2017/03/24 のログ
黒龍 > 「……クソ、場所が場所だから派手にドンパチも出来ねぇし…」

ボソリと不穏な事を呟く。禁書庫でこの男は何をやらかしたいのか。しかも数多の魔道書相手に。
だが、学園の敷地内という事でそこは堪えているらしい。だがこの声は流石にウザ過ぎる訳で。

「………一番声がデカいのは……コイツか」

で、取り敢えず一番ガンガンと頭の中に響いてきた魔道書を声と魔力の質から逆探知。
そこまで移動すれば、問題の書物を無造作に右手で抜き出す。
くすんだ黄金の装丁に、所々に黒い模様なのか記号なのかわ分からんアクセントが施されている。

…で、左腕の義手でおもむろに魔道書に魔力チョップを軽く叩き込んでみる。
…すると、ズボッ!!と、義手の半ばまで書物の”中”に減り込んだ…んん?

「……あーーー…」

これ、駄目なパターンじゃね…?と、思った矢先、魔道書が光り輝いた…いや、訂正。ドス黒くヤバいオーラを発していた。

「てめっ!ふざけんなこのっ!何だコイツ食い付いて離れねぇ…!テメェはスッポンか!!」

と、悪態をつきながら左腕を振り回すが、魔道書はガッチリ左腕の義手を咥え込んで離さない。
結構シュールな構図だが、まぁ一応ヤバい状況ではある。

ご案内:「禁書庫」に永井ひとつさんが現れました。
永井ひとつ > す、と風景がぶれるようにしてテレポートしてきた細長い異形。手にはなんかの本。ライトノベルとSF小説のようだ。
少しの間あたりを見回し、どうやらまた少しずれた場所に出たと分かる。目的だった小説コーナーからは数十メートル離れていた。
そこまで考えて魔導書に手を食われている男を発見。
緊急事態の様子なのでやむおえず「おしゃべり」でテレパシーを使用。

《あ、そこの人大丈夫ですか?お手伝いいりますか?》

テレパシーの様子からは心から男を心配しているが、それほど大げさな事とは思っていない様子が感じられるかもしれない。

黒龍 > 「…ああ?何だこりゃ、念話(テレパス)の類か!?」

左腕の義手が半ば、くすんだ金色の魔道書に食われ掛けている、というシュールな光景。
しかし、突然脳裏に響くような声にそちらへと振り向いた。男より背が高い女が居た。

《手伝いってテメェなんか出来るのかよ!?つーかテメェ何でここに居るんだ!》

そして、即座にテレパスっぽい感じで返信するこの男の即応性の高さである。
その間も、何かズブズブと魔道書に左腕の義手が侵食?されている状況だった。

(つーか、いきなり現れやがったぞこのデカ女。瞬間移動の魔術か異能の類か?)

と、考えている間に…とうとう義手が殆どすっぽり魔道書に侵食されてしまった。
あ、これこのままだと脳内に侵入してくるパターンや…。

永井ひとつ > 「あ、はい。そうです。テレパシー、です」

鈴を転がすような声で小さくたどたどしく、しかしはっきりという。

《あ、なんだか急ぎみたいですね!できるだけやってみます!失敗したらごめんなさいね?多分できると思うんですけど。っていうかテレパスあなたも使えるんですね!すごいなあ!》

現実での口調と比べてものすごく饒舌で早口なテレパス。
その感覚からはできるかどうかわかんないけど、とりあえずできることをやってみようぜ!という軽いノリだとわかるかもしれない。

《耳をふさいでいてくださいね!もしできるなら、こう、聴覚をシャットダウンするとかなんとかそういう感じで一つ、聞かないようにしてくださいねー。SAN値削れたり、啓蒙高まったりしちゃうかもしれませんから!じゃあ、いきますよー。ガチシリーズ「ガチうたい」》

とりあえず事前に言うだけ言っておいたからなんとかしてね!という感覚。
そして彼女は大きく息を吸って何かの歌のようなものを歌いだした。

「~~~♪」


それはびりびりと本や本棚が振動するほどのパワーで、しかしそれほどうるさくなく、むしろなんだか中毒性のあるような甘い感じがするかもしれない。
彼女の異能「おうた」の本気バージョンだ。

その歌は深く深く。まるで宇宙の底を見ているかのような、底のない海を見ているかのような。恐ろしく、しかしその広大さにただ落ち着くしかない、そういう音だった。

その効果は強力な沈静、沈痛、リラックス効果。
外宇宙の強烈な神秘を含んだ音は同じく神秘でできた魔導書にも聞こえるはず。
その歌は慰めるように響く。

《あとこれもやっちゃいましょう!なんかこの子の性格なんとなくわかるかも!》

男の手に食いつく魔導書に耳打ちするように顔を少しだけ近づけて。しかしいつでも逃げられる位置で何かを「おしゃべり」でささやく。

その一部が漏れ聞こえるかもしれない。

《あ、さっきからなんかあなたが叫んでるそれね?実はね…■■■がね、■■してね、それで■■■なんだよー。だからね?
それは■■■することは■■■でね?だから、この人に言ったり、食べたりすることはないわけ。ね?大丈夫》

そのテレパスは言語化不可能なニュアンスを大量に含んだもので、三次元的な奥行きや時間軸では説明不可能な感覚でできている。しかし、それは彼女が魔術書の叫びを理解して、なおかつそれに対する答えのようなものを知っていたので教えた、そういうものだ。

《うーん、これで収まってくれればいいんですけど…》

ご案内:「禁書庫」に黒龍さんが現れました。
ご案内:「禁書庫」に黒龍さんが現れました。
黒龍 > 「……つーか、どうせなら普通に話し掛けてくれると助かるんだがよ…」

魔術にもテレパス系統は当然存在するし、男も習得しているので即座に返せた。
彼女のそれとは厳密には違うのだろうが、どうやらあちらには届いたようだ。
と、いうかこのデカ女ノリが軽いなオィ!むしろ早口過ぎんだろ!!
と、いうツッコミはこの際置いといて。取り敢えず、魔術による防壁で聴覚を一時的にシャットアウトする。

(………!…オイ、シャットアウトしても地味に”響いて”くるぞこれ…異能の類か?)

男のあれこれは基本魔術を下地としており、異能使いとは正直相性が悪い。
魔術で聴覚を完全にシャットアウトしても、どうしても異能の力故か”多少”歌が直接届いてしまう。

「……何だこりゃ…歌にしちゃあ、何と言うか…」

なまじ、男が人外…龍だからその中毒性やらに引き摺られてはいないが、ただの人間だったらアウトだったかもしれない。
それでも、今は彼女に任せてみるしかない訳で。しかも、静かなようで周囲に響くようなパワーも感じる。

…と、いうかこの歌。何か”ヤバい”。自分の中で何かのスイッチが入りそうな気がする。

「…おい、ちょっと待てその歌止め――…!?」

彼女の歌がなまじ本気(ガチ)だったせいか、男の中に眠る力が”引きずり出される”。
正確には、彼女の歌と魔道書…そして、この禁書庫という空間の三位一体による相乗効果だ。
混沌としたこの状況で、男の意思に関わらず彼の”異能”が花開く。
…それが、ハッキリとした形になるのはまだ先だが。

「…って、いうかお前は魔道書に何を囁いて……お?」

彼女が近づいてきたと思えば、まるで耳打ちの如く囁くそれ。
一部は聞こえない、というより理解できない音ではあったが、それでも魔道書の侵食がピタリと止まる。

…やがて、魔道書から漏れる光が収まり――ボロボロと崩れた。
どうやら彼女の歌と囁きの効果があり過ぎてある意味で浄化?されたらしい。

そして、とんでもない置き土産として魔道書の”力”だけはそのまま義手に残ってしまった。

(……オイ、助かったけど更にカオスになったんじゃねぇかこれ…)

と、内心で思いつつも状況が収まれば一息。女へと顔を向ける。

「……おぅ、何か訳わからんが助かったぜデカ女」

変わりに、何らかの力に目覚めてしまった上に魔道書の力”だけ”を義手に取り込んでしまったが。
だが、魔道書そのものは彼女のお陰で何とかなったから矢張り感謝である。

永井ひとつ > 《普通に話すのはこう、喉の形とか脳の言語野の関係でなんだか苦手なんですよー、ごめんなさいね!おしゃべりは大好きなんですけどねー》

普通に話しかけてくれたほうが助かる、という言葉にいやー若干申し訳ない、というニュアンスのテレパスが帰ってくる。本当はちゃんと言葉で返したいが、残念ながら口は歌で使ってしまっている。

男がなんだか少し聞こえてしまっている様子でうわあ、やっちゃったなあ、という少し申し訳なさそうな様子。

《えっ、もうなんか歌っちゃいましたっていうか、中途半端に辞めちゃうほうが逆にまずいみたいですよ?できるだけ手短にしますから、なんていうか、がんばってください!グッドラック!》

魔導書が崩れてしまったのを見て、少し驚いた様子。
そこまですごいことを言ったつもりはなかった。
だけどまあ、いい感じに終わったからきっと大丈夫さ!と笑ってごまかす。

《あ、崩れちゃった…あ、でもなんかうまくいったみたいですね!ごめんなさいね、大丈夫でした?》

そういえば、と細長い手を打って。

《あ、何を言ったかっていうと、日本語にないニュアンスなんで、うまく説明できないですよー。まあ、たとえて言うなら、「わかるわかるー、そういうことってあるよね!でも世の中そんなもんだよー。よく寝ればきっと立ち直れるって!」みたいな内容なんですけどねー。それをあの子にわかるように、あの子のケースの具体例を交えて言った感じで…まあ、なんか成仏?した感じだし、多分大丈夫でしょう!》

ニコニコと笑って手を振る。

「あ、はい。私も、説明、うまくできません。でも、あなた、無事で、よかったです」

そこでふと気づいたように。

「あ、そういえば、なんであなた、ここに、きました?
オカルト、お好き?ところで、私、小説コーナー、いきたい、です。場所、わかりますか?」

やはりたどたどしく、しかしきれいな声で、愛想よく言う。

黒龍 > 「…あー分かった分かった。じゃあテレパスでも普通に喋るのもどっちでもいいわ…そっちが話し易いほうでいいぜ」

と、溜息混じりにそう返そう。これまた癖の強そうな女と知り合ったものだ。
だが、結果的に副産物があったとはいえ助かったのは事実。
まぁ、魔道書が一冊崩れ去ってしまったが、これだけ書物があるならバレないだろう、多分。
元より、自分や彼女でも流石に魔道書の復元は無理だろう…むしろ、その中身とも言える力は男の左腕の義手に宿ってしまったし。

「グッドラックじゃねぇ!大人しそうな見た目に反してノリが軽いなテメェは!!」

ああ、これ俺がツッコミに回る側だろうな、と半ば悟りながらもそう言っておく。
だが、まぁ事は済んだし一応こちらは無事だから結果オーライ、と言えなくもない。

「……ああ、魔道書の力は義手に残っちまったが、それはこっちで何とかする。
ともあれ、元が成仏したっぽいし、まぁ問題ねぇだろ…多分」

問題大有りな気がするが、そこまで考えると気が滅入りそうだから止める。
こっちの言語では表現しきれないニュアンスで”囁いて”いたらしい。
道理で一部が聞き取れなかった訳だ。そこは納得したように頷いてみせる。

「無事かどうかはさておき。…あ?ここは禁書庫だぜ。ヤバい魔術の本とか禁書指定されたモンばかり眠ってるトコだ。
普通の生徒は立ち入り禁止…らしい。俺は何でか迷い込んじまったクチだがな。
…で、そっちは…なんか間違って転移したみてぇな感じだな…。」

と、彼女をサングラス越しにジト目で眺めてから一息。取り敢えず。

「…ま、いろいろアレだが改めて助かった。俺ぁ黒龍・ランドグリーズ…これでも一応はここの学生だ。そっちは?」

ご案内:「禁書庫」に黒龍さんが現れました。
永井ひとつ > 《あ、助かります!こうやって思ったままにしゃべれるのって本当にありがたいんですよー》

とても嬉しそうな念が伝わってくるかもしれない。
本が崩れちゃったのはお金とか学術的価値にとってはえらいことなのかもだけど、どうせ誰も読まないようなヤバい本なんだから、本人?が納得して成仏できたんなら別にいいんじゃない?とやはり軽いノリで考えている。

《あはは、よく言われますー。でもまあ、世の中深刻になってもどうしようもないことのほうが多いじゃないですかー。ほら歌にもあるでしょ?苦しいときこそにやりと笑えって!それに、あれですよ。こう見えて女子高生ですし?》

ウフフ…と楽しそうに笑う。もともと糸目なのであまり変化がないかもしれないが。

《えっ、大丈夫ですか?でもまあ、健康に直ちに問題はない。ってやつですね!なんかお詳しそうなのでお任せします!》

大丈夫なのかな、と思うが相手のほうが専門家そうなので素直に任せる。

《あー、そういえばなんだかすごく個性的な本ばっかりですね…お高そうな古文書ばっかりですし。こういうのなんかロマンですよね!えっ、立ち入り禁止なんですか?あー…出ましょうか。怒られてもつまらないですし》

ぽこん、と自分の手をたたいて。

《あっ、そうなんですよ。私テレポートの細かい調節が苦手で…だいたい百メートルくらいは間違うんですよねー。これはこれで「今日の占い」みたいなガチャ感があって面白いんですけどねー》

なんだかあきれられてるかな?と思いつつも、まああきれられるだろうなあ、それだけのことはしたかもしれないなあ、と思いながら、穏やかに微笑みつつ。

《あ、どういたしまして!私も学生です。永井ひとつ、といいます!よろしくお願いしますね!私入学したてで、人脈広げたいんですよー。名前からして異邦人の方ですか?うわぁー、自慢できちゃうなあ!》

きゃぴきゃぴと念だけは女子高生のノリで。しかし見た目はこの恐ろしく細長い異形がゆらゆら揺れつつ。
嫌味なく普通にミーハーなだけだ、というのがまるわかりな念を送る。

ご案内:「禁書庫」に黒龍さんが現れました。
黒龍 > 「…まぁ、本人が話し易いのが一番だろうしな。こっちが聞き取れれば問題ねーって事で」

こちらは普通の会話でもテレパスでも対応できる分、多少は融通が利くので彼女も話し易い…と、思う。
嬉しそうな念が伝わってくるのが若干こそばゆいが、そこは顔にも態度にも出さない。

「……女子高生云々が関係あるかどうかは分からんが…まぁ、テメェが能天気なのは理解したぜ」

楽しげに笑っている糸目の女を軽く見上げる形になりつつ。だってあっちの方が身長高いし。
男の身長は185センチくらいだが、それよりも最低でも目測で15センチくらいは彼女の方が高いだろう。

ちなみに、実際に大丈夫という訳でもないが、幸い力だけなら使いこなせばそれでいい、という認識だ。
問題は、まだ男も上手く自覚できていない目覚めた力の方だが…そちらは今の時点では謎である。

「…おい、100メートルもズレたらテレポート失格だろうが。ヤバい場所に転移したらどうすんだ…現在進行形でそうなってるしよ。
まぁ、アレだ…テレポートに大事なのは転移する場所のイメージ。あとは空気だな。
明確にイメージを固めれば失敗も減ると思うぜ…まぁ、これは魔術の転移の場合だけどな?」

彼女のがそれが、もし異能による転移なら同じ理屈で精度が向上するかは分からないけれど。
むしろ、出れるなら自分も彼女のテレポートに便乗した方がいいかもしれない。

「おぅ、永井だな覚えた。…まぁ、人脈広げるのは今後プラスにはなるんだろうが…ああ、お察しのとおり異邦人だぜ」

と、名前でも丸わかりであろうがあっさりと頷く。妙にミーハーな様子でゆらゆらしてる女を眺めつつ。

「…で、テレポート使えるなら俺も連れてってくれや。
周囲の魔道書の魔力のせいで出入り口が上手く探し当てられねぇんだよなぁ」

永井ひとつ > 《あはは、よく言われます…ま、まあ人間明るく生きましょう!ってことで!》

まあ、たしかに能天気と言われればそうかもしれない、と肯定。
ごまかすように笑いつつ、若干視線を合わせるように猫背になりつつ。

《あー…まあ、確かにそうですねえ。イメージですかー。こう、視覚化とか投影みたいな?あれって確か想像したものをはっきりイメージするんでしたっけ?なるほどー、参考になります!
空気、ですかー。うーん、がんばってみます!》

内心「刺激があるから人生は楽しい」とゲームの名言を思い出しつつ。イメージと言われて彼女の認識では100mくらいは一つの場所、としてイメージされているのだ。たとえるなら同じ部屋の隅と隅くらいの感覚である。なので、難しいなあ、と思いながらも、がんばってみようと思う。

《はい。黒竜さんですね!やっぱり竜だったりするんですか?すごいなあー。本物の竜の人、初めて見ます!かっこいいですね!ちょい悪?って感じで!》

内心はこの人戦場の匂いがする…苦労したんだなあ、と思いつつ。彼女の生まれた第二次大戦前後では戦場帰りは珍しくなかったゆえにナチュラルにヤバい話題を避けつつ。

《あっ、ごめんなさい…実は私のテレポート、クールタイム?リキャストタイム?的なものがありまして…1日1回なんですよー。あはは…それに、これ他の人も巻き込めるかやったことないですしねー》

どうしよう、と一瞬考えて。ふっと気づいたように。

《あっ、じゃあ出口自体はあるんですね?じゃあこの子たちに聞きましょう!》

近くの魔導書にぼそぼそと囁いて。

《あっ、こっちみたいですよ!》

すっ、と歩き出してどんどん進んでいく。
やがてある本棚の前に立ち止まると本を並べ変えたり、本の奥にある本棚の壁に隠されたパネルをいじったり謎ギミックをすらすら解いていく。

《あっ、開きました!》

するとゴゴゴゴゴ、と本棚が音を立てて移動、出口が出てくる。

《いやー、楽しいですよねこういうギミック!久々にやりましたこういうの!いやー、ここの人ロマンが解ってますね!アンブレラ社かっていうね!》

ころころと口でも笑いながら楽しそうに出口へと向かう。

ご案内:「禁書庫」に黒龍さんが現れました。
黒龍 > 「……ま、暗いだけのヤツよりはマシっていやぁマシか」

肩を竦めてみせつつ、しかし自身より身長が高い人間は…こちらの世界では初遭遇だ。元の世界ではそれなりに居たのだが。

「まぁ、後は数をこなすか…ともあれ、流石に100メートルはちとズレ過ぎだしな。
ある程度は改善する事も考えた方がいいとは思うがよ…ま、お前次第だな」

ささやかなアドバイスにもならないかもしれないアドバイスをした程度に留まる。
が、あまり余計に口出しをし過ぎない程度の分別はあるつもりだ。

そもそも、彼女の認識とこちらの認識は違うだろうから、アドバイスが役に立つ可能性は決して高くはないのだ。

「……んーまぁ、一応な。ちょい悪かどうかはよく分からんが」

むしろ、元の世界では5人居る王様の一人なのだが、そこまでは口にはしない。
と、いうより自分のことをベラベラと喋るのがあまり好ましくないだけだ。
聞いても面白いものではないだろうし、自分語りというのも何か抵抗がある。

彼女が感じている通り、長い時間を生きているが殆どが戦場とか騒乱の記憶ばかりだ。
血生臭い事も何度もしてきたし見てきた。そういう空気は滲み出ているかもしれない。

「……あーそうか、じゃあ仕方ねぇな」

彼女の言葉に、そうなると地味に探すしかねぇかな、と思いながら諦めたが…。

「…ああ、そういや意思疎通出来るんだっけか永井は……つーか、何だその仕掛け」

彼女の案内に続いて歩き出すが、その一連のギミックには呆れたように。
場所が場所だけにそういうのがあってもおかしくはないのだろうけれど。

「……アンブレラとかいうのは知らんが、まぁこういうのは遺跡の仕掛けとかでもよくあるな」

等と、少しズレた同意をしながら彼女に続く。外に出れば見知った図書館の光景があった。
やれやれ、とばかりに一息付きつつ永井へと顔を向け。

「何とか出れたぜ…取り敢えず、俺は戻るがお前はどうする?
礼に何か軽く奢ってもいいぜ。」

と、彼女にそう言ってみる。彼女が断るにしろ頷くにしろ、男はそろそろ引き上げるだろう。

永井ひとつ > 《そうそう!そうですよー》

手をいじいじしつつ楽しそうに。

《あー…まあ、いざという時を考えたらそうですねえ。精度があるに越したことはありませんしねー。ありがとうございます!》

結構親切に心配してくれているみたいなので少し真面目に。
たしかにできるに越したことはない、と納得しつつ。

《へえー。こっちの世界では竜ってすごくかっこよくて強い存在ってお話が昔は結構あったんですよー。よく読みました!でも以外に話しやすくていい意味で驚きでしたね!》

マジで嫌味なく言う。素直にそう思っている。
彼女の中では竜のイメージは古典ファンタジーか、ちょっと古めのライトノベルなのだ。

《ですよね!そういうの面白いですよねー。向こうではそういう仕掛けのある遺跡とかあるんですか?いいなあー》

こちらの世界ではそういうのはピラミッドくらいしかないなあ、と思いながら。向こうには本当にそういうのあるんだ!と感心しつつ。

《えっいいんですか!じゃあお願いします!いやー一度男の人におごってもらうって体験、してみたかったんですよねー》

彼女もそろそろ引き上げるだろう。ジュースくらいならおごってもらおう!と楽しげに。それが終われば彼女は本を返して家に帰るだろう。

黒龍 > 「礼は別にいいから、自分の為にももうちょいテレポートの精度がマシになるよう頑張っとけ」

と、礼には緩く首を振る。最終的に彼女自身の為にもなるだろうし。
ただ、テレポートの精度向上は地味に難易度は高そうではあるが、そこは彼女次第だろう。

「…こっちのドラゴンは伝承つぅか実際に居たって訳じゃあねぇんだっけか」

男の世界はドラゴンは上位種族ではあるが、決して珍しいという訳でもなくて。
だからこそ、そういう差異に改めてここが異世界だというのを実感する。
まぁ、順応性が地味に高いのでもうこちらの文化にも生活にも慣れてきているが。

「ああ、高度な遺跡になると即死トラップの大盤振る舞いだったりするのは珍しくもねーしな」

それでも、盗掘する者や考古学者的な冒険者が後を絶たないのだけれども。
ともあれ、何だかんだ彼女には世話になったので、奢る言葉に嘘は無く。

「おぅ、じゃあ人生初のヤロウからの奢りを楽しんどけ」

と、小さく笑いつつ彼女に帰りがてらジュースでも何でも奢っただろう。
色々と予想外な事は重なったが、まぁこれはこれで悪くはないのであった。

ご案内:「禁書庫」から永井ひとつさんが去りました。
ご案内:「禁書庫」から黒龍さんが去りました。