、私の研究も道楽に過ぎんのかも知れないがね。」

魔力の生産と蓄積は、それを完全に“開かれた”技術へと転じる第一歩だ。
それがいかほどの実用性を持ち得るのか、それがどのような影響を及ぼすのか、
それを試算することは不可能であり、この世のだれもそれを行えない。

「実用性の有無は分からん、それに、万が一に成功したとしても…
 …エジソンになるか、オッペンハイマーになるかは分からんな。」

肩を竦めて楽しげに笑う。
魔力が組織的に、そして大規模に運用されるとすれば、それは恐らく、人類に破滅的な結果を齎すだろう。
……二度の大戦と≪大変容≫を経て、人類が進歩しているとすれば話は別だろうが。

静かに立ち上がれば、指先でちょいちょい、と本に浮遊魔法をかけ、棚にしまっていく。
メモをまとめて内ポケットへしまいこみ……

「独学では限界がありそうなのでな、遺伝子工学の授業を受けてくるよ。」

本気か冗談かそんな風に言い放って、獅南は歩き出した。

リビドー >  
「さてな。
 少なくとも古代ギリシアでは身近だったぜ。」

 当たり前のように妄言めいた言葉を吐き出す。
 仮にそれが嘘だとするならば、息をするように嘘を吐いている事になる程度には自然なものだ。

「何が道楽かって言えば、結局創作者の思い通りにはならん所だ。
 作る前からそうだし、仮に作れたとしてもそうだ。
 おまけに一人歩きまでし始める――と、行くかい。」

 歩き出した獅南を視線で追って、見送る。

「エジソンになるなら、ニコラ・テスラとは仲良くな。
 それとも其処まで含めてエジソンかい。ま、また会おう。」

ご案内:「図書館」から獅南蒼二さんが去りました。
ご案内:「図書館」からリビドーさんが去りました。