2017/06/30 のログ
ご案内:「図書館」に獅南蒼二さんが現れました。
■獅南蒼二 > 貴方が図書館を頻繁に使うのなら、この顔色の優れない男を、一度は見たことがあるだろう。
そして、一度見たのならそうそう忘れはしないはずだ。
彼の使う机には、大抵の場合、山のような魔導書が積み上げられており、彼の手元のノートや紙片には、それこそ吐きそうになるくらい細かく緻密な「何か」が描かれている。
「………ふむ。」
ペンが止まり、獅南は小さく息を漏らす。
それから、彼は手元の魔導書のページをめくった。
■獅南蒼二 > 獅南が描いていたのは、無論術式の構成図である。
しかし、それは非常に歪な描かれ方であった。
一つの術式を打ち消すように対消滅をもたらしかねない相反する術式。
さらにはその発動を遅延させる時間操作、そして、指向性を変化させて無力化する術式操作。
「……結局のところ、魔力容量の大きな者が勝つ。」
延々と繰り返される魔術の応酬。
数多くの魔術系統に通じているからこそ、獅南はほとんどの魔術に対抗することができる。
しかし、対峙した相手が同様に使い手であった場合、戦闘は互いが互いの先手を取らんと、無様な消耗戦へと転落する。
そしてそれは、獅南の最も不得手とする分野であった。
異能者だけでなく魔術師をも敵とすることを想定したとき、これは由々しき問題だった。
ご案内:「図書館」にデーダインさんが現れました。
ご案内:「図書館」に獅南蒼二さんが現れました。
■デーダイン > 一週間が終わる、今日。
仮面、マント、黒ローブの怪しげな人物が図書館を闊歩していた。
来週の授業の教材の参考資料でも探しに来たのだろうが、
しかし、この不審人物、デーダインを知らぬ人からすれば、何とも言えぬ心が落ち着かないシュールな奴が図書館をウロウロしている様に見えるだろう。
「……ムッ!」
そして、その不審者はふと、顔色が悪い…ともすれば、病気の様にも見えてしまいそうな男、
魔術教師の同僚である、獅南蒼二へとその仮面を向け、ブーツの足音を止めた。
「貴様は…獅南蒼二ッ!!また元気ではなさそうだな。
……クックック、どうした、随分複雑な迷路みたいなものとにらめっこしているが、
出口は見つかったかね?」
デーダインは、しかしいつもの暑苦しさは図書館マナーで抑え気味にしながら、
獅南蒼二へと問い掛けた。
周りに散らばる紙に描かれた図を見たのかもしれない。
■獅南蒼二 > 獅南は無論、貴方を知っていた……知った上で、敢えて近付こうとはしなかった。
とは言え、忌み嫌っているわけではない。
「アンタは元気そうだな……色々な意味で。」
苦笑混じりに肩をすくめてから、視線を貴方へと向ける。
疲労で獅南は目元が窪んでいるが、もはやいつものことだ。
「いや、残念だが見つからん。」
紙に手を翳して、空中でぐっと手を握り、そして開く。
直接手を触れることなく、紙はバラバラに引き裂かれた。
「……こうするのが最も簡単なやり方のようだ。」
魔術の応酬という状況そのものを破壊する。
小手先の技術では、もはやどうこうなる次元ではないのだと。
分かりにくい表現だが、貴方なら恐らく、読み取るだろう。
■デーダイン > 「……クックック。まぁそう褒めるな、褒めても何も出ないぞッッ!!
飲み物くらいなら買ってやるがな。」
多分、褒めた訳ではないのだろうが、
このデーダイン、まるで褒められたかのように振る舞う。
若干苦笑いの中に、呆れられた様な気がしたが、恐らくは気のせいだ。
「ほう、それだけ頭を巡らせて、出口が見えん迷路かね。」
会話の途中、獅南蒼二の手の仕草の向こう、そのあたりに散りばめられていた紙が、
そこに描かれた迷路模様の図ごと、引き裂かれる。
「クックック…迷路自体を放棄するというのか。……こんなに丹念に書いたのにな。」
仮面は黙して語らぬ。しかし、勿体ないとデーダインは思った様子で、
破れた片鱗を手袋が拾い上げて、ふと溢し。
きっと、獅南蒼二が意図したことは、伝わったのだろう。
「随分と大きな飛躍に出たものだな…貴様は随分その迷路に頭を悩ませたと言うのに。
……どうやら、何かに随分と行き詰まっている様に見えるが?」
その行いは、発想の転換にも見えるが、ある状況からの逃避にも見える。
カマをかける抽象的な問い掛けも、これまた黙して語らない仮面から放たれる。
■獅南蒼二 > 「珈琲くらいは出てくるかと期待していたが…」
実際にはそんな期待などしてはいないし,単なる冗談に過ぎない。
はずだったのだが,
「…出てくるんじゃないか。」
思わず,ツッコミを入れてしまった。
なお,ばらばらになった紙はしっかりと一か所にまとまっている。
さらりとやっているが、割と器用な魔力操作である。
「行き詰っているかと言われれば,まさしくその通りだ。」
素直にそうとだけ言ってから…貴方の仮面を見る。
どのような構造になっているのか知らないし,知りたいとも思わないがその素顔はもちろん,表情の一片すらも伺えない。
「私が“魔術師どうしの戦い”をしようとすれば,私の欠落した才能は,やはり大きな足枷になりかねない。
互いに迷路に迷い込めば,体力の無い者から倒れていくのは必定だ。
……アンタも魔術教師なのだから詳しい説明は要らんだろう?」
小さく肩をすくめて,しかしどこか,やはり納得はできていないという表情。
努力と研鑽によって力を得た獅南は,しかし同様に努力と研鑽を積んだ才能ある者に勝てなかった。
「教師として参考にさせてもらいたいのだが,アンタはどう思うね,“才能の差”というものを。」