2015/06/20 のログ
志葉恭介 > ……。

【360度パノラマの風景に、少年の金髪は映える】
【向き直った彼の表情がどんなものだったのかは、逆光にかき消されて見えない】
【黒の少年は眼鏡を押し上げ、内心独りごちた。まるで、これでは懇願ではないか、と】

……或いは、ただの興味本位なのやも知れん。
若しくは惑った犬猫に向ける同情心と同じものなのやも知れん。

だが、今の彼女は……常世にも在らず、されど現世にも非ず。
煉獄に繋がれ唯己に対する疑問に責め苛まれるのと変わらん。
それはそれで、俺にとっては質の悪い悲劇に思えてならんのだよ。

> ……なるほどなあ……。

【恭介の真摯な表情に、呻きながら頭を掻く。
何を言われても嫌味たらしい言葉か笑顔で返してきた少年の、珍しくも苦々しい沈黙だった。】

……今日のところは帰るぜ、兄弟。
一個、宿題を出しておくよ。
俺はこうしてお前に、しつこくお姫様の依頼を中断するよう迫っているわけだが――なんでこんなに、回りくどいやり方をしていると思う?

【彼が言うように、これは非効率的というか、論理性を欠いている。
少なくとも、一から枳が事情を説明すれば、恭介が理解を示す可能性はあるというものなのだが、彼はそれを試みようともしない。】

志葉恭介 > 宿題、ね。

【「そうしない理由が在るのだろう」という程度で済ましてきた事項に関する疑問符を提示され、思わず考えこんだ】
【が、それは宿題なのだろう。答えを焦るのはうまくない】

……考えておくよ。
それが俺に、如何なる結論を導くのかは分からないけれど。

【そう言って帽子をかぶり直したのは、或いはその結論が暗澹たるものであると薄っすらとながら予見している事を誤魔化す為なのかも知れなかった】

> じゃあ――またな。

【恭介が目深に帽子をかぶり直した一瞬の暗転のうちに、少年の姿は掻き消えていた。
その表情が去り際にどんな色彩を浮かべていたのかは、窺い知る余地もない。
だが、その声色からは、微塵の敵意も感じられず。
ただ、どこかで聞いたような、優しい感情があった。
「また」という言葉に、どのような意図を含めたものか――。】

志葉恭介 > 【気がつけば時計塔に一人。少年との邂逅は、白昼夢の如く】
【夕空へと変わりつつある空の色を見上げ、眼鏡の奥の瞳を伏せ】
【黒の少年は、先程のやり取りの中で自覚した自身の心の中を思って、笑う】

……なんともまぁ、我ながら女々しいものだな。

【つまり、頼られていると言う今の状態が心地良いのだ】
【面倒だの、信条だの、そんな言葉で飾っているだけのこと】

【時計塔の針が夜を指す。島中に響き渡る鐘が鳴る】
【金色から闇色へと染まる彼方の水平線を見つめながら間近で響いたその音に、我に返る】

【一番高い場所から遠くを見た所で、答えが出る筈も無かった】

ご案内:「大時計塔」からさんが去りました。
ご案内:「大時計塔」から志葉恭介さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 昼間、大時計塔の上。橙色のボディスーツを身に纏い、狙撃銃を抱えた少女――畝傍はこの場所が気に入っている。
昼間、ほとんどの学生は学内におり、ここに来ることは少ない。
畝傍の苦手な「ヒト」が訪れることがないのだ。
学内の雰囲気に馴染めず不登校状態となり、寮内の自室にさえ戻らない日もある畝傍にとって、このような場所はまさに理想的といえる。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 抱えた狙撃銃のマズルは彼女のスーツとほぼ同じ橙色になっており、実銃でないことが一目でわかる。
ちょうど今のように島内をうろついている場合は発射機構すらなく、重さも実銃の10分の1程度というレプリカを持ち歩いているし、
浜辺に出かけるときは水鉄砲。彼女が実銃を携帯するのは『狩り』に赴く時だけなのだ。
「……へいわ、だなあ」
後から誰かが来る様子もない今の状況を見て、ふと呟く。
少なくとも、今は彼女の精神の平穏が保たれている。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 大きな狙撃銃を抱え、何をするでもなく、
座ったままぼうっとしているのが彼女の楽しみだ。
「ふぁああ……」
暖かな昼間の陽気につられ、思わず欠伸。右目を擦る。
なんだか少し眠くなり、うとうとしている。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 眠ってしまいそうになったが、ふと気が付き。
「……さみしいなあ」
心の内から漏れた言葉。畝傍の目頭が潤む。
畝傍は自分と同じ匂いのしない『ヒト』――つまり狂っていない人間――を極度に恐怖している。
それはかつて死の淵を彷徨い、自らに異能が発現したあの日から続く心的外傷<トラウマ>故。
だが同時に、自分と同じ匂いのする『人』――すなわち狂人との出会いを、心の底から強く渇望している。
彼女は狂っていた。彼女は常に一人。故に、どうにもできない寂しさに苛まれ続けているのだ。

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ボクも、おともだちがほしい」
狙撃銃を抱えたまま、その場をうろうろ歩く。
「でもヒトはこわいよ。ボクとおなじニオイがしないヒトはこわいよ」
誰に話しかけるでもなく、ただ一人で語っている。
「おなじニオイのする人……おともだちになってくれる人……どこに、いるんだろ」

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ううー……女神さまなら、なんていうんだろう……ううーん」
相も変わらずうろうろ、うろうろ。
歩みに合わせ、その年齢に反して大きく育った豊満なバストが揺れ動く。

ご案内:「大時計塔」に狭間操一さんが現れました。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……あたま、ぐるぐるする」
答えの出ない考えを巡らせ、思考が負のループに陥りかける。
再び座り込み、レプリカの狙撃銃を構える。
発射機能こそ無いが、引鉄を引くことはできる。
実銃を撃つ時のようにスコープを覗き、遥か遠くの何もない空めがけ。
「……ばんっ」
声で発射音を再現し、引鉄を引いた。彼女が心中の不安を払拭するための、一種の儀式である。

狭間操一 > 「やっべ…今何時?」
大時計塔の天井、入り組んだ鉄骨のうち、太い柱に背を持たれ
寝息を立てていた影がのそりと身を起こす
どうやら居眠りしていたようだ、今何時だ?
寝ぼけまなこで眼を擦ろう…として、箱を切り出したような、武骨な軍用暗視ゴーグルに手を阻まれる

「視界が通るって事ァ昼間じゃねーな…眠い…」
くぁ…と欠伸をしながら、猫のように身軽に飛び降りる、2階から落ちるような高さだが
着地には問題ない

「うわ…凄い姉ちゃんだな……どうしたんだ?その格好…未来からでも来たのか?」
トン、と着地すれば、目の前にいるのは畝傍だ
奇妙な格好をしている、少なくとも現代で着ているとコスプレと認識せざるを得ない格好…に見える

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「うぇっ」
背後に何かの着地音を認識し、驚きで畝傍の体が跳ね、奇妙な声も出る。
「…………っ?」
おそるおそる振り返ると、そこには緑髪の男子学生。
無骨な暗視ゴーグルが、只者ではなさそうな印象を抱かせる。
だが畝傍は一目で察する――どうやら彼は。
「キミ……ボクとおなじニオイ、しない……」
狂人ではない。そう判断していた。

狭間操一 > 「やぁ君ぃ、どうしたん?外人さん?迷子?」
ゴーグルで目元はわからないかもしれないが
ニコ、と人好きしそうな笑顔を相手に向ける
ちょっと格好はアレだが、中々に美人だし、胸も豊満だ
ならば態度が軟化するのも、男としては至極当然

「ニオイ?何か変かな?俺ちゃんコロンなんかはあまり派手なの使って無いつもりだけど…
 んー?君は何か匂うのかな?」
まるで旧知の知り合いのように、笑顔でその肩に手を伸ばし、組もうとする
組むことができれば、徐に髪の毛の先を指で摘んで香りを確かめようとするだろう

その動きは、まるでなんでもない散歩をするかのような
まるで相手の無意識を付いて動くように洗練された
自然な動作だ

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……ボクはウネビ。ここに来たくて来たの」
子供扱いされたのが気に入らないのか、
目を細め、やや機嫌の悪そうな顔で名乗りつつ、男子生徒の質問に答える。
すると肩に手を伸ばされていたことに気付き、思わず。
「さわらないで!」
片腕に狙撃銃を抱えたまま、男の手を跳ね除けんとした。
畝傍は『ヒト』に触れられることが大の苦手だ。
触れられそうになると、反射的に拒絶してしまう。

狭間操一 > 「行きたくも無い場所に散歩をする奴は狂っていると思うな、俺は
 だったら君はまともな子なんだろうな、ウネビちゃん。俺はハザマっつーんだ、よろしくねぇ?」
なるほどな、と特にその機嫌悪さを気にした風も無く、マイペースに答える
そして手を伸ばした、相手が女の子なら誰にだってこういう感覚だ
遠慮が無いし、怒られる事もないと思っている
だが、不意に伸ばした手は、バチン、とはたかれて宙を舞う

「痛って…どうしたん?怒ってる?参っちゃうな、仲良くしたいんやけど…
 えーと、何が気に障ったのかな、教えてくれん?」
まあまあと宥める様に、両手のひらを顎の近くまで持ってきてパタパタと振る
よく見れば銃を持っている、もしかしたら危ない人なのかもしれないなあ
なんて思いながら、それでも遠慮なく一歩踏み出し、その顔を覗き込むように尋ねた

もしかしたら煽っているとも取られるかもしれない行為だ、だが、自分にとってはこれが自然体

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ボク……『ヒト』に触られるの……ヤダ」
率直な答え。明らかにそれまでよりも表情は険しく、声は低くなる。
ハザマと名乗った男の態度は、畝傍にとってあまり好ましいものでなかった。
顔を覗きこむようなその仕草もまた、畝傍を苛立たせた。
「ボクはハザマとなかよくなれない。ハザマはボクとちがう。おなじニオイがしないって、いったでしょ」
畝傍の精神は実年齢に輪をかけて幼い。感情に任せ言葉を放つ。

狭間操一 > 「ヒト。」
おうむ返しだ、まるで意味がわからないという表情
格好からして大体察する所はあったが、西南西から飛来する電波などで
脳をやられている類の知り合いと似た所を感じる

最もあちらはクスリなどによるものだが、こちらはもう少し天然な様子だが

「あっはは…嫌われちゃったな、参るんよなあ、俺ちゃん女の子に嫌われるの
 あんまり得意じゃないからさぁ…」
グッ…とゴーグルを持ち上げ、かぶりを振ると
「でもよ、人という字は何とかかんとか、って言うだろ?
お互いさ、眼を見て、腹を向けて話合えば、大体なんとかなると思わない?
ねえ、見てよ、俺のことをさ」

ゴーグルを外した眼で、相手を除く、その眼は白眼である部分が黒く
黒目であるべき部分もまた黒く、空洞のように空虚な漆黒が広がっていた
もし視線を合わせてしまえば
過去に起きたトラウマ等が突然鮮明に想起したり、記憶に訴えかけるヒュプノが働くだろう

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「…………イヤ」
目を逸らそうとしたが、一寸遅く。
畝傍はハザマと名乗る男の術中に嵌ってしまった。
「…………!」
見覚えのある光景が鮮明に思い出される。
あの頃。某国において身体強化実験を受け、狙撃手として活動していたころの記憶だ。
その頃、狙撃の対象としていた犯罪集団の構成員に捕まってしまい、
暴行を受け命の危機に瀕したことが彼女の異能発現のきっかけとなったのだ。
畝傍よりはるかに年上の男たちが振るった圧倒的暴力。嘲笑。そして――
拭えない記憶。今でも心の奥底に刻み込まれた心的外傷<トラウマ>。その全てを掘り起こされ。
――畝傍はその場に崩れ落ち、失禁していた。恐怖のあまり身がすくみ、一歩も動くことができない。レプリカの狙撃銃を縋るように抱く。

狭間操一 > 「あぁ…やっぱり過去になんかあった感じなのかなぁ?
ただの電波かと思ったけど、妙に意志はしっかりしてるもんなぁ」
何故突然仕掛けたのか、なんて考えても、理由なんてない
強いてあげるなら、自分の事を好きになってくれなかったから、とか
そんなどうでもいい事だ、そして、好かれようとも思っていない
ただ、好きなのだ、こういう顔が

ウネビの自分には垣間見ることのできない過去に追いかけられ、一歩も動けない顔
それを見ると、己の中に言葉にできない抑揚が生まれるのを感じる

それにしても少し見ただけでこの効力、余程の事があったのだろうか
自分はただの学生だ、それを想像するには、人生のレールが違いすぎて知る事はできないが

「どうした?一人で抱えてちゃわからないな…俺にも教えてくれないか?
 今君の頭の中はどんどんと退行している、思い出そう、もう一度あの景色を…さあ、今君の目の前で
 君はどんな目に会っているんだ?」
汚いな…なんて、軽薄な笑いを浮べながら、失禁で出来た池を靴底で踏みしめ
更に相手の目を見、そして呼びかける、意識をさらに催眠の深みに落とそうとしているかのようで
凶眼に呪われた瞳は、黒のオニキスのように煌々と輝いていた
是非自分の口から聞かせてほしいと

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……ボクは……むかし……」
未だわずかに支配を免れている部分が、必死に語るまいとする。
しかし、より深まっていく催眠の前には、もはや抵抗は無意味だった。
「ボクは……狙撃手を。狙撃手をしていたんだ。いっぱい、わるいヒトを撃った。わるくないヒトも撃ったかもしれない――でもあの時、ボクはつかまって」
畝傍自らの口から語られる、最も『ヒト』に語りたくなかった過去。
「……されたんだ、いっぱい……叩かれて……蹴られて……それに…………なことも……それで……死にそうになったんだ。あと少しで死ぬところだった、ボクは……」
助かった――否、自身の意思とは無関係に助かってしまった。
絶対に避けられないはずの死を避け生還する異能――『九死一生』<デッド・ノット>の発現によって。
「……あのときは、運がよかったんだとおもう。運がよかっただけ、なんだよ……気がついたら、ボクにひどいことをした人たちが死んでた。助けがきて、それからのことは……」

狭間操一 > 「ふーん、色んなヒトが来てんだなぁ、この島」
相手の決して覗かれたくない、暴かれたくない、自分自身でさえ見たくない過去、それを、家でシアターを眺めるかのように、感心する
その感覚は、まるで食事中に何となく付けたテレビと同じだ。

「気付いたら皆死んでたの?怖いなあ…俺さぁ、そういうホラァなの得意じゃないんだよなあ
引き寄せる体質だからさぁ」
既に3つも4つも呪いを体に受けている身として、その不可思議なポイントに眉を潜める
こっちは探ったらダメなポイントだ、そういう各所を穿ると、呪い返しは強力なものになる

「それより…叩かれて、蹴られて…どうしたの?その辺がよく聞こえなかったなぁ
もっとよく思い出そう?頑張ろうよ」
励ますような声色で、再び手を伸ばした
深い催眠状態にあるであろうウネビの肩に馴れ馴れしく組み付く事ができれば
自己啓発セミナーの講師のように、耳元で語りかけるだろう
瞳には、まだ暗闇は宿したままで

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……イヤ……っ」
狙撃銃を片腕に先程より強く握りしめたまま、肩に組み付こうとする狭間を体だけで先程のように跳ね除けようとするが、
力が入らず、その腕は力なく垂れ下がる。
眼帯で隠されていない畝傍の瞳はもはや輝きを失い、虚ろになっていた。
催眠の効果により、これだけは語るまいとしていた部分さえも――自らの意思とは無関係に、語りはじめてしまう。
「あの時……ボク…………された……服を。服を破かれて……脱がされて……男のヒトが何人も、何人も……ボクを……何度も……」
思い出したくなかった過去を。語りたくなかった傷を。
あの頃の自分の体のように、見ず知らずの男の前で丸裸にされ、
畝傍はただただ涙を零すことしかできなくなっていた。

狭間操一 > 「まあまあ…落ち着いて…ね?」
完全に底の深度まで入ったのだろう、抵抗も空しいものだった
ここまで完璧に呑まれた相手は初めてだ
相手の目を見るように覗き込めば、そのハイライトの消えた目が見える

「ふうん…服を、破かれたんだ、それで?良いよ、続けて」
重苦しい声色で続ける畝傍の肩をさする様な手つきで組む
涙を零し、瞳を曇らせる少女を見ても尚、その眼は閉じられる事はなく続けられる

「そう、脱がされたんだ、この宇宙戦艦のパイロットみたいな服を?」
ふうん…と感心するように、そのボディスーツの谷間の辺りに指を動かす
何の感慨もなく軽く上に引っ張って、くい、と捲ろうとしながら
続きを促した、まだ少女の瞳に光が戻る様子もなく、余裕な態度だ

畝傍・クリスタ・ステンデル > 狭間の催眠は未だ続き、畝傍は抜け出せない。もはや現在の畝傍自身の意思はないに等しかった。
抵抗する気力も失われつつあり、瞳も虚ろなまま。ただ涙が流れ落ちるばかりであった。
「……わたしは……」
自身を『わたし』と呼んでいたのは、かつて狂気に染まる以前の畝傍だ。意識の過去への退行が進行している。
厳密には過去の畝傍のボディスーツは現在のものと仕様が異なるのだが、
そういったことを流暢に説明することもできず。
「……わたしは、服を……服を、脱がされて。……されました。わたしよりも年上の男の人が大勢見ている中で。わたしは。…………犯され、ました」

狭間操一 > 「辛い目にあったんだね…可哀想に……」
心にもない台詞でうんうんと頷く、その光景に涙を流す畝傍
ここまで呼びかければ、何かちょっとした事でも覚醒してしまうリスクがあるかな
等と思っていたけれども、その心配もなく、ただ涙を流して語るばかり
彼女にとって、おそらくその経験こそが自我を形成する屋台骨になっているのかもしれない、等とは、当たり障りのない推量だった

「一人目は…どうだった?教えてくれるかな?どんな格好だったんだい?」
両肩に手を置いて、そのまま床へと寝かせるかのように誘導し
そしてゆっくりと落ち着かせるような口調で語りかける

何かスイッチを戻すチャンスを探るなら、ここを逃せば難しいだろう

畝傍・クリスタ・ステンデル > 尚も催眠状態にある畝傍は狭間の言葉に乗せられ、
かつて自身を陵辱した者の姿を思い出そうとしてしまう。
「……最初に……わたしを……したのは……したのは……」
思い出せない。否――思い出すことを拒んでいる!
最初に自らを犯した男の黒髪。頬骨の浮いた顔。
その後に続いた男たち。死の覚悟。
そして気付いた時、眼前に広がっていた凄惨な光景――
恐怖のあまり、力無く垂れ下がっていた手が持ち上がり、
その両腕が狙撃銃を強く握り締めたとき。
……虚ろだった畝傍の瞳に、再び光が戻る。
畝傍を畝傍たらしめるその存在――狙撃銃の形。
それを再び認識したことで、畝傍は自らを取り戻したのだ!
「…………!!」
狙撃銃を抱いたまま、肩に手を置いている狭間を振り払わんとする!

狭間操一 > 「うん、したのは…?」
特に秘密を探ろうというつもりはない
ただ、楽しいから、それを想起させる事で彼女はどんな顔をするのだろう
面白いな…想像しただけで顔が歪んでしまう、さあ聞かせてくれと、耳を傾けた

「チッ…ポイントはそれか?やっぱり武器は自分の意志を確かにさせるって言うからなッ…!」
狙撃銃が彼女の拠り所である等は想像に難くないが、戻る切欠など、狙撃銃でなくとも
己の握り締めたモノの重さ、確かさから現実へと帰還するものだ
舌打ち、今の話に眉唾が無いのなら、この銃は本物で、離れたら撃たれる…
危機意識に則り、振り払われ、手を離してしまいながらも

その狙撃銃の下にしている部分を全力で蹴りつけ、遠くへやってしまおうと、足を振り払った

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ぐっ」
畝傍は脚を振り払われ転倒。失禁によって生じた湖に自らの身を叩きつけてしまうも、
これ以上意識を支配されるまいという意思により狙撃銃を取り落とさずにすんだ。
すぐさま床を蹴り、飛び込むように回転移動!狭間から距離を置く。
恐らく先程かけられた催眠のトリガーは目だ。そう確信し――
今度は目を直接見ないよう、できる限り視線を逸らしつつ、狙撃銃の銃口を狭間に向ける。
今手にしている狙撃銃は発射機能のないフェイクだ。弾は込められていない。
だが銃口を突き付ければ牽制程度にはなるはずだ。
「……ボクに何をした」
低い声。畝傍は怒りを露わにしている。

狭間操一 > 「おっ…っとと……」
ヒュッ、と足を振りぬくも、その爪先に何かが引っかかるような感触はなかった
空振りだ、トン、勢い余ってと地を蹴ると。相手から僅かでも離れてしまう

「チッ…マズいな……ヒヒ…」
突きつけられるのは銃口、ウネビが指に力を込め、引き金を引き
鉛弾が発射されれば、いかに異能持ちの学生といえど死ぬだろう
飄々と笑いながらも、両手を挙げてホールドアップの体制を示す

「覚えてないのか?俺に楽しそうに全部教えてくれたじゃないか…
ヒトをたくさん殺した事とか、叩かれて、蹴られて…それから
随分その後楽しい目にあったみたいじゃないか、羨ましいぜ、そいつ等が」
俺は死ぬのは御免だけどな
全部聞いていた、と改めて相手に告げる、聞いてしまった、全てを
銃を向けられた状況であっても、その軽口を止める事は出来ない、傷口に塩を塗るのはもやは性分と言ってもいい

畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ハザマ……アンタはさっきの術で……知ったのか」
否――
「ボクに。ボク自身に。しゃべらせたのか。ボクのヒミツを。ボクのヒミツを!」
畝傍の腹の底で激しく燃え盛る怒りにより、口調が荒くなる。
「ゆるさない……ゆるさない。ゆるさない!ボクはアンタがきらいだ!」
狙撃銃は武器として機能しない。だが武器ならある!
畝傍は実銃を持ち歩かない時も、護身用としてナイフは常に隠し持っているのだ!
「きらいだ!きらいだ!『ヒト』は!ニオイのちがうヤツはみんな!ボクにおなじことをする!だいっきらいだ!」
狙撃銃を左手で抱え、右腰の後ろからナイフを抜き、投擲!続いて左腰の後ろからもう一本抜き、また投げる!
狙いこそ出鱈目だが、殺意は一直線に狭間の方向へと向いている!

狭間操一 > 「あぁ…もちろん…堪能させて貰ったよ、君の昔話を」
その上で言おう、一呼吸おいて、口を開く

「つまらないセンチメンタルだったな、よく聞く話だよ、なに、気にする必要はないって」
大丈夫、皆同じさ、くよくよするなよ
相手の傷を更にえぐる様に、そんな風に笑う、お前の気持ちもわかるよ
まるで相手の神経を逆なでする様に、理解するような言葉を投げた

「そりゃ悲しいなあ、俺は可愛い子に嫌われるのは得意じゃないんだ」
悲しいな、とでも言うようにその言葉を聴いていた、にべもなく、その表情はへらりとしたままだ
「うわっ…ちょっと…危ないな…」

飛来するナイフ、向けられる殺気、これは銃が…いや、来ない、ナイフ…?
疑問に思いながらも、腰に巻かれた美容師用のベルトに刺さる、肉厚の鍬き鋏を引き抜く

ギィン!
と甲高い音がして、1本目のナイフを弾く、だが続くのは2本目だ
裁ききれない…ザク、と嫌な音がした、太ももに赤いラインが入っている、結構深く切り裂かれたみたいだ
バランスを崩し、片膝を付く

「ぐっ………ッ……こいつ…ハハ…でも、良いよ…その表情…『もっと感情を見せてもいいんだよ』…」
煌々としたオニキスのような瞳を、カウンターめいて向けた
相手の異能力を暴走させるような凶眼だ
能力というのは記号である、例えば何の能力がなくても、足が速い、などの才能だけでも、この目はそれを暴く

あなたは狙撃がしたくて仕方がない、今すぐに狙撃で快感を得ずにはいられなくなる…
表層意識にそう訴えかける事が叶えば、能力は暴走するだろう

畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は目を合わせぬよう横目で命中を確認する。狙撃銃を用いた狙撃行為ではないため、快楽は生じない。
むしろ畝傍の心は、快楽とは無縁のどす黒い怒りに満ち満ちていた。
そんな中、狭間のオニキスめいた瞳が畝傍に向けられ、呪いのごとき言葉が発せられる。だが!
「………………」
撃たない!そう。『狙撃快楽』<スナイプ・ハッピー>はあくまで畝傍自身の狂気の一部であり、異能ではないのだ!
彼女の異能――それは『九死一生』<デッド・ノット>!
どう足掻いても死を避けられない状況に陥った際発動し、避けられぬはずの死を避け生還するその能力こそが、彼女に発現した唯一の異能である!
だが、可能なのは死を避ける事のみ。心身の傷までを癒すことはできない。
ゆえに、想定しうる最善の手段をとる必要がある。
実銃を持たない今の畝傍にとって最善の策は――逃げることだ!
目を合わせぬよう、念には念を入れてもう一本のナイフを投擲!その後狭間に背を向け、この場から逃げ出さんとする!
「(なんでボクが……こんなめにばっかり)」
心の内でそう思いつつ、狙撃銃を両腕に抱えひた走る。
「こんどあったときは……ゆるさないからな!」
と背を向けたまま吐き捨て、橙色の影はいずこかへと消えていった――

ご案内:「大時計塔」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。
狭間操一 > 「さあ来いよ…見せてくれ、君の輝きをさぁ…」
爛々とした目で相手を誘う、さあ来い、見せてくれと
相手の能力が自分の対処できる限界を超えるモノだったとしても
それをする事に躊躇いはなかっただろう
ヒトは皆爆弾を抱えている、この瞳はそれを起爆するのだ

得も言えぬ全能感と共に、相手の心の内の爆弾を起爆しようとする
「あ、あれ?」
両手を広げ、いつでも来いと超常現象に備える
だが、いつまでも炎も雷も、念力も隕石も飛んで来ることはなかった

逃げていくその背中を見届ける、効かなかった訳ではない筈だけども
「まあ、そういう事もある、かな?あ痛つつ…」

痛みに顔をしかめた、思い出したように、左外腿の傷に手を伸ばす
「ゆるさないか、楽しみだなぁ…」
次に彼女が自分を見かけたら、自分はどうなってしまうのだろう

ランナーズハイめいた思考で、そんな事を考えるのだった

ご案内:「大時計塔」から狭間操一さんが去りました。
ご案内:「大時計塔」に渡辺慧さんが現れました。
渡辺慧 > 時刻は午前。
もうすぐ昼頃になろうとする時だ。


時計塔の屋上。
その物陰。
パチリ。
眠っていた瞳を開ける。
周囲を見渡すように、瞳だけを動かす。

――あぁ、そういえ、ば……。

渡辺慧 > まるで、猫のように丸まっていた体を起こす。



――否。
まるで、猫のようにではなかった。

それは――まさに猫そのもの。
というか猫だ。

猫のような少年は、猫になっていた。

渡辺慧 > ――……昨晩のことを思い返す。

あの後、彼女と別れた後、この時計塔に来た。
慣れない体で、ここを登るのはひどく苦労して。
そのまま、疲れた様に眠ってしまったようだ。

……あー。ついていけばよかった。
今更だけど。

渡辺慧 > に、しても。

ひょこひょこと。
慣れない体で、景色を見渡せる場所まで歩く。


――まーじで猫になってるよ。
まぁ。
そういうこともあるのだろう。
長い人生だ。まじで猫になることの、1度や、2度。

――……。


………………………。

渡辺慧 > 「ニャフア゛ーーーーーーーッ!」
(1度や2度もあってたまるかぁーーーーーーーッ!)


思いっきり叫んだ。猫の声だった。


(あああああいやまじで猫ジャン俺まじでなにちょっといや待てうん、アアアアア猫だ俺猫だウワアアアアアアア!)


(いや確かに猫のように生きてみたいとは幾度か思ったけど憧れてるとは確かに言ったけど、猫のようだから! だれが猫そのものの生き方をさせろといったよあぁでもにゃんじゃこりゃああああああああああ!)

思いのたけのまま叫んでる気がするが、全部猫の鳴き声だった。

渡辺慧 > 屋上をごろごろと転がりまわる。
まるで毛玉のようだった。



「ニャ゛アアアア゛アアアアア゛アーーーーーーッ!」
(ア゛ア゛ア゛ア゛アーーーーーーーッ!)



気のせいか異能も発動している。ものっそい速い。
超高速の毛玉がごろごろと時計塔の屋上を転がりまわって謎の叫び声を上げている。

渡辺慧 > べちゃり。
その勢いのまま壁にぶつかった。

「ホニャッ」

ずる……ズル……と力尽きた様に床に崩れ落ちる。

渡辺慧 > 「ニャ…………ミャ……フー…………ふー……」

疲れたのか、たれ猫のように脱力した。


……まぁ。しかし。3日か。
…………でも、折角、探してきてくれたもの、なんだよな。


「ふげ」

溜息のように、そうやって一鳴きすると。
何かを諦めた様に、のそりと立ち上がり、階段へ向かうと。


――……ま、折角だ。少し位……楽しみますか。

いつものように。猫のような笑い方をしようとして…………それは、世にも珍しい、猫の笑顔だった。

ご案内:「大時計塔」から渡辺慧さんが去りました。